きっとこれが恋だ。
そう気付いたのは3年生の春。
昇降口で雨を眺めていたあの子に声をかけた。
ひとつ下の後輩の鳳えむ。彼女は奇想天外という言葉を具現化したような人物で、私とは真反対な思考を持つ。
家まで送ろうかと声をかけたときの鳳さんの顔や声、仕草に心が揺らいだ。そのときはまだ何かわからなかったけれど。
はんぶんこした傘の中、他愛ない会話をした。私の与太話にも彼女は耳を傾け、にこにこと頷く。愛らしい姿を見て、心臓が締め付けられるような感覚がした。
彼女の家に着くのはあまりにも早かった。
決して近い距離ではない。雨だから歩幅も小さく、並んで喋って歩いていたから速度も遅い。時間にするとだいぶ長い時間だった。
それなのに早く感じたのはどうしてなのか。理由はすぐにわかった。
「センパイ、また明日っ!」
その笑顔にときめいた。
よくわからなかった感情が、溢れんばかりの想いに上書きされていく。
これが恋だ。初恋だ。
心が揺らぐのも心臓が締め付けられるのも時間が早く感じるのも、全て恋のせいだ。
気付いた瞬間、目が熱くなるのを感じた。すぐに傘を傾けて顔を濡らし誤魔化した。
涙が出たと勘違うから。
受験生の春、2年生の春。
これが初恋と気付くのはあまりにも遅かった。
初恋はまだ黙り続ける。黙り続けなくてはならない。
残念ながらまだつづく
バレンタインのはいったん置いておく
友達からズッ友教えてもらって勢いで思いついちゃった