夏の出来事

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1:やっほー:2020/07/23(木) 00:02

「3回だけ使える特別な能力をあなたに授けます」

道端で変な子供にそう言われたとき、高校生の僕は、今年も夏が来たんだなと思った。毎年夏になると、猛暑のせいで、おかしくなるやつが必ずいるからだ。

「はいはい」

適当にあしらって、僕はそのまま行こうとした。しかし、子供はまたしても僕の前に立ちふさがる。

「待ってください。あなた疑ってますね。私は本当に特殊な力を分けてあげようと思っているのに」
「わかったから、そこをどきなさい」
「どんな能力がいいですか」

しつこい子供だ。返事をしてあげているだけでも、ありがたいと思うべきなのに。

「なら、カバンが重いから、物を一瞬で移動できる力をください。家まで移します」
「わかりましたっ」

やれやれ。ようやく分かってくれたらしい。これで解放される、、、はずが。

「できました。これであなたは三回だけ物を自由に移動できますよ。指を上げてみてください」
「は、なんで?」
「なんでって、あなたがそう願ったからですよ。指一本で、思った通りに物が移動できます」

いつまでからんでくるつもりなんだ。さすがにこれで最後だぞ。これ以上何かするなら、走って逃げよう。

「はいはい。じゃあ、カバンを家まで運んでください」

するとその瞬間、肩からさげていた学校のカバンが消えてしまった。

「えっ?なにこれ」

慌てて前を見ると、そこには誰もいない。そして家に帰ってみると、カバンがきちんと置かれていた。

「なんだこれ。ほんとに物が移動できるのか?なら、テレビのリモコンをここに」

指を上げると目の前にリモコンが現れた。まさか……。しまった。これなら、別の力をお願いするべきだった。お金が降ってくるとか。しかも、二回移動させたから、使えるのはあと一回だけだ。

「最後のは、いざというときにとっておこう」


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