おそ松さん 〜六つ子とハリネズミ〜
1話 名前
3.
「んじゃ、はり松を反対にして松はり……あ、まちばりはどうだ……」
「おまえなあ……生物につける名? 違うよね?」
チョロ松の目は怒りに満ちていた。
「あー、もうおそ松兄さん黙ってて!」
トド松も腕を組んでいる。
あちゃー、2人とも怒っちゃって。
「俺は、紅葉松がいいと思う。ハリー・ネッズーよりマシだと思う。」
「秋松もまだハリー・ネッズーよりマシだよね。」
あー寂しい。
「うーん……言いやすいし紅葉松の方がいいね。」
「じゃあチョロ松兄さんの採用ってことで。」
「母さんに伝えに行こう。」
……え?
「いやちょっと待ってよ。」
「何さ、おそ松兄さん……」
襖を開けようとした手を止めて振り返りながらトド松が言った。
「まだ、ハリネズミちゃんのこと、母さんに話してないんだよね……」
この言葉を聞いたチョロ松の口はだらーんと開き、トド松は未確認生物でも見つめるかのようにジッとおれを見た。おれは頭をかく。
「はぁ!? 母さんに飼うって話す前に何で名前決めようとか言うの!? 普通言わないよね!? 何で言っちゃう!?」
「意味分かんない! 頭いかれてる!?」
チョロ松がおれの胸倉を掴む。……はあ、これだから素人は。上手くいけば、こっちが相手の鼻先にピンポイントで頭突き入れて鼻血ぶぅ〜、もできるんだけど。
まあ、そんなことするほどおれは怒ってないし。
「ニートたち、ちょっといらっしゃい〜。」
その時、母さんが1階のほうから呼ぶ声がした。
「はーい」
おれたちは1階へ下りた。
居間への襖を開けると、卓袱台に置いてある紙に目が留まった。
「……何だこりゃ」
折りたたまれた紙を取って開くと、中にはこう書いてあった。
「なになに?」
チョロ松とトド松も覗き込む。
《ハリネズミの名前、うに松はどうかしら? 飼うのは大歓迎よ 松代》
「……」
よかった、あっさりOK。
でも、でも……あの言い争いは意味がなくなっちまったよぉ〜!
《1話 完》
母さんもう知ってたんかいwwww