みんなおかしくなっていく。
今までは普通でつまらない日常だった。
───なのに、何で…。
>>2主人公(後からいろいろと登場人物増えるかもです)
私は怖かったのと、
バフォミンの優しさで涙が出た。
「だ、大丈夫ですか?」
バフォミンはハンカチで私の涙を拭いてくれた。
私は胸が熱くなるのを感じた。
「あ…先に家帰ってていいよ。」
バフォミンはお辞儀をすると、
翼を広げて私の家の方向に飛んでいった。
美里ちゃんはいつの間にかいなくなっていた。
帰ったのかな。
私はとぼとぼと道を歩いていた。
結局、七瀬君の命はなくなったらしい。
私は布団に顔を押し付けた。
>>82
あ、最後の部分おかしかった。
「道を歩いていて七瀬君の命がなくなったと聞き、私は家に帰って布団に顔を押し付けた」
です。
面白いろい。
85:アマテラス◆YQ:2018/07/04(水) 19:54 >>84
ありがとうございます!
>>85
ワイのも見てみて下さい(しれっと宣伝)
適材適所に改行がされており参考にしたいと思いました。まあ、読みやすいという事です。これからも頑張って(`・ω・´)
>>86
ありがとうございます٩( 'ω' )و
頑張ります!
目が覚めると、朝になっていた。
どうやらそのまま寝てしまったようだ。
「…今日は木曜日か」
私は鞄を持って家を出た。
道の途中で、見たことがある人を見つけた。
結月だ!
「あ、麗歌おはよー!」
結月は私に気づくと、
元気よく挨拶をした。
「おはよう、もう大丈夫なの?」
結月は笑顔で頷いた。
本当に大丈夫だといいけど…
学校につき、教室のドアを開けると、
いつもより静な雰囲気に包まれた。
クラスのムードメーカーがいないのだ。
私は近くの子に聞いた。
「和也は?」
「ああ、和也ね。あいつ多分サボってるよ」
和也は成績が少し良く、
そのため教室を抜け出したりしている。
担任の先生も、よく注意できる人ではないから
注意しきれない生徒は放っといているのだ。
屋上に行ってみると、和也が他の生徒と
話をしている。
そして私を見つけたとき、手を振ってきた。
「あ、麗歌!」
「城田ー」
つられて他の子も私を呼ぶ。
「皆何してるの?」
私は皆のそばに行った。
「あそこの病院で今日の夜肝試しするって話」
私たちが住んでいる場所では、
とある廃病院がある。
昔事件や事故がそこであったから、
今ではもう使われていない。
「麗歌も来る?」
和也が誘ってくれ、結局私も
行くことになった。
肝試しなんて小学校の修学旅行以来だから
とても楽しみだ。
その時、授業が始まるチャイムが鳴ったので、
急いで教室に戻った。
今日は体育のテストがあった。
私は体育ができないから、
我慢して行った。
そうして、やっと昼休みになった。
「麗歌、結月も来ることになったから」
和也が教えてくれた。
結月は肝試しに興味が無いのかと
思っていたから、結構意外だ。
「…それで、何時に集合すんの?」
「9時!」
和也は指で示しながら答えた。
意外と遅いんだな…
まあその方が面白いかもしれない。
私はドキドキしながら
昼休みを終えた。
5,6時間目は美術だったので、
楽に終わることができた。
私はすぐに家に帰り、
結月とのチャットを始めた。
和也と遊ぶのは正直初めてだ。
元々男子と遊ぶこともなかったから…
私が懐中電灯を探しているとき、
本を読んでいたバフォミンが声をかけた。
「お出かけですか?」
「ああ、うん…同級生と肝試しを…」
バフォミンは頷きながら本に視点を変えた。
自転車で行っても病院についてから
置く場所が無いので、歩きで行った。
病院につくと、もう皆がいた。
「んじゃ、行こうか」
「待って、鍵はどうすんの?」
和也はにやりと笑った。
すると、和也は近くの植木鉢の中から
鍵を取りだした。
「ここに隠してあったんだ」
どうやら和也はこの病院で肝試しするのは
初めてではないらしい。
ドアを開けると、中はほこりが舞っていて、
とても綺麗とは思えなかった。
「じゃあここから2つに分かれるか」
結局、私は結月と和也と同じグループになった。
別のグループは、行き先が決まったらしく、
もう先に行ってしまった。
和也はドアに鍵をかけた。
「何で鍵かける必要があるの…」
「いや、誰か中に入ってきたら嫌じゃん」
私はため息をついた。
「ねえ、どこから行くの?」
結月はどうやらはやく進みたいようだ。
「とりあえず、ナースステーションにでも行こうか」
私は結月の手を引き、
ナースステーションに向かった。
後から和也も来た。
ナースステーションは、所々に
蜘蛛の巣がかかっていた。
マスコットらしき縫いぐるみが
こちらをじっと見つめていた。
すると、そばにある電話が鳴った。
「ギャーーー!!!」
結月が悲鳴を上げた。
すると、和也は素早く受話器を取った。
「もしもし?…んだよ、ははは」
どうやら、向こうのグループの一人が
遊び半分でかけてきたらしい。
向こうのグループは今、4回の
病室にいるという。
次に、診察室へ行った。
すると、結月が
お医者さんごっこをやりはじめた。
「では城田さん、お座りください」
「…はい」
私が巻き込まれ、
嫌々お医者さんごっこにつきあう
羽目になった。
和也は腹をかかえて笑っている。
「なんかお医者さんごっこって楽しいね」
どうやら終わったようだ。
結月はお医者さんごっこをやったことがなく、
一度やりたかったらしい。
音が聞こえたと思ったら、
和也が棚から注射器を取り出し、
眺めていた。
結月も和也のところへ行き、
注射器を見た。
「これ…血かな?」
注射器には黒い液体が入っていた。
「え、血じゃないでしょ」
結月は怖いのか、
しどろもどろで言った。
廊下へ出た。
懐中電灯で照らしていくと、
ほこりが宙を舞っており、不気味だった。
私はそのとき、
誰かに肩を叩かれた。
振り向くと、
しゃれこうべを持った和也がいた。
「何、それで驚かせたつもり?」
私は昔よくお化け屋敷に行った。
なので、今となっては驚くこともあまりない。
「っていうか、それどこから持ってきたの?」
「いや…そこの部屋から」
和也は指をさした。
しゃれこうべを戻そうと、
その部屋に入った。
…ホルマリン臭い。
中にはホルマリンに漬けられた
生物が置いてあった。
「…いやーな匂い」
結月が鼻をつまんだ。
興味があったので、
一つ一つ見てみることにした。
赤いテープが張られている瓶を
見つけた。
中はテープで見られない。
見てみたかったので、
恐る恐る爪でテープを剥がしていった。
「な、何して!?」
結月の口を和也がおさえた。
「…聞こえたら嫌だろ、何かこっちに
来たりしたらさあ」
和也が言い終わったと共に、
テープを全部剥がした。
中には、手紙と何かの黒い塊が
入っていた。
瓶から手紙を取り出した。
『この生物は失敗作だ。しかし、なぜ
失敗したのかは我々にも分からない。
こいつは今でも生きている、誰かかか
が育てていひいけばここいつはおさま』
ここまでしか読むことができなかった。
なぜなら、このあとの文字は何が書いてあるか
分からないからだ。
次に、瓶から何かの塊を取り出した。
これがその‘失敗作’なのだろうか。
その塊は、大きい虫のようにも見えたし、
小さい人間を無理やり丸くしたようにも
見えた。
すると、黒い塊はいきなり動き出した。
私は驚きのあまり、
塊を落としてしまった。
「きゃっ!え、何これ」
結月が後ずさりをした。
和也は塊をまじまじと見た。
塊は、どうやら
生きているまま瓶に入れられたようだ。
少し動いている。
「うわ、気持ちわりい」
和也は塊から目を離した。
すると、塊から羽のようなものが
生え、パタパタと動かし始めた。
塊はふらふらと宙に浮き、
窓から飛び去った。
「…何、今の…」
振り返ると、結月が目に涙を
浮かばせていた。
「何泣いてんだお前」
和也はへらへらと結月の肩を
小突いた。
「いやだって怖かったじゃん!」
結月は和也を睨んだ。
この二人、なんだかお似合いだな…
私は二人に見とれていたので、
飛んでいった塊のことは
すぐに忘れてしまった。
会話が済むと、
二人の笑顔が消えた。
違和感があるのに気づいたとき、
『ここにいてはならない』と分かった。
廊下から何かが来る。
こちらに近付いてくる。
動物か?
…いや、何かを引きずっているような
音だ。
私は静かに言った。
「…隠れて!」
和也は結月の腕を掴み、
机の下の収納スペースに入った。
結月は戸惑いながらも、
なんとか隠れることができたようだ。
問題は…私だ。
隠れるところが見つからない。
ズルズルと廊下からの音は
次第に大きくなっていく。
考える暇もなく、
私は廊下から見えないように、
机の下に隠れた。
そして、音は
この部屋の前で止まった。
ドクン、と心臓の音が聞こえる。
まだ廊下にはあいつがいるはずだ。
絶対に油断してはいけない。
あいつは何なのか、まだ
姿もわからないが、
良い奴には思えない。
ドアが開く音が聞こえた。
すると、私は今にも
頭が割れそうなほどの頭痛に
襲われた。
痛い。
ズルズルと引きずるような音は、
私の近くで止まった。
私は、
「見つけるな」と
念じていた。
そして、私の横にいる‘何か’は
ズルズルと部屋を出て行った。
私は少し顔を出して、
様子をうかがった。
もういないようだ。
「出ていいよ、二人とも」
そう言うと、和也と結月が
ゆっくりと出てきた。
「怖かった…けど、いなくなって
よかったね」
結月が言った。
いや…
まだこの病院にはいるかもしれない。
とりあえず、廊下に出た。
あいつはもういないだろう。
結月は和也の腕にしがみつきながら、
私についてきた。
あいつから逃げなければならない。
すると、悲鳴が聞こえた。
人の声だ。
だとしたら、向こうのグループの声
だろうか。
「え、麗歌どこ行くの!?」
結月の質問に答える間もなく、
私は走っていった。
声が聞こえたのは、
ホルマリンがあった部屋の上からだ。
急いで階段を上り、
声の主を探した。
病室に入ると、
別のグループの一人が血を出して
横たわっていた。
「大丈夫!?どうしたの?」
彼は腕から血を流していた。
何かに斬られたようで、
傷が深い。
「包帯持ってくる!」
私はそう言った結月を止めようとしたが、
階段を下っていってしまった。
…大丈夫だろうか…
面白いです!宣伝悪いですけど私のも見てくれると嬉しいです😂
109:匿名:2018/07/21(土) 21:44おもろいっす(ё)b
110:アマテラス◆YQ:2018/07/22(日) 12:02 >>108
ありがとうございます_(._.)_
読ませていただきます😌
>>109
ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
何かあったら心配だ。
私は結月を追いかけていった。
携帯を使おうとしたが、
どうやら圏外らしい。
とりあえず、病室にあった電話を
使った。
「もしもし」
「誰!?」
繋がった瞬間、結月が大声を
発した。
「…私だよ、っていうかそんなに
叫ぶ必要あるの?」
私は苦笑しながら言った。
「いやだって幽霊とかだったら
怖いから!」
彼女は焦っているのか、
早口で言った。
どうやら、彼女はナースステーションの
近くにいるらしい。
急いで行くと、結月が手をブンブンと
振っていた。
「麗歌、麗歌!」
「はいはい麗歌ですよ」
オウムのように言った。
包帯が見つからないようで、
一緒に探してほしいという。
「無かったの?」
結月は静かに頷いた。
「あとさ、さっきあそこの部屋から硝子が
割れたような音がしたんだけど…」
指でさされたところを見ると、
一つだけ色が違うドアがあった。
おそるおそるドアを開けると、
そこには…
「バフォミン!?」
バフォミンがいた。
「誰この人」
結月はバフォミンの存在を
全く知らなかったようだ。
「バフォミンと申します。
よろしくお願いします」
「ぶふっ…」
あまりの意外さに
思わず笑ってしまった。
バフォミンの後ろは窓があったが、
硝子が粉々に砕け散っていた。
「何があった…」
「お伝えしたいことがありまして」
伝言…?
何なんだろう。
「麗歌様のお父様が帰って参りました」
…そんなことか。
重要なことだと予想していたから
ずっこけた。
結月はまだバフォミンが何者なのか
分かっておらず、
私とバフォミンを交互に見ている。
「…麗歌様たちは何をなさって?」
「ああ、同級生と肝試し」
バフォミンはそれを聞くと
深く頷いた。
「そうですか、では楽しんでください」
そう言うと、バフォミンは
窓から飛んでいった。
「あ…あ」
「どうしたの?結月」
結月は窓を見ながら
口を開けている。
「麗歌の彼氏に向いてるね!」
「おいおいやめなさい…」
えへへ、と笑った彼女を見て、
部屋を出た。
…包帯を見つけなきゃ。
…こんなことしてる場合ではない。
「包帯なんてどこにあるのかな」
結月はキョロキョロと見渡す。
「分からないけど…
あ、手術室はどうかな。
包帯は無くてもガーゼがあるかもしれない」
名案だとは思わなかったが、
言ってしまったものは仕方がない。
エレベーターまであまり足音を
立てずに早歩きで進んだ。
エレベーターで地下まで降りると、
手術室のドアが開いていることに
気付いた。
廊下を進むと、
足音が響く。
化け物が来たら厄介だな…。
手術室で誰かが死んだという噂は
聞いたことがない。
だから、いきなり
幽霊が飛び出してきたりすることは
多分ないだろう。
「もうついた?もうついた?」
「あと少し…」
結月は目を閉じながら
進んでいる。
手術室についた。
手術台や器具が
生々しく残っている。
ガーゼか何か傷を押さえる物が
きっとあるはずだ。
何かが足にぶつかったので、
拾い上げた。
消毒液だ。
消毒液も必要だが
まずガーゼがなくてはならない。
「麗歌ー、あった…」
結月の方を見た瞬間、
結月の顔が青ざめるのが分かった。
ズル、ズル…
引き摺るような音が聞こえてくる。
ズルズル…
それは何を引き摺っているのかは
分からない。
私は確かめたくなってきた。
そいつが何なのか知りたいから。
「ちょ、麗歌…?」
私は早足で廊下に出た。
音はどんどん近付いてくる。
私は壁に隠れながら
そいつをちらりと見てみた。
…匍匐前進?
暗くて顔はよく見えないが、
肘で進んでいるのは分かった。
だんだん近付いてくる。
顔がどんな感じなのかは
だいたい分かってきた。
…黒目しかない?
目の部分は黒く、
白目がよく見えなかった。
そして、私との距離が狭まったときに、
もっと恐ろしいことに気付いた。
こいつは黒目しかないのではなかった。
『目が無い』のだ。
私は口元を押さえ、
手術室に向かわずに廊下にあった
ソファの陰に潜んだ。
…あ、結月。
そいつは手術室に向かって
いっている。
わざわざ匍匐前進しているのではなく、
下半身がないから肘で進んでいるのことが
分かった。
…結月は隠れた?
…結月が危ない目に遭ったら私のせいだ。
手術室にズルズルと
そいつは入っていく。
私は入ってきた様子を見計らって、
結月を助けようと後を追った。
手術室に行き、手術台で身を隠した。
向こう側にあいつがいるから、
慎重に結月を助けないと…
…結月?
手術室のドアが少し揺れたのが分かった。
同時に上半身だけの化け物は、
手術室を出て行った。
結月はどこに隠れているのだろう…
私は化け物が去って行くのを
横目で見ながら、結月を探した。
どんなに探しても、いなかった。
どこに行ったのだろう…。
「麗歌?」
手術室の向こう側のドアから
結月がのこのこと歩いてきた。
「どこ行ってたの…!?」
私は結月に抱きついた。
「え?トイレ行っただけ」
「…え?」
…
「うん、ちょうどトイレが近くに
あってさ」
どうやらドアの奥にある廊下を進むと、
トイレがあるらしい。
「麗歌は何で逃げてたの?」
…こいつ、ウザイな。
そこが好きだけど
手術室の奥に行ってみる。
化け物に会った恐怖で
自分の目的が分からなくなりそうだ。
廊下は蜘蛛の巣が
所々にはってある。
近くにあった部屋に入ってみた。
何の部屋かはよく分からないが、
棚の中に包帯が入っていた。
見つけたならすぐに
怪我をした子のもとへ行かなければ…
結月の手を引き、
病室に向かった。
階段を上り、廊下を進む。
廊下にあるドアを開ける、
廊下を進む…。
病室に行くと、
傷を負った男子がベッドで
横たわっていた。
私は傷の上から包帯を
手早く巻いた。
「あ…城田さん、ありがとう…」
「それより、何があったのか
教えてくれる?」
話によると、
背が低い何者かに襲われたという。
暗くてよく見えなかったが、
やはり匍匐前進をしていったらしい。
「…ふふっ」
結月は匍匐前進の化け物の
姿を知らないので、笑っている。
なぜ彼を狙ったかも分からず、
肝試しをやめようということになった。
急いで病院を出ようと、
和也はドアの鍵穴に鍵をさした。
ガチャガチャと鍵を回すが、
なぜか開かない。
和也は動きを止めると、
何かを呟いた。
口パクだったが、
『開かない』と言っているのだろう。
他の人が鍵を回しても、
なぜか開かなかった。
…別の道を探すしかないのか…。
また二手にわかれるのは面倒なので、
皆で出口を探すことにした。
「くっそー…何でだよ…」
和也は髪を掻き回し、
結月は怯えて私の袖を掴む。
非常口から抜け出せるかもしれない。
地図があったので非常口の場所を
見てみたが、結構遠いことが分かる。
地図通りに行けば何とか
たどり着きそうだが、
変な匍匐前進の化け物がいるから怖い。
私たちは足音を立てずに非常口へ
向かっていった。
非常口に着き、ドアを開け…られない。
扉には鍵穴は無かったが、どうやら
災害があったときに自動で開く仕組みに
なっているようだ。
「じゃあ、扉のロックを解除しないと
開かないみたいだね」
結月が名探偵のように言う。
「俺こっち見てみる!」
和也がいきなり走り出した。
同時に、他の皆も行ってしまった。
「え…」
結月は固まってしまった。
…団結力というのはないのだろうか。
「はあ…私たちも皆を追うか…」
私は結月の手を引き、
廊下を進んだ。
バタバタと足音が響いてくる。
化け物に会わないように
静かにしてほしいと念ずるしかない。
めっちゃ面白い!(少し怖いけど)
131:アマテラス◆YQ:2018/08/10(金) 21:32 >>130
ありがとうございます(血涙)
「はあ…」
結月とトコトコと歩いていると、
後ろから音が聞こえてきた。
ズル…ズル…
「えっ…」
結月が立ち止まって後ろを向く。
向こうから、あいつがやってくる。
「ここに入って!」
私は結月をトイレの個室に
押し込み、鍵をかけさせた。
私はあいつを観察したいので
壁の死角に隠れた。
ズル、ズル…
…なんか、様子が変だ。
目が無いとはいえ、
もう少し速く進むこともできるのでは…?
鈍い音と共に、化け物は
壁にぶつかった。
「あうっ!」
どこからか可愛らしい声が聞こえてき、
化け物の中から女の子が出てきた。
どうやら女の子は目の無い化け物の
マスクをし、わざわざ大人用の上着を
着て、化け物に見せかけていたようだった。
「ママァ…」
女の子は泣いてしまった。
どうしようかと迷っていると、
キッズ携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
すると、向こうからお母さんらしき人が
走ってきた。
「利香…!」
女の子は利香というらしい。
でも、何でこんなことを…。
「おい、何やってんだ」
向こうからいかつい男の人が
やってきた。
「泣いてないで、さっさと立て」
男の人は利香ちゃんの髪を掴み、
無理矢理立たせた。
「もうやめて!
この子は奴隷じゃないのよ!」
「うるさい!」
鈍い音が聞こえたかと思うと、
女の人はその場で倒れた。
「これも仕事のためなんだよ!」
利香ちゃんは号泣している。
「新聞のネタにするために仕方なく
やっていることなんだよ。何しろ
ここは俺が元々いたところだからな」
男の人は元々この病院の医者で、
今は新聞記者?をやっているようだ。
「でもこの子を使わなくてもいいでしょ?」
「何をしようと俺の勝手だ!」
鈍い音が鳴り響く。
ついに、女の人は何も言わなくなった。
「ママー!!」
男の人は利香ちゃんを睨むと、
向こうへ去って行った。
「ママ…うっ…」
私は利香ちゃんに近付いた。
「ママが、ママが…」
でも、私にはどうすることも
できない。
利香ちゃんのお母さんは
体の至る所にアザがあった。
よっぽど父親からの暴力が
酷かったのだろう。
結月が辺りを見回しながら
私たちのところまで来た。
「えっ、えっ」
結月は個室に入っていたため、
何が起きたのか分からなかったようだ。
「ママーーー!!」
利香ちゃんは走っていってしまった。
すると、和也がみんなと
向こうから走ってきた。
「解除できたぞ」
和也が解除できるほど
非常口が柔だとは思わなかった。
結局、私たちは利香ちゃんのお母さんの
死体をどうすることもできずに
肝試しを終えてしまった。
家に帰り、寝室に行くと、
机にたこ焼きが置いてあった。
「お帰りなさいませ!」
バフォミンがまたたこ焼きを
買ってきてくれていた。
「ただいま」
私は少し微笑んでたこ焼きを
頬張った。
気がつくと朝になっていた。
疲れてそのまま寝てしまったらしい。
気晴らしに外へ出ると、
近所の人と警察が集まっていた。
「あ、麗歌ちゃん!ほら」
近所のおばさんが手招きをした。
私はみんなに近付くと、
なぜ近所の人が
集まっているのかが分かった。
お父さんが死んでいる。
警察によると、今朝殺されたという。
とっさに家に戻って新聞を見た。
どうやら最近通り魔がここら辺に
いるらしい。
私は父親が死んだことを
認められなかった。
バフォミンに泣きつくと、
優しく私の頭を撫でてくれた。
「通り魔がまだ捕まっていないなら…
まだ警戒しなければいけませんね…」
バフォミンは翼を広げて外に出た。
「何か買ってきましょうか?」
断ったけど、一瞬で彼はコンビニで
おにぎりを買ってきた。
すると、物陰から何かが飛び出してきた。
「『ヘル・アロー』…!」
バフォミンはそう唱えると、
何者かは数メートル先に吹っ飛んだ。
「いったいなあ…何すんのよ!」
吹っ飛ばされた人をよく見ると
着物を着ていて、
猫耳と尻尾が生えている。
「はっ、すみません…
通り魔が出ると聞いてつい…」
バフォミンは深くお辞儀をした。
「まったく…」
私はその猫耳の女性と目が合った。
「あんた、あたいが見えるのかい!?
あたいは夜巡(よめぐり)!あんたは?」
夜巡と名乗る女性は私の手を握った。
「れ、麗歌…」
「それより貴方、人間じゃないようですね」
バフォミンが夜巡さんを見つめる。
「ああ、あたいは猫又だよ」
「猫又、ですか…」
「何か文句ある?」
「い、いえ…」
夜巡さんは結構気が強い…。
「あたい住む家が無いのよねー、
だからこうやってトボトボ歩いてんのさ」
「あの…よければうちに来ませんか?」
私がそう言うと、夜巡さんは
顔を輝かせて頷いた。
バフォミンは唖然としている。
その時は肝試しのことなんか
忘れていた。
あとからあの真相が分かるなんて
思いもよらなかった。
「ここが麗歌んちかー!
広くて綺麗ね」
夜巡さんは部屋を隅々まで見ている。
恥ずかしいけど仕方がないことだ。
「あんた家族いないの?」
「うへっ!?」
急に聞かれたもんだから
思わず変な声が出てしまった。
「あまり聞かないでくださいよ、
麗歌様のショックは大きいんですから」
そりゃそうだ。
私は幼い頃にお母さんを亡くしている。
そしてお父さんが殺されたから、
ショックは大きい。
夜巡さんは少し俯いた。
「結構最近変なこと起きてるんですよね…」
夜巡さんはお菓子をムシャムシャと
食べている。
「変なことって?」
「なんていうか…怖くて危ないことが
起きている気がするんです」
私の語彙力で説明するのは
難しかったが、
夜巡さんは理解してくれたようだ。
「ま、麗歌に何かあったら
あたいが守るからね」
─私を守ってくれる人がいる。
そう思うだけで嬉しかった。
「そうですよ、麗歌様。
私たちがついてますよ」
なんとなく、
バフォミンがイケメンに見えた。
「ふわ〜、眠くなってきた」
私がそう言うと、
バフォミンは布団を敷いてくれた。
「あ、ありがとう…」
二人に見守られながら、
私は眠りについた。
しばらくしたら目が覚めた。
トイレに行きたかったわけじゃないが、
何かに起こされるような感覚があった。
バフォミンと夜巡さんがいない。
「もしかして夢の世界だったりして」
私は部屋から出た。
変な空間だ。
別に暗闇ってわけではないが、
どこか複雑な色の空間だ。
「うっ…」
私は光に包まれた。
気がつくと、商店街のような場所にいた。
店のようなものが並んでいるが、
何の字かわからない。
日本語ではない。
「お母さーん」
前から子供が走ってきて、
私とすれ違った。
振り向くと、
子供は女の人と手を繋いで歩いて行った。
あの女の人、私のお母さんに似ているな…
面白いなあ
147:アマテラス◆YQ:2018/08/30(木) 13:02 >>146
めちゃんこ嬉しいです!
ありがとうございます!
変な夢だな…。
すると、急に肩を叩かれた。
後ろを向くと、
魚の頭をした人間がいた。
「…ブハハハハハハハ!!」
私は大笑いしてしまった。
でも、だんだん魚人間を見ているうちに
笑えなくなってきた。
「ニゲナサイ」
そう言うと、魚人間は消えた。
逃げるって、何から…?
そう考えていると、
べちょ、と私の頬に何かが付いた。
血、だ。
上を向かない方がよさそうだ。
べちょべちょと
私の周りに肉片と血が落ちてくる。
私は声も上げずに逃げた。
後ろから何かが追ってくる音が
聞こえた。
これは、本当に夢なのか?
駅のようなものを発見し、
即座に入っていった。
後ろからは何も追ってこない。
ほっとして、電車に乗り込んだ。
電車には誰もいない。
ただアナウンスが聞こえるだけだった。
「本当にどこなんだろ、ここ…」
窓から外を覗いてみたが、
トンネルの中なのか、風景なのかも
分からないくらい暗かった。
もしここが別の世界だったのなら…
この世界に食べ物があったら食べてみたいし、
店があったら入ってみたい。
私は恐怖というよりは
観光に来ているかの気持ちだった。
電車はまだ駅に着かない。
今スマホを持っていない状態だったから
すごく暇だった。
私はその場で眠りについた。
はっと我に返ると、
駅に電車が着いていた。
とりあえず降りる。
至って普通の街、に見えるが…
月があり得ないくらいに大きい。
息を呑み、その街へと向かった。
しかし、人間がいない。
化け物がうじゃうじゃいる。
化け物は私を通り過ぎる度に
二度見をする。
「はあ…こんなときにバフォミンが
いたらなあ…」
私は近くの店に入った。
http://ha10.net/up/data/img/26332.png
下手ですが、だいたいキャラのイメージはこんな感じです。
手前の黒髪の子が麗歌で、右の子が結月です
「バフォミン…うーん…」
店に入ったとき、
奥から男の人?が小走りできた。
バフォミン?
「いらっしゃいませ!」
「いるのかよ!」
思わずこけそうになった。
「え?」
その人はよく見るとバフォミンとは違って
羊の被り物をしている。
「バフォミンのライバルか?」
私も自分が何を言っているのか分からない。
羊の人は混乱している。
「まあ、いいや…」
私は椅子に座った。
「あ、何かお飲みになりますか?」
そうか、ここは飲食店だったのか。
「あ…はい」
私はこの状況がよく分かっていない。
だから何を答えたらいいのかも分からない。
羊の人はお辞儀をしてから店の奥へ行った。
この世界が夢ではないのなら、
地球よりも技術が進んでいるのだろうか。
それとも、何かがこの世界を支配しているの
だろうか。
考えると頭が混乱する。
「お待たせしました」
羊の人がテーブルの上に禍々しい色の
飲み物を置いた。
「何これ」
置かれた飲み物をまじまじと見る。
何かが飲み物の中で浮き沈み
しているようだ。
「ドルチェ・ヴァンパイアです」
ドルチェって音楽の世界では
「優しい、柔らかい」という意味らしいが、
どうもそうには見えない。
とりあえずストローに口をつけ、
ジュースを吸ってみる。
見た目と違って甘かった。
「…美味しい」
「そうですか、ありがとうございます!!」
羊の人はスキップをしながら
店の奥へ戻っていった。
店の中隅々を目で確かめる。
私は寝るときあまり夢を見たい人だ。
でもこんなに鮮明に見える夢は
初めてかもしれない。
奥からまた羊の人が出てきた。
アイスクリーム、をくれた。
どうやらサービスらしい。
食べるとほんのりイチゴの味がした。
しかし、どうやって
元いた場所へ戻るべきか。
アイスクリームを食べながら店を出る。
…怖い。
危険を感じた、というよりかは
自分の存在に恐怖を覚えた。
生暖かい風が吹き、
思わず後ろを振り返る。
さっきまで明るかった場所がなぜか暗い。
気のせいだろうか?
気にせずに街を歩き、また後ろを向く。
特に何も変化はない。
ほっとして前を向くと、
「こんにちは」
人形がいた。
「や…ギャアア喋ったあああ!?」
人形が喋ったのを間近で見ると
恐怖しか湧いてこない。
人形は首をかしげ、こちらへ歩いてくる。
…来ないでほしい。
「何で逃げるの?」
私の足元にやってくると、
これでもかというくらいに首を曲げる。
ポキッ
首が外れた。
私は声が出ないまま固まっていた。
「やだ、いっけなーい」
人形は首を付けて元通りになった。
「あなた、名前は?」
人形に問われるも、うまく声が出せない。
「…ひぇっ」
勇気を出したら変な声が出た。
人形はクスクスと笑っている。
「言わないと、刺すわよ」
人形は一瞬で真顔になり、
目を見開いてナイフを私に突きつける。
「麗歌!麗歌!」
私は自分の名前をすかさず言った。
そのとき自分の名前に感謝をすることができた。
「麗歌ね、私はレイラ。
人間と話すことがあんまり得意じゃないの」
「え、この世界に人間がいるの?」
私が問うと、レイラはナイフを腰にさした。
「そりゃいるわよ。来て」
彼女は私の手をとり、走り出した。
息ができなくなるほど走ると、
レイラは私の手を離した。
「見て、あそこ」
レイラは細道を指差す。
誰かいるようだ。
ニット帽を被り、マスクをしているから
男か女かも分からない。
本当に人間なのだろうか。
気がつくと、レイラはその人のもとへ
行っていた。
「麗歌ー!こやつ人間だったわよー!」
こやつって言ったよな今。
「あなた、名前は?」
ナイフを突きつけるレイラ。
ナイフ好きだなあの子。
「言うからナイフを下ろしてくれ」
レイラが舌打ちをして腰にさすと、
その人はため息をついてニット帽を整えた。
そして「優」とだけ名乗った。
性別が分からない。
「あの…非常に失礼ですが
性別はどちらでしょうか」
私が尋ねると優さんはマスクと
ニット帽を外した。
「男!?」
私は思わず叫んでしまった。
レイラはぽかんと口を開けている。
口パクで「てっきり女の人だと」と
言っている。
優さんは男性だった。
言葉では言い表せないくらい
整った顔をしている。
七瀬君よりかっこいい、と思ってしまった。
屑だ、私。
「んで、何のよう?」
はっと我にかえる。
「この世界について何かご存じですか?」
優さんはうつむいてスマホを取り出した。
私もつられて取り出す。
圏外、ではなかった。
でもやっぱり電話をするのはやめよう。
きっと誰も信じてくれないだろうから。
「麗歌、お腹空いた」
レイラが私の袖を掴む。
可愛い、と思った。
「私お金ないわ今…」
そう言うと、レイラはむっと
頰をふくらます。
ふと優さんの方を見ると、
なぜか私の方をチラチラ見ながら
スマホをいじっている。
怖いくらいに真剣にスマホを
いじっている。
何か分かったのだろうか。
優さんは動きを止め、
スマホをパーカーのポケットに入れた。
「ここは君が創り出した世界、
とでも言っておこうか。
ま、そのうち元の世界へ戻れるよ」
と彼は言った。
「そのうちっていつよ!?」
レイラが優さんに殴りかかろうとしたので、
必死で止めた。
私が、創り出した世界…?
どういうことなのかさっぱり分からない。
私がこの世界にあるものを望んだわけでも、
誰かに会いたいとも思っていないのに
なぜ“私の世界”が生み出されてしまったのか?
「要するに、君の好奇心から生まれた世界
っていえば分かるかな」
私の好奇心から生まれたのであれば、
優さんも私が創り出したのか…?
急に恥ずかしくなってきた。
多分私の顔は真っ赤だろう。
そうこうしている内に、
空は明るくなっていた。
レイラは「来たわね」と呟く。
優さんもそれにあわせて頷く。
「来たって、何が」
私は宙に浮き、空へ吸い込まれた。
目が覚めた。
全身は汗でびしょ濡れになっている。
怖かった、ただそれだけだ。
着替えて外に出る。
「せっかく会った人もすぐにまた
会えなくなっちゃうんだよなあ…」
石を蹴る。
電信柱にコツンと当たる。
その瞬間に自分だけ
この世にいてはならない存在なのかなと思った。
周りが変わっていくのを感じ、
背筋が凍り付く。
いずれ私もその世界に巻き込まれ、
自分ではなくなるのだろうか。
時が経つのが早いな、と
改めて感じる。
その時が流れているうちに
何が起きてこうなったのだろうか?
「ん?」
悲鳴が聞こえた。
何かあったのだろうか。
嫌な予感がして一目散に
声がした方向から逆の方向に走った。
悲鳴が大きくなっていく。
「…気持ち悪い」
誰かが叫んでいるのであれば、
助けた方がいいのだろうか?
そのとき、後ろから叫び声が聞こえた。
後ろから…!?
『目の無い女』が叫びながら立っていた。
どれくらい走ったのだろうか。
気付けば知らない場所にいた。
耳をすませると、叫び声が耳に入ってくる。
「け、警察を呼ばないと…」
「もしもし?警察ですか?
目が無い人が追いかけてくるんですけど」
「何を馬鹿なことを言ってるんですか?
イタズラなら切りますよ」
何度も説得したが、仕舞いには
切られてしまった。
なぜなら、女の声は聞こえるのに
一定の距離まで近付かないと姿が見えないからだ。
ブツブツ愚痴を言いながら家まで歩く。
どうせならもうあの女に捕まってもいいのでは?
そう考える自分がいる。
親も失い、地獄のようになってしまった日々は
もう過ごさなくてもいいのではないか?
「腰が痛い…」
背中を反らす。
あまり運動しなくなったので
体が鈍ってきたようだ。
「キャアアア」
悲鳴を無視する。
はやく家に帰りたい。
「麗歌様!なぜそんなにむあえぶえす!?」
バフォミンが来てくれたが、
焦っているのか、
正直何を言ってるのか分からない。
「ああ、なんかもう疲れちゃって」
適当に答えると同時に悲鳴が聞こえる。
「妙な雄叫び…」
バフォミンがボソッと言うと、
手から光を出した。
「おお…」
中二病かと思ったが、
まあ悪魔だからそれくらいできるだろうと
自分を安心させた。
悲鳴が近くなってくる。
バフォミンは光を向こうへ放った。
同時に目の無い女が現れる。
「あ」
一瞬申し訳ない気持ちになった。
「あ、ええ…」
女はあたふたしている。
バフォミンが横でフンと鼻で笑った。
「すみませんでした」
女はそれだけ言うと、
走り去ってしまった。
私は思った…
「何がしたかったんだ」と。
「ま、まあ一件落着したことだし、
帰ろうか」
そう言うと、
バフォミンと笑いながら
家に帰った。
「おかえり」
夜巡さんがエプロン姿で
玄関に来る。
「お風呂にする?ご飯にする?」
それとも、と言いかけたところで
「お風呂」と即答した。
バスタブに浸かりながら考える。
家の中なら安全なのではないか?
バフォミンもいるし、
化け物に会うこともない。
変な夢は見るが、
外よりかはマシだと思う。