「3回だけ使える特別な能力をあなたに授けます」
道端で変な子供にそう言われたとき、高校生の僕は、今年も夏が来たんだなと思った。毎年夏になると、猛暑のせいで、おかしくなるやつが必ずいるからだ。
「はいはい」
適当にあしらって、僕はそのまま行こうとした。しかし、子供はまたしても僕の前に立ちふさがる。
「待ってください。あなた疑ってますね。私は本当に特殊な力を分けてあげようと思っているのに」
「わかったから、そこをどきなさい」
「どんな能力がいいですか」
しつこい子供だ。返事をしてあげているだけでも、ありがたいと思うべきなのに。
「なら、カバンが重いから、物を一瞬で移動できる力をください。家まで移します」
「わかりましたっ」
やれやれ。ようやく分かってくれたらしい。これで解放される、、、はずが。
「できました。これであなたは三回だけ物を自由に移動できますよ。指を上げてみてください」
「は、なんで?」
「なんでって、あなたがそう願ったからですよ。指一本で、思った通りに物が移動できます」
いつまでからんでくるつもりなんだ。さすがにこれで最後だぞ。これ以上何かするなら、走って逃げよう。
「はいはい。じゃあ、カバンを家まで運んでください」
するとその瞬間、肩からさげていた学校のカバンが消えてしまった。
「えっ?なにこれ」
慌てて前を見ると、そこには誰もいない。そして家に帰ってみると、カバンがきちんと置かれていた。
「なんだこれ。ほんとに物が移動できるのか?なら、テレビのリモコンをここに」
指を上げると目の前にリモコンが現れた。まさか……。しまった。これなら、別の力をお願いするべきだった。お金が降ってくるとか。しかも、二回移動させたから、使えるのはあと一回だけだ。
「最後のは、いざというときにとっておこう」