(>>14の続き)
―アカネはまっすぐジャスミンの部屋に向かう。
ドアを軽くノックし、声をかける。
「ジャスミン?アルから私を呼んでると聞いたわ。何か用かしら?」
アカネはジャスミンの明るい声が聞けると思っていた。
だが、実際には
「来ないで!誰にも会いたくないの!一人にしてちょうだい…」
という必死に涙をこらえながら発している、そんな
声が返ってきた。そんな彼女を心配したアカネは
ジャスミンの力になりたいと思った。ついさっき
アラジンが自分を励ましてくれたように。
「……何かあったの?あたしで良ければ相談に乗るわ」
「もう私に構わないで」
冷たく冷淡だが、か細いジャスミンの声が聞こえる。
アカネはジャスミンをそっとしておくべきだと判断し
その場を立ち去った。
**
一方の、アラジン。一応自分もアカネを見つけたと
ジャスミンに声をかけるべきだと考え、彼女の
部屋に向かう。その途中、ジーニーとばったり会った。
ジーニーはジッとアラジンを睨む。陽気な彼には
珍しいことだ。機嫌が悪いのだろうか。
アラジンがそんなことを考えていると、ジーニーが
口を開いた。
「―アル。ちょっとお前さんの行動は良くないんじゃないか?」
いきなりのことでアラジンは意味が分からなかった。
ジーニーの言葉の意味とは?アラジンは聞いた。
「ジーニー、何のことだ?」
アラジンのそんな問い掛けに対し、信じられない
とでも言うように肩をすくめた。
「可愛い女房がいるってのに、その侍女と浮気なんかしてさ。アル、正気か?」
それを聞いたアラジンは驚いた。
「僕が浮気?アカネと?冗談はよせよ」
「抱き合ってたじゃないか、アカネと。見てたんだぜ、このジーニーちゃんはよ」
実は、あの時、ジャスミンだけではなくジーニーも
二人の抱き合う様子を見ていたようだ。
そしてジーニーも誤解していた。
【第六話 誤解を解く時 へ続く】