創作

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3:匿名:2021/09/04(土) 02:01

暑い夏の話

学校終わりの帰り道、「あっっっっつい〜〜!!!」
と日波が叫んだ。相変わらずデカい声。「うるさ、もう少し人のこと考えてよね。…んま、確かに暑いけど」と少し嫌味を交えて返した。日波は二つに結んだ髪を後ろにはらって、「いいでしょ別に。こんな時間、ましてやこんな田舎よ?民家なんて全然無いじゃん」と少しふてくされた顔で言い返す。確かに周りは草や竹藪、古びた看板にろくに舗装されてないヒビの入ったコンクリート。遠くにはポツポツと民家があるだけで日陰になるような場所が無い。直射日光にさらされながら最寄りのバス停に向かって肩を並べて歩く。
「てかさ日波、テストどうだった?」
「うわ、それ聞いちゃう?ま〜文系はまちまち…理系はヤバイ。ね、夕陽?今度べんきょー教えてくんない?」
こいつ文系と体育だけは得意だもんな〜…「え〜いいけど…その代わり何でも言うこと聞いてよ?」とにやにやしながら返した。「何でも!?金欠だから奢りは無しで!」あ、言うこと聞いてくれるんだ。純粋な性格でよろしい。でも奢り無しだとだいぶレパートリー減っちゃうな…おろした自分の髪をくるくるとしながら考える。
「あ!じゃあ…えっちなことでも頼んじゃおうかな〜?」日波がどんな反応をするか気になり、冗談混じりに言ってみる。変態おやじかって。「…ぁ、へ、ぇ…?ほんき…?」あ、流石の日波にも引かれてしまった?訂正しようとして日波の顔に目線を移した。逆行のせいで良くわからなかった…けど、日波の顔は耳まで真っ赤にしていた。
「え…ぁ、うん……?」
「…………そっか」と日波が言った。なんだか変な空気に。何を話したらいいのか分からず、結局無言のままバス停に着いた。終止無言だったせいでいつもより早く着いてしまった。
「…ね、夕陽、さっきのほんと?」と沈黙の中日波が問う。冗談だよ、て言葉がでかかったが少し遊んでみることにしよう。「いや!本当だよ!??」多少わざとらしかったが肯定してみた。こんな空気だけどいつもの日波なら笑い飛ばしてくれることを期待して。
「…ぃぃょ」
「へ?」
「いいよ、えっちなこと。」そういいながら日波はずいっと顔を近づける。汗で張り付いた横髪とかなり整った日波の顔。長いまつげの隙間から少し色素の薄い瞳が私を見つめる。木造の蒸し暑く狭いバス停の中、私は日波に馬乗りされている。流石に、やばい。高鳴る心臓の鼓動がうるさいほど聞こえてくる。「ごめっ…冗談」と言いながら日波を見ると悲しそうな顔をされた。「…んも〜っっ!!いいよ!!どんとこい!!」と投げやりに言ってやった。こいつの悲しそうな顔は見たくない。こいつとの幼馴染み人生、わがままに振り回されながら、絶対に泣かせないと言った守護欲とともに長いことやってきたのだ。
「えへ、ありがとう。だいすきっ!」日波はそう言いながら微笑むと、私とキスをした。垂れ下がる髪から香るシャンプーやら汗の匂いでくらくらしそう…。とある暑い夏の出来事である。


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