*第二話 新たな王国の仲間*
―三人と一匹は王の間に向かった。
人の良さそうな王様が、玉座に座って三人と一匹を
待っていた。
「お父様、話って何かしら?」
ジャスミンは緊張しつつも、父親に問いかける。
「それはのぅ、ジャスミン。明日…新しい者をこの宮殿に迎えることにしたのじゃ」
それを聞いた三人と一匹は、ピク、と反応する。
「新しい者、ですか?それってまさか…」
新しい国務大臣を迎えるのではと推理したアラジンが
呟くように言う。ジャファーが追放されてから
この王国には国務大臣が不在だったからだ。
きっと、ジャスミンも、ジーニーも同じことを
かんがえているだろう。
「ああ。ジャスミンの侍女じゃ」
―王様の答えは予想だにしないものであった。
ジャスミンは驚き、言った。
「お父様、私、大抵のことは一人でできるわ。侍女なんて必要ないわ」
ジャスミンは賢く、活発なプリンセスだ。
本人の言う通り、侍女など必要ないだろう。
「それは分かっておる。しかし、お前はもう独り身ではない。新婚には、悩みも多い。そこで、侍女がいれば悩みも打ち明けられ、アラジンと幸せな夫婦生活を過ごせるだろうと思ったのじゃ」
王様がそう言っても、まだ納得しない様子のジャスミン。
はぁと溜め息をついて、言葉を続ける。
「それに、頼りがいのある人じゃ。故郷もアグラバーらしい」
王様の熱心な訴えに、ジャスミンは白旗を挙げた。
父親にそこまで言われては仕方あるまい。
「そこまで言うなら仕方ないわね、お父様。明日を楽しみにしてるわ」
―明日、王国は新たな仲間を迎えるのだ。
(>>4の続き)
―翌日。ジャスミン王女の侍女を迎える為に
いそいそと宮殿を飾りつける。主に動いているのは
勿論魔神・ジーニーである。
着々と準備が進み、あとは侍女を迎えるのみ。
ジャスミン王女は緊張していた。
「大丈夫、ジャスミン。きっと、良い人さ。まずは信じてみないと」
ジャスミンの心配を悟ったアラジンが、彼女の肩を
ポン、と軽く叩き励ました。
「ありがとう、アル」
にこやかに笑みを返すジャスミン。
緊張は少し解けたようだ。
―すると。宮殿のドアが開き、ジャスミンの侍女と
なる美しい女性が入ってきた。
ツカツカと進み、王様・ジャスミン・アラジンに
深々とお辞儀をした。
「はじめまして、あたしはアカネ・フィーリンです。故郷はここ、アグラバー。元・踊り子です」
皆に笑顔を向けると
「これからよろしくお願いしますわ」と付け足した。
人の良さそうな笑顔を見る限り、悪い人では
なさそうだった。
彼女―アカネは唐突にアラジンに話しかける。
「ねぇ、貴方がジャスミン王女様とご結婚なさったアラジンさんかしら?」
いきなりのことで驚いたアラジンだったが
「あ、ああ。僕はアラジン。これからよろしく、アカネさん」
と、明るく人懐こい笑顔を見せた。
オープンマインドで誰とでも仲良くなれるのが彼の
魅力。きっと、アカネともすぐ仲良くなれるだろう。
二人の挨拶を見たジャスミンは急いで
「私はジャスミンよ。この王国の王女。貴方と仲良く出来ることを祈っているわ。これからよろしくね」
と言ったのだった。
**
―その夜は、侍女アカネの歓迎会。
豪華なご馳走や高いお酒が用意され、アカネも
宮殿の仲間達と積極的に話しかけ、すぐに宮殿に
溶け込んだ。そして、歓迎会も終わりに近付いた時。
彼女の特技である踊りを披露し、皆を圧巻させた。
「おぉ、凄いのぅ!凄いのぅ!」
王様は手を叩いて彼女の踊りに見いっていた。
一方、ジーニーは負けるもんかと言わんばかりに
隣でマジックを披露したり、踊ったりしていた。
「ジーニー、何張り合ってるんだい?」
笑いながらアラジンが言う。
「別に張り合っちゃいないさ。俺はパーティが大好きなんだ!ヤッフ〜‼」
ジーニーは歓声を上げ、魔法でアグラバーの夜空に
花火を彩った。
その花火を見た皆がさらに盛り上がる。
アカネも嬉しそうにしていた。
歓迎会は大成功だ!
歓迎会の終わり。踊りを終えたアカネが
アラジンに近寄る。何か話でもあるのだろうか。
近寄り過ぎて、アカネの胸がアラジンに当たる。
思わずアラジンは赤面した。
「ねぇ、アル。あたしの踊り、どうだった?」
いきなりあだ名で呼んだアカネ。アラジンは
驚いたが、すぐに宮殿に打ち解けたアカネだ。
きっと、アラジンとも仲良くなりたくてあだ名で
呼んだのだろう。
「え、えっと……とても魅力的だったよ!君の踊りは最高だ!」
アラジンは心からそう思った。アラジンも彼女の踊りに
見いっていたのだ。
「あら、嬉しいわ。とにかく、これからよろしくね」
意味ありげな笑みを浮かべ、ジャスミンの元へ向かう
アカネ。アラジンは彼女が分からなかった。
【第三話 ジャスミン王女と侍女アカネ へ続く】