「ただいまーー!!」
「お帰り、ネア!」「あ、ネアさん」
ネアが島に帰ってきた時、二人の声がした。スミレとアヤメである。
「何か良い場所あった?」
「うんー、当然だよー。頑張って良い場所選んだからねー」
「お出かけするんですか?······そういえば私も大陸の記憶ないですね」
「まあ、仕方ないよー。あ、だけどあと一週間待って?」
「「どうして」ですか?」
「えーと、街でねー」
ネアは大陸であった出来事を話す。
「ネア、人気者」「······うーん、正直いらないんだけど······うん、まあ落ち着くまで待ってー」
「はーい」
さて、三人は一週間を手持ち無沙汰で過ごすことになる。だがあまり飽きはしない。これまでもこうしてきた上に、ネアがおみやげを買ってきたこともあった。
「まあ半分くらい食材だけどねー。スミレの料理すごい美味しいからさー、ついついいっぱい買っちゃうんだー」
「······うん、ありがと。頑張るよ」
俯いたスミレの耳が赤くなったのを見逃すネアではなかった。
「······いつも、本当に、ありがとね」
「······うん。こちらこそ、ありがとう」
さて、この木の家は二階建て、部屋は6つある。
アヤメの部屋は一階、そしてスミレとネアの部屋はその真上である。
「(······寝れない。姐さんたちのいちゃいちゃのせいで······)」
まだ一線は越えていないようだが、······アヤメは年頃の少女である。まぁ妄想は加速する訳で。
そして今度は、下から聞こえる顔を洗う音のせいでスミレとネアが眠れなくなったのだとか。
そして一週間。お出かけの日である。
一応、1日前にネアが確認に行ったところ騒ぎは起こらなかった上であった。カルトナの人望が高いこともあっただろう。
だが、それでも消えない視線が一つ。
ネアのパートナーはスミレだ。そこには絶対的な愛がある。······そのせいで、同性愛に対する好奇の視線が発生しているのだ。さすがのカルトナもそこまでの理解を変えることは出来なかった。
一応カルトナが過激な者達を成敗したらしく(おそらく弟子に対する善意で)、何も起きなかったのだが、それでも心配なものは心配であった。
ネアが悩んでいると、スミレが傍にやってきた。
「どうしたの、ネア?」
「うーん······何でもないかもしれないしー······えっと、」
「私との関係のこと?」
「······うん、かいつまむとそうだねー。·····実はね、下調べの時······」
ネアが話し終えたとき、もう出発時刻が迫ってきていた。だが、二人は動かない。
「······えっと、ネアはどう思ってるの?」
「私はスミレ愛してるから、離れたくないなー」
「なら決まり!胸を張って歩こうよ!手を繋いで、二人で!」
「······ありがとうー。なんか吹っ切れた」
「少し恥ずかしいけどね。······あ、私もネア愛してるよ。······じゃあ行こう!」
「······ずるい」不意打ちを食らったネアは、そこで数秒悶えていた。
[ちょっとあとがき]
次回は本当にお出かけ回です。