······
「何処だ、此処は?」
突然、そんな声が少女の耳を刺激する。
数億年の間、自然の音、動物の鳴き声ぐらいしか聞いてこなかった耳に、明確に入る。
数百年前にサメに食べられたのとは別の方向で、時を止める。
そして、その者たちは現れる。
「······誰か居るぞ」
「まあ、ここまで手入れされた島が無人な訳ないですよね」
「女?······まだ子供じゃねぇか」
「あら、珍しいですねブロウさん?あの見境なしはどこに行ったんです?」
「皆、そこまでだ。僕にはわかる。こいつは、ただ者じゃない」
少女は、突然現れた剣やら杖やらで武装した集団に訳がわからず、何か言おうとして──
「······ぁ······ゲホッッ!?」言えなかった。
当然である。この少女は、なんと数億年も口を利いていない。
鉄の味がする。口から血が溢れる。
しかし──倒れることは、身体が許さない。例え死んでも、死.ねない不死身だからだ。
>まさかの今日二回目<
少女が突然吐血したことで、まさに近づこうとしていた者たちは思わず思考を止めた。
ここで少女は痛みを無視して彼らを観察する。
手も足も二本。何やら耳の形が違う者も居るが、それもはるか昔に見た『人』と同じようにあるべき場所にある。体型も似ている。顔も。······
そして、少女は断定する。
ああ、人だ、と。
そして──思いもよらず、涙が溢れる。
「······っ、リリー、回復魔法だ」
「えっ、」
「僕には、この『少女』が敵には見えない」
「惚れたか?」
「誰が。······ああ、食べ物もあげよう。確か船に······」
その後、落ち着いた少女は彼らから様々なことを聞いた。
彼らは『勇者』のパーティーであること。
魔物の元凶である『魔王』を倒す為に旅をしていること。
この島には1日休むために立ち寄ったこと。
······だが、少女は物凄く久々に食べるパンや肉に夢中で、大体のことは聞き流していた。
魔法、勇者、魔王のことも、聞けなかった──否、聞かなかった。理解できる話ではなさそうだったからだ。
1日が明けて、彼らは旅立つ。
その時、少女はある贈り物をした。
「この花は一体?」
「······ゴールデンロッド、です。励ましと、感謝を込めて。」
勇者たちは微笑み、去ってゆく。また来ることを誓って。