>>503
最近、海の様子がおかしい。
演劇発表会の練習の最中、「ちょっとトイレ」と言って、30分くらい戻ってこないことがよくある。帰ってきたと思ったら、顔をげっそりさせている。まるで、気分が悪くて吐いてしまったような顔つきだった。お昼も、僕らと一緒ではなく、1人で食べていることが多くなった。その上、少食。
隣の席のカルマくんが「そんなんじゃ足りないっしょー。これあげるよ」と言って、パンとか分けてくれるのに……。
海「いい、いらない」
と、素っ気ない態度をとる。
早退と遅刻、欠席が増えていった。
結局、演劇発表会の日は発表が終わってから学校に登校してきた。
渚「海、大丈夫?」
海「へーきだよ。ちょっと最近、貧血気味なだけ」
笑ってごまかすけど、なんかやっぱりおかしいって。
そこへ。
海「あ。ねぇ、渚。カエデが呼んでるよ」
渚「あ、ホントだ」
茅野がこちらに向かって手招きをしている。
今、みんなは冬休みの暗殺に向けて話し合ってる最中だ。
僕は海のことが心配だったけど、教室をでた。
茅野に案内されたところは、体育館倉庫だった。
床には青色のビーズがところどころに散乱していた。
渚「あっちゃー、派手にぶちまけちゃったね」
茅「片付けてたら手が滑って。川の表現に使ったビーズなんだけど、小道具会社からの借り物で」
渚「いいよ、2人で拾おう」
茅「ありがとー」
殺「席をはずしたのはそういうわけですか。せんせーも手伝ってあげましょう」
茅「あはは。じゃあ頼っちゃおうかなぁ」
僕らはビーズ拾いを始めた。
茅「色んな学校行事やったよね」
渚「うん、でもこれ片付けたら全部終わりだ」
これからは暗殺に専念できるけど、修学旅行も体育祭も文化祭も、普通の学校以上に充実してた。
僕らはこの1年間の、色々なことを振り返りながら作業に励んだ。
茅(イトナくんのときは焦ったなー。先に殺られちゃいそうだったから。いつも殺せんせーは、私たちのために、危険を冒してでも助けてくれて。渚も、見ててハラハラするときもあったけど、私の隣で、いつも真剣に殺気を放っていて……。私もこの教室で、色んなことやれたなぁ……)
よし、こっちは片付いた。
次はっと。
そう思いながら、なんとなく視線を後ろに向けた……。
茅(気づかなかったね、最期まで)
茅野の、首……。
あれって!?
ウソ、なんで……。なんで、茅野に……。
突然、爆発するような音が響いた。
茅野の首にある、触手が、体育館倉庫の床を破壊したのだ!!
殺「え……!?」
茅「大好きだよ、殺せんせー。死んで」
☆(茅野side)
ずっと見てきた、いろんな殺し屋が挑んでは失敗していくのを。その中での最大の成功例は、単純な落とし穴。私の触手は、「死神」よりも上手に殺れる!!
殺せんせーは必死になって地上に登ろうとしているけれど、残念。上手でしょ? せんせーの動きのパターン、特等席で1年たっぷり予習したから!!
あと、一撃!!
私は触手を振り下ろそうとした。
茅「!? まずいっ!!」
殺せんせーがエネルギー砲を撃とうとしている。私は急いで攻撃から防御に切り替えた。
☆(渚side)
磯「渚、大丈夫か!?」
体育館倉庫から抜け出すと、みんながいた。
渚「だい、じょうぶ……」
近くの地面がボコボコと盛り上がり、そこから殺せんせーが飛び出してきた。
殺「はぁ、はぁ、はぁ……」
次に、体育館倉庫の天井が破られ、そこから……。
茅「壁を壊して地中から脱出か。しくったー。殺せんせーが生徒を殺すわけないのにね」
奥「か……」
神「茅野さん?」
片「何、その触手……」