「──深緑。」
「……何だよ。」
「ごめん。」
「……何が。」
深緑と呼ばれた少年は、問いかけた少女の声に振り向かず答えた。彼は、夕空をずっと見ていた。あの惨劇を思い起こすような赤い空を。
心配そうな顔をして訊ねた少女は、少年の背を見つめてまた疑問を投げ掛ける。
「お前、本当は──」
「別に良いんだ。」
その問いを拒絶するように少年は言葉を遮った。その声は、ずっと一緒にいた少女が聞いた事のない、か細い声だった。
「俺は、良いんだ。此葉と、若葉が、幸せなら。二人が幸せになれない事が、一番嫌だから。」
一言一言、途切れ途切れに言葉を続けた。少女に対してゆっくり言い聞かせるように、解りきっていない自分の頭に刻み付けるように。
「だから──」
少年はゆっくりと振り向き、少女の目を見て乞うた。
「此葉、若葉と幸せになってくれよな。」
痛いほどに哀しく笑っていた。
深緑くんは二人の邪魔をしまいといつの間にか大体の感情を抑えるようになっていった。だけど血の繋がってる此葉さんには若葉さんへの想いがバレてしまい……>>11に続く。