第1話
「あれだけ非常ベルが鳴っているというのに!人生初めての戦場で、寝坊しましたというのはどういうことだ!?」
黒髪をボブカットにし、前髪からは緑の双眸をのぞかせる、中性的な容姿をしたジークという名の兵士が少女と向き合う体勢で叱っていた。
「すみません。本当、すみません!」
一方、叱られている本人、レリアは申し訳無さそうに直立不動で何度も頭を下げていた。
プラチナブロンドの髪を後ろで一つに束ね、澄み切った青い目はジークを見ていた。
新米兵士である彼女は、初任務であるにもかかわらず、早朝から鳴り響く非常ベルに気づかずに爆睡した。
そして遅刻してしまい、上官に今大目玉を食らっているのだった。
「ふん、謝罪はもういい。お前の実力を結果で示せることが出来たなら、許してやらなくもない、私は優しいからな」
上官は頬杖をつきながら真顔で言った。
「あ、はい…………………」
「ん、どうかしたか?」
上官はレリアに尋ねるが、それに対して彼女は首を横に振った。
私は優しいからな、という言葉をサラっと言うとは相当自分に自信あるんだろうな、この人。とレリアが思ったことは秘密である。
「位置につけ、お前の力量を測ってやろうじゃないか……」
緑の双眸が、レリアの澄み切った青い瞳を射抜く。
「……っ!」
レリアには一つ心配ごとがあった。それは。
自分の「異能力」で、自分以外の人が死なないか、というものだった。