【助けて】マンホールの裏蓋で悪魔を召喚してしまった【死ぬかも】

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2:匿名:2021/09/07(火) 17:31

「皆さん、パガニーニというバイオリニストがいたんですね」

話を聞いているんだか聞いていないんだか、自分でも分からないくらい上の空だった。
一時限目の歴史の授業はまだ眠気が邪魔をする。
尻は痛いし、ストーブもねぇし、生理痛で腹は痛いしで、一秒でも早く終われと思いながら黒板を眺めていた。

「このパガニーニは人間離れした超絶技巧の持ち主だったため、悪魔に魂を売ったという噂まで流れたんですね。そのせいで死後、教会に埋葬を拒否されてしまうほどでした」
「え〜ひでぇ」
「所詮噂っしょ?」
「実際に魂を売ったかは分かりません。が、晩年のパガニーニは病気により悪魔のような形相だったと言われているので、余計怖がられたのかもしれないですね。うちはミッション系の高校ですから、その類の資料も多いと思います。気になる人は調べてみてください」

そういえばうちの学校は所謂ミッションスクールというやつで、宗教色がやや濃い校風となっている。
入学時には全員に聖書の配布がされるし、立派な礼拝堂が設立されていたりする。
かといって全員が全員熱心な教徒というわけではない。
私みたいにやむを得ず入学した者や、適当に入ったらミッション系でしたーっていう教えに関心のない人も結構いる。
今にも眠ってしまいそうなくらいぼけっとした頭でそんなことを考えた。

生理特有の眠気にうつらうつらしていると、突然バンッと机が叩かれる音がした。
目の前には爪に手入れの行き届いた長い指があって、視線を上げると黒ぶちメガネのレンズ越しに目が合った

「芝塚さ〜ん、眠いのは分かりますがしっかり聞いてくださいね。罰として放課後礼拝堂の掃除をしてください」
「ぅあ、はい……」

眠気はスッと引き、気が付いたら反射的に頷いていた。
やたら広くて掃除する場所の多い礼拝堂は、掃除罰の中でも最も重い。
迂闊だった。
この先生は居眠りしたらやたら掃除させたがることを忘れていた。

「はい、じゃあもうそろそろ授業終わりますね。次の時間の準備をしてください」

朝からツイてないなと肩を落とし、机に突っ伏した。


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