それは、お仕事で夜遅くまで事務所へ残っていた時のこと。
その日は、写真撮影が長引いてしまい、疲れてしまっていました。
事務所に入ると、プロデューサーさんがいつものようにパソコンに向かっていました。少し覗いてみると、なにやらイベントの資料作りをしているようです。
「お疲れ様です。」
お仕事の邪魔をしないようにそっとプロデューサーさんに近付き、言いました。すると、プロデューサーさんは、不意を疲れたようで、びくりとこちらを振り返りました。わたしの姿を確認すると、照れたように頭をかいてお疲れ様です、と返します。その仕草がなんだか可愛らしくて、思わず笑みが零れました。
プロデューサーさんは席を経つと、近くにあった飲み物をわたしに渡してくれます。わたしは感謝の言葉と共にお辞儀をして、それを受け取りました。
こういう気遣いが、心に沁みます。そんなところもプロデューサーさんのいいところですね。
「すき、」
その言葉は、意図せず、口から飛び出していました。そんなことを口走ってしまった自分に、自分でもびっくりです。ええと、これは、なんて言い訳をすればーー?
「何か、言いましたか?」
自分が思っていたより、その声は小さかったようです。プロデューサーさんには、聞こえていないみたいでした。嬉しいような、残念なような。
プロデューサーさんの顔が少し赤いのは、気のせい、なんでしょうか。
その後は、仕事を終えたプロデューサーさんと一緒に外に出ました。
夜空には、お月様が明るく輝いています。
「月が、綺麗ですね。」
プロデューサーさんの言葉に、わたしはこくりと頷きました。
その時もまた、プロデューサーさんの顔が少し赤かったような。
これで、このお話は終わりです。
プロデューサーさんの言った言葉の意味を知ってわたしがにやけたのは、また別のおはなし。
「 貴方なりの I love you ? 」/ 武うづ( アイドルマスターシンデレラガールズより )
夏目漱石が I love you という言葉を「 月が綺麗ですね 」と訳したとかそんなお話を使って書いてみたり。実話かはわかりませんが。