瓶詰めの妖精
>>154 【瓶詰の妖精】
今日、草むらを散歩している時に、妖精を見つけた。
それが妖精なのか、わからないけれど、俺の親指ほどの大きさのそれは、人間だとは思えなかった。
けれど漫画のように羽は生えていなくて、着ているのも、普通の服。
そこらへんに売っている洋服を、めちゃくちゃ小さくした、って感じの服だ。
妖精を掴むと、じたばたと手の中で暴れる。
俺はなぜかそれにイラついて、少し強く握った。静かになった。
死んでしまっていないか心配になって、早めに家へ帰る。机の上にティッシュを敷いて、その上に妖精を置く。
妖精はぐったりとしていたけれど、かろうじて生きているようだった。
暇つぶしが消えずに済んだ、なんてことを考えながら、俺が容器を探した。
虫かごでは、広すぎる。コップでは、狭すぎる。どうすればいいか悩んでいると、大きめの瓶が目に入った。
「お、いい感じ」
この小さな妖精には、ちょうどいい大きさだ。俺は瓶の蓋を開けて、その中へ草を敷いてやった。
目覚めた妖精は、その瓶の中へ入ろうとはしなかった。つまんで無理やり入れてやると、妖精はしぶしぶといった感じで、草のにおいを嗅いだ。草を入れたのは、良かったかもしれない。
少しの満足感に浸ると、それと同時に自分の未来への、期待や妄想が浮かんだ。
なにせ人類初の妖精だ。俺が見つけた。
UMAよりも、凄い発見を俺はしたんじゃないだろうか。
大量の金額を手にする自分を思い浮かべ、俺はニヤりと笑った。
「明日から億万長者かもなー」
そんなことを言う俺を妖精は、瓶の中でじっ……と俺を見ていた。
「なにみてんだよ」と返すと、妖精はおびえたように身を屈める。
俺におびえたのか、と思ったが、どうも様子が違う。俺は後ろを振り返る。
「……あ」
息をする暇もなく、目の前が暗くなった。
俺が瓶詰にした妖精からの景色は、こう見えていたのだろうか。
目の前の巨人は、「お、いい感じ」と呟いた。