はぁ、はぁ。
荒くなった三人分の呼吸が部屋に反響して耳へ返ってくる。
寝転んだ状態で、少し視線を横にずらすとぐしゃぐしゃになったマントが放られているのが確認できた。
へへ、と思わずクロノは笑いを溢す。
カズマはすっかりマントを脱がされて、ルアードの姿を晒している。まだ、見てはいない。楽しみは取っておきたい方なのだ。
「わぁっ!かっこいいです!」
タイヨウの興奮しきった声が耳に届く。
その声に、がばっ。ゾンビ映画さながらに起き上がると、タイヨウのきらきらと朝露のように輝く瞳が見えた。どうやら、もうカズマの姿を見たらしい。
クロノはゆっくりとカズマに視線を向けた。
向けて、驚いた。
魔女のようなとんがりぼうしが華やかで、全体的に爽やかでありクールな印象を抱かせる。髪は、ちょこんと数少ない三つ編みが前で施されており、それがまた可愛らしい。
とんがったヒールはどことなく、カズマの性格を表しているようでクロノは微笑んだ。
鼻血を出しながら。
「ちょ、おい!クロノジェットの頭部が血に染まってんぞ!」
大丈夫か、とこちらに近づいてくるカズマを止める。
「近寄るな」
「は、なんで.....」
困惑の表情を浮かべるカズマが首を傾げたせいで、三つ編みがぴょこりと生き物のように動く。
クロノは、うっ、と鳩尾をなぐられたかのような声を出し、胸を押さえる。
「かわいい.....」
小声で呟き、小さくガッツポーズをとるクロノを、カズマは訝しげに見つめた。
やがて、やれやれと頭をふった。
その後、どこにそんな語彙力が眠っているんだと思わせるくらいなタイヨウの誉め言葉に悶絶しつつその一日は終焉を迎えたという。
【余談】
「それにしても、すごいクオリティですよね」
「何で作ったんだ?」
「は?」
「は、って何だよ」
「さすがに作ってねーよ。俺、裁縫得意じゃねーし」
「.....じゃあ、一体....」
「ドンキで買った」
「ドンキ。」
>>183->>186 タイトルは【エイプリルフールの延長線】