ウチの高校の礼拝堂はやたらでかくて仰々しい。
年に数回くらいしか使うところを見たことがないパイプオルガンや、ところどころ嵌められたステンドガラスは学校の設備の域を超えている。
正直こんなの作るくらいなら教室にエアコン付けろよと思うが、神様至上主義な校風なので期待はしていない。
「……で、お前は何して礼拝堂に?」
「あぁ、芝塚冥か。ボクは悪魔を崇拝する!と宣言したら物凄い形相で憤慨され、礼拝堂の掃除を命じられた」
「お前まだそんなこと言ってんのか……」
モップ片手に飄々と武勇伝を語るこの男、田中太郎は生粋の厨二……否、"廚弐病"患者だ。
中学の同級生で、出会った1年の時にはもう既に悪魔崇拝やら呪術やらに傾倒していた。
そして『悪魔への崇拝を深めるにはまず神の教えの理解から』という理由でこの学園へ入学したらしい。
よくこんなんで面接通ったなと未だに疑問だ。
「そういう君はまだ暴力沙汰か?」
「またってなんやねん、またって。私がいつも人殴ってるみたいに言うな」
この学校で唯一私の過去を知る田中には、変な噂を流さないか常に警戒している。
まぁ漫画とかでよくある、"人を殴って退学"だ。
でも私は別に何かを守ろうとしたわけでも、誰かを庇ったりしたわけでもない。
完全に――自業自得、だ。
まぁ田中は悪魔以外に興味は無いようだし、人に噂を流す気配はない。
変な奴だけど、悪い奴ではない……のか?
「前から思ってたけど、悪魔の何が良いわけ?」
なんとなく沈黙が気まずくて、私は雑巾を絞りながら何んとなしに言ってみた。
……が、その何んとなしが田中に火をつけてしまったようで、田中はモップを動かす手を止めて矢継ぎ早に語り始めてしまった。
「それはもちろん、神という絶対的存在への反逆が美しいからだ!多くの人が崇拝する神……それは本当に正しいものなのか僕は問いたい!」
「あ、そ……」
自分で質問しといてなんだけど、予想を遥かに超えた崇拝ぶりに若干引き気味だ。
もっとこう、厨二病らしく『かっこいいから』という理由かと思ったら割と真面目?に神への懐疑の念があるみたいで笑えない。
「