ーー重々しいマントを引き摺りながら、アナは自室を
出て、戴冠式へと向かった。その道中、アナはある人物に
出会い、マントと同じくらいに重たくなった気持ちが
すっと晴れるのを感じた。
「クリストフ!」
アナは輝かしい笑顔を見せて、呼び掛けた。
彼女が呼び掛けた人物、もといクリストフは、3年前
行方不明の姉、エルサを探しに出た際に、旅の途中で
出会い、それ以来、親しくなった相手だった。
現在は恋人でもあり、悩みを気軽に相談に出来る
相手でもあった。
「アナ、その衣装………その、凄く……綺麗だ。
君に似合ってる」
ぶっきらぼうに、けれど顔を赤らめて、クリストフは
そう言った。そんな彼の様子に、アナの口元は思わず
綻んだ。
「ありがと!……来てくれたのね」
嬉しそうに、アナは言った。
「当たり前さ。この服、どうかな。おかしくないか?
華やかな場に合うようにって、用意したんだけど」
照れ臭そうにクリストフがそう言ったので、今度は
アナが褒める番だった。
「凄く似合ってる!格好良いわ」
まっすぐに、クリストフを見つめてアナは答えた。
クリストフはそんな彼女の視線に、照れたように
そっぽを向いた。2人の間に、甘い沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、執事だった。
「アナ女王、お時間です」
「行かなきゃ。またね、クリストフ!」
クリストフに手を振って、部屋を出たばかりの時よりも
軽い気持ちでアナは戴冠式へと挑んだ。