最初は小さな疑問だった。
何故神は魔王であるこの俺の存在を自らの手で消すのではなく1人の人間に勇者の地位を与えてその者に討ち取らそうとするのか?
何故神と呼ばれるだけの力を持っているのに俺が蘇らぬように永久に封印しようとしないのか?
神の力を持ってすれば俺の存在を消すことなど雑作もない事だろう。
なら何故わざわざ人間にその役目を任せるのか?それは簡単な話だ。
勇者という英雄を作り出してその者を使って人間達の乱れをコントロールするためだ。
魔王という悪がいるからこそ人々は共に助け合い手を取り合って生きることができる。
その悪に立ち向かう勇者は人々にとっての希望となり魔王を倒した後は英雄として称えられる。
そうなれば、人々は勇者に従い平和に暮らすだろう。
つまり、魔王であるこの俺はこの世の秩序を守るための神の1ピースに過ぎないのだ。
俺は後何度しねば良いのだろうか。
何度嫌われ、蔑まれ、恨まれねばならぬだろうか。
あと何度同じことを繰り返せば──報われるのだろうか───。