「ねえ、忘れないで。
貴方は此処に居るんだって事。
貴方は一人じゃないんだって事___...」
私が貴方に言った言葉。
貴方は覚えていますか___?
>>2の文中に間違いがあった為、訂正のお知らせ。
『シンドニューム、しんどにゅーむ』とありました。
ですが正しくは、『シンゴニューム、しんごにゅーむ』です。
「儛...凪...どうしたの?」
やっと言えた言葉は儛凪に吸い込まれるように消えていった。
___儛凪が此の言葉を聞いたかは分からない...
今思えば、此の時に気付くべきだったと思う。
しかし、其れは無謀な話でしかなかった。
「ご、ごめん。
ちょっと考え事してたみたい。
...綾羽って呼んでいいかな?」
あの時の私は、儛凪がさり気無く話題を変えた事に気付かなかった___...
「う、うん。
あの...『しんごにゅーむ』って...」
聞こうとした私の声を遮って儛凪はこう言った。
「ごめん、さっきの言葉、忘れてくれていいよ。」
儛凪はそう言ったけど、その瞳は『忘れないで』と言っているかのようだった。
* * *
儛凪に出会って一週間後、私達はすっかり仲良くなった。
普通に返事も出来るようになった。
あと...
「綾羽、おはよう。」
鳳城耀と言う新しい友達も出来た。
今回は...学校生活が上手くいきそうな気がした。
耀と儛凪は中学校が同じだったらしい。
だからなのか、仲が良い。
羨ましいと思った。
違う。
こんなに綺麗な感情じゃなかった。
モヤモヤとした煙に巻かれ、『嫉妬』と言う黒い渦に自分自身が巻き込まれてしまった。
自分を見失ってしまった___
「綾羽?
どうしたの?」
「ひ、耀...大丈夫だよ。」
元気なのを装って、黒い渦を隠す。
分からないんだよ___
仕方ないじゃん___
「ま...儛凪は?」
咄嗟に話題を変えた。
「儛凪は今日休みだよ。」
驚いた。
儛凪はいつも元気で、休むなんて想像がつかなかった。
儛凪は年々皆勤賞の賞状が増えていっているくらいだろうと勝手に想像していたのだから...
「体調不良?」
耀は少し考えてから言った。
「体調不良なのかな?
検査だよ、検査。」
「え...なんの?」
口が勝手に動いて話していた。
「...綾羽、聞いてない?
あの事。」
あの事?
何も分からなかった。
そんな話、聞いたこともなかった。
「知らない。」
私はそう答えた。
「じゃあ、私が勝手に話すことはできない。
ごめん。」
耀は頭を下げたが、私は何かが沸々と湧いて出てくる気を感じた。
友達なのに...教えてくれないの?
どういうことなの?
聞きたかったけど、聞けなかった___
今更でごめんなさい。
登場人物紹介をしておきます。
『許斐 綾羽(このみあやは)』
人見知りをする。
高校生。
『紅麗 儛凪(くれいまな)』
誰とでもすぐに仲良くなれる。
高校生。
『鳳城 耀(ほうじょうひかり)』
活発で運動神経抜群。
高校生。
雑ですがこんな感じです。
他にも色んな重要人物を出していくつもりです。
翌日、其の日も儛凪は学校に来ていなかった。
「耀...儛凪はどういう状態なの?
教えて...」
耀は暫く黙っていた。
其の儘耀は何も話さず、私の前から姿を消した。
気になって仕方がなかった。
* * *
『しんごにゅーむ』と、スマホの検索アプリにそう打ち込んだのは儛凪が休んでから三日経った頃だ。
何があったのか分からない。
でも、『何か』の手掛かりになるのは、『しんごにゅーむ』だと私の頼りない第六感が疼く。
『シンゴニューム』、其れは植物だった。
日陰でも育ち、過酷な環境下でも育つ...私に全然似てなかった。
儛凪は私の何処を見て、『シンゴニューム』だと思ったのだろう...
儛凪が学校に来なくなって、一週間が過ぎた。
儛凪とそれほど親しくなかったクラスメイトさえも、ザワザワしている。
だが、先生や耀が儛凪の事情を話す気配は全くなかった。
もう、どうだっていいや___
半ば諦めていた。
* * *
そして、週末を挟んだ月曜日___...
* * *
___教室に儛凪の席はなかった...