「12」
去年は祖父と老犬が死んだ あっけない光景だった
それを見て私はまた 悲しみが溢れぬ様 静かに心の核を抓った
強く 強く 捻る様に 強く 強く 千切れる程に。
ああ なんてあの日々は 暗い煙に侵されていたんだろう
ああ なんてあの時の心は 黒い海に沈んでいたんだろう
物言わぬ亡骸は これが初めてではない筈なのに
私の心を保護するモノがまた深くえぐられていった
「きっと次は大丈夫 泣かなくて済む日が来るから」
こう、あなたはいった
「もし その<次>も、来るのが悲しみだったら?」
こう、私は答えた
先の事なんて誰も解りはしないから。
あっけなくも長い悲しみを引きずり いつの間にか年が明けていた
この年は あなたが言うとおり 泣かなくていいんだろうか
人は生まれ変わるモノでも 昇天の悲しみは きっと 綺麗なあなたにはわからない
けれど
あの日の悲しみを抱いて 抜け殻の様な体で
強く そう 強く たとえ不安定でも
前だけを向いて 歩いてみようか。