私の名は佐藤。かの有名なテレビゲーム「マリオカート」の雑用係として日々奮闘している。雑用係の主な仕事は、キャスト(ここでは「キャラクター」のことを指す)が乗るマシンの清掃・メンテナンスや、コースの整備など。さすがに1人だけで全ての業務をこなすのは至難の業なので、私を含む50人のスタッフが手分けしてマリオカートの裏方の仕事を行っている。これは、ここで働くスタッフらの日常を描いたハートフルコメディドラマ(?)である。
「佐藤さーん!おはようございまーす!今日の仕事は何ですか?」
彼女の名は松本。私の1年後輩だ。
「そうだなぁ・・・。今日は、コースの整備を私たちと一緒にやってほしい。『キノコキャニオン』というところなんだけど」
「キノコキャニオン」は、トランポリンが大量に設置されているコースのこと。マシンのジャンプを堪能できるコースとして定評があることで知られている。
「そこでの道路整備とかを7人ほどでやる予定かな」
「うわーすっごい楽しみです!さっさとやっちゃいましょう!」
「はーい集合。私たちB班は今日『キノコキャニオン』のコース整備を行います。えー、本来なら7人でやる予定でしたが、4人が病欠なので今回は私たち3人でやります」
私たちのB班のリーダー、小田さんからまさかの悲報が告げられる。
え?3人?あのコースをたった3人で整備するだと・・・?
「ちょっと過酷かもしれないけど、私たちだけで何とか整備するわよ」
「エイエイオー♪」
ちょっとした不安が残る中、私たちはキノコキャニオンへと向かった。
「はい注目。ではここに着いたということで、早速コースを整備していきます。まずは、コース上に回収し忘れたアイテムが落ちていないかを確認。あったら拾うこと。次に、コース上をキレイに清掃。アトラクションが壊れていたらC班に報告して、すぐに新品のものと交換すること。以上。その他のことは私に直接訊いてね」
コース上の整備作業が遂に始まった。朝9時から休憩を挟み12時まで作業が行われる。作業中は基本的に団体行動だ。私たちはまず、コース上のアイテムの確認を行う。
「ねぇ見てください!あれ!トランポリンの上にアイテムが大量に放棄されてます!」
松本が、コース最初に登場するトランポリンを指さす。
「ほんとだわ・・・しかもバナナとこうらばかり。キャストの人、このアイテムに何か恨みでもあったのかしら」
「バナナとこうらを合わせて『バナナコーラ』を作るために置いてるんじゃないですかね・・・」
絶対違うだろ。思わず心の中でツッコんでしまった。それはともかく、そのアイテムらを回収していく。アイテムは専用の袋に入れられその後廃棄となるのが基本だが、希望者がいればそのアイテムを無償で譲り渡すというサービスも実施している。
その後もコース内を転々と放浪し探していった結果、今日は200個近いアイテムが回収となった。
「今日はバナナの皮率が多いわね・・・。佐藤さん、このバナナの皮あげるわ。いろんな使用用途があるはずよ!」
「はぁ・・・。一応もらっておきます」
渋々とバナナの皮を受け取る。回収された中では特にキレイなものだったが、これといった使用用途が思い浮かばない。あれこれ考えた結果、親戚の子供にあげることにした。