カゴノナカ

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1:梅っ子:2016/12/10(土) 13:44

このカゴからは出られない。

2:梅っ子:2016/12/10(土) 13:53

「奴隷」それが私の立場だ。主の命令に従って時には主のために命を張って。鳥かごの鳥だ。出られないし、出してももらえない。人権なんてものはない。奴隷は主人たちにとって、物や道具同然の価値なのだから。

3:梅っ子:2016/12/10(土) 13:59

もしも、カゴから解き放たれようことならばきっと、いや、絶対に殺されるであろう。助かりようのないこと立場。平民が泥臭いと主人が言っていた。私たちは?私たち奴隷は、もっと汚い。命令であればクソみたいな主人でも従わなければならない。そう、ゴミくずのような人間にでも。お金を持っている者こそが偉い。そんな世界なのだ。

4:梅っ子:2016/12/11(日) 22:40

「お前、手が動いていないぞ!何勝手に休んでんだよ!?」
「ひっ!も、申し訳ございません!」
また、始まった。ご主人様の八つ当たり。やはり最近儲けが減ったからだろうか。今度は、掃除と肩もみその他もろもろ役のリーファさんか。うわ、酷い。何も胸ばっかり切り刻まなくてもいいだろう。リーファだって奴隷であれど女性なのだから。やっぱり奴隷は奴隷だし、男も女も関係ない。やっぱりムカつく。でも上からも同じ目線からも声はかけられない。でも口を出さずにはいられない。
「ご主人様、ここのところ病も流行っているようですので。いつもは強いリーファですが、きっとリーファも少し風邪気味なのでしょう。ここはひとつお許しをもらえませんか?」
「何だ、俺にやめろと命令するのか?」
本当に、酷い顔。憎い顔。苦い顔。
「いいえ、ご主人様。ただ、そのだらしない怠惰なゴミに触れるのはどうかと思いまして。ならばせめて同じゴミではありますが、まだかろうじて良質なゴミであるこの私めを同じめに、合わせたいめに合わせてはいかがでしょう?」
「ああ、そうだな。おい、そこのお前。ああ、リーファとか言ったか?牢に連れて行け。2日間飯抜きで許してやろう。」
「ご主人様、申し訳ございませんでした。」
そう言ってリーファはゴルザとミレミに牢に連れて行かれた。同じ奴隷同士であるとすごく心がいたむ。
「おい、シアーナ。お前はリーファの罪を肩代わりするんだろ?」
「はい。」
首を縦にふる。
「ではお前は拷問部屋だ。」
「…っ、は…い。」
まさか少し手を休めただけで拷問部屋行きとは。クソ。そこまでとは考えていなかった。でもリーファではなく私でよかった。リーファは体こそ免疫力が強くて病には強くとも、痛みには強くないのだから。それがエルフと人間のハーフの力。リーファは、風邪はひいていないだろう。きっとエルフヒューマンの力でどうにでもなるはずであるから。

拷問部屋に来るのは何度めだろうか。ひどく腐った血の匂いに微かに人の死臭が残っている。とにかく暗くて寒くて汚くて臭い最悪な場所。
私は鎖で手足をつながれ、壁に貼り付けられた。
「シアーナ、お前はいつも肩代わりをするなあ。何故だ?答えない場合は指を一本ずつ落としていくからな。」
「はい…。今日のリーファの場合ならば、リーファはまだ私よりも年下であるからでございます。」
「ほう。では、シアーナお前はどこの生まれだ?」
「私は元々はリャンシーという民族の者で南の砂漠を転々としていたのでございます。なのでどこで生まれたかというのは定かではございませんが…砂漠の神殿に着いた時に生まれたと聞いています。」
「そうか。リャンシー族か。だから暑さに強く、体術から何から何まで揃っているわけか。」
「では…、お前はなぜ俺に指図す、るっ!」
グリっと右腕の二の腕にナイフを突き立てられる。不意打ちだ。
「ぐ…ああああああああっ!」
ジャラジャラと鎖が擦れて音がする。
「お前の家族の名は?」
「い、いえませ…ん。」
右の親指に異変を感じた。親指はすでに地面に落ちていた。その瞬間いきなり痛覚が戻ってきて痛みの世界へ誘う。
「ぎゃあああぁあぁぁ…ぁぁっ!うあ、ああああぁぁぁぁあああぁっ!」
鎖の音と自分の声が混ざってすごく汚かった。

5:◆NA:2016/12/11(日) 22:52

面白いです!続きが気になります…。

6:梅男くん&◆Xg:2016/12/13(火) 01:04

>>5
【そ、そんな…!滅相もございません!でもすごく嬉しいです!できるだけ更新が早くなるよう努力させていただきます。もちろんのことではありますが物語の方も頑張ります( *`ω´)】


(( _ _ ))..zzzZZ


「質問は飽きたなあ〜。次はどうしようか?リーファなら弱めていない死ぬ可能性のある病原菌とか打つんだけどなあ。」
まあ当然効果は薄れてしまうのだろう、リーファならば。
「言いました、よね?リーファにしてやりたいことを全て私にして…いいと。」
余裕は無い。何をされるか目に見えている。予防接種を受けるかのように病原菌を身体に流されるのだ。それも弱めておらず、市の可能性までもがあるもの。
「へぇ〜、今日も頑張るね?いつも人の罪かぶって…楽しい?」
「…いいえ。」
「やっぱりバカなんだねー、奴隷って。学習能力がまるで無いね。」
考えはある。この拷問部屋に痛めつけられてまで通い詰めるように来るのには理由がある。拷問部屋が一番壁が薄い。滅多に使われないことを想定されて作らせたのだろうが生憎にも私のような奴隷がいるものだから声は外まで届いてしまう。
「シアーナ、また質問だ。」
「…はい。」
「お前、ここから出ようとしているな?」
バレていた。
「はい。」
「壁が薄いからか?」
「はい。」
「ゔぁああああああぁっ!」
グサリ、そんな刃物の突き刺さる音よりも声が先に出た。痛い痛い痛い痛い。
「お前はここからは出られない。カゴノナカの鳥だよ。ゴミクズが。そんな悪知恵を働かせる暇があったら儲けが出る方法でも考えておけ。一週間だ。」
「一週間…と言います、と?」
「一週間の飯抜きで今回は許す。お前に死なれては困る。俺の中で一番強く勇敢である前衛のお前にな。働けよ、ゴミ。」
「もったい無いお言葉…!」
鎖は外され、腕と足には痛みで暴れたせいか、足枷の跡が付いていた。これはあざになりそうだ。そう考えながら傷を抑え、汚くて臭くて暗い場所からまた足を踏み出した。

7:梅っ子:2016/12/13(火) 01:05

>>6
【名前がwwwww】

8:◆NA:2016/12/13(火) 16:19

【こういうのが好物なもので…(笑)】

9:梅っ子:2016/12/13(火) 21:23

>>8

【そ、そうっすか!!私も好きです( *`ω´)本当に読んでくれてありがとうございます。】


(( _ _ ))..zzzZZ


「シアーナ!」
「リーファ…。」
リーファとは1日半ぶりの再会だろうか。
「傷だらけじゃない…!ごめんなさい…私のせいで…。今すぐ力で直してあげるから。」
「あんた、午前中はご主人様の護衛の方々の手当てで力使ったんでしょう?無理しないでよ。平気だから。」
「大丈夫よ。ご主人様は今外出中でしょう?」
「傷が治っていたらあなたとすぐにバレるわ。」
「でも…。じゃあせめてこれだけ。」
リーファの両手が右腕にかざされる。淡い緑の光は右腕を優しく包む。
「傷はふさがっていないけれど、痛みは感じないように力を使ったから…ご主人様にはばれないと思うわ。」
「ありがとう…。でも、魔力の残量がもう残り少ないんじゃ…午後からも護衛の方々の手当てなんじゃ…。」

10:◆NA:2016/12/13(火) 21:57

【リーファちゃん… 良い子…(;ω;`)】

11:梅っ子:2016/12/14(水) 18:35

>>9

【リーファは考えているこの中でも特にいい子なんです!初めにゴルザとかごつい感じの名前の子もいましたが、女の子なんです(笑)】


(( _ _ ))..zzzZZ


「はあ、今日は特に疲れちゃった…。」
リーファはぐいっと体を反らした。今日は一応全ての仕事が終わり、就寝の前だ。就寝と言っても粗末なカビ臭い布団を一人一枚かぶって寝るだけの質素なものだ。ご主人様も寝たであろう時間にやっと奴隷は眠れる。こそこそとヒソヒソと言葉をかわす。
「やっぱりご主人様が失敗したのは護衛の方々がやられすぎたからかもしれないわね…。」
「…最近お疲れのようだし、なんだかストレスで八つ当たりしてくる感じですし、原因はそのことかもしれないわね。」
リーファはご主人様のことを思い浮かべながら話す。
「うん。そんな感じ。リーファはあれから何もなかった?」
「本当にご飯抜きの刑だけだったわ。」
それはよくあることだし、その場で聞いていたからわかるけれど。
「そうじゃなくってさ。力使わせてしまったでしょう?」
「大丈夫よ。シアーナも知っているでしょう?私は、元々魔力の量は多い方なんだもの!」
「良かった。でも、また何かあっても今度は助けられなさそうなの。」
「あっ、まさか、バレてしまったの?」
リーファはハッとした顔をして目を合わせた。
「バレていた、んだと思うんだ。でも、ご主人様は気づかないふりをしていたんだと思うんだよ。」
「それって、それをすることでご主人様に何か得する何かがあるってこと?でも、奴隷にすごく厳しいご主人様なのに…。」
「うーん…。でも最近少しおかしいわよね。やけに優しくなった気がするわ。」
「もうわからないや。」
ばさっと布団をかぶる。リーファも同じように行動する。今夜はなかなか眠れそうになさそうだ。

12:梅っ子:2016/12/15(木) 23:07

>>11

【あ、間違って>>9ってしていた…!正しくは、>>10です(・_・;】


(( _ _ ))..zzzZZ


「シアーナ!起きて!大変なの!」
「…ん。リーファ?どうしたの?」
「ご主人様が…右の手首を自ら切って自殺を図ったようなの!ど、どうしよう。」
他の奴隷はこそこそと耳打ちをしていた。私は五感すべてが優れていて、体の丈夫で強い一族に生まれた。耳打ちの内容は丸聞こえだった。
「…今なら抜け出せるよ…ね?」
「…ご主人様…情けない…から抜け出せるに決まってる。」
とりあえずカゴの中から出たい一心の奴隷が多くいた。カゴの中から出たら、もしご主人様が助かったときに私たちは即死刑だ。大事なご主人様の情報を売っているかもしれないから。
「ねえ、シアーナ?聞いてる?今は、私なんかより優秀なエルフが手当てに当たっているの。でもいつまで魔力が持つか…、多分ご主人様、助からない。私たちせっかく仲良くこんな奴隷でもなれたのに…また奴隷商人が来て、また売りさばかれて…また大事な人と、引き裂かれるの?そんなの…ひどいよっ。」
リーファは泣き始めた。まるで売り買いされる自分よりも、売り買いによって引き裂かれる仲の方が悲しいらしい。私は涙を拭うリーファの両手をとった。
「リーファ。私たちはね、カゴノナカ。ずっと出られない。そう教わってきたよね?」
そう、ずっと教わってきた。
「でも…。」
「リーファ、カゴノナカがさ…もしも地球だったら、もしも宇宙って意味なら…私たちはね自由なんだよ。」
「カゴノナカが宇宙…?」
「宇宙がカゴって事…!その宇宙から出られなくてもいい。でも、こんな小さな世界では息が詰まりそう。ねえ、みんなも聞いてよ!」
ざわついていた奴隷たちが口を閉じる。
「私はシアーナ!よく拷問部屋に行っていたバカ!でも今だけこのバカの言葉を聞いて!カゴノナカからでられないって、私たちずっと言い聞かせられてた!でもそのカゴノナカってどのカゴなんだろう!?私は宇宙がカゴだと思うわ。私は宇宙から出る事はできないと思うし、何よりもこんな息が詰まるところで一生を過ごすなんて…出来ないよ!」
涙が今にも溢れそうだ。でもまだ。まだ早い。もう少しだけ。泣くな。
「シアーナ、十分よ。」
リーファが私の前に立った。
「リーファ…?」
「みんな!シアーナの言うとおりよ!私もカゴはこんなところではないと思うの!きっとみんなもそう思っているはずよ!ご主人様は自殺を図るほど追い詰められていた。私たちも一緒よ!ご主人様の最後を見届けてから出発しましょう。自由な世界へ。」
リーファの言葉を聞いてみんながまたざわつき始めた。悪い意味ではなく、いい意味で。すごく顔が生き生きしていたのだ。みんなの顔が。生きる事。死ぬ事。それは案外近くにあって気づいていないだけなのかもしれない。

13:梅っ子:2016/12/16(金) 22:00

まだ、10歳にも満たないような子供の奴隷が一言放った。
「ご主人様は、優しくなったのに死んじゃうの?」
男の子はくいっと首を傾げた。
「シアーナ、私もうわからないわよ…。」
「私は…誰がなんと言おうとこんなところから出て行ってやるんだから!お父さんやお母さんそして妹の事を忘れた事なんて一度もない!それに、拷問の数々も命令も全部許せない!みんなはカゴノナカからでられない!って言葉に惑わされているんだよ!」
息を切らす。言葉がうまく出ない。下手な言葉しか並べられない。
「…シアーナ!もういいの。私はここに残る。」
「リーファ!?なぜ…」
「私は戦う事はできないし役立たずどころか足手まといになってしまうもの。シアーナ、大好きよ。でもあなたにはついてはいけない。あなたと私は大きく違うんだもの。」
そんな事ない。リーファは私がここへ連れてこられた時から一緒で、冷静で落ち着いている言葉が何よりも好きだった。リーファがいない日なんて考えられなくて、リーファの大きな胸が温かくて少し日に焼けた黒い肌も好きで、何よりもリーファが好きだ。私は戦う事になってもリーファを捨てる事ももちろん他の奴隷を連れて行って捨てるなんて事はしない。
「…勝手にすれば。私は一人でも行く。リーファのこと、私も好きだったよ。じゃあね。」
私は大きく地面を蹴った。出口に向かって。突き進んだ。

カゴノソトだ。カゴノソトにでられたんだ。
「こんな鎖…!」
腕の力で鉄の塊を足から取り外した。中々の力だなと自分でも思う。リャンシー族は砂漠の武道族王者である。砂漠の暑さに耐え、砂漠で暮らすのに真っ白な肌が特徴だ。それに五感が優れていて第六感と呼ばれる声。声はどんな動物も従わせてしまう声と言われている。試した事はないが。
「…リーファ、なんで来てくれなかったの…?」
やけにリーファの死ぬ姿が生々しく想像させられた。

14:梅っ子:2016/12/17(土) 09:05

なんで、リーファが…?
「そんなのおかしい…!さっきだって私あんな事言おうなんて思ってなかった…!」
まさか…洗脳の力を持った誰かが私やリーファを陥れたとしたら…?マズイことだ、本当に。ご主人の宮廷へと体の向きを変える。死なないで、リーファ。
「…絶対に、シアーナのところへは行かせないわ!後ろの奴隷も絶対に…!」
リーファは両手を広げ、足を力強く地面に突き立てて声を荒げていた。
「はは、できるのかな?君なんかに。シアーナという奴はさっき出て行ったバカか。事情を把握できず哀れなやつだな。それと、君は見たところエルフではなくエルフヒューマンに見えるのだが?」
「…だから、何よ!」
「…ん?弱いって言ってるんだよ。僕にこんなに簡単に詰め寄られちゃってさ。恐怖を隠しきれなくて肩も…」
するっと男はリーファの方を愛でるかのように撫でた。
「こんなに震えちゃってさ。弱いって言っているようなものじゃん。可愛いねぇ〜。」
リーファは相手の肩を力強く押す。
「離れ…てっ!そんな茶番には付き合わないわよ。私はこの子たちを守る事だけが目的なんだから。」
「…はは。僕ね、君みたいな正義感あふれた子、すごく嫌いだよ?僕はそんな子絶対に抱けないね。」
「抱いて欲しいなんて言ってないわ。そんないかがわしい事をあなたとできるわけないでしょう!さっさと消えなさい!」
リーファは声を精一杯出していた。私はただこの状況を見ているだけ。
「…あー、言う事を聞いてくれないものから、あそこの子少し人質にしちゃおうっと。」
あ、目が合った。バレタ。謎の変な男と。

15:梅っ子:2016/12/17(土) 22:18

「あー、やっぱりそうだ。君、あのエルフヒューマンの言ってたシアーナって子じゃん。なになに?戻ってきたの?助けるために?あーあ。すご〜く足手まといになっちゃうのに…。」
馬鹿にされている。見たところ18歳から20歳ほどだろう。男に両腕を片手で掴まれた。やたらと力がこもっていて腕がちぎれそう…!
「…く、そっ!離せ…!」
体を大きく使って逃げる事を試みるが、敵わない。
「…はは。僕の方が大人だし男だし、女の子の君が力で勝るわけないでしょ?あれ、でも君エルフヒューマンの子に見放されて逃げていくときの脚力半端なかったよね?もしかしてリャンシーの子?」
「…ッ、だったらなに…」
「はーい、注射打ちまーす。」
どこから取り出したのか、注射器で私の右の二の腕から体内に液が流れ込む。
「…あっ!?」
脚がカクンと折れた。もちろん骨折ではないが、力が入らない。手を使って起き上がろうと思ったら手も動かない。
「…痺れ、薬…!」
「そーだよ?リャンシーの子と前戦ったことがあってね〜。力が強すぎてね。それを思い出してさ。コレねー君たちのご主人にも使ったんだよ?その後に手首を切ってさ。もー、暴れる暴れる〜。ウザくて殺しちゃった。」
「…そんな理由で!」
リーファが叫ぶ。
「んでもさ?君たちだってあの男を好いていたわけじゃあなかった。しかも立場はご主人様と奴隷。神とドブネズミじゃん。」
くそ、なんで動かない。肝心な時に、どうして。
「面倒臭いなあ。じゃあ君たちぜーんぶ僕の奴隷にしてあげるよ。もちろんリャンシーのシアーナちゃんもね。じっくり飼いならしてやるよ。」

16:◆NA:2016/12/18(日) 20:59

【とんでもないクズ君が出て来てる…。ウッザァァァ!!(笑)】

17:梅っ子:2016/12/18(日) 21:06

「そんな勝手なこと…私たちは認めないわ!」
リーファは必死に反抗する。
「えー、でもさ殺したやつから利益を得ないと僕殺し損じゃん?だからこの破綻寸前の宮廷と軍と奴隷をもらおうって言ってんの。」
「意味わからないわ!こんなに小規模な宮廷…宮廷とも呼べないし、軍も軍人様たちはそんなに強くもない!」
リーファは言った。涙をこぼしながら。
「何で、また傷つかなければならないの?私たちは心を思いっきり解き放てる場所で生きたいだけなのに…それしか望んでいないのに…」
「リ…ファ…!」
「はいはい。所詮奴隷の言葉だしねえ。ご主人様は僕がこの場で3分間…蘇生させてあげるよ、ゾンビとしてね。そして僕がここの主人になる事を認めさせる。それで文句ないだろう。ご主人様に言いたいことがあるなら、その時に言いなよ。蹴り飛ばしたいならすればいい。切り刻みたければ切り刻めばいい。3分間の間あいつは僕が魔法をやめない限り…無敵になるからね。なにをしようと切り傷は数秒で完治してしまうよ。痛みは本人に届くと思うけどね。」
そう言って男はご主人様の近くに小さな円を描き始めた。…魔法陣か。本も見ずにあんな複雑な魔法陣式を組み上げるなんて…。男は5分ほどで二つの魔法陣式を組み、描き上げた。本当に正確な意味を成す魔法陣なのだろうか。
「…その魔法陣、なにも見ずに描き上げたみたいだけれど本当に正確なもの?もし違うなら…」
リーファがそこまで言うと割り込むように男は口を挟んだ。
「まあ見てなって。僕は失敗なんかしないから。んで?このご主人の名前なに?名前僕が知ってないと術をかけられないんだ。」
「…ヴァラシュ様よ。」
「はい、ありがとう〜。ではでは、コホン。」
男は軽く咳払いをした。それと同時に先程までのようにノラリクラリチャラチャラした印象がなくなるほど目つきが変わった。さっきまで髪の色も目の色もなにも私は気にしていなかったが、全て黒く漆黒の闇を纏ったような闇そのもののような印象を与える見た目だ。
「ヴァラシュ、汝の魂を肉体へ引き戻そう。僕…ゾルヒの力で。さあ、一時の生命を与えよう!蘇るがいいヴァラシュ!」
魔法陣は輝いて黒い煙を発生させた。失敗…?
「…ん、ここ、は、俺の家、か。奴隷どもは…?」
「ヴァラシュご主人様!」
「ご主人様!」
「ご主人様!!」
奴隷が歓喜の声をあげてご主人様の周りを囲んでゆく。
「…リーファ、ナターレ、ミル、ライン、ヴァン、ストーア、ハヤテ、フーラ、ゴルザ、ミレミ。…お前たち…が俺を救ってくれたのか?」
「…いいえ。ご主人様。」
リーファが残念そうにひどく残念そうに首を振った。
「あの者です。あなた様を死に至らしめ、殺した張本人です。」
リーファはゾルヒをピンと指差した。
「私たちがしっかりしていなかったばかりに…」
「はいはいはーい。待ってよ奴隷。僕が先に話するからそこどいてー。はあーい!僕が君を殺したんだけどー、覚えているかなあ?まあそれでなんだけどそこの奴隷のリーファちゃんたちを僕にくれない?なぁーに、君との生活ほど不自由な思いはさせないよ。君の死を先延ばしにしてあげるから、奴隷全員の命と君の命の交換しよう?」
「俺の…命と?」
ご主人様は嬉しそうに返答をした。

18:梅っ子:2016/12/19(月) 19:01

>>16
【ゲスが増えました(笑)ご主人様に加え、まさかのご主人様を殺した犯人のゾルヒ君…!すごーく、変な名前にしたかった!今回もまたコメントをくださってありがとうございます。少しのコメントでも書く元気が湧いてくるので嬉しいです!】


(( _ _ ))..zzzZZ


「俺の命が助かって、奴隷も今より豊かな暮らしができるんだろ?」
「ああ。そうさせてもらうつもりだ。あ、忘れていたが、軍やこの建物も頂くからな。」
ゾルヒは頷いて、付け加えた。
「ははは。構わねえよ。こんな弱い軍なにに使うか知らねえが、こいつらはとにかく弱いぜ。考えて使えよ。まあなんていうか…俺って人生の勝ち組だな。命拾いっていうんだよな?こういうの。おい、奴隷のクズども!この男に逆らうなよ。俺の命も危なくなるんだからよお。」
かん高くご主人様…ヴァラシュは大笑いした。
「な…ヴァラシュさ…ご主人様!何故そのような…!?」
軍人が叫んだ。
「たかが奴隷なんかの命、軍人たちの命なんかよりも俺の命のが大事って話だよ!こんなことも理解出来ないなんてクズ中のクズだな。腐った飯よりも最悪だ。」
ヴァラシュはまだ笑う。澄ました顔で。もう少しで2分15秒そこらだろうか。早く、3分間立って仕舞えばいいのに。
「おい、それは俺の話を飲み込むってことでいいのか?」
「ははは。いいに決まってんだろ!奴隷はまたいくらでも、募り直すさ。軍人たちもな。じゃあなクズどもが。」
「どこか行くのか?」
「ああ。生き返ったことだしな。」
「待て、死ぬまでの期間を教えてやろう。おお、結構長いな。…50秒後だ。死ぬのは。じゃあ、伝えたいことも伝えたし、行けよ。」
「じゃあなゴミ奴隷たち!50年後に俺の死体の目でも潰せるといいなー。なんてな。」
そう手を振ってヴァラシュはあっさりにも逃がされた。
「んーじゃあ、残り20秒。僕、50秒としか言っていないのにバカな男。」
ゾルヒはニタリと笑った。その笑みだけで全てが終わってしまう気さえした。

19:◆NA:2016/12/19(月) 19:05

【ゾルヒ君もご主人様もゲスいよぉ…。確かに、コメントをくれると書く気力が湧きますよね!私も小説書いてるのでそうです。(笑)】

20:梅っ子:2016/12/19(月) 23:24

>>19

【◆NAさんも書いていらっしゃるんですか…!私はぱぱぱーっと考えたのをそのまま式なので、会話ばかりなんですけど…。◆NAさんの小説の題はなんですか??時間があるときに是非読ませていただきたいです!】


(( _ _ ))..zzzZZ


「ねえ?リーファちゃん。君が一番ご主人様想いだったみたいだからお願いをするね?ご主人様…じゃなかった。元ご主人様の残りカスこっちに持ってきてよ。まだその辺にあるでしょ?」
「…リーファ、ダ…メ…ッ!」
リーファ、行かないで。ここでいうことを聞いてしまえばこいつのいいなりになってしまう。リーファはヴァラシュご主人様の奴隷の中のリーダー的存在。それが崩れれば他は崩れるほか道はない。
「分か…りま、した。」
リーファの手を見るとカタカタと震えていた。肩も、足も。引きずっている。すべての出来事を。リーファは、ご主人様の首元の服をつかんでずるずると引きずってきた。もはや持ち上げることもままならないほどの震えということか。
「おお、ありがとう〜。じゃあ消しちゃおうか。これ。」
パチンとゾルヒが右手の親指と中指で音を鳴らす。同時にゾルヒは興奮が抑えきれないようなゾクゾク体に染み込んでくるような笑顔を見せて言った。
「フレイア!」
その言葉は宮殿に響いた。ご主人様は炎に包まれて一瞬で骨も残らず灰になった。
「…リーファ!」
体からそれでも痺れは抜けなくて。カゴからも出られなくて。もう一度やり直したい。人生をもう一度最初から。無理な話だ。手から炎を出す魔法は使えても、今と昔を行き来することができる魔法は存在しない。どうすれば…

21:◆NA:2016/12/20(火) 16:22

【『明日なんて来なければよいのに』
 です!文才無いので下手ですが…。
 あと名前コロコロ違いますが(笑)】

22:◆NA:2016/12/20(火) 16:23

【すいません!
 『明日なんて来なければ良いのに』
 です。】


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