*with you in a new world*~アラジン二次創作~

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10:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/18(金) 20:13 ID:Bpw

*第四話 彼女の過去とアラジン *

―翌日。朝早く起きたアカネはぼうっと宮殿から
見えるアグラバーの市場を見つめていた。
それから少しして、ジャスミンが起きたのを
確認すると部屋のドアをノックし、

「お目覚めおめでとう。お茶はいかが?目覚めのよいハーブティよ。どうぞ」

と言ってお茶を差し出した。
ジャスミンは「おはよう」と朝の挨拶をして
お茶を受け取り、ゆっくりと飲み干した。

「このお茶も美味しいわね。何だか、スッキリするみたい。目が覚めたわ、ありがとう」

にこり、と笑みを浮かべ、ジャスミンは言った。
**
アカネにとって、アグラバーの宮殿での初めての
朝食。運ぶのを手伝い、籠いっぱいのパンを
アラジンの目の前のテーブルに置く。

「アル、貴方細いわね。もっとたくさん食べたら?たくましくならなくちゃ」

悪戯っぽく微笑むと、アカネは言った。
アラジンはパンを手に取り、一口かじる。

「ありがとう。でも、よくも気にしてることを言ってくれたね」

わざとらしく眉をひそめる。そんなアラジンを見て
アカネは何がおかしいのかクスリと笑っていた。
アラジンもつられて笑う。そんな二人の姿を見た
ジャスミンは少しだけ気になり、アカネが席に着いた
時に言った。

「アカネ、随分アルと仲が良いのね?」

「ええ。彼、オープンマインドで誰とでもすぐに仲良くなれるからね。でも、それだけ。焼きもち焼かないでね?」

その彼女の言葉を聞いたジャスミンは赤面し、
「そういう意味じゃないわ」と言った。
****
朝食が済み、ジャスミンはアカネと話したくて
アカネの部屋へ向かう。だが、アカネの姿はない。
宮殿を歩いて探してみても、見つからない。
―ドンッ。誰かとぶつかる。

「あら、ごめんなさい。私、急いでて……って、アル!」

ジャスミンのぶつかった相手はアラジンだった。

「大丈夫かい、ジャスミン?怪我は?」

慌ててアラジンが聞く。ジャスミンは首を振る。
どうやら、怪我はないようだ。

「ねぇアル。アカネを見なかった?」

今度はジャスミンがアラジンに聞く。

「いや。見てないけど。何か用事かい?」

「もしアカネを見かけたら私が呼んでたって伝えてくれるかしら?」

「勿論!」

アラジンはにこりと笑い、元気よく返事をする。
アブーを肩に乗せて、アカネを探しにいく。

「さぁ、行くぞ、アブー‼」

宮殿を歩いて探し回るが、なかなかアカネを
見つけることは出来ない。チラ、と横目で
アブーを見やると、ヤレヤレとでも言うような
表情をしていた。"もう無理だよ、諦めよう "
アブーの表情がそう語っていた。だが、勿論
アラジンは諦めない。うーんと考えていると一つの
考えが浮かぶ。

「あ、もしかしたら、あそこじゃないか?」

アラジンの言う、"あそこ "とは噴水だった。
ジャスミンもよく噴水にいる。特に、アラジンと
出会う前は。アカネは噴水にいると確信し
早足で噴水へ向かった。


樹音@新一 ◆6Y:2019/10/21(月) 18:51 ID:OoE [返信]

(>>10の続き)

―噴水に腰かけるアカネを見つけたが、アラジンは
声をかけることが出来なかった。理由は明白。
彼女が、その美しい瞳からツーと一筋涙を流すところを
見たからだ。流れた涙は溢れだし、次第に止まらなく
なる。嗚咽音まで聞こえてくる。
アラジンは、彼女を慰めたくて声をかけた。

「あ、あの……!アカネ?」

アラジンの声に反応し、アカネがパッと振り向く。
涙でぐちゃぐちゃな彼女の顔がこちらに覗く。

「ハンカチ、いる?」

緑色の綺麗なハンカチをアラジンは彼女に
渡す。アカネは黙って受け取り、涙をそっと拭いた。

「何かあったのか?王宮の暮らしに慣れない?ホームシックとか?いじめ…も可能性に挙げるのが妥当かもしれないけど、皆優しいし、そんなことする訳ないから…えーと、何があったの?」

最後の方は独り言のようになりながら問い掛ける。
アカネは最初、黙っていたが、しばしの沈黙ののちに
口を開いた。

「あたし、この宮殿に来てから、家族のような温もりを受けたわ。凄く暖かい人達よね。勿論、貴方も含めてね。それで、あたし、家族を思いだしちゃって…」

何故か自虐的に微笑みながら、彼女は言った。

「やっぱり、ホームシック?」

「―もう、その家族には会えないんだけどね」

再び、涙を流して彼女は言った。
それにしても、もう会えないとはどういう意味なの
だろうか?アラジンには分からなかった。
そこで、少し躊躇いつつも、聞いてみることにした。

「それってどういう……」

「あたしの家、極貧でね。食べる物もなくって。あたしの三個下の弟が、お腹空いたって泣いちゃって。それで、パパが市場の屋台からパンを盗んだのよ。―案の定、捕まったわ。当たり前よね?その時のことで覚えてるのはママの"主人をどうか許して下さい "ってすがるような声と、弟の泣き叫ぶ声。パパは最後に"ごめんな "って言ったわ。それが、パパの覚えてること。ママも弟もわんわん泣いてたけど、あたしは泣けなかった。だってそうじゃない‼家族四人で居られれば、パンも、宝石すらも要らなかった‼家族で居られるだけで良かったのよ……あたしは」

そこまで言って、アカネはもう一度涙を拭った。
アラジンはアカネの
"家族四人で居られれば、パンも、宝石すらも要らなかった‼家族で居られるだけで良かったのよ…… "という言葉に
激しく共感した。彼も、父に対して、そのような
感情を抱いていたからだ。アラジンはアカネを励ますように
肩をポンと軽く叩いた。

「僕も、同じ気持ちを父に抱いたことがあるよ」
という言葉も付け足して。

「ありがとう。―で。話の続きだけど…いつしかママも消えた。パパを追うようにしてね。弟もショック死したわ。あたしだけよ、家族で生き残ったの。―――ね、アル。抱き締めて?お願いよ、アルの顔が…パパに似てるの」

必死な彼女の言葉を聞いたアラジンは断る気には
なれなかった。ギュッと、黙って抱き締めた。
アカネもギュッと、アラジンを抱き締めかえす。
**
―どうして?ジャスミンはなかなか
戻ってこないアラジンを
心配して探しに行った先の噴水で、抱き合う二人を
見つけてしまったのだ。もしかして、浮気?
暗い可能性が浮かびあがる。
ジャスミンは必死に涙を堪えながら部屋に戻った。

【第五話 Hey why―ねぇ、どうしてそんな へ続く】


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