恋するために、生まれてきたんだ。

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1:美影◆mU:2015/11/20(金) 17:35 ID:xlg



気づいたら、好きになっていたの。

君の事ばかり、考えてしまうの。


気づいたら、想いに蓋が出来なくて。

君の事しか、考えれなくて。



もし、君を忘れてしまっても。

もし、君がいなくなっても。

繰り返し、恋をするんだよ。

だってね、


  恋するために、
       生まれてきたから。

17:美影◆mU:2015/11/21(土) 18:17 ID:xlg


>>16

ああぁ、ありがとうございますっ
これからもよろしくですっ♪

18:美影◆mU:2015/11/21(土) 18:37 ID:xlg



それから、何気ない、だけど楽しい話をりんとして、家に帰った。

お風呂をでてから、ベッドにごろんと横たわる。

「あぁ…、明日からシグにどんな顔して話せばいいのかなぁ…。前までは、好き、はてな?みたいな感じだったから良かったけど…」

独り言を言ってみても、誰にも届く事なく消えていく。誰かに聞かれてたら恥ずかしいんだけど…「〜♪〜♪」

聞きなれた着心音が響く。スマホに電話がかかってきたみたい。

まるで今の独り言を聞かれてたみたいで、少し警戒しながら画面を見る。


   シグ


シグ…から、だ…。
画面を見た途端、顔が真っ赤になって、指が震え出す。
震えたまま、電話に出た。なるべく、普通の喋り口調になるように頑張らないと…

「…もしもし?何か用でもあった〜?」
自分は、こんな喋り方だったかな、いつもは意識しないから、なんだか可笑しい。

そうすれば、聞こえる声。

「いや、うん。あのさ…」

歯切れの悪い喋り方。シグらしくない、どうしたんだろ?

「うん?」

「…、今日さ、先輩…、北條先輩と何話してたの?」

まさかの。タイムリーなんですが。

「あ…、あぁ、えっと、こ、告白みたいなね、あはは、」

そう言えば、電話の向こうで聞こえる激しい物音。え、転けた?

「だ、大丈夫…?」

「…大丈夫。全然大丈夫。で、告白だっけ。そっかそっか。……、OKした?」

少し、心配そうに聞くから、期待しちゃうじゃん、ばかシグ。

19:美影◆mU:2015/11/21(土) 20:36 ID:xlg



「…、いや、OKはしてないよ。」

静かにそう言えば、シグは安心したように、だけど不思議そうに

「…へぇ、そうなんだ。あんなにイケメンな生徒会長、ダメなの?」

そういわれて、あぁ、私もさっきまでそんな考えだったな、って。
非の打ち所がない先輩を、即OKしないなんて 「北條春人生徒会長☆ファンクラブ」の人たちからしたら、信じられない話だと思う。

でもね、貴方が好きだからだよ…。

「んー、ダメとかじゃないんだけどね。OKはしてないけど、断ってもないから。」

事実は言わなきゃ、だよね?

「えっ、じゃあさ、明日OKする…の?」
焦ったように聞くシグに、愛しさがこみあげる。ほらまた、期待しちゃう。

「いや、断らせてもらうよ。私、まだ好きとか分かんないから。」

なんて…ね?好きがどんなものか。

好きな人を目で追っちゃって、その人しか考えられなくなるの。

「なんだ、良かった。………あ、いや、何でもないけど。…あ、明日一緒に弁当食おうなっ、じゃあな!」

ほら、こんなにも胸が暖かい。

20:美影◆mU:2015/11/22(日) 11:55 ID:xlg



今日も一日が始まる。

シグを好きだと意識した時から、いつもより学校に行くのが楽しみで仕方なかった。

「りん、おはよー」

朝学校について、りんに挨拶をする。
返ってきた返事は、

「白坂、おはよう。」

もちろん、りんの声……、あれ、りんってこんなに声、低かった…?

おそるおそる振り向けば、

「せ、先輩…、おはようございます…」

りんではなく、北條先輩だった。
いや、え?何で、クラスどころか学年すら違うのに、私の後ろの席にいるの?そこ、委員長の田中君の席だよ?

っていう疑問は果たして聞いていいのだろうか。いや、聞くしかないよね。

「あの…、何で先輩はここにいるんですか「もう、せんぱい、私のちぃをとらないでくださいよぉ、ちぃっ、おはようっ」

私に向かって猛ダッシュでやってきたりんは、私に抱きつきそう言った。

二人が、睨みあってるような気がするけど…?

挟まれている私はさておいて、先輩は気持ちのいい笑顔で言った。

「別に、君の白坂ってわけじゃないよな?俺だって、白坂の近くにいる権利はある。」

あぁ…、頭がいたい…

そんな時に駆けつけてくれるヒーローこそ、私の好きなひと。

21:空ラビ◆mU:2015/11/22(日) 17:52 ID:xlg




「…すいませんけど、自分のクラス戻った方が良いんじゃないですか?
ファンクラブの人達、探してましたよ。」

満面の笑みで、そういい放つのはシグ。
言い方はとても優しいけれど、目線が怖い。怖すぎる。

だけど、それ以上に、冷たく淡々と言う先輩。

「そうかな。俺の時間なんだから、自由に過ごしていいんじゃないの。
別に、俺の内面知ろうとしない人達に付き合おうと思わない。俺はね、自分の好きな人に振り向いてほしい。それだけだから。」

その言葉の裏に、どんな思いがあるだろうか。

りんは、少し怯えたように私にくっついている。私も、あまりこの空気は好きではない。

そして、先輩は一息ついて、また静かに言った。

「俺は、誰にも媚びない白坂が好き。絶対に、白坂を好きにしてみせる。……だからさ、………………………………………………………、……。」

先輩は、シグに近づき、耳元でそっと話すと、ゆっくりと離れて、「わかった?」 とにっこり笑ってそう言った。

22:美影◆mU:2015/11/22(日) 21:04 ID:xlg



え…、と、何だろ、この状況。

にこにこの先輩をシグが睨みつけてる。
あれ…、シグこんなに怖かった…?

少し震えている私に気づいたシグは、少しうつ向いてから、先輩の方を真っ直ぐ見て言った。

「先輩、違うところで話しましょう。
 
……ちぃ、怖がらないで?」

目を細めて微笑みながら、言ったシグ。不思議と、もうシグを怖いとは思わなかった。

23:美影◆mU:2015/11/22(日) 21:22 ID:xlg


時雨side


男二人が、空き教室で異様な空気を放つ、可笑しな光景。

この空き教室は…、昨日、ちぃと先輩が入っていくのを見た場所。

先輩がちぃに、告白した場所。

そんな事を思い出して、気分が悪くなる。ちぃが…、先輩に…

「それでさ、さっきのでいいかな?
 俺が、白坂と付き合えるように、協力してくれる…よね?」

先輩は、良い人だ。……良い人だけど、俺は、ちぃの事になると応えられない。

「無理…です。俺は、


 ちぃの事が、好きです。」

そう、俺はちぃが好き。
昔から、ちぃだけしか目に入らないほどに。

ねぇ、ちぃお願い。

確かに、先輩は完璧だけど…、
俺も見てよ…?


時雨side 終

24:美影◆mU:2015/11/23(月) 14:27 ID:xlg



春人side


気づいたら、俺の周りにはいつも人が集まっていて、どんなときでも俺は中心にいた。

家族とも、友達関係だって、不自由なくて。
勉強も、何だって簡単にこなしてきた。だけど、俺には手に入らないものがあったんだ。

それは…、

「自由」 簡単に手に入りそうで、本当は難しいものなんだ。

俺の家は、世界的にも有名な会社。簡単にいえば、お金持ちの家、という事。
皆には、羨ましがられる。何でも欲しいものは大抵手に入るから。でも、俺はそんな自分の家柄が嫌で嫌で、仕方ない。

将来は、決められている。
生涯共に過ごすパートナーですら、敷かれたレールを歩くだけ。

そんな人生に嫌気がさしていたある日、俺は初めて生徒会長として、集会に出る事となった。

壇上に上がれば、いつものように皆の視線が集まる。

あぁ、皆、俺の内面は見ようともしないくせに…。そんな考えが頭を巡る俺は、ひねくれてしまった。

マニュアル通りの笑顔で、挨拶をして、集会は終わる。自分も教室に戻ろう
とした時、ふいに聞こえた声。

「生徒会長、顔色悪そうじゃなかった…?笑顔が、辛そうにも見えたんだけど…、あっ、緊張かな?」


あとから聞いて分かったこと。

あの声の彼女は、白坂知奈という。

あとから思ったこと。

俺は彼女を、好きになってしまったようだ。


春人side  終

25:美影◆mU:2015/11/23(月) 14:32 ID:xlg


>>24

すみません、訂正です。

白坂知奈→白坂知菜 です。

26:美影◆mU:2015/11/25(水) 15:24 ID:xlg



時雨side


し…んと、静まりかえる空き教室。
居心地が悪いけれど、俺は言うべきことを言っただけ。
本人には、まだ伝えられそうにはないけど…な。


うつ向いて何かを思い出しているような先輩。
そして、顔をあげ、先輩は口角を綺麗にあげて、こう言ったんだ。

「やっぱりか。俺も、人の事を見てないわけじゃないからね、本当は気づいてたよ。君が、白坂を好きってこと。

………よろしくな、」

先輩の「よろしくな」には、何がこめられていたんだろうか。

ライバル…?

それとも……?


あれから、俺と先輩が盛大に遅刻してしまった。
俺は、半端じゃなく説教された。まぁ、ちぃが来てくれたから良かったけど…。

先輩は、生徒会長だって事で、大目に見られたらしい。……、腑に落ちないよな…


時雨side  終

27:美影◆mU:2015/11/25(水) 20:20 ID:xlg



先輩との話しあいを終えてシー君がもどってきた時は、すでに1時間目が始まっていた。

当然、先生はカンカンに怒っていて、いつもはイケメンだから、という理解出来なくもない理由であまり怒らないけど、こればかりは怒らなくてはならない。ということで、思いっきり怒られていた。
怒られて戻ってきたシー君は、少ししょんぼりしていたような気がする。

「ね…ねぇ、シー君、大変だったね
…?」

勇気を出して、声をかけてみる。シー君は机に突っ伏していて、私の声に気づくと、

「ん、大丈夫。……ねぇ、ちぃ、今日一緒に弁当食えるよね?」

そう言って、顔をあげ、力無さげにふにゃりと笑う。

とくん、とくん… 鼓動がはやくなっていく。

「う、ん、一緒に食べようねっ」

少し、顔が熱いのが分かった。私が答えれば、満足そうに微笑むシー君を見て、  



あぁ、好きだなっ、て。

そう、思ったんだ。

28:美影◆mU:2015/11/26(木) 16:27 ID:xlg



時間の流れが、ゆっくりに感じる。

早く、早くシー君とお弁当食べながらお話したいっ。

そんな思いとは裏腹に、時計の針は一回一回動くのを噛み締めるようにして、ゆっくり、ゆっくり動いていく。

「……っ、えー…、……時雨くん、……………ほんとー?……」

授業の中、女子のひそひそ声が聞こえた。「時雨くん」という言葉が聞こえた瞬間、耳が良くなったみたい。

29:美影◆mU:2015/11/26(木) 17:09 ID:xlg



自然と耳をすましてしまう。
その声以外に、シャーペンの動いている音しか聞こえないから、だんだんと声がはっきりと聞こえてきた。

「嬉しいー♪じゃあさ、今度の日曜日でいい?」

「ははっ、ほんと好きだね?いいよ、その日で。」

「うんっ、大好き…♪ありがとうっ、時雨くん…っ」

胸がちくり、ちくり、痛みだした。
さっきまでとは、うってかわって、針は急いで走り出した。

やだ、やめて、シー君にどんな顔して会えばいい?

さっきの声、デートの、お約束にしか聞こえないから…

30:美影◆mU:2015/11/26(木) 18:08 ID:xlg



胸の痛みを。
この黒い感情を。

無くしてしまいたかったし、蓋をしてしまおうと思ったの。
だけど…、シー君を想う気持ちと同じで、無い事になんて出来なかった。


無情にも、チャイムはなり響く。

シー君の席をちらっと見てみると、お弁当をがさごそ取りだしていた。
 
「あっ」

シー君と目が合った。あぁ、今の私、絶対に顔真っ赤だよ…

「ちぃ、食お?」

私がそんな事を考えている間に、シー君はもう目の前にきて、首をかしげながら微笑んでいる。

「う…ん、食べよっ」


黒い感情には、知らんぷり。
ただ、目の前にいるシー君といるだけで、幸せだから…ね。

31:美影◆mU:2015/11/28(土) 10:03 ID:xlg



お昼の時間になって、10分がたった。
私のお弁当は、ほぼ空っぽです。

私が、食いしん坊なわけでもないですよ?

「んー、ちぃの卵焼き美味しい…」

犯人は、シー君。自分のお弁当には手もつけず、私のお弁当にとんできた。

まぁ、朝頑張って起きて作ってるから、誉められるのはすごく嬉しいけれど…

「これも、あっ、それも美味しそ…
 いただきまーすっ」

と、私の食べるものはどんどんと無くなっていき、気づけば空っぽというわけ。

「あっ、ちぃ俺の弁当食べていいよ?
 俺の母さんの愛情たっぷりだし。」

……抜けてるのか、天然なのか。

お昼はシー君のお母さんの愛情たっぷり弁当をいただきました。

私のより、美味しい気が…

32:美影◆mU:2015/11/28(土) 16:33 ID:xlg



美味しくご飯を食べ終わり、ふと思った。

「あれ、シー君のお弁当、私が作ったら…」

思わず声に出ていたらしい。シー君をチラッと控えめに見てみると、

「ほんとに?作ってくれる?」

目を輝かした、まるでおもちゃを買ってもらう前の子供のようなシー君がいた。

「あっ、いや、でも、今はお母さんが作ってくれてるなら…「母さんがね、作るの大変だから彼女にでも作ってもらえって。」

……、なら仕方な、仕方なくないよ…

ねっ?と、首をコテンとさせて、とろりと笑うシー君。美しい…、じゃなくて、

「私、彼女じゃないよ?」

そう言えば、すぐに返ってくる言葉。

「え、彼女になったらいいんじゃねーの?」

………………。

「分かった、彼女にはなんないけど、お弁当作ってくるから。」

呆れたように、ため息をついてそう言えば、シー君は口をつんととがらせて

「えー」

と、だけ言っていた。

当たり前じゃん…、
先輩との事も、はっきりさせてないのに、
第一お弁当食べたくて彼女にするなんて、ダメだよ…?


「……、軽い気持ちじゃないのに。ねぇ、どうしたら届く?」

深く考えていた私に、シー君の悲しそうな視線と、声は、届く事はなかった。

33:美影◆mU:2015/11/29(日) 08:59 ID:xlg



お昼ご飯の時間が終わった。

シー君は、
「弁当よろしくねー」

と言いながら、戻っていった。

いつも一緒に食べていたりんは、何故だかお昼時間中消えていて、終わったと同時に戻ってきた。

「りん…、もしかして、気つかってくれてたの?」

りんとすれちがった時、こそっと聞けば、りんは振り返ってふふっと笑って、

「ちぃがぁ、やっと素直になったんだもんっ。ふたりっきりにしてあげるのがぁ、私の使命だよぉ?」

相変わらずのろい口調で、優しくそう言って、席へ戻っていった。
シー君を好きって自覚した事言ってないのに、分かっちゃうりんはやっぱり凄い。

34:美影◆mU:2015/12/18(金) 16:52 ID:TRQ



シー君の事を考えていると、嫌な授業も嫌じゃない。
同じ空間に、シー君がいるってだけで幸せだから…ね?

先生の呪文のような言葉が聞こえてくる。英語ならまだしも、数学で呪文って…、あぁ末期か。

頭が混乱して、ふいにシー君を一目見たい気持ちになった。私は前の方の席。大体左斜め後ろに、シー君がいるから、簡単に見えるわけじゃない。

先生…、黒板向けっ!お願いだから…、シー君チャージしたいのっ

そう、まるで変人のような願い事をしていると、神は何を思ったか。

(ほんとに、黒板向いた…)

この隙に、と、教科書で前を覆い、ゆっくり振り返る…、

シー君の視線は、とっくの昔に私に向いていたようで、見つめあう形になった。

時が…止まる。

二人、二人の間だけ、時間も何もかも止まったように。

やがて、シー君は「ふっ」と言って、

「く・ち・あ・い・た・ま・ん・ま」

そう、イタズラをした少年のように、意地悪に笑ったの。

私は、ぎゅっと口を結んだ。そして、静かに前を向く。


ドキドキしてばっかだよ…。

35:空ラビ◆mU:2015/12/19(土) 19:40 ID:TRQ



魔の数学が終わり、休憩の時間。
私の後ろの席であるりんと話していた。

「さっきぃ、みぃさぁ、時雨くんと見つめあってたじゃん〜?正直、私のみぃ取られたって思ってぇ、ヤキモチやいたぁっ」

そう言って、口を「むっ」とつき出して、少し不機嫌な顔をした後、すぐに「へへっ」って笑うりんを見て、私も笑っていた…その時。

36:えるにゃ◆ZE:2015/12/19(土) 23:33 ID:A3w

最初から全部読みました!!
面白いです!!

37:美影◆mU:2015/12/20(日) 12:32 ID:TRQ


>>36
えるにゃさん

最初から読んでくださったんですかっ
ありがとうございます〜っ♪

38:美影◆mU:2015/12/20(日) 12:53 ID:TRQ



〜♪

「あ、校内放送だ。」

校内放送の音が鳴った。
この放送をするのは…、先生か、…

「こんにちは、生徒会長の北條春人です。」

この学校の王子様、そして私に告白してきた人である、生徒会長…

「今から、私に名前を呼ばれた人は、至急生徒会室まで来てください。」

周りがざわつきはじめる。こんな放送、今までに一度も聞いたことがないからだ。

「…ちぃ、北條先輩、何しようとしてるんだろうねぇ…?」

りんが、不思議そうに首をかしげた。
私も、「うん…」といって、頷いた。


周りはざわついているが、耳を澄ますと放送で、「カサッ」という音が聞こえたのが分かった。

紙を広げた音かな。

「 2-3 黒崎時雨さん」

いきなり、シー君の名前が呼ばれた。
誰も思っていなかったのだろう、クラス中ざわつきが止まらない。

そこに先生の、「ちゃんと放送聞けー」という声が響いたため、一気に静寂が訪れる。

シー君の方をちらっと見ると、机に突っ伏していた。そんなに嫌なのかな…?

続けて放送から聞こえる声に、私は更に驚く事になる。

「2-3 白坂 知菜さん、
 えー、この二名は、至急生徒会室ま で来てください。
 生徒会から話があります。

 繰り返します、
 2-3 黒崎時雨さんと…」

私の名前と、シー君の名前が、脳内にこだまする。何で…、呼ばれた…?

分からない事ばかりで、動転していた私が我にかえったのは、

 [生徒会室]

と書かれた、プレートが目の前にあった時だった。

39:空ラビ◆mU:2015/12/23(水) 08:33 ID:TRQ



…コンコン

「失礼します。」

シー君の凛とした声が聞こえ、慌てて私も「…失礼します」と小さな声で言った。

ドアを開けると、

「ありがとう、来てくれて。
 黒崎…は、何となく分かってるだろ ?」

北條先輩が、にこやかにそう声をかけた。

先輩は、生徒会長と書かれたプレートの置いてある机の前の椅子に座っていて、周りを見渡せば、生徒会メンバーも座っている。

「はい、察しはついてますよ。
 …ちぃは分かってないんで、説明してください。」

シー君の声にハッとする。
そういえば、何でここに呼ばれたのか分かんない…。

「じゃあ、まずは簡単に生徒会メンバ ーを紹介しようか。
 白坂の事だから、あんまり知らない んだろ?」

そう言われ、少し顔が赤くなる。
…北條先輩以外、あんまり知らないのが当たってるよ…

静かに「こくん」と頷けば、聞こえてくる声。

「えぇーっ、知菜ちゃん、俺の事知ら ないのーっ?
 可愛い子に覚えてもらえてないとか 、人生終わったぁあっ」

「光(こう)黙れ。お前のせいで、生徒 会が変な印象になるだろ。
 …えっと、このうるさいのが
 書記の、西村(にしむら) 光。
 簡単に説明するなら、チャラ男。」

チャラ男、だけ無駄に強調させた説明をしてくれた北條先輩。

西村先輩をちらっと見ると、

「もう、春ひどすぎー、俺チャラ男じ ゃなくて、女子にも優しいだけだか らっ
 だからね、知菜ちゃん!
 いつでも、俺の胸に飛び込んできな
 よ、待ってるから!」

……、ばちーんとウィンクをしてくれた西村先輩。

少し微笑みながらも、これが残念イケメンってやつかな、と失礼な事を考えていた私でした。

40:空ラビ◆mU:2015/12/23(水) 10:19 ID:TRQ



まだ喋り続けている残念イケメン先輩に呆気にとられていたけど、北條先輩は気にせずに続ける。

「あれは、無視してて。
 それで、そこにいる女子が副生徒  会長の、
 桜井 音羽(さくらい おとは)。
 先生からの人望も厚いし、生徒会の 中で唯一まともに話せるんだ。

 …何で生徒会に、変なの多いんだろ 。」
 
最後の小さな声は聞かなかった事にして…、桜井先輩を見ると、綺麗な笑顔を見せてくれた。
サラサラストレートの黒髪も眩しい…

「はじめまして、知菜ちゃん。
 急に、春人に呼ばれて驚いたね?
 ごめんね、肩の力抜いてて良いから ね。
 私の事は、音羽って呼んでねっ」

……女神すぎて泣けてきちゃうよ、まともすぎる…

「はい…、音羽先輩っ」

そう言えば、笑顔で「ふふっ」と微笑み返してくれる音羽先輩が、女神にしか見えなくなった瞬間だった。
  

41:lemon◆2EM:2015/12/23(水) 12:26 ID:11Y

(ああ…ついに来てしまった←)

面白いね〜!
恋愛系の小説でこんなドキドキワクワクしたのは初めてだよ〜(゜O゜;

更新頑張ってね♪

42:空ラビ◆mU:2015/12/23(水) 12:34 ID:TRQ



「そして、最後に会計の
 三浦 渚(みうら なぎさ)。
 どう見ても、ヤンキー男子だろ?
 …女子なんだ。男装が好きな、純粋 な女子なんだよ…何故か。」

北條先輩が、面倒そうに指を指してそう言った。その先には…

「…ったく、春人は、何でそんな面倒 そうな紹介しか出来ねーんだよ。
 …あっ、知菜ちゃんよろしくねっ!
 俺…、私の事は、渚先輩って呼んで
 ね〜っ、あー、知菜ちゃん可愛いっ 、ペットにしちゃいたいっ」
 
金髪の、目付きの鋭いヤンキーイケメンさん…、と思いきや、可愛い先輩…?
キャラのいまいち掴めない先輩を前に、どうすればいいか分からなくなっていると、

ぎゅっ

「あー、やっぱり可愛い。

 好きだよ…俺のになって? 」

渚先輩は、私を抱き締めて、私の耳元で低い低い声で、そう呟いた。

女の人だと分かっていても、顔は正直に真っ赤になっていく。

混乱している頭の中を読み取ったかの様に、シー君が私をぐいっと引っ張ってくれた。

そして、シー君は渚先輩を静かに睨んでいた。

「わー、怖い怖いっ。私一応女子だよ ー?可愛い後輩抱き締めて何が悪い のさー」

口を尖らせて、ぶーぶー言っている渚先輩に呆気にとられていたから、私は気づかなかったんだ。

「…たとえ女でも、ちぃに触れられる のは俺だけでいいし。」

シー君がそう呟いていた事に。
そして…、

「…独占欲強すぎると逃げられるぞ。俺が…奪ってやろうかな。」

シー君の声に気づいていた、北條先輩にも…。

43:空ラビ◆mU:2015/12/25(金) 17:59 ID:TRQ



「おい、三浦。あんまり白坂をからかうなよ。」

北條先輩の、呆れたような、少し冷たいような…そんな声が響いた。

「もー、趣味だからいーでしょー?それに、春人そんな怖いとちーちゃんに嫌われるぞーっ?ねぇ、ちーちゃんっ!」

いつの間にかちーちゃん呼びになっていて、「女子、渚」になってる渚先輩。
あんなに目付きも鋭かったのに、おだやかな雰囲気になっているから不思議で堪らない。

というか…、からかうのが趣味って…たち悪い先輩だ。

私たちは、先輩たちの自己紹介が終わり、話が脱線しているのには、まるで気づいていなかった。

「…、で、本題に入った方がいいんじゃないんですか?」

そこで、シー君が本題に入るように持ちかけた所で、ようやく先輩達も真面目な顔つきになった。

「そうだったな。…白坂、俺たち生徒会を見て、気づく事はないか?」

生徒会長のオーラを感じる春人先輩を見ながら、「気づく事って何だろう。」ただ、ゆっくりと考えた。

思い付く事はただ1つ。

「……キャ、キャラが濃い…です。」

私が真面目な顔で、真剣にそう言ったのに…

「…っはは、知菜ちゃん面白いなーっ、俺もキャラ濃いのー?ははっ」

「ちょ、面白すぎる…っ!あははっ、真顔で濃いって、ははっ」

全力で笑っている、西村先輩と、渚先輩。
笑いをこらえている、音羽先輩と、北條先輩。

うーっ、真面目に言ったのにぃ…っ

44:空ラビ◆mU:2015/12/25(金) 20:01 ID:TRQ


時雨sibe

「何でっ、笑うんですかっ!これしか思い付かないですよっ」

ふるふると肩を小刻みにゆらしながら言うちぃ。声からして…、少し涙目なんだろうな。
後ろにいる俺には分からないけど…、無自覚で、可愛い…んだろう。

…こんな事考えてて、変な人じゃねーか。

そろそろちぃが、泣き始めてしまう頃だろう。
幼馴染みだから、俺には…、俺だけには分かる。

気づけば、動き出す足。


でも、その足の動きはすぐに止まった。

「泣くなよ、ごめんな。ほら、涙拭け。」

ちぃの隣には、…北條先輩がいて、身長の高い先輩は、ちぃの目線の高さに腰をかがめて、ハンカチを渡していたから…。

手を伸ばせば届く距離。目の前にいるはず。

それなのに、北條先輩の愛しいそうな笑顔に安心しているちぃを見ると…、

…ちぃが、遠くに感じたんだ。


俺は、まだ子供なんだ。
北條先輩みたいに…大人じゃない。

ゆっくりと、本題に入りはじめているというのに、頭の中はちぃだけなのが、幼い証拠…なんだろうな。

45:空ラビ◆mU:2015/12/25(金) 22:07 ID:TRQ



「何でっ、笑うんですかっ!これしか思い付かないですよっ」

私が涙をこらえながらそう言えば、北條先輩は困ったように微笑んでいた。

こっちの方が困ってますよーだっ

… いつもだったら、私は泣いちゃう頃だ。泣き虫なのは、相変わらず変わらないから。

…シー君が隣で、慰めてくれるのも、変わらないよね…?

そう思っていた私に、謝りながらハンカチを渡してくれた…北條先輩。

少し、残念だったと思っている私は…、なんて最低な人だろう。

だから私は、そんな気持ちに無視して、先輩に精一杯の笑顔を見せた。

先輩の、優しい微笑みを見ていると、自然と笑顔になれているのかもしれないけれど。

そこから、本題の話に入っていった。

…ゆっくりと、後ろを振り向く。

シー君は、うつ向いていた。そのシー君の姿が頭から離れないのも、無視、しなくちゃ…。



…この時から、運命の歯車は、狂い初めていたのかな…?

46:空ラビ◆mU:2015/12/26(土) 11:48 ID:TRQ



「今の生徒会には…、3年しかいないんだ。2年ですら、いない。」

北條先輩の言った事に、ハッと気づいた。確かに、3年生の4人しかいない。

「生徒会は…、俺が言うのも何だが、いわば人気投票で決まる。この学校は生徒会の一人ひとりに力があるから、これまでずっと4人だけの生徒会でやってきているんだ。」

…この4人は、人気の高い人達。今思えば、いつも3年生の話題になれば、この人達が出てきていた。

「だけど、流石に4人だけだと、正直やりきれない面もあるんだ。それに、今は5月と言えど、俺たちには受験が待っている。」

その北條先輩の言葉に、先輩達三人は静かに頷いた。

受験勉強との両立は、4人だけの生徒会だと難しいのだろう。

次に、北條先輩から発せられた言葉は驚くべきものだった。

「そこで、だ。生徒会に、2年生のメンバーを加える事にした。ここでも、条件は<人気が高い>という事。

君達二人に、生徒会になってほしいんだ。

2年副会長、黒崎時雨。
2年書記、白坂知菜。」


私とシー君が、生徒会に入る事になるなんて…!

47:空ラビ◆mU:2015/12/26(土) 13:42 ID:TRQ




頭の中は、真っ白。
混乱しかないけれど、そこからまた、新たな混乱が生まれる。

「…分かりました、俺が2年副会長になればいいんですね?」

シー君の、凛とした…冷たげな声が聞こえた。

昔から…、シー君は人前に出るのを面倒に思って、いつも断っていたのに…


あぁ、シー君が変わったんじゃない。
私が、…まだ幼いままなんだね。
変わらなくちゃ、いけないね。

「…私も、書記頑張ります。精一杯、務めさせてください。」

そう言って、私は静かにお辞儀をした。

ねぇ、シー君。私も、大人になれるよう頑張るから、

振り向いてくれる…?

48:空ラビ◆mU:2015/12/29(火) 19:21 ID:TRQ



シー君も、私も生徒会メンバーになるという答えを出したから、北條先輩は安心したように笑って、

「ありがとう。急でごめんな?
 黒崎と白坂が入った事は、こんどの 集会で全校に知らせる。
 これから、よろしくな。」

生徒会へようこそと、北條先輩にも、音羽先輩にも、
「これから、一緒に頑張ろうね!」
西村先輩にも、
「よろしくな〜っ、いつでも俺を頼れよ〜?」
渚先輩にも
「よっしゃ、ちーちゃんよろしくーっ♪黒崎はどーにか頑張れ。」
歓…、迎してもらって、

私達二人はくすぐったいような、恥ずかしいような気持ちになったけど、嬉しい事には変わりなかった。
シー君は…、嬉しいか分かんないけど。

「本当に…ありがとうございます。」

シー君が先輩達に言ったので、私もそれに続いて、

「あ、ありがとうございます…」

声が小さくなりながらも、しっかりそう言った。

と、その時。

「あのっ!次の集会って、5月12日…だよね?
 今日って…、5月11日……。」

音羽先輩が、急に大きな声を出して言った。
次の集会…、私達が生徒会に入った事を知らせる日…、その日は12日、今日は11日…って事は…!

「……あぁ、明日だったか…。すっかり忘れてた。にしても、急過ぎるな。」

私達は、今日決まったばかりの事を、明日発表しないといけないらしいです…

49:空ラビ◆mU:2015/12/30(水) 11:13 ID:TRQ



私達は当然6時間目に出れるわけもなく、一時間使って、明日の打ち合わせをしていた。

「で、ここで新副会長、書記の挨拶だな。」

北條先輩が、明日の集会の流れを書いたプリントを見ながら、指して指示していく。

私達は、ひたすらに話を聞いてイメージをする。

挨拶の事、位置の事、声の大きさ、マイクの事…、
心配な点はあるけど、何とかやり遂げようと、必死についていく。

「じゃあ、私と西村が司会すりゃいいんだな?」

渚先輩の声に、北條先輩が「ああ」と頷きながら言う。

生徒会は飲み込みが早く、頭の回転も早い…。


緊張しながらも、眠りについた11日の夜…。

50:空ラビ◆mU:2015/12/30(水) 14:55 ID:TRQ



朝、教室に着いて準備をする。
いつもより早くに学校に着いたから、教室には、まだ誰もいない。

「あ、ちぃ。はよ。」

準備も終わり、椅子に座った瞬間、教室のドアが開いた。

反射的に目線をやると、シー君が私に声をかけながら入ってきた。

「うん、シー君おはよう!」

緊張しているけれど、それはシー君も同じだもんね。
私も、笑顔でシー君に挨拶した。

と、その時、シー君の顔が曇った。
少しうつ向いて、少し…

切なそうにしている。

「…え?シー君、どうしたの?シー君?」

私が駆け寄ってそう言えば、

「シー君…、いつから、その呼び方になったんだっけ。」

シー君が、私を見つめながら、何かを思い出すように言った。

「え…、シー君は、…あ、れ?私、前までシグって呼んでて… 。…いつからだろ、シー君の呼び方にしっくりきて…」

少し、頭がズキズキと痛み出した。頭を押さえ出す私を見て、シー君は慌てたように、

「…ごめん、困らせたいわけじゃなか った。でも…、

 何か、昔の事思い出した…?
 いや、何でもない…、体育館行こっ か。」

むか、し…のこと?
何か意味ありげな言葉を残したシー君は、廊下で私を待ってくれている。

何か、何か…もやもやする…

 

51:空ラビ◆mU:2015/12/30(水) 16:05 ID:TRQ


時雨side

俺とちぃは、幼馴染み。
生まれた頃から一緒にいるくらいだから、まるで家族みたいな存在。

それと同時に、好きな人…でもある。

俺は、ずっとちぃと一緒にいた。
ちぃの、隣にいた。

俺は、ちぃと過ごした事をすべて…かは分からないけど、大体覚えているんだ。

でも…、ちぃは忘れてしまっている記憶がある。

小2の頃の…、あの、辛い記憶。
ちぃを守ろうとして、守りきれなかった、無力な小さい頃の俺。

ちぃは、苦しみを抱え続けた。
抱え続けた先に、その記憶も、それまでの俺との記憶も…


     全て消えた。

ちぃは、小2から前に、俺と出会っていた事を知らない。
俺だけが、記憶から消えている。

ちぃが、小2までよんでくれてたあだ名。
それが、
「シー君」 だった。

ちぃは、あの辛い記憶の後、

「はじめまして、しぐれ…君?シグ、だね。よろしくねっ」

ちぃは、あの日のように、俺を「シー君」とは呼ばなかった。

それから、ちぃが「シー君」と呼び始めた時、ちぃはその記憶と無意識に向き合いはじめたのだと思った。


「シー君っ、待たせてごめんね、体育館行こっか!」

俺を見上げながら、微笑むちぃを、今度は守りきれるだろうか。

52:空ラビ◆mU:2015/12/30(水) 22:56 ID:TRQ


鈴side

私が朝学校に着くと、ちぃはいなかった。
カバンはあるのにいないから、具合が悪くなって保健室にでも行ったのかな。
後で、保健室に行かないと。

私は、ちぃと話すのを楽しみに早めに学校へ来たから、少し寂しかった。


集会の時間、いつも通り列に並んで、生徒会を待つ。

この学校は、集会の時に、生徒会が入ってくるのを拍手で迎えて、それから集会が始まるという伝統がある。

~♪
チャイムが鳴った。そろそろ、生徒会は来るけど…ちぃは、見当たらない。

「具合…すごく悪いのかな。」

そう、小さな声で呟いたが、それは誰にも聞こえなくなった。
大きな拍手が始まったから、すなわち、生徒会が入ってきたのだ。

入り口を見ると、北條先輩が笑顔で入ってきているところだった。
私も拍手をする。

次に見た光景に、私は…いや、全校が目を疑う事になる。

時雨くんと、ちぃも、生徒会として入ってきたからだ。

53:空ラビ◆mU:2015/12/31(木) 13:00 ID:TRQ


鈴side

一瞬弱まった拍手も、再びうるさくなり響きだした。

「…え?ちぃが…生徒会に…?」

急な事で驚くほか無かったが、少し…少し、寂しい気持ちになった。

生徒会は、人気で決まる。

2年で、男子の一番人気が時雨くん。
誰もが頷けること。

女子は、ちらほらアイドルのような人達がいるけど、ギャルみたいな人ばかり。

清楚で可愛いちぃが…女子で一番人気だという事は、なんとなく、皆も、私も分かっていた。

でも…、生徒会に入る事で、人気は更に増す。
人気者の隣にいれば、自分も人気になれると考える女子が、ちぃに媚びる事だってあるはずだよね…

「…やだもん。ちぃは、私の親友だも ん…。」

少し不安を感じながら、大好きなちぃの声が聞こえるのを、静かに待っていた。

54:空ラビ◆mU:2016/01/01(金) 11:08 ID:TRQ


「生徒会長挨拶、生徒会長お願いしま す。」

西村先輩の司会に、

「はい。」

と答えて、マイクを持ち生徒の前へ歩いていく北條先輩。
…その姿は、やっぱり生徒会長。

凛としていて、オーラを感じた。

「皆さん、おはようございます。
 新しい学年になり、1ヵ月以上過ぎ ました。
 今の学年に慣れてきた頃でしょう。
 しっかりと、運動に勉強に励んでい
 きましょう。
 
 さて、私達生徒会は、これまで4人 で本校をより良くするための活動に あたってきました。
 しかし、色々な問題点が見えてきた 事により…

 新たな生徒会メンバーを加える事に しました。

 2年生副会長、黒崎時雨。
 2年生書記、白坂知菜。」

「「はい。」」

私とシー君は歩いていく。
いま、北條先輩のいるもとへ。

55:空ラビ◆mU:2016/01/02(土) 11:03 ID:TRQ


一番前に立って、シー君と合わせてお辞儀する。

そして、シー君がゆっくり話し始めた。

「皆さん、おはようございます。
 今回、副会長を務めさせていただく ことになりました、2年黒崎時雨で す。
 私が、このような大役を成し遂げら れるか不安ではありますが、先輩方 に支えてもらい、少しでも本校のた めになればと思います。
 どうぞよろしくお願い致します。」

そう言って、マイクを降ろし、綺麗にシー君がお辞儀すると、大きな拍手が体育館いっぱいにこだまする。

緊張のピークを迎えた私に気づいたシー君は、私の耳元で

「…大丈夫。」

とだけ呟き、前を向いた。

次は私の番… 、大丈夫、頑張れば良い…。

「…皆さん、おはようございますっ。
 今回、生徒会書記として本校を支え ていく事となりました、2年白坂…
 知菜ですっ。
 あ…、す、凄く緊張しています。
 …それくらいの、責任の重い役割だ と思っていますので、しっかりやり 遂げられたらなって思いますっ。
 これから、よろし、よろしくお願い しますっ。」

そして、私がしゅばっとお辞儀すると、拍手と共に

「いいよー、可愛いから許すよー!」
「頑張ったねーっ、緊張したねー」
「大丈夫だよー!これからだよー」

という、優しい暖かい言葉に包まれた。
顔は真っ赤だけど、それでも嬉しくて、少し笑ってしまった。


こうして、私とシー君が生徒会になる事を全校に認めてもらったんだ…。

56:空ラビ◆mU:2016/01/06(水) 18:40 ID:TRQ


集会が終わって、放送器具の片付けをしながら、今日の反省をした。

「黒崎は、慣れているようにしか感じ なかったよ。本当凄かった。」

北條先輩が、放送器具のコードを手で巻きながら、目線だけをシー君に合わせて、そう言った。

「…ありがとうございます。
 先輩方の、素晴らしい発表を聞いて いたので。」

シー君が伏し目がちに、そう短く答えて、放送のロッカーのカギを閉めた。


私は、マイクのスイッチを切って、1つ1つ、片付けていきながら、それを聞いていた。

シー君は、完璧だった。
だったけど…、私が慌てちゃって…、

 

57:空ラビ◆mU:2016/01/06(水) 20:16 ID:TRQ


だんだんとうつ向いていく、私。

暗い、曇った表情をしているんだろうと、
自分自身見ていなくても分かるほどに、心は沈んでいる。

優しい先輩たちは、大丈夫って、私に聞こえるくらい大きな声で言ってくれた。

なのに、なのに…。
視界がゆらゆらと揺れはじめた。

北條先輩たちは、向こうの部屋で作業をしていて、すぐに戻ってきてしまうだろう。
私が悪いのに涙を流しでもしたら、迷惑をかけちゃう、から…。

心も曇り始めた…、その時。

ふいに前が見えなくなった。

「…え、?」

同時にふわっと香る、柔軟剤の香り。

私は、この香り知っている。
大好きな、香り。

大好きな人の…

「…大丈夫。ちぃは、悪くないよ。
 頑張ったんだから、な?
 泣いても良いんだよ…」

優しくて、甘い、シー君の声。
私の、大好きな声。

「…ふ、っ、…、緊張、して…、
 上手く…話せなかったっ、…っ、
 せっかく…選んで、もらったのに… 、ふぇ、…っ、ふ、」

シー君に抱き締められながら、私は泣いた。
シー君は、ただ、ただ、静かに私を抱き締めていた。

【その暖かさを、思い出して。】
私の知らない私が、伝えようとしているようだった。

でも、私は止まらない涙を押さえる事だけに集中していて…、

本当の私の叫びに、気づくことのないまま、シー君の暖かさに酔いしれていた。

58:空ラビ◆mU:2016/01/06(水) 20:44 ID:TRQ


少し、涙も落ち着いてきて、

「…ん、だいじょ、ぶ、ありがと…」

そう言って、名残惜しいけど、シー君からそっと離れた。

シー君の胸元を見ると、やっぱり少し濡れていて、
咄嗟にハンカチを取りだして、シー君の胸元を静かにふいた。

すると、シー君は私がハンカチを持っている手を、優しく掴んだ。

それから…、
手の甲に、温かく柔らかい物が押し付けられたのは、一瞬のようだった。

それが、

     キスされた

のだと気づいたのも、一瞬で。

私に、目線を合わせたシー君は、

とろり、とろけるように微笑んで、

「ちぃ、泣きたい時は、俺のところに おいで。
 
 ちぃの泣いてる姿を見れるのは、俺 だけで良い。」

ねっ?と言って、もう一度、私の手の甲にキスを落としたシー君。

私の顔は、みるみる内に真っ赤になっていく。


 

 

59:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 10:01 ID:TRQ


ゆでダコみたいになってるんだろうなぁ、すごく、すごく…熱い。

そんな私をジッと見つめてから、シー君は目を細めて、

「そんなに…、照れた?」

そう言って、まるで、壊れ物を扱うかのように、ふわりと、私の頭を撫でた。

それが気持ちよくて、同時にシー君の手の大きさを感じた。


「…、ぁー、おっけ〜?じゃ、俺戻る からね〜!」

向こうの部屋から、西村先輩の気の抜けたような声が聞こえた。
そろそろ、先輩たちは戻ってくるのかな。

私達は、一瞬見つめあって、そっと離れた。
何事も無かったかのように接するのは、少し虚しかったけれど。

60:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 10:34 ID:TRQ



そして、先輩たちはすぐに戻ってきて、

「今日はお疲れ様。
 白坂も、少しずつ慣れてくれれば良 いから。」

と、そう言ってくれたので、心が軽くなった。

さっき、泣いたからっていうのも、あるんだけどね…?

それから、私達6人は、遅れて1時間目の途中から戻っていく事になった。

廊下を歩いていると、ふいに掲示板が目に入った。
そこには、さっき貼られたばかりなのだろう、

[     新たな生徒会     ]
2年男女人気トップである、
黒崎時雨(副会長)、白坂知菜(書記)が
生徒会に加わる事に!

と書かれていて、事細かく記事も載せられている。

それを見た私達6人は、立ち止まった。

「…貴方達2人はね、期待の星なの。
 人気が高いのは、信頼も厚いし、全 ての事に真剣に取り組んでいくのを 、皆が分かっているから。」

音羽先輩が、微笑みながら私達に優しくそういった。

「だからね…?ゆっくり頑張ってくれ れば良いの。
 大丈夫だよ。」

静寂の寂しい廊下に、綺麗なソプラノのような声が響く。

私達は、静かに頷いた。

「…さぁ、教室へ戻ろうか。」

北條先輩の言葉に、止まっていた足がそれぞれ動き始める。


私達の新たに広がる世界で、

一体何が起こるのか……?

61:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 12:28 ID:TRQ


知菜と時雨のクラスメイトside


集会の驚きの出来事があった後、私達は1時間目の数学を受けていた。

昨日放送で呼ばれたあの2人が、まさか生徒会になるなんて…、誰も予想していなかったこと。

この、東宮高校では、生徒会はアイドルのような人気を誇る。

生徒会の人達は、顔面偏差値も高いから、全員揃うと圧巻だ。

これまでは、先輩達4人だけでもアイドルのようなオーラを発していた。


いつも笑顔を絶やさず、リーダーシップもカリスマ性もある北條先輩。

先生からの信頼も厚く、誰にでも優しい女神といわれる音羽先輩。

女たらしと言われるけれど、根は真面目で頼りになる西村先輩。

男子に見えるけれど、女子として暖かくて思いやりのある、渚先輩。

そして、これからは…

凛としていて、誰も寄せ付けないオーラを放つ、クールな時雨くん。

ふわふわとして、皆に好かれていく穏やかな知菜ちゃん。

人気が高い事から分かるけれど、
2人とも、相当な美形。

時雨くんは分からないけど、知菜ちゃんは、完璧な無自覚だから、可愛がる味方も増えていくだろう。

私も応援していきたいな。

        クラスメイトside終

62:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 13:00 ID:TRQ


私達2人が教室に戻ると、先生もクラスメイト達もすぐに気づいて、

「よっ、副会長様ーっ!」
「知菜ちゃん、これから頑張ってねー っ!」
などの声が聞こえて、私達は照れながら「ありがとう。」、そう言った。

そこで、
「お前ら、生徒会に入るなんて俺知ら なかったぞ…?」

といいながら、何で教えてくれなかったんだっ、とわざと泣き真似をする先生を見て、教室中は和やかなムードとなった。

63:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 13:36 ID:TRQ



~番外編~  りんside
「りんのやきもち」

集会があった日の帰り。
ちぃとカフェにでも寄ってお話しようかな、なんて呑気に考えていた私。

帰る準備が終わって、

「ちーぃ、かえろぉーっ?」

と、いつもの口調で言いながら、ちぃの方を向いて…、向…、

【ちぃが、いない。】

ちぃの机に駆け寄るとカバンもないっ、うそ…!

あ、あれだよね、トイレに行った、とかね…?

私は、自分のカバンを持って、ここから一番近いトイレに向かった。
1つ1つ確認していっても…、どのトイレにも、誰も入っていない。

ここ以外のトイレは、先輩か後輩しかいないから…、流石に行かないだろう。

…っ!
あ、そーだっ!

ちぃ、今日までの提出期限のプリント、出しに行かないと行けないって言ってたんだ…っ!

「だったら、職員室付近かな。」

誰も聞いていないので、ぶりっこ口調は流石にしない。
あの口調は、ある事のためにしている事だから…。

1階に降りて、靴箱を通り過ぎる。
ここを通りすぎないと、職員室には着かないからね。

靴箱を通り過ぎるとき、人溜まりが見えた。

「また生徒会かな。」

いつもいつも、生徒会の周りにはファンが着いている。
ファンクラブがあるくらいだからね…


「生徒会は人気だな。……、あ、
 ちぃも、生徒会なんだった!」

その事を思い出して、その人溜まりに駆け寄って、その中心にいる人を見ようとすると、ふいに周りの人の声が聞こえた。

「ちー先輩っ、今から一緒にお茶しま
 せん?」

「だめ、知菜ちゃんは私とお喋りする のよ、ねぇ?」

「えー、俺らはー?」

「お前ら、白坂に近すぎ、離れろ。」
どう考えても…、ちぃが囲まれている状態だった…。

64:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 20:02 ID:TRQ



「…ごめんねぇ?わたし、知菜ちゃん に用があってぇ、通らせてくれない かなぁ…?」

近くの男子に、ぶりっこ口調を忘れないようにしながら、そう言った。

ここまでぶりっこだと、男子にも女子にも嫌われるのが分かる。
いいの…、私なんて嫌われれば。

一向に、男子の返事がかえってこない事に不安を感じ、ゆっくり顔をあげても、
さっきの男子は、ずっとちぃの方を向いていて、こっちの事なんて少しも見ていなかった。

聞こえてなかったのかな…?

「…あ、あのねぇ、私、知菜ちゃんの 近く行きたいんだけどぉ、少し退い てもらっても良いかなぁ、」

私がもう一度そう言っている途中、その男子に私の言葉は遮られた。

「は?お前みたいなぶりっこといるの 、白坂疲れてんだよ。
 お前と白坂じゃ、格が違う。」
 
その男子は冷たくいい放って、またちぃの方を向いていた。

…何で、何でよ。
確かに、ちぃは皆から好かれて、皆の憧れで…。
私はその優しいちぃに、迷惑かけてるの…?

「…っ、そっか、少し考えれば、分か る事なのにねぇ、…?」

ちぃだけが、側にいてくれるだけで嬉しいの。

上辺だけで、人を判断するようなのとは、一緒にいたくない。

上辺だけで…、
 【あんないじめ】
をしてくる奴等とは、仲良くしたくないの。

だから私は、皆に嫌われるぶりっこを演じて、周囲から人を遠ざけた。

高校生になっても、ずっと一人なんだって思ってた。
仕方ない、自分からやってる事だもん。

なのに、なのに…。

65:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 20:18 ID:TRQ



「わぁ、鈴ちゃん髪さらさらだねー、 羨ましい…っ、私なんてね、朝起き た時とかほんと大変なの!」

めげずに、ずっと話しかけてきて。

「うーん、まーぁ、私はぁ、生まれつ きさらさらなのかもぉ、ふふふー」

どれだけ、うざい発言をしても、
どれだけ、人に嫌われる口調をしていても。

「そうなんだっ!?
 いいなぁ、だからさらさらなんだー
 でも、鈴ちゃん頑張って手入れとか してるんでしょ?」

私の、影の努力に気づいてくれて。
私の心に、するりするりと入っていった。


そんな、優しいちぃに、迷惑をかけてるのは、…私…?

そんな時、遠くから声が聞こえた気がする。

「…… 、あのっ、すいませんっ、
 退いてもらっていいですかっ?親友 が待ってるんです、
 大事な用事なんですっ!」

そう言って、人溜まりの中から抜けてきた…ちぃ。

ちぃを見つけた瞬間、私は思いきりちぃに抱きついて、

「…ごめんねっ、ごめんねっ」

そう、小さい声で言い続けた。

「な、なに謝るの?りん何も悪い事し てないのに…っ?
 …りん、余裕そうに見えてほんとは 弱いんだもんね、大丈夫。」
 
 

66:空ラビ◆mU:2016/01/07(木) 20:36 ID:TRQ



誰よりも、私を理解してくれて。
誰よりも、私に優しくて。
誰よりも、大好きなちぃ。

「…っ、私、ちぃに、迷惑かけてるの ?
 …かけてるなら、私、ちぃから離れ
 てっ、」

「りんっ、ちょっと待って、私りんに 迷惑かけられた事一回もないよっ?
 お願いだから、自分を責めないで」

優しく言葉を遮って、ゆっくりゆっくりそう言ったちぃ。

67:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 15:54 ID:TRQ



私は顔を上げて、涙のせいでで揺らめくちぃを見つめた。

「ここだと…、あれだから、カフェ行 こっか、ねっ?」

ちぃは、子供をあやすような優しい声で、私にそう言った。

私は、いつも通り返事をする。
…でも、やっぱり涙声で震えている。

そんな私の声を聞いて、心配そうに顔を歪めるちぃの心の中では、きっと自分を責めているのだろう。

私には自分を責めないで、というのに、ちぃは自分で抱えてばかり…。

モヤモヤが生まれてしまったけれど、ちぃと話し合う事で、解決出来そう。

私達は、人の多い靴箱で何とか靴を履き、人を避けながら外へと出ていった。

68:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 16:43 ID:TRQ



いつものカフェ。
2人で話すときは、いつもここだと決まっていた。

一番日の光がさしこむ席に、2人腰掛けて、ドリンクを頼む。

5分くらい時間をとって、気持ちを落ち着かせてから、ゆっくり話をした。

「…ねぇ、りん。
 何で、あんな事いったの…?
 私ね、りんの事迷惑だなんて思った 事ないよ。」

その声は、少し寂しそうにも感じられた。
私は、何とか言葉を紡ぎ出す。
大切な親友に、伝えたいんだ。

「…わ、私さ。
 皆から嫌われるぶりっこの口調をし て、人を遠ざけようとしてるのは、 ちぃ知ってるよね。

こんな私でも、仲良くしてくれるち ぃの事、大好きなの。
大好きなんだけど…、私が、ちぃの …、迷惑になってたら…。
ちぃは人気者なのに、私なんかが横 にいるせいで、ちぃの人気が落ちた りして、」

私は、頭を真っ白にしながら、必死に言った。
ちぃの荷物にはなりたくないの。
ちぃのためなら、私が1人にだってなるんだから…。

私が言っていると、ちぃは遮って言った。

「私はっ!私は…、りんじゃないなら 、友達いなくてもいい。」

強い眼差しで、私に訴えかけてくれたちぃ。
ちぃは、その綺麗で少し小さい両手で、私の手をぎゅっと握ると、

「りんといて、楽しいから一緒にいる 。
 りんといたいから一緒にいる。
 簡単な事だよ、それだけなの。
 りんと私は…、

 親友なんだもん。」

暖かい言葉と、ふわりと笑ったちぃに、涙腺はもはや崩壊。

「…っ、ちぃ、これ、からも…、一緒 にいて、い…い?」

「当たり前じゃん。」

涙のせいで、聞き取りづらい声で言った質問にも、笑顔で頷いてくれるちぃの親友でいられる事が、何より嬉しい。

69:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 10:55 ID:TRQ


少し泣いて、たくさん話して…。

ちぃとの時間は、やっぱり楽しくって。
でも、ある事を思いだして、むっ、と唇をつきだした。

「え、えぇ?急になにーっ」

普通の話の時に、むっ、としているのだから、意味が分からないのも当然だ。でもね…、

「ちぃ、何であんなに囲まれてたのっ
 私たくさん探してたのっ!」

むーっという、ふくれた顔で言った私に、ちぃは思わず吹き出してから、

「ふふ、あのね、職員室から出てきた らね…?
 たくさんの人が私に気づいてくれた らしくて、どんどん囲まれて…。
 そのまま、りんに会いに行こうって 思って靴箱にいっちゃったら…。」

あ、ああいう状態に…なるほど。

納得したような表情になる私を見て、ちぃはまた、ふふっと可愛く笑って。

「りん、どうしてそんな事聞くの〜っ ?」

と、分かっているのに、意地悪に笑って言った。

私は、きっ、とちぃを睨んでから、ぼすっ、とちぃに寄りかかると、

「…、親友が取られそうで嫌だった。
 …、やきもち。」

私が、またふくれながらぼそぼそとそういったら、ちぃは笑いながら、私の頭を撫でてくれた。

…やっぱり、ちぃは私の一番の親友。

            番外編 終

70:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 12:01 ID:TRQ



感想や、アドバイス、
書いてくださると嬉しいですっ♪


新着レス 全部 <<前 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新