追憶〜運夜編〜
心を持った雫の欠片は、貴女の元へ届くでしょう
小さな紙飛行機は、宝石となりあなたの元へ。
そう、その宝石は僕の心。深く暗い真紅色のハート
例え貴女が振り向かなくとも、僕は永久に愛します
これは森の奥深くで暮らす孤独な少女の話
泉の近くの小さな家。そこには一見少年のような金髪の少女。つまり僕が暮らしていた
こんな森には誰も立ち入ろうとしないだろう
僕は産まれたときから孤独だった。親も何も見たことがない
人間達はみんな僕を差別する
そんな孤独な僕の元に、ある日一つの贈り物が
いつも通り近くの泉で一人で遊んでいた僕に、鈴の鳴るような澄んだ声で語りかける
「ねぇ貴女、こんなところで何してるの?」
初めて聞く人の声にゾクリと肩を震わせ恐る恐る声のした方を振り向く
そこには少し癖のついたピンク髪に、美しい顔立ちをした少女が立っていた
少女の問いかけに僕は「別に」と返す
それがこの少女との出会いだった
僕達はすぐに仲良くなり、ピンク髪の少女は毎日の僕に会いに来ては遊んでいた
そんな日々が僕にとっては特別だった
だが人間と僕は何もかもが違う。
彼女は永遠には生きられない
時が経つにつれ、少女はだんだんと僕より大きくなっていった
ある日彼女は僕に雫型の宝石がついたネックレスをくれた
楽しい日々にも終わりが来る。
望んでいなかった結末は思っていたより早く来てしまった
いや、彼女からしたら人生のほとんどだったのかもしれない
木々が青々と茂る初夏の日、僕は彼女と出会い彼女と別れた
彼女がいなくなって数年、この森に再び来訪者が訪れた
どうやら劇団への勧誘らしいが勿論断るつもり
だがしかし、それとこれは別だろ。癖のついたピンク髪、宝石みたいに青い瞳。
僕はその少女を見た瞬間息を飲んだ。
何だろうこの胸の高鳴りは……気が付くと僕は少女の手を取っていた。
神様は再び贈り物をくれた
「美しいマドモアゼル…愛しい僕のプレゼント……」
真っ赤な薔薇の花弁が、彼女の美しい髪を揺らした
例え叶わない恋でも良い。僕は永久に彼女をお守りします
首にさげたネックレスを眺めながら、今日も平凡な1日を過ごす
「賑やかだな…」
外では初夏の日差しが青葉を照らしていた
挿し絵だヨ
https://i.imgur.com/TU8P808.jpg