それからというもの、勇者たちは1ヶ月に一回は島、に来るようになった。
スミレは、少しずつ今の世界について理解していき、それと比例して勇者パーティーの面々は歴戦の戦士らしくなっていく。無論、勇者エインを除いて。
ある時のことだった。勇者たちが一週間滞在する、ということでやや古くなった木の家を掃除するスミレの元に、手紙が風にのって届いた。
[スミレへ]
元気?私だよ、ネアだよー。
うれしいお知らせが三つあるんだけど、どっちから聞きたいー?
「何でしょうか」思わず反応してしまうスミレ。
まず一つ目ー。なんとー!あの人がー!(焦らすよー)リリーがね、エインに告白、成功して、付き合い始めたのー!わーぱちぱち!!
「本当ですか」
二つ目ー。なんとー!あの人がー!(何かごめんねー)エインが、魔王を倒したのー!わーぱちぱち!だけど私、久々に死にかけたよー!
「ネアさん······会いたくなってきちゃいました···」
三つ目ー。なんとー!そっちの島に、転移魔法がつながったのー!「わーぱちぱち!」
「え?」
スミレが振り向くと、なんとそこにネアがいた。わずかに顔が赤い。
「えへー、大成功!」
スミレとしてはそれどころではない、みるみる顔を赤くして、「···いつから、居たんですか」となんとか絞り出す。
「んー、······何でしょうか、の辺りから」
「······うぅ、ネアさんのいじわるぅ」顔を赤くして、ぽろぽろと涙を流しながら、ネアに抱きつく。
「わっ······あ、えっと、ごめん、怒った?」不安になるネア。
その腕の中のスミレは、精一杯の笑みで言う。「···いいえ。怒ってませんよ。······無事で、よかったです」
その後、時は流れて。
勇者エインはリリーと結ばれ。その仲間のブロウ、ネア、アルスト、そして大切な友達、スミレも皆、幸せな暮らしを送りました────
とは、ならなかった。
読点間違えました→[島、に]
物語で語られる、『勇者の冒険譚』から、四年。あらゆる者が憧れる勇者とその仲間は、今。
「相変わらず素晴らしいな、この島は」
「スミレさんと出会ったのも、ここでしたよね」
「あの頃の俺らが団結できたのも、あいつのおかげだな······」
「なにブロウー。惚れた?」
「···(それはネアじゃないか)?」
「アルスト何か言ったー?」
ここは、とある海に浮かぶ島。そこには、常に色とりどりの花が咲いている。
その景色を見て、僧侶リリーの服を掴んでいる、まだ幼い子供が息を呑む。
「···ママ、ここ、凄く綺麗」
「でしょ?連れてきた甲斐があったよ」
「そういえば······アヤメはここに連れてきたのは初めてだったな」
「誰か住んでるの?」
「うん。本にも載ってないけどねー、私たちの、大切な友達が居るの」
その時だった。
アヤメを除く──つまり、勇者たち──その腕に、鳥肌が立った。
「──あなた、これ」
「······信じたくは無いな。うぅん、──全員、周囲を警戒しろ。アヤメ、この中に入りなさい」
「おいおい、何が起こったんだ、一体?」
「······え。おかしい、この気配。──そんなはず」
「──スキル発動、『守護神』。まさか、だが」
勇者エインの顔が、瞬時に鋭くなる。
それを見たアヤメは、訳は分からなかったが、咄嗟にそこにあった木の蓋を開け、その中に入り、
────直後。
「──フ。まさかそっちから来るとはな。さて。雪辱を果たさせてもらう」
「「「「魔王、カースモルグ···!」」」」
「何で?居るの!?」
死闘が始まる。