【変わりたいなんて】
「由衣ちゃん…やだよ」
「ごめんね、もう、無理そう。今までありがとう夏樹ちゃん。」
夕日の差し込む病室…かな、今はもうよくわかんないや。
夏樹ちゃんの泣き声だけが鼓膜に響く。もう、顔も見えなくなりそう。
「ねえ、約束しよ?」
「…何を?」
「私が死んでも、元気でいてね。」
「…なんで、死ぬとか言うの…やだ、やだよ…、」
グスっと鼻をすする夏樹ちゃんの手を握って、最後の力で微笑む。
「ううん、もういいの。夏樹ちゃんにだけは幸せでいてほしいから…」
「由衣ちゃん…っやだ…」
「ねえ、もう一個約束してほしいの。」
「…何?」
「どれだけ、辛くて、私に生きてほしいって思っても…変わりたいなんて絶対思わないで、お願い。」
「…うん……っ、私、頑張って生きるから…っ、今まで、あり…がとう…」
よかった。これでもう大丈夫。これで、安心。
私たちなら、また会えるから。
だから。
絶対に、変わろうなんて思わないでね。
それじゃあ、私が変わった意味がなくなってしまうから。
【終】