ハゲ小説

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4:invincible:2020/06/14(日) 11:27

2000年代、原因不明のハゲの増加により、世界は混乱の渦に飲まれた。
日本も例外ではなく、政府は連日、ハゲ対応に奔走していた。
党内に多くのハゲを抱える与党・自民党は「劣等頭皮排除法」を提出した。これは、ハゲの原因を遺伝子に求め、かつハゲの根絶のためにそれを排除するというものであった。
無論、野党は怒り狂った。伸び代しかない支持率を売りにしている立件民主党は、熟練政権批判議員を大勢押し立て、内閣総辞職を求めた。
国会中継は、いつものごとく、学級会の様相を呈していた。

「総理、こんな差別案を成立させるよりも、ソフトバンクのリアップ無償提供をサポートすべきではないのですか」

内閣総理大臣の安倍晋三はおもむろにスマートフォンを取り出すと、

「えー、ソフトバンクの、ですね、えー、孫会長はですね、えー、ハゲで、あ、あります。つまりですね、このリアップはですね、孫会長が先に利用されるのではないかとですね、えー、つまりですね、私としてはですね、再利用可能なですね、カツラをですね、一世帯あたり2つ配ると言うですね」

と、安倍晋三はスマートフォンに写る孫会長の禿頭を見せながら言う。野党議員たちは、

「総理、その政策はですね、アベノカツラと言われているのですよ」

と冷笑するように言った。安倍晋三は一切怯まずに、淡々と言った。

「悪質な印象操作で、あ、あります。政府はですね、それ以外にもですね、毛根に良いシャンプーをですね、これを、国民の、皆様にお配りし、そしてですね、毛髪に優しい、洗い方を、国民の、皆様に広報する……」

安倍晋三の発言を遮って、野党議員の先鋒・蓮舫が怒鳴った。今にも総理に飛びかかりそうな勢いであった。

「総理! シャンプーは、髪の洗い方じゃなくて、時代はもうリアップなんですよ」

ここでテレビの電源は切られた。テレビの光を失った部屋は、一層、薄暗くなった。部屋の主はリアップを持って言う。

「なぜ皆フサになろうとするのか、フサさえ居なければ、ハゲだけの世の中になれば、我々は差別されないというのに」


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