設定忘れですが、主人公は関西弁か標準語です。今回は関西弁俺っ子女主。
1シリーズ【女子バレー部主将と音駒】
緋影いおり。顔が整っており、そこらの男子が霞んでしまう様なイケメンである。また、無表情をいつでも貫き通しているため思っていることや考えていることがわからない。女子の間では名字や名前に『君付け』は当たり前、本人非公認のファンクラブだってある。だが女子バレー部の部員はファンクラブには入っていない。後輩を含めて普通の女友達だ。
おまけに巨乳と来た。男子だって放っておかないだろうが、所謂学校の王子様の彼女は非公認の親衛隊に守られ男子は近付かない、それかファンクラブに入るかだ。
だが彼女の成績はてんでダメで、それを知る人物は少ない。
俺、黒尾鉄朗はその数少ない少人数に入っているのだ。そして今、クラスが同じの俺と夜久が一学期期末テスト前、彼女の勉強を見てやっているのだが、馬鹿過ぎて俺達二人の方が疲れてきた。だが、夏休みには梟谷グループの合宿がある。そこは男子に限らず女子もそうであり、コイツは音駒女子バレー部の主将だ。補習で来れなければ主将会議に響く。実際コイツが居ないと話が全く進まない。
コイツの指揮能力は飛び抜けて、どうかしていると俺は思うのだ。
夜久が緋影いおりファンクラブの会長とお付き合いをしているので、緋影と勉強、及び近付く許可は出ている。夜久居て超良かった。
『……すまん、俺が馬鹿すぎるから迷惑が掛かっている』
「いや、悪いのはいおりクンじゃない、そのいおりクンの頭脳だ」
『……イコールすれば俺の事だ、本当にすまない。……毎日予習復習はしている筈なんだがな』
むぅと腕を組んで椅子の背に体重を預ける緋影は眼鏡も相まって本当にイケメンだ。母の腹の中では男とされていたのだが急に生まれる前に女に変更されたかの様な、よくわからない例えをしてごめんなさい、途中から俺もわかんなくなってきた。
「予習復習もしているのにこの物覚えの悪さは……緋影お前頭どうなってんだ」と夜久が怪訝な視線を緋影に寄せる。俺はとりあえず質問してみた。
「いおりクンさぁ、どんな方法で予習復習してんの? ノートとかちゃんと取れてる癖に」
『……そうだな、その日に教わった事を教科書やノートを見ながら別のノートに書き込みながら復習をして、軽く明日の範囲を見る程度だな』
「「ちゃんと予習復習できてんじゃねぇか!」」
夜久が自身の教科書を勢い良く地面に叩き付けた。したーんと激しく投げつけた割りに小さな音がするが、それは気づかぬうちに俺の爪先に被さって居たらしい。お陰で注目を浴びずに済んだ。この夜久の奇行と夜久と俺の叫びにすら眉ひとつ動かさず「どうした」と平然としているコイツはどうなってんだ。驚くだろ普通。
夜久の彼女兼ファンクラブ会長は『宮原 玲(みやはら れい)』。
前にお前は一緒じゃなくて良いのかと一度宮原に聞いたことが有るのだが、「いおりクンが眩しすぎて一緒にいるとあたしが騒いで多分気が散るし何よりファンクラブは抜け駆け禁止なんだよおおお! あと愛する夜っくんがいるから絶対あたしが集中出来ない!」けど行きたい、でもダメなのおお! と涙ながらに言っていたのを思い出す。どっちだよ。
とは言え今はもう放課後だ。お互い主将である身なので部活にでなければならない。
「もう行こうぜいおりクン、夜っくん」
「そうだな行こうか緋影……って夜っくん言うな!」
『……そうか、もうそんな時間か』
俺と夜久が立ち上がればふいと時計に目をやる緋影。『そうだな』と机に手をついて立ち上がったとき、コイツの大きく豊かな二つの膨らみも動きに合わせるようにゆさ、と動く。
普通のジャケットを着ていればそれほど揺れないだろうが、今はブラウスにベストだ。納める布が薄い。
俺達二人はさっと目を逸らした。
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