『高垣楓さんの“こいかぜ”、でしたー』
ステージ裏。そんな声と、沢山の人の歓声が聞こえてくる。
……こんなステージで、あたしは歌うんだ。
「緊張、してる?」
隣からそんな声が聞こえてくる。
あたしは、何も言わずにその方向を見た。
「アタシはしてるよ〜、シキちゃんは?」
……緊張、してる。トラブルがあって震えちゃってた、初めてのライブの時みたいに。
だけど、何となくそう言いたくなくて、あたしは黙っていた。
「シキちゃんってホント顔に出ないね〜」
すると、フレちゃんはそう言いながら笑った。
「……別に」
あたしは目を逸らしながら言う。
その時、あたしの手にふわりとした感触がした。
「大丈夫、いっしょだよ」
そして、フレちゃんはまるで太陽のような笑顔で言った。
「……ありがと」
その時、感じた。あたしの心に触れていくのを。あたしの心からあたたかいものが広がって行くのを。
「出番、だね」
「うん」
もうすぐ、か。
あたしが少し表情を強ばらせると、フレちゃんの手を握る力が強まる。
まるで、「大丈夫だよ」と語りかけるように。
『レイジー・レイジーの二人です!』
司会の人の声が聞こえる。
ステージの歓声も、ここまで聞こえてくる。
「シキちゃん、行こ?」
「……うん」
お互い、またぎゅっと手を握る力を強めながら歩き出す。
大丈夫、フレちゃんとなら……
「はーい、一ノ瀬志希でーす♪」
「宮本フレデリカ! らびゅー♪」
最高のステージに、出来るから―――――
>>22- しきフレ