チリンチリン…
今日もballoon・Cafeのベルは鳴る。
〜優奈〜
「ねぇなんなの!?ちゃんと聞いてる!?」
思わずわたしはそう叫んでしまった。
でも、無理もないはず。だってわたしは、このカフェの評判を聞いて
わざわざ電車を乗り継いでここまで来たんだから。
なのに…なによこの足を組んだ偉そうなやつは!
一流のカウンセラーだとかよく名乗れるよね!わたしの話なにも聞いてくれなかったんだけど!?
わたしがすごい声で叫んでも、この人はびくともしない。
ていうか…誰こいつ?名前知らんかったわ。
「ね、お前名前なに?」
数少ないメイドであろうひとが、ほっと安堵のため息をついた。
わたしが落ち着いたからだろうか。わたしは思わずこの人と目をそらす。
「俺?俺は川神侑李だ。」
ふーん。男性なのに侑李ねぇ……。
「で!?わたしの話、ちゃんと聞いてた!?」
またメイドがビクビクと震える。
なんでわたしはいつもこうなんだろう……。
心の奥が渦巻く。
「話?聞いてたけど?お前は、元々ギャルで、見た目やトレンドを気にしすぎてストレスを溜めて、結果不良仲間たちと出会って今は毎日のように夜遊びをしていると。そして今はなんとなくいつもイライラしていて、みんなを怖がらせたりしてるばかりで、薬を飲んでぼっーとしてる時間が一番気持ちいいと。」
「うっ……。」
なんでわたし、こんなやつに悩みのすべてを話してしまったんだろう……。
しかも、話ちゃんと聞いてくれてたし、要約するのもすごく上手。
さっき怒鳴ってしまったことを謝らなくちゃ……いつもそうやって後悔する。そんな自分が嫌だ。
よし、謝ろう!そう思うけど、わたしのプライドが許せない。
わたしはいつも、不良じゃなきゃいけないの……?
そういう意味じゃない。心の奥でなにかがわたしにささやく。
「世界は変わっている」と。
わたしはハッと息を飲む。わたし、結局変われてないじゃん。
みんなはどんどん成長して、変わっていってる。でもわたしは……結局ギャルの時と同じじゃん!
自分の「輪郭」ばかり気にして……。こんな自分もうやめたいよ!