行くあてもなく、街をふらふらと歩くマターシャ。
宝石商、絨毯売り、リンゴ等のフルーツを売っている
果物売り。色々な物が混ざりあったような賑やかな
市場がこの国の魅力でもある。
ーーだかしかし。
「この貧民街の貧乏人めが!道の真ん中を歩くんじゃない!」
市場にいる人々の中には、市場から少し外れた所に
ある貧民街に暮らす貧しい人達を見下す者もいた。
マターシャは溜め息をついた。自分も貧民街で
暮らしているので、そんな光景を目にすると心が痛む。
彼女は足早にその場を立ち去った。少し行くと
何やら騒がしかった。マターシャは好奇心に駆られて
近付いてみた。騒ぎの真ん中にいるのは、宝石商だ。
「うちの宝石が盗まれた」と騒いでいるようだ。