妄想プラクティス

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3:雨辻草:2020/10/13(火) 18:06

A


その瞬間に意識がゆるみ、断面から垂れていた臓物が地面にこぼれた。到底、正直ではいられない。頭ん中がぐちゃぐちゃになる。
人間の脆さ、悪魔の強さ、世の不条理。
正義という理想論。悪魔という現実。
急激な嘔吐感覚にオレはありったけ血を吐いた。  
今になって記憶が明らかになる。現在、炎に包まれているここは製鉄工場で、オレたちは、悪魔狩りだ。そして、30分ほど前に、緊急で上級悪魔を狩りに仲間と共にここにきた。
さっき炎で細切れにされた茶髪の男が、隆盛。あのぶっ壊れたベルトコンベア上で、槍を腹を貫かれながら死んでる女がアリシア。天井付近で鎖で首吊りにされている男が式隊長だ。そして、今こうしてバカでかいドラム缶の壁面にめり込んで、下半身を失った間抜け野郎がオレ、桐島燎人(きりしまやくと)。
下級の悪魔狩りである俺たちは、愚かにも高位の悪魔に挑んだ結果、惨状に終わるのだ。


「 テメェをクッテ、オレサマはサラ二進化スル。イマ、空蝉ノ王が、コレカラ六合を食うオレサマを見テイルッ」


「 クッソぉぉぉお…ッッ」


オレはここで死ぬんだ。隆盛、アリシア、式隊長。それだけじゃなくて、今までに死んでいった仲間たちの無念を晴らすこともできずに、あっけなく殺されるんだ。逃げようとした自分が許せない。そして悪魔、お前らが許せない。


「 ギャハハハハハハっ、六合、テメェはヨエェ。ダカラ、ソウヤッテ叫ブ。無様無様無様ァァァッ!!!」


悪魔の口が開かれる。その口は、縦に開かれるのではなく、横に開かれる。ザクロのようなグロテスクな口はトゲトゲしく、オレを喰らうのに微塵も苦労しないだろう。


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