「まぁ確かに、デマの可能性も考えなくちゃいけないけど、せめてレッスンには」
―――バタン!
︎︎竜奈の声を遮るように、勢いよく開かれた扉の音が響く。ああようやく来たのか、と振り返るメンバー達だったが、入り口に立ち尽くす菫の只事ではない様子を見て目を疑った。
︎︎菫の格好はレッスンをするのに適したジャージや体操着などではなく、私服と思われる丈の短いワンピース。靴も到底運動には適さないサンダルだったが、上下共にどこかで転んだかのような土埃の汚れがついていて、衣服の隙間からは大きな痣が複数のぞき、更に決定的なのが目元。ひどく泣いたのか、真っ赤に腫れてしまっている。
「……何があったの?」
︎︎この場で唯一冷静さを保っていた希衣は、状況を素早く把握するために率直な言い方で、そして威圧的になり過ぎないように普段より柔らかな声の調子を使って菫に尋ねた。
︎︎菫はこの状況をどう話すべきかと暫く言いあぐねていたが、意を決して口を開く。
「実は……荷物を盗まれたか、隠されたかみたいで」