この瞬間を永遠に

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1:友紀菜:2015/11/10(火) 13:08 ID:4.c

ねぇ、先輩。

私の命、もって半年なんだって。

びっくりだよね。

つい、この間まで普通に生活してたのに……

私が、天国に逝く前に、もう一度先輩に会いたい。

会ってちゃんと伝えたい。

大好きですって。

もし、私が死んじゃっても、きっとみんなの心の中に、私の存在は永遠にある。

先輩の心にも、大切な友達の心にも、みんなの心の中に。

そう信じたい。

24:友紀菜:2015/11/18(水) 14:43 ID:miw

「よっ鳴海。1人か?舞原と椎名は?」

「おはよう、大地。2人とも、ちょっとね。」

私は、ニコッと笑った。

話しかけてきたのは、矢口大地。

去年同じクラスだった。

くん呼びは嫌らしいから、呼び捨て。

「?お前さ、昨日休んだじゃん。博臣先輩が、心配してたぞ。」

「え、嘘。あー謝っとかなきゃ。」

「別に。謝る必要はないと思うけどな。昨日、どうしたんだよ。」

「んーちょっと、血液検査引っかかってさ、病院行ってた。貧血だって。2週間に一回来いって言われた。」

「それって、超悪いんじゃないのか。大丈夫か?荷物持ってやるよ。」

そう言って、大地は、手提げバックを持ってくれた。

「そんな大丈夫だよ。もっとひどい人は、入院にもなるらしいし。全然、大丈夫だよ。」

「そうなのか?でも、これはもってやるよ。あーそういや、昨日の授業でしたとこ、みんなで紙に書いといたから。ノートに張ってもいいし、写してもいいし。小池先生が持ってるから、もらいなよ。」

「うん。ありがとう。大地が書いといてくれたの?」

「俺は、数学はな。確か、国語は有栖川で、社会は一颯で、理科は梨本だったかな。」

みんな優しい。

本当にありがたい。

25:友紀菜:2015/11/18(水) 16:20 ID:Gso

追加登場人物

小池千歌子
真央のクラス(2−A)の担任。とても優しい先生だが、怒ると怖い。去年は、海斗の担任だった。真央とは去年から接点が多く、真央に自傷癖があることも見抜き、真央と仲もいい。クラスみんなのことをよく見ている。

鳴海薫
真央のお母さん。真央の病気をしってからは、優しくなった。

26:友紀菜:2015/11/18(水) 16:59 ID:Gso

私は、大地に笑顔を向けた。

「そっか。ありがとね。助かる。」

「いいや。いつも、鳴海にはみんなが世話になってるから。お前、超良い人だもんな。」

「そんなことないよ。私、みんなに迷惑かけちゃうし、お世話なってばっかり。」

「いいや。鳴海は、良い人だよ。しかも、真面目。だから、みんなが鳴海に頼るんだよ。小池先生まで、なんかあったら、鳴海に頼ってるぜ。」

「小池先生まで?そうなの?」

玄関に着き、私は時計をちらっと見た。

「ああ。鳴海は、頼まれたことを、きちんと真面目にするから、小池先生まで頼るんだよ。」

「そっか。」

でも、なんか嬉しいな。

誰かに頼られるの好きだから。

「鳴海は、よっぽどのことがない限り断らないからな。だから、みんなが、鳴海に頼るんだよ。」

「そうかもね。」

私はそう、言いながら、靴を下駄箱に入れて、スリッパを出してはいた。

27:友紀菜:2015/11/18(水) 17:43 ID:Gso

「真央っち、大地、おはよー。」

「おはようございます。」

「博君、おはよう。昨日は心配かけてごめんね。」

私は、手を合わして謝った。

「いいよ、別に。寝込んどったん?」

「ううん。まさか。血液検査引っかかって、病院に行ってたの。貧血だって。」

「そうなんだ。大丈夫なん?」

博君は少し心配している。

「うん。全然、大丈夫。」

「そっか。」

「あの、博臣先輩。」

「何?」

「なんで、真央っちなんですか?」

「あーそれな。真央っちが、児童相談所に来たときに、たまたま、テレビでた○ごっちしてたから、真央っちって呼ぼうかなってなった。」

そう言えば、そうだったな。

「そうなんですか。そういえば、博臣先輩と鳴海は児童相談所に一時期いたんでしたっけ。だいたい、なんで児童相談所にいたんですか?」

「あれ?言わんかったっけ。家庭内環境悪かったから。」

「そうなんですか…鳴海もか?」

大地が、私を見つめる。

それは、ちょっとここではね。

「ノーコメントで。」

私は、顔を背け、1人教室に向かった。

28:友紀菜:2015/11/18(水) 18:06 ID:miw

「え。教えろよ。ってちょっと待てよ。博臣先輩知ってるんでしょ。教えてくださいよ。」

「個人情報だから。真央っち本人に聞けよ。」

そう言って、博君も教室に向かった。

「2人して、ひどくないか?って、鳴海ちょっと待てよ。」

大地が後ろから追いかけてくる。

私は、止まって待った。

「何?児童相談所?後でね。」

淡々と言うと教室に入った。

そして、朝の準備をした。

「真央ちゃん。昨日、どうしたん?」

そう言ってくれたのは、真昼ちゃんこと梨本真昼。

そのほかにも、なずなちゃんと、日菜乃ちゃんが来てくれた。

「病院行ってたの。貧血だって。そういえば、昨日ありがとう。」

「え?あー授業のね。いいよいいよ。いつも、お世話になってるから。」

そう言って、なずなちゃんは、微笑んだ。

「私、何もしてなくてごめんね。」

「ううん。別にいいよ。迷惑かけてごめんね。」

「いいよ。大丈夫。」

そう3人は同時に言った。

「じゃあ。」

そう言って、3人は自分の席に戻って行った。

みんな、優しいな。

去年のクラスは、あんまり好きじゃなかったけど、今年はいいクラスだしいい担任だな。

私は、本を開いた。

29:友紀菜:2015/11/20(金) 10:04 ID:ucA

私は、本を読み始めた。

「おい、鳴海。これ。」

大地は、手提げかばんをこちらに差し出した。

そういえば、さっきもってもらってそのままだったな。

「ごめん、忘れてた。ありがとう。」

そう言って、かばんを受け取り、机の横にかけた。

大地は、何か言いたそうにしていた

「その……さっきはなんかごめん。鳴海にも、言いたくないことくらいあるよな。」

「ううん。私こそ、なんかごめんね。」

「いいや、鳴海は悪くないから。ただ、今更だけど、鳴海にもいろいろあったことは、わかったから、何かあったら言えよな。」

大地は、真剣な眼差しで、私を見ていた。

「ありがとう。なんてことない、私も家庭内環境悪かったからだよ。博君とは、違う意味で。今は、良いけどね。だから、心配ないよ。」

そして、ニコッと笑ってみる。

「そっか。なら安心した。じゃあ。」

大地は、自分の席に戻って行った。

まだ、読書の時間にはなっていないけど、再び、読書を始めた。

30:友紀菜:2015/11/20(金) 10:40 ID:dxE

読書の時間になり、少しすると、担任の小池先生が教室に上がって来た。

小池先生は、スラッとしていて、肩くらいの長さの髪を1つに結んでいる。

少し怖そうだが、明るい笑顔がとっても似合う先生だ。

「真央。ちょっと、来て。」

小池先生は、私を呼ぶと廊下に出た。

まぁ、予想はしてたんだけどね。

私も、廊下に出た。

「昨日は、どうしたの?」

やっぱり、そのことか。

「病院行ってました。やっぱり、連絡入ってなかったんですね。すみません、私が連絡を入れるべきでした。」

「まぁそれが、一番いいね。そっか。血液検査か?」

小池先生は、家庭の事情を知っているから、怒らないでくれる。

「はい。貧血だそうです。」

「そっか。家の方は?大丈夫なの?」

私は、少し微笑んだ。

「大丈夫です。昨日、病院先生に叩き直されたみたいで。」

「もしかして、中央病院に行ったの?」

「はい。よくわかりましたね。」

「詳しくは、知らないけど、中央の小児科に心の先生いるって聞いたことがあってね。そっか、良かったわね。話、聞いてもらえた?」

小池先生知ってたんだ。

「そうですね。」

私は、笑顔そう言った。

31:友紀菜:2015/11/21(土) 11:29 ID:MNo

「聞いてもらえたと言うより、私が、話したくなくて、無理やり言わされたという感じです。」

「私の時と、同じか。っていうか、また、隠そうとしたの?全く。」

小池先生は、「ハァ…」とため息をついた。

「だって、嫌なんですよ。あの、騒ぎようは。それに、すごい怒られるし、責められるんですよ。私が、何をしたって言うんですか。」

あーダメだ。

涙が、こぼれそうになる。

「まぁ、分からんではないけどね。でも、騒がない人もいるでしょ?」

「そうですけど、小池先生と、中央病院の先生と、児童相談所の人くらいですよ。騒がなかったのは。小学校の時なんて、知られたほぼ全員の先生に、叱られるは、怒鳴られるは、責められるはさんざんだったんですよ。職員室で堂々と大声で話すから、ほとんどの先生にバレましたし。本当に嫌なんです。こんなことになるくらいなら、虐待されるほうがましです。」

とうとう、涙がこぼれてしまった。

この話をすると、私は不安定になる。

32:友紀菜:2015/11/21(土) 11:45 ID:MNo

「ごめん。この話辛いよね。またにしようか。」

いつも、小池先生を謝らせてしまう、自分が嫌いになる。

「もう、ここまで話したんですし、こんな状態になってからじゃもう遅いです。すみません…私が、過去にとらわれすぎなんです。先生はなにも悪くないのに…すみません。」

私は涙を拭きながらそう言った。

「いいや。あんだけ辛い経験をしたんだから、仕方ないと思うよ。私は、大丈夫だから、気にする必要はないよ。」

絶対にそう言うと思った。

小池先生は私が、何を思っているかだいたい、分かっているから。

「分かっては、いるんです。話すのが普通だってことくらい。でも……」

でも…無理だよ。

私には、隠すのが普通で、当たり前。

何年間も、染み付いてることは、簡単には直せない。

「分かってるよ。大丈夫。まぁ家の方は良くなったんならいいよ。また、なんかあったら他の人には言わんで良いから、絶対に私には言いなさい。」

「わかりました。ありがとうございます。」

私は、そう言って頭を下げた。

33:友紀菜:2015/11/22(日) 10:45 ID:TOU

小池先生は、ニコッと笑った。

私は、小池先生のこの笑顔が好き。

でも……先生の笑顔見られるのも、あと少ししかない。

こうやって、話すことも出来なくなるなんて。

それに、貧血なんて嘘ついてるのも辛い。

小池先生だけじゃない。

みんなに、大丈夫だよ、貧血だって嘘ついて。

最低だな、私。

でも、こうしないとみんなに心配かけちゃう、悲しませちゃう、苦しめちゃう。

言うのも、隠すのも、本当に辛い。

でも、選択肢はこの2つしかないのだから。

私は、ためらうことなく、隠すを選ぶ。

あぁ、なんで突然考えたくもないのに、この先の事とか、死のこととか、考えちゃうんだろう……

「真央?どうかした?」

小池先生が、心配そうに私を見つめる。

多分私の表情が突然変わったから、だと思う。

「いいえ。なんでもありません。ただ、突然プリントに名前書き忘れた気がしただけです。」

私は、とっさに嘘をついて笑った。

「そう?まさか、本当は、家の方良くなってないとかじゃないでしょうね?」

「まさか。そんな訳ありませんよ。それより、朝の会始まりますよ。」

そう言って、教室に入り、席についた。

34:友紀菜:2015/11/24(火) 08:44 ID:Pb.

その後、朝の会が始まり、私は病気の事などで、上の空だった。

嫌でも、考えてしまう。

毎日、死のことを考えて続けて、半年後に死ぬんだな、私。

朝の会が終わり、私は一颯君に頼まれた、集配のカゴを持って行くことにした。

「真央。」

教室を出ようとした時、小池先生に呼び止められた。

「なんですか?」

「やっぱり、なんかあった?」

小池先生は、心配そうにしている。

「いや、特になにもありませんよ。」

私は、笑ってみせた。

自分で言うのも、なんだけど、作り笑顔は得意。

「本当に?さっきからお前の笑顔、不自然だよ。」

ドキンッ

全身に緊張が走る。

病気のせいで作り笑顔下手くそになったのかなぁ?

嫌だな、肝心なときにうまくいかないなんて。

病気のこと、バレたらどうするの。

「そうでしたか?でも、大丈夫なんで。気にしないでください。」

そう言って、小池先生から逃げるようにして、下に降りた。

35:友紀菜:2015/11/24(火) 17:48 ID:aF2

集配カゴを職員室に置くと、急いで教室に戻った。

その後は、普通に授業も受けて、普通に過ごした。

小池先生が時々、私の事を気にしていたようだが、今はそっとしておいてくれたようだった。

帰りの会が終わり、私は帰りの準備を済ませた。

真由を見ると、耕也君と話をしていた。

どうやら、一緒に帰るらしい。

「莉乃ちゃん、帰ろ。」

私は、莉乃ちゃんのところに行き、声をかけた。

「ごめん。ちょっと待って。真由ちゃんは?」

「耕也君と帰るらしいよ。」

「そっか。真由ちゃん頑張ってるね。」

「莉乃ちゃんも、優雅君誘ったら?」

「でも、真央ちゃん1人になるでしょ?」

もぅ、莉乃ちゃんは、気使いすぎだよ。

「大丈夫だよ。私みたいに後悔してほしくないし。クラス一緒の今こそがチャンスだよ。」

そう、後悔してからじゃ遅いんだよ。

私は、もうダメだけど莉乃ちゃんなら、まだ大丈夫。

「うん。ありがとう。じゃあ。」

莉乃ちゃんは、優雅君のところに行った。

とても嬉しそうにしている。

良かった。

背中押してあげないと、莉乃ちゃんダメだからな。

今日の朝は頑張ってたけど。

私は、1人で帰ることにした。

36:友紀菜:2015/11/24(火) 18:12 ID:aF2

「鳴海、本当に人のことばっかだよな。」

「本当にな。」

後ろを向くと、大地と一颯君がいた。

「何、2人そろって。」

「だって、真実じゃん。」

2人同時にそう言った。

「ハモってるし。別に、いいでしょ。それに、あの笑顔見たら、どうでもよくなる。」

「まあな。鳴海ボッチだろ?一緒に帰ろうぜ。」

「2人とも、部活は?」

「今日は、修理で体育館使えないから。もうすぐ、総体だし早く直してもらわないと。」

と、大地が言う。

体育館は、雨漏りするから、今は修理中。

大地はバレー部だもんね。

「一颯君は?」

「サボリ。」

「ハァ?サボリ?」

私は、一颯君を睨んだ。

「嘘だよ。真央は、真面目だなぁ。今度、練習試合でグラウンド全部使いたいから、今日は野球部に貸すんだって。顧問出張だし。」

「ふーん。なら、許す。っていうか速く帰ろうよ。汽車間に合わないから。」

私は、2人より一足先に教室から出た。

37:友紀菜:2015/11/24(火) 18:44 ID:SP2

「ちょっと待てよ。」

2人が慌てて、教室から出た。

「なぁ、真央。汽車、1つ遅らせない?」

一颯君が、そう言った。

「え?なんで?次まで1時間以上あるよ。走れば間に合うし。」

「いや、ちょっと話したいことあってさ。ダメかな?」

大地が、そう言う。

あー、きっと家の事だな。

「分かった。でも、駅で話そ。どうせ汽車行ったら、誰もいないし。」

「おー、なんか悪いな。」

申し訳なさそうに、大地が言う。

「いいよ。どうせ、家のことでしょ?」

「うん。ごめん、朝、階段で聞いちゃった。なんか、ごめん。俺以外誰もいなかったから、他は大丈夫だから。気にするなよ。」

「そっか…まぁ、一颯君だけしかいなかったんなら、良かったわ。まずは駅いこ。ね?」

私は、2人に笑いかけた。

「そうだな。」

また、2人が同時に言った。

私たちは笑いながら、階段を下りた。

38:友紀菜:2015/11/25(水) 08:19 ID:NfA

「なぁ、鳴海、ケータイ持ってないんだっけ?」

私は、周りに誰もいないことを確認した。

「中1の誕生日に買ってもらった。でも、誰にも言わないでね。仲のいい信頼できる一部の人にしか言ってないんだから。」

「えっ。真央、俺のこと信頼してないの?」

「そういう訳じゃなくて。聞かれたら、言おうかなくらいにしか思ってなかったから。信頼してなかったら、今、言わないよ。メアド教えてあげようか?」

私は、靴を履きながら言った。

「おう。教えて。ラインと電話番号も。」

「俺にも、教えて。」

「駅からね。ここ学校だし。先生にバレたら嫌だし。あと、私はグループラインしない主義だから。」

「別にいいよ。ライン、舞原や椎名ともやってんの?」

「うん。ていうか、真由と莉乃ちゃんと他校の友達としかラインはしてない。電話くらいなら、時々博君ともするくらいかな。」

「ふーん。」

話しているうちに、駅に着き、私たちは、メアドやライン、電話番号を教えあった。

39:友紀菜:2015/11/25(水) 10:38 ID:0oA

「でさ、ちょっといいかな?」

「うん。」

私はスカートの裾をギュッとつかんだ。

「昼休みに博臣先輩のとこに一颯と行ったんだ。」

「博君は、なんて?」

「何も、教えない。言ったら怒られるし、本人に聞けって。でも、かわいそうな子だって。助けてやれってそれだけ。」

助けてやれっか…

優しいな、博君は。

確かに、私も博君もかわいそうな子だ。

いや、博君の方がかわいそうだ。

博君は、親に捨てられたんだから。

「俺たち、鳴海のこと助けたいんだ。だから、話してほしい。苦しいこと全部吐き出せよ。」

2人とも、私のことで一生懸命になってくれてるんだね。

「ありがとう。真由や莉乃ちゃんにも全部は話してないから、少しだけね。家のこと話すのあんまし、好きじゃないし。」

「いいよ。少しで。」

「うん。」

私は、深呼吸をして話し始めた。

40:友紀菜:2015/11/25(水) 11:20 ID:ZqE

「虐待受けてたの。始めは、お父さんから。離婚後はお母さんから。」

「暴力?」

落ち着いた声で、大地が言った。

「うん。それと、育児放棄とか言葉の暴力も少しあった。暴力は、中1の秋まではあったかな。児童相談所に入れられたからは、前よりはよくなったよ。関わらなくなったし。児童相談所には小4の秋にいたかな。」

「今は?」

「最近までは、育児放棄とか言葉の暴力があったけど、昨日からよくなったよ。」

「そっか。なら良かった。」

2人とも、安心したようだ。

「だから、もう大丈夫。」

私は、微笑んだ。

「舞原と椎名には、いつ言ったん?」

「暴力がなくなってから。えっと、中1の冬くらいかな。そのころは、育児放棄とかだったし、もう大丈夫って言ってた。」

「やっぱり、児童相談所に入るまでは、ひどかったのか?」

「うん。全身あざだらけ。入った後の暴力なんて、前よりはずっとましだった。あまりにも辛すぎて声出なくなったもん。」

「大変だったんだな。」

その後は、勉強の事とか、部活の事とかを話した。

私は、この時は、また悪夢をみることになるなんて考えもしなかった。

41:友紀菜:2015/11/25(水) 11:43 ID:ZqE

汽車が来ると、私と一颯君は汽車に乗り、大地は歩いて帰った。

最初は、話をしていたけど、一颯君は、次の駅で降りた。

私、1人になっちゃった。

私は、1人で椅子に座り、外を見た。

「真央?」

誰かに、呼ばれ振り向いた。

「か、海斗先輩?」

そこには、海斗先輩がいた。

な、なんで、先輩がここにいるの。

「やっぱり、真央じゃん。久しぶり。」

そう言って、私の向かい側の椅子に座る。

「お、お久しぶりです。ど、どうして、こんなところにいるんですか?」

私は、胸のドキドキを隠せないでいた。

ヤバい、こんなにも突然会えるの?

あー、緊張する。

「友達んち行こうと、思って。」

「こんな時間にですか?」

もう、5時だ。

遊ぶ時間なんて、ほとんどない。

「夜、ご飯食べさせてもらえるっていうから。」

「そうですか…」

「お前こそ、なんで、こんな時間に帰ってるんだよ。」

「汽車、乗り遅れました。」

「真央、足遅いもんな。」

否定はしないけど…

「悪かったですね。先輩は、速くていいですよね。」

「まぁな。かっこいいだろ?」

「そうですね。勉強できて、運動できて、かっこいいと思いますよ。」

私は微笑んだ。

42:友紀菜:2015/11/25(水) 13:02 ID:0wY

「おう、まぁな。」

海斗先輩は、嬉しそうにしている。

「どうですか、高校は?」

「楽しいけど、担任がうぜー。真央は?」

「私は、担任もいいしクラスもいいですよ。去年は、嫌でしたけど。担任は小池先生になりました。」

私は、海斗先輩にピースをして見せた。

「マジで?よかったな。あの先生うるさいけどな。そーいや、真央は、彼氏できたか?」

「…できてませんよ。そういう、先輩はどうなんですか?」

いる…のかな?

「残念ながら、いねーよ。」

彼女、いないんだ。

良かった…のかな?

でも、正直ほっとした。

「そうなんですか?先輩、前に俺、モテるって言ってましたよね。」

「あー、モテるぜ。告ってきても、俺がフるんだよ。」

「私なんて、告られもしませんよ。つき合ったことも、1回もないし。」

私は、「ハァ。」とため息をついた。

「…なぁ、真央。俺と付き合わねぇ?」

その言葉を聞いた瞬間、私の心臓は高鳴った。

43:友紀菜:2015/11/25(水) 13:48 ID:TEQ

「え?」

今、付き合わねぇ?って言ったよね。

嘘…でしょ?

「真央、彼氏いないんだろ?」

「いないですけど…」

そんな、突然言われても。

心の準備が…

「真央、優しいし一緒にいると、楽しいし。俺、好きだけど、真央のこと。」

少しだけ、海斗先輩の顔が赤くなっていた。

そんな、先輩も私のこと好き…だったの?

私も、言わなきゃ。

私は、スカートの裾をギュッと握った。

「わ、私も。先輩のこと、好き…です…大好きです。」

私も、ちゃんと先輩に自分の気持ちを伝えた。

顔が赤くなっているのがわかる。

「なんだよ。両想いだったのかよ。…じゃあ、付き合ってくれる…よな?」

「はい。もちろんです。」

私は、笑顔でそう答えた。

すると、私が降りる駅についた。

「じゃあ、私。この駅なんで。」

「俺もだから。一緒に帰ろうぜ。」

私たちは、汽車を降りた。

44:友紀菜:2015/11/25(水) 16:45 ID:qYQ

「そうだ。先輩、私ケータイ買ってもらったんですよ。」

私は、スマホを出して見せた。

「マジ?良かったな。ライン交換しようぜ。」

私たちは、ラインを交換した。

メアドとケータイ番号も。

「毎日は、連絡できないと、思いますけど、許してくださいね。」

「別にいいよ。俺も、毎日忙しいしさ。今日は、たまたま午前中授業だったけど。」

「駅伝ですか?」

海斗先輩は、去年駅伝で区間賞を取っているし、県大会で優勝して全国大会まで行った。

本当に、すごいと思う。

「あぁ。毎日クタクタ。そういや、お前んちどこ?家まで、送ってやるよ。」

「あ、ありがとうございます。あ、真由や莉乃ちゃんに報告しないと。」

私は、ラインで報告した。

「でも、今日会えて良かったわ。会ったら、絶対言うって決めてたから。」

えっ?先輩も?

「私もですよ。先輩卒業したから、もう会えないし、会えたら言わなきゃって思ってました。」

「そうか。真央。」

海斗先輩は、右手を差し出した。

「え?」

「ったく、分かれよ。だーかーら、手。」

あ、手繋ごうか。

私は、左手を恐る恐る、先輩の右手に置いた。

でも、その時には、もぅ遅かった。

45:友紀菜:2015/11/25(水) 17:10 ID:kJ.

海斗先輩は、私の左手を握り、制服の袖を捲った。

「あっ。」

そう言った時には、もう遅く、手首の傷は海斗先輩に見られてしまった。

私は、顔を背け、うつむいた。

「やっぱりか。」

なんで。

なんで、分かったの?

海斗先輩に見られるなんて、最悪。

「いつから、知ってたんですか?」

私は、恐る恐る聞いた。

「結構前から、知ってたよ。長袖着てるけど、見えてたし。」

「それ知ってて、付き合おうなんて言ったんですか?」

「あぁ。むしろ、知ってたからかな。助けてやりたいって思った。」

「先輩とつきあったら、止めると思いますか?」

「思わないよ。別に、止めろとか言うつもりもないから、安心しろ。ただ、なんかあったら言え。」

「……ありがとう、ございます。」

私は、泣いた。

こんなに、優しいなんて聞いてない。

「泣くなよ。」

海斗先輩は、私を抱き寄せた。

あったかい。

でも、ちょっと…

「せ、先輩。は、恥ずかしい。」

私の顔は、多分真っ赤。

「可愛い。」

離してくれたと思ったら、そんなこと言うし。

超恥ずかしいよ。

私の顔は多分さらに真っ赤になった。

46:友紀菜:2016/01/15(金) 10:14 ID:dxE

「………」

私は何も言えず、顔を真っ赤にしてうつむいていた。

「まぁいいや。帰ろうぜ。俺も早く友達んとこ行かないといけないし。さっき汽車乗り遅れたから、遅くなったし。」

「ていうか、先輩も、乗り遅れてたんですか。私はいいので、早く行ってください。」

「でも、心配だし…」

「大丈夫です。心配してくれて、ありがとうございます。じゃあ、また連絡しますね。」

「あ、あぁ。じゃあな。」

私は半分逃げるように、早足で家に帰った。

ヤバい。こんな事ってあるの?

私の心臓は、家に着くまで、ずっとうるさかった。

私は、玄関の戸を開ける。

「た、ただいま。」

「おかえり。ごはんできてるよ。食べる?」

お母さんは、ニコッと笑う。

「うん。」

私も、ニコッと笑った。

47:友紀菜:2016/01/15(金) 11:04 ID:dxE

1週間後、悪夢は突然やってきた。

私は、いつもと変わらない毎日を過ごしていた。

病気のことで、つらいし、手首も切るけど、真由や莉乃ちゃんやみんなと笑いあってたし、海斗先輩とも、なんどかラインもした。

小池先生は、私のことが、少し気になっていたみたいだけど、いつも通り優しくしてくれた。

今日も、家に帰ると、お母さんが、ご飯を作って待っている、はずだった。

「ただい…」

「なんで、言うこと聞けないんだ!」

男の人の声が、はっきりと聞こえる。

「ご、ごめんなさい。ゆ、許して…」

お母さんの声も微かに聞こえる。

お母さんの声は、震えていた。

「謝るくらないなら、きちんと言うことを聞け!」

また、男の人の声が聞こえる。

そして、殴る音が聞こえた。

私は、この声を知っている。

今でも、はっきり覚えている。

あの頃の、悪夢が蘇る。

48:友紀菜:2016/01/15(金) 11:24 ID:ucA

「お、お父…さん…」

「真央。久しぶりだな。」

「ど、どうして、ここに、いるの?」

私は、わけがわからなかった。

「どうしてって、真央とお母さんともう一度、一緒に暮らそうと思って。」

「なんで、そんな突然。」

「お父さんな。会社、クビになっちゃったんだ。だから、それを機にまた暮らしたいなぁって。」

「そ、そうなんだ。」

やっと、平和な生活が始まったと思ったのに。

また、あの悪夢が始まってしまう。

そんなの、嫌だ。

怖い、逃げたい。

「お母さんは嫌だって言うんだよ。真央は、良いって、言ってくれるよな?」

そんなの、良いって言うしかないじゃん。

「うん。もちろんいいよ。」

「真央も、良いって言ってる。お母さんもいいよな?」

「ええ、もちろん。」

「さぁ、早くご飯を食べよう。真央、早くこっちにおいで。」

私は、お父さんの言うことを聞くしかなかった。

49:友紀菜:2016/01/15(金) 14:35 ID:vu.

私は、恐る恐るリビングに入った。

お母さんは、お父さんに殴られて、顔に痣ができていた。

「いただきます。」

私たちは、ご飯を食べ始めた。

私にとって、お父さんと食べるご飯など、恐怖でしかなかった。

同じ空間にいることすら、怖い。

「真央、美味しい?」

お母さんが、優しく問いかける。

「うん。美味しいよ。」

私は、笑顔で返した。

なぜか、お父さんはご飯を食べていなかった。

「あなた、食べないの?」

お母さんは、少しぎこちない表情でお父さんに聞く。

嫌な予感がした。

「こんな不味いご飯食えるか!作り直せ!」

お父さんは、怒鳴りながら、ご飯を床に投げつけた。

そして、お母さんを殴り始めた。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

お母さんは、必死に謝っている。

私は、毎日のようにこの光景を見てきた。

怖くて、怖くて仕方ない。

「やめて、お父さん。お願い。」

私は、震える声で叫んだ。

「あ?親に逆らってんじゃねーぞ!」

お父さんの拳が飛んでくる。

ドカッ

私は、お父さんに殴られ、椅子から転げ落ちた。

「俺に、逆らうな!このっ!このっ!」

私は、何度も、お父さんに蹴られた。

50:友紀菜:2016/01/15(金) 14:55 ID:zzs

お腹が、足が、顔が痛い。

「もういい。また、明日来る。明日は、ちゃんとした夕食作っとけ!」

お父さんは、家から出て行った。

「真央。大丈夫?ごめんね。お母さんのせいで。」

お母さんは涙目になっていた。

「ううん。大丈夫。お母さんは大丈夫?」

「ええ。大丈夫よ。また、前みたいに辛い思いさせて、ごめんね。でも前みたいに、お母さんは、真央にひどいことしないからね。」

お母さんは、私を抱きしめた。

「うん。」

わかってる。

お母さんはなにも悪くないから。

全部、お父さんが悪いんだから。

「ご飯食べようか。」

「ううん。今日はあんまり食べたくないからいい。わざわざ作ってくれたのにごめんね。」

私は、そう言うと、自分の部屋へ向かった。

部屋に入ると、全身の力が抜けてその場に座り込んだ。

怖かった。

死ぬかと思った。

どうして、私はこんなに辛い思いをしないといけないの?

ただでさえ、病気のことで毎日毎日つらくて苦しくて仕方ないのに。

私は、独り静かに泣いた。

51:友紀菜:2016/01/15(金) 15:59 ID:zzs

私は、今日も手首を切って寝た。

〜次の日〜

私は、朝の支度をして、リビングに入った。

今日は、朝から頭が痛いし、なんか熱っぽい。

それに、白目が黄色かった。

「おはよう。真央。ご飯早く食べないと、遅れるよ。」

「うん。」

私は、朝ご飯を少しだけ食べた。

お父さんのこともあってかもしれないけど、えらくて仕方なかった。

「ごちそうさまでした。」

「もう、いいの?昨日もほとんど食べてないし。」

「ごめん。ちょっと体調悪いみたいで。」

「大丈夫?そう言えば、顔手当しなきゃね。」

私の顔は、お父さんに殴られて傷になっていた。

お母さんは、救急箱を出してきて、手当てしてくれた。

「ありがとう。」

「どういたしまして。早く行ってらっしゃい。」

「うん。行ってきます。」

私は、家を出て、真由を迎えに行った。

真由はちょうど玄関に出てきていた。

「おはよー真央。」

「おはよう。」

真由は、私を見てびっくりした表情をした。

「真央。その顔、どうしたの?」

「ちょっとね。それよりまずは駅。」

「あ、うん。」

私たちは、早足で駅へ向かった。

52:友紀菜:2016/01/18(月) 12:15 ID:SSA

私たちは、汽車に乗った。

真由は、一番端の方へ進んでいった。

「で、どーしたん?その顔。言いにくいことなの?」

真由は、少し心配そうにしている。

「言いにくくないと言えば、嘘になるかな。」

「大丈夫。多分ここなら、周りにはあんまし聞こえないから。」

私は真由に近づいた。

「…うん。お父さんがさ、突然家に来たの。」

私は、小さな声でそう言った。

「え、なんで?離婚したのに。」

「会社クビになったんだって。お金に困ったんでしょ。私たちのことなんて、ただの道具としか思ってないんだよ。」

「お父さんに、殴られたの?」

「うん。お母さんを殴るから、止めてって言ったら、逆らうなって。」

私は下を向いて答えた。

「そんな…ひどい。真央だけじゃなくて、真央のお母さんまで殴るなんて。」

「本当にね。自分が殴られるのも嫌だけど、お母さんが殴られるのも嫌。これから、毎日こんな生活が続くなんて、地獄だよ。」

私は、これからの生活が怖くて仕方なかった。

お父さんから、いつ殺されるのかと怯え、病気でいつ死ぬかと怯え、毎日を生きることが、さらに辛くなるんだなって。

53:匿名:2016/02/06(土) 18:52 ID:Gnw

そして...


新着レス 全部 <<前 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新