また明日、なんて夢を見たかった。

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2:I'm stupid.:2020/08/28(金) 16:43

《出会い》
 
鳥の声。
動物の声。
揺れる植物の声。
小川の声。
それらに耳を傾けるのが彼…“バケモノ”の唯一の楽しみだった。
彼の本当の名前は、本人でも忘れてしまった。それくらい時が経ちすぎてしまった。
今あの街がどうなっているかも、何も知らない。人間に会いたくないから。
最初は、何度も死のうとした。
首を絞めたり。
手首を切ったり。
高い木から落ちたり。
湖に沈んだり。
全部、全部、無駄だった。
あれから何十年過ぎただろうか。
バケモノはずっと窓の外を眺めることしかしなくなった。
たまに通る動物や鳥を眺めて過ごすのだ。
 
 
ある雨の日、いつものように窓の外を眺めていると、“何か”がいた。
狼でもない。猫でもない。鳥でもない。リスでもない。
………人間の少女がいた。
『うわぁ〜!濡れちゃう濡れちゃう!』
その栗色の髪を揺らしながら駆け足で木の下に逃げる少女。
少年はずっと見ていた。
何十年か振りに見た人間。
この森には狼が沢山棲んでいるから、人間なんか立ち入れないと思っていた。
少女が幸運の持ち主なのか、それとも狼は知らない内に狩られていたのか。
少年にとってはどうでもいい。
兎に角、見つからないように窓際から離れることにした。
………が、少女の蒼い目と目が合ってしまった。
急いで見えない場所に逃げた。
少女は小屋に近づき、扉を叩いた。
『あの!すみません!誰かいるんですか?!』
このまま知らないフリをしていれば、いずれ帰るだろう。
少年はギュッと目を瞑り、少女の声がしなくなるのを待った。
………数十分後。音がしなくなったので外を見ると、少女は居なくなっていた。
少年は安心して、その日は眠りについた。
 
 
 
翌日、まさかあんなことになるとは知らずに。


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