「ねえ、忘れないで。
貴方は此処に居るんだって事。
貴方は一人じゃないんだって事___...」
私が貴方に言った言葉。
貴方は覚えていますか___?
1.シンゴニューム
眩しい、皆が。
___この全てが...
* * *
学校の門を潜った。
もう、此れで此の学校に来ることはない。
此の学校は眩しすぎたんだ___
一年前、私は此の学校に入学した。
あの時は、きっと一年後、自分がこうなっているとは考えもしていないだろう___
「許斐さん、同じ班だよね?
私、紅麗儛凪。
よろしくね。」
折角同じ班になった紅麗...えっと...儛凪って人が話し掛けてくれたのに、何も言えなかった。
分かってる___分かってるんだよ___
言いたい事、喉まで出てきてるのに、明るい此の空気に触れることを嫌がる。
「大丈夫?
私の事は儛凪で良いよ。」
___ありがとう、儛凪。
心の中でそう何回もシュミレーションをして、準備万端なのに...
肝心な所で出てこない。
「あ...ありが...とう...」
やっと言えた言葉は、殆ど聞こえない程小さかった。
儛凪は笑って、私に話しかけてくれた。
私は殆ど返事をすることが出来なかったが。
「許斐さんは、シンドニュームって知ってる?」
___儛凪が言った『しんどにゅーむ』。
私は静かに首を横に振った。
「許斐さんは、シンドニュームみたい。」
『しんどにゅーむ』を私は知らなかったから誉め言葉なのか分からなかった。
儛凪はにこりとも笑わず、唯じっと私の向こうの空を見据えていた___