バカヤロウ

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
3:れーなちゃん:2020/06/13(土) 10:17

「まじ?先輩?見えねー」

「失礼っっ!!本当に良いのは外見だけじゃない!!」

いやアンタも大概失礼だけどねって思うけど言ったら面倒そう
だから私はそうですねって言いながら頭を撫でている

「んで、先輩はいつまで泣いてんの?」

「知らないわよっ」

「そ。別にいいけどさー泣き顔かわいーね」

「性格最悪でしかも軽い。もっと最悪」

「人のこと最悪最悪言い過ぎじゃありませんか?」

「最悪な人に最悪って言って何が悪いのよ!!」

「え、あーそんなに自信持って言われると正論に聞こえるけど、それ大概間違ってる」

「いいの!!私を泣かせた罰」

へーへーと気のない返事をかえす
しかし何だろうか、この先輩は口では私の悪口を言いながら私の撫でている手を止めない
撫でられっぱなしなのに、最悪な私に撫でられてるのに拒否しない理由がわからない

「先輩、名前は?」

まあ別にいいけどさ
泣き止んでくれるまで、撫でていても
拒否られても

私には関係がない

でもまあ撫でている間にだんまりって言うのもアレだし
名前くらいは聞いておこうと思った

「白崎 瑞希(しろさき みずき)」

案外先輩は素直に名前を教えてくれた
じゃあと思って私も自己紹介しておこうと思った

「陣内 奏(じんない かなで)どうぞよろしく」

「私のこと好きじゃないって言ったくせにどうぞよろしくってどんな神経してるの?」

「いや、一応初対面じゃないですか。社交辞令的にね」

「初めから社交辞令ってわかってるのに宜しくする気はないわ」

ああ、どうしてこんなに私に噛み付いてくる
嫌ならスルーしたらいいじゃないか
それこそさっさと立ち去ってしまえばいいものを

「先輩は面倒くさい性格してるね」

「は?」

私を罵るくせに離れない体
退けない手
されるがまま

「本当はさ」

私は先輩から手を退ける
そうすると先輩はそれにぴくっと反応した

「先輩私のこと好きで好きでどーしようもなかったりしちゃったり、ね?」

そう言って先輩の顔を見て、もう大分涙が収まった瞳の下に指を当てて少し残っていた涙を取った
そうすると先輩の顔が一瞬にして真っ赤になる

「へーその反応、やっぱりそーなんだ」

私は何か面白いものでも見つけたかのように口角が上がっていた
今まで振った人でこんなに私に食いついてくる人いなかったし
しかも人のこと好きなくせに罵ってばっか。こんなに性格が素直じゃない人あんまり出合ったことがない

「でもやっぱり。私はまだ好きじゃないかなー」

私がそう言うと先輩はまた泣きそうになった
ああ、もうって思った私は携帯を取り出して先輩に向かって差し出した

「教えるから、頑張ってよ」

「え?」

「どーぞ私のこと落としてみてください」

「は」

「それが望みでしょう?私のこと手に入れたけりゃ毎日毎日頑張って先輩のこと大好きにさせるしか方法ないんじゃない」

ほらって私のアドレスと携番を出して先輩に手渡した
そして適当に登録しなよって言ってから手持ち無沙汰になってしまって、さっきさわり心地が良かったからまた先輩の頭を撫でていた

「出来るかな?まぁ先輩次第だけど」

私のことをちょっと睨み気味で見ている先輩と目が合った
そして先輩は無言で自分の携帯を取り出して赤外線通信を自分で始めていた
携帯と携帯を向かい合わせてやり取りを一人でしてる

「むかつく」

そして通信が終わった先輩は私の携帯を私に投げてよこした
それからやっと私の手を払って退ける

私はその抵抗に少し笑う
多分ちょっと寂しいくせに。だって払う時に少しためらってた
そして私から一歩、離れた先輩は一気に顔を赤くしていた

「私のも、その、登録しておいてあげたから……!!ありがたく思いなさいよ!!」

そう言って先輩は勢いよく私に背を向けて走り去ってしまった
私はといえば若干面白くてニヤケル顔を片手で隠しながら静かに笑った

「何、あれ。惚れてんの自分の癖に随分上から目線」

おかしい。変なの
私はそう思いながら先輩の後姿が見えなくなるまでその場に立っていたのだった。

〜おしまい〜


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ