2日前、つまり4月27日。
ポルトガルは、ロイター通信を読んだイギリスから「一応、お前は知るべきだと思って」と連絡を受けてそのことを知った。
弟は守るべき仲間がいるととにかく図太いが、孤独には弱い。
―――ただでさえ国の人間が割れていて、戦争中でキツいだろうに加えてこの爆撃。
この状況でスペインが狂ってしまったら……考えるだけで恐ろしい。
彼の戦闘力はバカにできないし、国民にどんな影響が出るかわからないし、何より同胞が狂ってしまったという事実に俺たち(国の奴ら)が耐えられるか。普段朗らかに笑い続けていた友人が狂ってしまったときのショックは大きいだろう。
スペインを落ちつかせられるのは、昔から馴染みがあってスペインと対等か上の立場の国だけだ。
これはポルトガルの自説だが、当たっていると思う。
スペインは面倒くさい性格で、自分より目下か年下の相手には親分らしく振舞おうと気張ってしまうのだ。
恐らくスペインが弱みを見せるのは、ローマ帝国支配時代から付き合いのあるフランスと……ポルトガルの二国。
「…………」
ポルトガルは先日受け取った文書の内容を思い出した。
『スペインを反乱軍が手にした』
この『スペイン』という言葉が示すのは、国土や国のことではなく『国の化身』のことである。
内戦開始時は共和国側にいたスペインを、拉致したか誘拐したか。
手口は記されていなかったが。
とにかくスペインは反乱軍側にいる。
そして、ポルトガルは反乱軍側についている。
フランスは、国としては内戦には介入していない。
(俺が行くべき、なんやな)
ポルトガルは上司に頼み込み、まる一日かかって両国のお偉いさんを説得して、スペインと話す権利をもぎ取ったのだ。
*
ポルトガルが回想に耽っているうちに、スペインは泣きつかれて眠ってしまっていた。
うずくまったままのスペインを、彼が被っていた毛布の上に寝かせたとき、ドアがノックされた。
「時間です」
思っとったより早いなあ。
まだここにいたいと考えながらも、ポルトガルは「わかった」と返事をした。