プロローグ
現在、20XX年。夏休みが始まったばかりのことだった。
「勇者様が来た!兄ちゃん、見に行こうよ!」
そう言って笑うのは、俺の弟、裕美 海人だ。
俺の名は、裕美 葉月。
この街に引っ越してきて一か月。こんなことなら引っ越さなければよかったとも考えている。
「俺はいいよ。母さんと行ってきな。」
「えー。お母さんは行かないって言ってるよー?」
「じゃあ一人で行ってきたらどうなんだ。」
俺は絶対に勇者に頼らない。もう、二度と。
「兄ちゃーん!お願い!!」
「嫌だよ...なんでお前はそんなに行きたいんだ?」
だって、勇者様だよ!?世界一強くて、かっこいいんだよ?兄ちゃんは憧れないのかよ?」
憧れる?何を言っているんだか。勇者にあこがれる馬鹿がいるもんか。