“深淵唱詩”

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1:アビス◆wc:2017/10/12(木) 06:11

思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。

電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする

今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る

レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ

何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”

135:アビス◆wc:2017/12/15(金) 23:05

「言ノ葉の魔法使い」

私は
魔法使いである

あらゆる言語を使い
新たなる呪文を創り出す者

世や人は
其を詩と呼ぶ

私は憧れた
サムボリスト・アン・ノワァルに

其の者は何時も
黒ずくめの帽子と
マントを愛用し

仲間と共に
複雑難解な言葉記されし
高度な魔導書を読み更けていたと云う

其の者の創造せし呪文は
現代においても
数多を惹き付け魅了する

私も又
惹き付けられた者の
一人故

魔法使いと
なった

未だ未熟な
魔法使いだが

私なりの
呪文を描きし
魔導書は

これからも
思いつければ
書いていこうと思う

136:アビス◆wc:2017/12/18(月) 21:51

「傲慢女王 首バケツ」

女王の声は
民の耳に良く通る

民の声は
女王の耳には届かない

女王は
肥えている

民は
飢えている

女王は云う
飢えているのなら
食べ物を食べれば良い

民は云う
食物は何処に在る

女王は指す
其処らに在るじゃない

民は指す
虫や雑草の事か

そうよと
女王はケラケラ

ふざけるな
怒れる民

逆らう者は
首斬りで
兵に女王が命ずる

斬首の民は
バケツの中

絶対独政の
傲慢女王
其の姿は

獅子か孔雀か

吼えて荒げ
絢爛装飾

だが其れも
長く続かず

斬首台の上に
女王が居る

取囲み
未だか 未だか
待ちわびる民

女王の姿は
何処にも無い

在るのは
牙無き獅子か
尾羽根毟れた孔雀か

ギロチンは
首を斬った

女王は
バケツの中だ

137:アビス◆wc:2017/12/20(水) 21:24

「叶わぬ夢は己為の娯楽」

遠き座に在りて
手元に残らぬ銭程
虚しい物は無い

朝から夕迄
己の時を贄にし
生くる為に働いた

己が何れだけ
働いたかは
紙に記された

数字のみぞ知る処

紙を持ち乍
私は帰路に着く

皆で働かねば
生活は成り立たない
だが少しでも

娯楽は在る
片方だけだが

もう片方には
殆ど無い

くれる余裕は
無いと云い乍
片方の娯楽を楽しむ姿は

正直羨ましい

余裕は無い事は
知っている
だから私は

我慢を
し続けている

賞与すらも
生活の為に
捧げた

本当は
己の為のみに
使いたかった

叶わぬ夢を
持ち乍
私は今日も働く

目の前の
人参を食べられぬ
馬の様に

138:アビス◆wc:2017/12/21(木) 22:17

「脳界探人」

彼の者の
脳界は
実に不思議だ

階段は
階段の意義を
成してはいなかった

空の色は
目眩がする程の
橙と黒が

白砂を歩いていたら
生物は住んでいない
汚濁な海で

否 生物はいた
生きていない物だったが

コクリコの様に
赤い森の中で
桃色の象が

酔っ払いみたく
機嫌良く踊っている
近付いたら

頭蓋を
潰されそうに
良く見たら

怒って
暴れているのだった
危ない 危ない

案内の
猫と足跡が
跡絶えた

目の前に
杉の木と鋸が

切り倒したら
元の世界へ
帰れたが

戻れなかった

139:アビス◆wc:2017/12/21(木) 22:27

「炬燵漫談」

炬燵の上に
蜜柑が篭に一杯
其の一つを剥いて

口へと放り
端からも見て
自分達からも見て

下らない漫談を交わす

蝸牛と蛞蝓の違いは
何か
答えは殼が在るか無いかと

仲間が云う

では美女や美男の
定義とは何かと
仲間が云う

私は云った
人は性格以前に
見た目を見る

顔と体だろう

幾ら性格が
良くとも

顔と体が
良く無ければ
異性は振り向きにくい

そうだろう

剥いた
蜜柑の皮で
熊が出来た

此方は
皮が途切れずに
此処まで長く剥けた

今度鍋をしようか
材料は如何する

何か適当に
一品ずつで

世間では
其れは鍋では無い
闇鍋と云うんです

炬燵の上で
広がる
漫談と笑いは

下らないが
平和で或

140:アビス◆wc:2017/12/22(金) 22:17

「賽子賭天獄博」

丁か半か
さあ何方だ
選べと急かす

半だ
奇に賭けて
よござんす

賭けた結果は
丁で
負けざんす

又負けた
畜生もう一回

賭ける物は
未だ有るのか

嗚呼 有るさ
自らの命を
賭けてやらあ

次で
倍以上に
してやるよ

あんたさんの
たった一つの
命は

此の二つの
賽子に
委ねられやした

切った
張ったの
丁か半か

選びなすって

今度は丁だ
偶に賭けて
よござんす

結は果にして
如何に

ピンゾロの丁で
ございやす

救われやしたね
賽子に

此れが有るから
止めらんねえ

次のチンチロ
有り金全て
賭けて

賭博長者と
なってやる

丁か半か
何方を選び
天を見るか

獄を見るか
丁に次も賭けてやる
さあ結果は

如何に

おや
あんたさんの
負けでござんすね

有り金全て
戴きやしょう

序でに
命も
戴きやしょう

半でやんすから

141:アビス◆wc:2017/12/23(土) 16:55

「達磨の愛し君」

達磨になった
気持ちって
どんな気持ち

歩ける
立つ事
出来ないよね

お風呂も
ご飯も
日常生活全て

私が居なきゃ
いけないよね

なのに君は
一度も私を
愛しちゃいない

其れ処か
礼も無し

今から私が
君から離れたら
何が出来るかな

歩く足が
無くなって

食べる手も
失って

其の全てを
やっている
私が

でもね
ごめんなさいって
云えたら

私を愛して
くれるなら
許してあげる

其の為に
口だけは
残してあげたんだ

手と足は
何処かと
聞いたね

手はもう
返したよ
君の中に

足も今から
返してあげよう

口を開けてよ
でないと君に
返せない

いらないなら
私が貰うよ
私の中に

ごめんなさいって
良く云えたね
いい子 いい子

でも恐怖から
私を
愛さないでね

心の底の
底から

私を
愛してね

愛し君の達磨さん

142:アビス◆wc:2017/12/23(土) 17:11

「御伽語 夜共浦」

細波白立つ
青の海
其処に似合わぬ

亀苛めの餓鬼達
のろまだ 蹴ってやる
痛みに耐え

助けを願い
現れは
腰簑履きし

釣青年
金で餓鬼釣り
亀助けん

助けた亀に
連れられて
向かいた先は

海底に在りし
絵不描なる
美しき竜宮城

迎えたるは
竜宮の姫君

暫く居なさい
この城に

貴方に退屈
させません
昼の時も

夜の時も

昼は魚が
舞い踊り

夜は
体の遊戯を
致しましょう

楽し時を
過ごし続けて
幾星霜

帰りに
渡された
玉手箱

海から
久しく
地を踏みしめ

母の元へと
急ぎたるも
母は亡し

村の者達は云う
放蕩息子の
お帰りだ

お前の母は
帰りをずっと
待ち続けた

出ていけ
親不孝者が

さ迷う青年
箱を開けるも
僅かな飾り物

時が経ちて
砂浜を
虚ろに歩く

一人の翁

翁は
探し続ける

亀よ
出てきてくれ

其して私を
もう一度
あの場所へと

143:アビス◆wc:2017/12/23(土) 17:27

(作者ヨリ)

此処に書いている詩全ての
題名が決まった故に
載せていきます

引き続き詩の感想を
お待ちシテオリマス
(荒しや悪口は犬に喰わせます)

144:アビス◆wc:2017/12/23(土) 17:53

最初に載せるのは
何を“もちぃふ”にしたかとか
“しりぃず”系から

145:アビス◆wc:2017/12/26(火) 21:17

…どうしよう
無くしてしまった“のぉと”を…

146:闇竜の騎士◆qA:2017/12/27(水) 21:35

おー!久しぶりに来たらレス伸びてる!相変わらず上手いねぇ

147:ねこさ◆pU:2017/12/28(木) 11:04

久しぶりです。
アビスさんの詞はやっぱり素敵です!新しいのも待ってます

148:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:17

>>146 >>147
嬉し過ぎるわぁ…(嬉泣)
今此処で“たいとる”全部書くから
其れ迄待っててね。

149:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:24

第壱部
>>23>>24
『灰ノ姫』(シンデレラ)
>>25>>26>>27>>28>>29>>30
『少女ノ不思議』(アリス)

150:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:29

第弐部
>>32>>33>>35
『文字館 好奇猫』
>>37>>38
『七人岬 罪数』
>>42
『御伽語 何方葛』(舌切雀)

151:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:36

第惨部
>>44>>45>>46>>47
>>48>>49>>50>>51
『磨羯鋏』(狼と七匹の子山羊)

>>54>>55>>56>>57>>58
『御伽語 猿蟹奇譚』(猿蟹合戦)

152:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:41

第肆部
>>59
『竜胆女 加』
>>71
『竜胆男 虐』
>>61>>62>>63>>64
『御伽語 火茅兎』(かちかち山)
>>65>>66>>67
『災笛』(ハーメルンの笛吹き男)

153:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:47

第伍部
>>69>>70
『怪少年』
>>73>>74>>75
『文字館 愚ノ冒険者』
>>83
『文字館 遣蝙蝠』
>>76
『ネクロ性愛』
>>77
『睡眠フィリア』
>>78
『オキュロ愛好』

154:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:50

第陸部
>>97>>98>>99>>100>>101
>>102>>103
『哀愚の人形師』

>>107>>108>>109>>110
>>111>>112>>113>>114
>>115
『フロイント・アーデル』

155:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:54

第七部
>>121
『焼豚』(三匹の子豚)
>>125
『文字館 弧ノ主』
>>142
『御伽語 夜共浦』

156:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:59

第捌部
>>1
『幽追歌』
>>2
『喰魚』
>>3
『黄泉歩』
>>4
『曰招』
>>5
『恋病女』
>>6
『二添』
>>7
『誰か』
>>8
『魔カ宴』
>>9
『螺折』
>>11
『悪戯角灯』

157:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:06

第玖部
>>12
『南瓜の報復』
>>14
『小箱親』
>>15
『鶏絞』
>>17
『林檎化族』
>>21
『一夜限道化』
>>60
『氷女王』
>>72
『華汚』
>>79
『赤クレヨンと少年』
>>80
『色山羊に妄呵責』
>>81
『吉遊情事』

158:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:13

第拾部
>>82
『兎に思ひ 角も人』
>>85
『洗い髪のヴイナス』
>>87
『桜花の正腐虫』
>>88
『泥壺』
>>89
『大正明暗混々』
>>91
『惰する操人ノ形』
>>92
『嫉蛇妬犬』
>>116
『金満虚心』
>>117
『王は故に である』
>>118
『喜亡生叫』
>>119
『人形が遊ぶ』

159:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:21

第拾壱部
>>120
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』

160:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:28

第拾弐部
>>133
『釘と標本』
>>134
『脳界異探』
>>135
『言ノ葉の魔法使い』
>>136
『傲慢女王 首バケツ』
>>137
『叶わぬ夢は己為の娯楽』
>>138
『脳界探人』
>>139
『炬燵漫談』
>>140
『賽子賭天獄博』
>>141
『達磨の愛し君』

161:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:29

やっと…全部書けたぜ…
これで新しいの書ける…
早速書こう

162:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:36

「罪光」

罪の色は
闇に例えられる

罰の与色は
光と例えられる

では
光の罪は無いのだろうか

闇の罰は
聞いた事あるが

光は
凡百物を照らし出す

其の誰もが
光の中で
生きて行ける訳では無い

闇の中でしか
生きていられ無い者もいる

だが光は
闇を潰さんと
輝き続ける

目が眩む
開けては
いられない

光よ
全ての闇を
かき消さんと

照らし続けるのは
やめてくれ

闇でしか
安寧を得られぬ

我等の住を
奪うな

罪光よ

163:アビス◆wc:2017/12/30(土) 17:41

『厨の歌』

右目が疼く
我が目に宿りし
索敵の眼が

闇に潜む
我が敵の所在を
教えてくれる

其の敵は
我にしか
見えぬ故に

我にしか
討てぬのだ

幾度となく
狩りし物の血で
手を濡らし

狩りし物の骸で
道を歩んだ

其処に我以外
何も無い

我の友は
骸である

164:アビス◆wc:2017/12/31(日) 23:04

「酉から戌へ」

今年も時は流れ
新たなる年が始まる

今年を守護せし
干支の酉は

次の年を守護する
戌へと襷(たすき)を渡す

人間に有る百八の
煩悩打ち消す
除夜の鐘が

ごぉーんと鳴り

酉はコケェ
戌はワンと鳴いた

165:アビス◆wc:2017/12/31(日) 23:07

(作者ヨリ)
>>164の詩について

今年も終わりなので
即興で書いてみたよ

では皆さん!
良いお年を!

166:アビス◆wc:2018/01/03(水) 22:03

「自傷王国」
(スーサイドキングダム)

とある国の
住民は
皆何故か

傷がある
どうしてなのかと
聞いてみた

それが
この国だと
住民答え

また傷を作る

腕に
カッタアを当てて
スパリと切った

流れる血を
周りも本人も
止める気は無い

これでもっと
褒めて頂ける
あの方に

突如現る
全身傷だらけの
女の人

女王だ
女王様だ
喜に沸いて

血が飛沫く

住民よ
今日も素敵ね
傷だらけで

光栄です
お褒め頂けるなんて

さぁ皆さん
今日も張り切って
傷を作りましょう

傷を作れば
美も醜も
関係無いんです

平等になれるんです

此処は
自傷王国だ

そう呟き
足に畳み刀を
突き刺した

そうした方が
良いと思ったから

女王様の
仰せの侭に

167:アビス◆wc:2018/01/04(木) 21:22

「自傷規則」
(スーサイドルウル)

奇妙至極たる
其の規則

自分で
傷を作りなさい

傷を作る
部位は
何処でも良い

でも
彼岸の方へ
逝っては

いけません

他人に
傷を付けられたら

付けた方も
付けられた方も

斬首台で
仲良く
斬りましょう

使う物は
何でも
良いのです

鋏でも
カッターでも
氷穿棒でも

兎に角
傷を作れば
良いんです

誰もが
従わないだろう
其の規則

でも
住民は
従がっていて

其れでいて
幸福そうだ

平等だから
皆傷付いて
いるのだから

168:アビス◆wc:2018/01/05(金) 23:20

「自傷女王」
(スーサイドクイーン)

今日も
平等ね
私の国の

住民達は

やっぱり
正解だったわ
自らの傷を

作るのは

最初は皆
恐くて震えて
反発もあったっけ

でも私は
女王だから
住民に見せしめた

先ず自分の足に
釘を刺した

次に
熱した鉄棒を
腕に押し付けたの

住民は其の度に
悲鳴を
上げていたわ

でも私には
私を讃える
歓喜に

聞こえたの

否 そうに
違い無いわ

そうじゃないと
駄目なの

私が
自ら模範に
なったら

自分達で
傷を付ける様に
なったのよ

嬉しいな
判ってくれて

ほら見てよ
住民達が
楽しそうに

傷を付ける
姿を
幸せそうでしょう

平等でしょう
だから私の国は
争いが無いの

平和なの

どうやら女王は
民を憂う余り
心に重症を

負ったようだ

だから彼女は
女王なのだ

169:アビス◆wc:2018/01/08(月) 20:52

「忘れられぬ 忘れられた物」

人が造りし
人に富を
与えたもう物は

大地の嘆きに因って
崩された

其の時に現れた
見えない災は
人に寄り添い

人を蝕んだ

其の禍根は
子孫にも
現れる

常と異なる
姿となって

そして其れは
人以外の
生物とて

例外では無い

茸は化け
魚や獣
動く物は皆

人が造りし
富に因る
災にて

まるで
神話に出てくる
混成獣と化した

其れにも関わらず
人は時が経てば
忘れる生物

新に生まれる
子達に
語り継げようか

忘れられぬ
忘れられた物よ

嘗ての
人の居た場所は
緑の地となりて

170:アビス◆wc:2018/01/09(火) 21:42

「人時計」

人が持つ
時計は
皆其々

違うらしい

刻む時の
速さは
ゆっくりなのか

早いのか

刻む時の
早い時計は
ゆっくり進む事は

無い

刻む時の
遅い時計は
早く進む事を

強いられる

だけどどちらにも
止まる時は
何時か来る

早い分
止まるのが
早い訳では無い

遅い分
止まるのが
遅い訳でも無い

人の持つ
時計と云うのは
判らない

だが
早いのか
遅いのかは

其の人を
見れば
判る事

171:里予獣先輩:2018/01/09(火) 21:55

「人時計」なかなかいいゾ

172:アビス◆wc:2018/01/10(水) 00:52

>>171
ありがとう!

173:アビス◆wc:2018/01/10(水) 20:28

「脳界脱法」

どうすれば良い
自分の体に
戻る方法は

脳界に
長く居すぎた
桃色の象が

長鼻を振り回し
怒り狂うて
追って来てる

走った
走ったのだけれど
象が思ったより早い

白砂に潜む
ヤドカリが
足をつまづかせ

象が踏み潰した
私ではなく
ヤドカリを

ヤドカリは
バラバラの
片になっても

ウゴウゴと

こっちだよ
白黒の少女が
手招く其の方へ

危を免れた
でもまだ
根本的問題が

脳界から
脱するには
どうすれば

探人は問う
少女は云った

金の鍵を
探しなさいな

この脳世界の
何処かに有るよ

少女は消え
声のみが響く
嘲笑か

戻りたいと
思っては
いるようだけど

其れが
本当に
貴方にとって

喜終と
なるのかしら

174:ゆ◆z6:2018/01/10(水) 23:04


相変わらず難しい言葉多くて解読が少し難しいけど、
やっぱり世界観がめっちゃ好き!

声はかけれてないけど、ちょくちょく顔だして読ませて貰ってるよ(-'ロ'- )


175:アビス◆wc:2018/01/11(木) 20:16

>>174
うぉわあああ!?
本気(マジ)でかあぁぁ!
ありがとうおおぉ!

あー…矢張り難しいかぁ。
何気(なにげ)に
昔の言葉とか使ってるからなぁ。

176:アビス◆wc:2018/01/11(木) 20:24

「強か狐と欲針鼠」

瓦屋敷の
其の下で
怪しく取り引き

狐と針鼠

鼠は差し出す
狼の皮

狐は
鼠へ渡す
山吹の束

鼠はそそくさと
袖の下

何時も
有難い
御狐様

いえいえ
此方こそ
御鼠様

狼共は
私等にとって
疎ましい者でと

鼠が口開き

狼の皮は
高く捌ける
ものでと

狐が
手摺擦り

強欲狐と
針鼠

クックッと
笑う二匹の影を

狼が見ていた
窓の外から

177:アビス◆wc:2018/01/12(金) 19:12

「憤怒の月下狼」

疾走る
疾走る
狼が

憤怒を
其の身に
たぎらせて

どうしてだ
どうして
他に疎ましいと

思われてるだけで
同胞があの様な目に
遭わねばならない

奴等め
許さぬぞ

喉笛を
喰い千切り
助けを乞えない様に

膓を
喰らい漁り
臓物其処等に

散らしてやる

瓦屋敷の
其の下で
狐と針鼠が

己等の
私腹を肥やして
笑っている

狼は
声を荒げ

狐の喉笛を
喰い千切り

針鼠の
腹を
喰い破り

狐と針鼠
どちらの臓物か
判らぬ程に

散らしに
散らした

憤怒に
呑まれた狼は

血光る
月下にて
又声を荒げた

178:アビス◆wc:2018/01/12(金) 22:48

「脳界橙黒空」

橙と黒の交じる
空の上にある
意味の成していない

階段を
歩いていたら
何かがいた

赤子のいない
乳母車を押す
鴉の羽が生えた

乳母がいた

おぎゃあ
おぎゃあと
泣き止んでくれないのよ

なんでかしらと

乳母は
空の乳母車を
指差し云う

確かに
泣き声はする
でも姿は何処に

橙黒空に
一匹の幼鳥が
飛んでいた

坊や坊や
私の児よと
乳母が云う

危ないから
降りて来て頂戴

乳母の警告も
素知らぬ顔で
橙黒空を飛ぶ

幼鳥よ
乳母鳥に抱かれた
其の世界を

全ての世界と
誤りて認した
気分はどうだろうか

嬉しいか
恐ろしいか
其のどちらで

幼鳥よ
お前は鳴いている

坊や坊や
もう戻って来ないのね

私の子
この腕の中に
もういないの

179:アビス◆wc:2018/01/13(土) 17:35

「脳界市場」

扉があった
其の先を潜ると
市場の様な

行き交う人々に
顔は無くとも
すれ違う度

此方を
見てくる
其の視線に

悪意は無く
又善意も無い

此処は何処かと
聞いてみた

市場だと
人は答えた

成程

商品を
見てみた

鴉の首が
突き刺さっている
棒があったり

片腕の無い
双子に

様々な色の
髪の束

割る口が
何処にあるのか
胡桃割り人形

お勧めは
何れと
聞いてみた

人は答えた
この南瓜だと
美味しいのだと

其れは
南瓜と呼ぶには
とても形容し難く

肌色の硬皮
割ったら赤い
種は白く

葉の色は黒くて
蔓の色は
中身と同じく

赤く滑りがある

金の鍵は
此処に無さそうだ

何も買わず
出て行く私を

商と人は
黙って
凝視していた

また直ぐ
賑やかになった

180:アビス◆wc:2018/01/14(日) 22:13

「脳界心晶森」

金の鍵は
何処に
当ても無く只歩く

ふと周りを
見てみる
木々は全て

水晶で
とても幻想的

地面はまるで
絵の具の
中身を撒いて

全て混ぜた
何の色と
判らない

此処は
心の中だろうか

だとしたら
水晶の森は
大人を表していて

彩色の地面は
子供の部分か

目の前を
何かが
横切った

金の鍵を
頸に下げた
猫だった

追いかけた
追い付け無い

猫は時々
此方を向いては
ニャアと一鳴き

歯を見せて
ニヤニヤ笑う

木の上で
余裕尺々眠る猫

木を蹴つたら
簡単に捕まえた

猫から
金の鍵を奪い
帰れると思つた

猫は云つた

蹴つたニャア
蹴つたニャア
心を蹴つたニャア

桃色の象が
赤になつて
お前を

踏み潰しに
来るニャア

笑い乍
猫は消えた

181:アビス◆wc:2018/01/16(火) 09:05

「脳界怒濁象」

金の鍵を
手に入れた

象がいない
今なら帰れる

白砂に現れた
無機質の扉の
鍵を回そうとしたら

汚濁の海より
現れた

怒りに因り
桃から赤へ
変わった象が

津波を
起こして
扉は白砂の

向こうの方へ
流された

コクリコの様な
赤い森から

杉の木茂る
森へと変わる

杉の木薙ぎ倒し
怒濁の象は

踏み潰さんと
追って来る

根につまづいた
もう駄目だ

怒濁の象
眠り転ける

余りの怒りに
身体が
追い付け無かったか

今度こそ
扉を回し
元へと帰ろう

帰って来たが
帰れない

私の身体
燃えている

めらめら
ぱちぱち

少女は現れ
こう云った

だから云ったのに

182:アビス◆wc:2018/01/16(火) 20:55

(作者ヨリ)

今皆の詩をチラリと
覗いてみたけど

清い恋愛系が多いなぁって思う
其して其れを上手に書ける皆が
正直云って羨ましい

私の詩は「歪」な「愛」なら何とか
書ける。
「清」な「愛」は不得手だ。

だから私の詩は皆より
「質」が「異」なるなのだよ。
「不思議」なのだよ。
只其れだけだ。

183:アビス◆wc:2018/01/17(水) 17:22

「一一七の詩」

又一つ
あの時を
迎える

かつて荒れた地に
恐れを抱き乍

災に呑まれし者達への
鎮魂の儀が

一九九五 一一七の
午前 五四六

災禍の襲来

地は盛り
天へは
黒炎吐かれ

人の造った
生命の線は
容易く切れた

其して代わりに
人が
積み重なった

天地に
刻まれた
其の傷は深く

人の心にも又
深い傷が

だが人は
立ち止まっては
いられない

手を取り合い
復興を

忘れまじと
碑を建て
館を建て

言の葉描きし
蝋燭に灯をともせ

祈りを捧げよ

災に呑まれた
御魂の為に

今此の瞬間を

生きる者達よ

其して語り継げ

災を知らぬ
者達へ

184:アビス◆wc:2018/01/17(水) 21:19

「星と共の」

人よ
御前達が
造りあげた

星々より
強き光放つ物を
消してはくれないか

星の歌が
聞こえないから

星は瞬きで
歌を紡ぐんだ

人の様に
口を持たないから

若し星々に
口が或るのなら

瞬き乍
歌うのだろうね

人が定め
名を付けた
星々は

古の人が
そう見えたから
そう付けたんだ

名を付けられた
星々は
如何思うのだろうか

人は何かを
疑問に思う時
馘をかしげるけど

星はかしげる馘を
持たない

若し星々に
馘が或るのなら

疑問に
思うのだろうね

我等は
人間には
そう見えるのかと

今日も空を
見上げるか

星の歌を
聞く為に

望遠鏡と
清涼珈琲水を

共にして

185:アビス◆wc:2018/01/19(金) 19:13

「思い想い重い」

思いが
想いになって

其の想いが
重いになった時

人は如何いった
行動を
起こすのだろうか

最初に
君を見て
思ったよ

嗚呼君は
其んな感じかと

其して私は
其んな君を
想う様に

なったんだ

でも君には
他の想い人がいた

私じゃ駄目かな
其の想い人は

君との思い出は
楽しかったよ

会えない時は
電話で
話したよね

私は照れて
何も話さなくて

君も照れて
直ぐに電話を
切ったんだよね

手紙も
送ったんだよ

でも君は
全く返事を
くれなかった

或れは流石に
傷ついた

今から
君の所へ
会いに行くよ

君への想いを
持ち乍

私の重いを
届けなきゃ

君への想い人は
此の私だけ

待っていてね

186:アビス◆wc:2018/01/20(土) 22:09

「薬黙録」

其れは

吸ったり
飲んだり
打ったりして

快楽を得る物

一度味わって
仕舞えば虜となり

もう二度と
人には戻れない

其れが魅せる
まやかしが
切れれば

現実と云う
地獄が待っている

夢と現の
境目で生まれた

幻覚と幻聴が
責めに
襲い掛かって来るから

幾ら幻に
叫ぼうが
喚こうが

消える事は
無い

だから又
其れに
手を伸ばす

逃れる為に

今の自分の姿を
見て御覧よ

顔色は如何だ
歯は何本有る
髪は

今の啓発広告に
其れの恐ろしさを
伝える力は無い

昔は有ったさ

だが
怖いと云うだけで
今から姿を消した

ほら又
欲しがってる

其れに
助けて貰えると
思って

だが違うんだ

其れは
助けてるんじゃ無い

187:アビス◆wc:2018/01/21(日) 21:16

「影陽」

目が覚めると
何時も誰かが
膝枕をしている様な

感触が有った

でも私以外
人なんて
居ないのに

判らない侭
私は又
眠りに尽く

夢の中で起きた
妙な言葉だが

黒い影が
膝枕を
していた

黒い影は
私の顔を
覗いていた

目は無く
鼻も無い
口は有ったが

影の手は
私の頭を

幼児みたく
慈しみて
撫でていた

目線を
上に遣る

顔面を
削がれた
二匹の金魚が

くるくる
くるくる

回り乍
泳いでる

其れを見て
私は又
眠くなる

夢の中で
妙な言葉だが

黒い影は
眠る私を見て

ニコリと笑って
子守歌を歌った

眠れ眠れ
可愛い児

今日の辛い事を
全て忘れて

此の安寧は
他でも無い

貴方だけの物だから

閉じて
開けよ

陽光が
御早うと
云っているから

188:アビス◆wc:2018/01/22(月) 00:34

「鬱屈と爪」

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

父指
母指

順番に噛む

鬱屈が溜まると
かじりたくなる

口の中に貯まる
爪の破片

其れ等全て
鬱屈の破片

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

兄指
姉指
赤子指

順番に噛む

ぽろぽろ
ぽろぽろ

口の中から
出て来る

爪の破片

床に落ちた
爪の破片は

抑え切れない
鬱屈の表れ

勿体無いから
何時もの
瓶の中へ

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

けれども
噛む爪が
存在無い

だけど
噛ま無きゃ
落ち着か無い

じわじわ
じわじわ

血が滲む

爪と皮の
かじり過ぎ

ぽたぽた
ぽたぽた

血が落ちる

溜まった血は
落ち着きの表れ

勿体無いから

ぎゅうぎゅう詰めの
瓶の中へ

189:アビス◆wc:2018/01/22(月) 09:43

「愛目」

目隠しをされた
君が目の前にいた

カタカタと
震えている

寒いのかな

だから僕は
暖める為に
君を抱き締める

君は云った
何で私は
目隠しを

されているの

僕は云った
君の事が好きで

僕は
恥ずかしがり屋
だから

君に姿を
見られたく無くて

家に帰して
此処は何処なの

何を云ってるの
君の家だよ

違うよ
此処は私の
家じゃない

御免ね
間違えた

君と僕の
家だった

君は今は
視界が
判らない

だから僕が
手を引いて
あげよう

嫌がっている
様だけど
まぁ良いや

目隠しが
解けたら

本当に

無くして
仕舞えば

良いだけ

190:アビス◆wc:2018/01/22(月) 21:21

「崇」

貴女は今日も
素敵です

有り難うと
微笑む姿は

正に
僕にとっての
女神様だ

貴女の
云う事ならば

僕は
喜んで
聞きましょう

重い物とか
持ってあげる

持って苦しんでる
貴女を
見たく無いから

飲物とか
欲しいなら
直ぐに持って来よう

僕だけに
有り難うと
云って下さい

僕だけに
其の微笑みを
向けて下さい

若し貴女が
鬱屈の捌け口を
求めてるなら

僕を
捌け口に
して下さい

打って下さい
貴女の拳で

蹴って下さい
貴女の足で

貴女の手で
此の命が
果てようと

僕は何も
惜しく在りません

寧ろ
喜こばしい
事なのです

だって貴女は
僕の女神だ

其して僕は
貴女の

下僕
なのですから

191:アビス◆wc:2018/01/23(火) 18:05

「頭見」(ずみ)

ねぇ知ってる
人は歳をとったら

頭に雪が
積もるんだ

でも空から
降って
積もる訳じゃ無い

知ってる哉
人は歳をとったら

頭に蛍を
飼い出すんだよ

中には
富士山に
なるのも

有るのだけれど

若いみそらでも
頭に何かを
飼い出す人はいる

例えば
鶏とか

此の國の
四季みたく

人の頭も又
四季折々である

192:アビス◆wc:2018/01/23(火) 20:32

「七大罪の徒」

楽園より
云いつけを守らず
追放されし

アダムとイヴ

彼の者達が
侵した原初の罪

其れと共に
解き放たれた
七大罪の徒等

傲慢の徒たる
獅子と孔雀
地を切り刻み

嫉妬の徒たる
蛇と犬
水に毒を

憤怒の徒たる

燃える血を

怠惰の徒たる

育みを止め

強欲の徒たる
狐と針鼠
命を奪う

暴食の徒たる
豚と蝿
天を喰らい

色欲の徒たる
山羊と蠍
汚れを生む

七つの罪は
やがて

父と母たる
原初の罪へ
還る

後に生まれる
人間等の為に

193:アビス◆wc:2018/01/24(水) 17:16

「茶会の詩」

甘いケェキが
食べたいわ

ケェキは一体
誰が持ってるの

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃ無い

私は私は
苺よ

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃない

私は私は
スポンジよ

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃない

私は私は
クリィムよ

じゃあ一体
誰がケェキを
持ってるの

私よ私
苺が答え

私よ私
スポンジ答え

私よ私
クリィム答えた

私だけじゃ駄目
苺が云い

私だけじゃ駄目
スポンジが云い

私だけじゃ駄目と
クリィムが云った

貴方は誰なの
苺が問い

貴方は誰なの
スポンジが問い

貴方は誰なの
クリィムが問うた

私は私は
ケェキじゃないわ

其れでも私は
貴方達の仲間

私は私は
紅茶よ紅茶

194:アビス◆wc:2018/01/24(水) 21:39

「銃と鳥」

青い空に
鳥が飛ぶ

其処に
向けられた
鉄の銃口

ぱぁんと一つ
音鳴った

ばさばさ
翼のはためかせ

ぼとんと
墜ちた

血と息
途切れ途切れ

首を持って
途切れ途絶えた

195:アビス◆wc:2018/01/24(水) 21:42

「狩られ」

何時までも
狩りし者で
有れると思うな

最初に知り
最期となった

爪で皮と臓を
切り裂かれ

牙で骨を
ボリボリ砕かれた

地に伏し
眠る獅子の横で

血に伏したる私

196:アビス◆wc:2018/01/25(木) 21:22

「蛙の解剖」

蛙を捕まえた
昔から有る
あの実験を

私はずっと
やってみたかった

下呼鳴く蛙を
押さえつけ

臍に天を
仰がせた

手術用短刀を
蛙に中て

上から切って
縦一文字

赤くたらたら
流れる液は

鳴く蛙を
鳴か無い
蛙に変えた

開いた腹から

ヒクヒク動く
蛙の臓物

まじまじと
観察していた

触れてみた
生暖かい

其して
柔らかかった

トクントクンと
脈打つ心臓に

一突きしてみたら
たらたら流れる
赤い液は

だらだら
流れて

全部が全部
動か無くなった

其う云えば
此の蛙は
如何なるのだろう

埋めたらいい
棄てたらいい

197:アビス◆wc:2018/01/26(金) 20:42

「玩具遊べ」

ぱぁぷう
ぱぁぷう
玩具のラッパ音

箱から
出てきた
ガチャラガチャ

皆勇し
行進 行進
ザッザッザッ

お隣さん家へ
遊びに行こう
ニコニコ笑顔

今晩は
お隣さん家の
玩具達

寝惚け眼を
擦ってさ

でないと
貴方達のお八つを
食べちゃうよ

其れが
嫌なら
遊ぼうよ

皆で一杯
遊んだよ

ぽこぽこ
叩いたり

ひゅんひゅん
物を
投げたりさ

きゃはは きゃはは
楽しいね

ぱぁぷう ぱぁぷう
玩具のラッパ音

帰ろう 帰ろう
箱のお家に

一杯
眠って
また遊ぶんだ

198:アビス◆wc:2018/01/28(日) 00:02

「心の中歌」

一人で
何処か別の世界へ
行こうと思っていた

首に紐を
掛けてみた
けど行けない

炭を焚いてみた
けど行けない

眠る薬を
飲んでみた
けど行けない

水に
入ってみた
けど行けない

何故だろう
何故邪魔を
するのだろう

何処か
別の世界へ
行きたいと云うのに

此の世界から
疾く去りたいのに

理由を
聞かれれば
飽きたとしか

云い様が無い

一人で行くのが
虚しく
なってきた

此んな気持ちを
残した侭
行けたとしても

きっと心には
後悔しか
残ら無いだろう

其処の人よ
若し心の中の
気持ちが

同じならば

私と共に
来ては
くれないか

二人で行こう
誰にも
邪魔を

されない様に

199:アビス◆wc:2018/01/28(日) 21:29

「ケェキの歌」

苺が云った
紅茶は何処に

クリィムが云った
ケェキを探しているよ

スポンジが云った
紅茶は知らないの

私達が
ケェキだと
云う事に

紅茶は聞いた
ケェキは何処と
ラスクに聞いた

ラスクは云った
ケェキじゃないから
僕は知らない

クッキィに
聞いて御覧

紅茶は聞いた
ケェキは何処と
クッキィに聞いた

クッキィは云った
ケェキじゃないから
私は知らない

苺と
クリィムと
スポンジに

聞いて御覧

でも個別に
聞いちゃ駄目

三つ一辺に
聞くんだよ

紅茶は聞いた
ケェキは何処と

苺とクリィムと
スポンジに聞いた

私よ私よ私と
一辺に云った

気づいた
気づいた
漸く気づいたの

ケェキは私達

誰も欠けちゃ
ならないの

だから私達が
ケェキなの

200:アビス◆wc:2018/01/28(日) 21:39

「深淵因り出づる」
(200スレ突破記念詩)

私の詩を
善か悪かと
問うならば

人は悪だと
云うだろう

私も書いて
そう思う

私は日常が
得意では無い

非ィ日常が
好きなのだ

皆は
綺麗な詩を
書けている

其れが
多々暗くとも

だが私は
全く違う

兎に角
暗いのだよ

一時は
皆が書く
綺麗な詩に

憧れた

だが私は
光に手を伸ばし

此の身焦がされ
滅っされる事を

恐れる故の
臆病者

だから私は
不思議と
云われる

暗き
詩しか
ほぼ書けんのだよ

我 深き淵因り
出でし者なり

其処から連なりし
凡百闇よ

我が身を
包みて

光焦がれぬ
者へと…!

201:アビス◆wc:2018/01/29(月) 21:16

「玩具×戦=(イコォル)」

音楽鳴った
始まるんだよ
玩具の遊び

積み木のお城を
組み立てよう

相手より
立派に高く

積んで積んだら
整列だ

足並み揃えて
一二一二

構え用意は
元気良く!

旗を掲げよう
自分達の
志と誇りを乗せて

わぁわぁ騒げ
けちらし目指せ
相手のお城

今だ!くずせ!
やれそこだ!

がしゃあん崩れた
お城が崩れた

やぁやぁ勝利
我等の勝利!

ファンファアレを
吹き鳴らせ

相手の上で
吹き鳴らせ

響き渡れ
我等の
勝利の音!

202:アビス◆wc:2018/01/30(火) 21:22

「青い鯨の印」

鯨よ
青い鯨よ

貴方は
陸にあがって
ひとりぼっち

さみしいから
歌を大きな声で
歌っているのね

とても良く
響いているわ

私は印として
鯨を腕に
刻んだの

貴方の為に
青い鯨よ

貴方の歌を
聞いていると
何も怖くなくなるの

何回も傷を
作るのも

線路の
上に立つのも

きっと貴方の歌は
生きる価値と
気力を奪うのね…

鯨よ
青い鯨よ

私は今
橋の上の
貴方の下にいるの

貴方の歌が
間近に
聞こえるわ

此処から
飛べば

私は貴方と
共に歌える

203:アビス◆wc:2018/01/31(水) 18:03

「血鷲」

人間から鷲を
作れるだろうか

さらけた背を向ける
君に私は聞いてみた

作れる訳が
無いだろうと君は云った

其んな事
やってみなきゃ
判らないよ

君の背中を
深く切ってみる

其処から両手で
広げてみる

白い骨が
目に見えている

骨を折って
背中に逆刺し

ほら出来たじゃない

作れたじゃない
人間から鷲が

赤い体の
白い翼の鷲が

204:アビス◆wc:2018/01/31(水) 21:27

「Avatar 持たざる者」

自分の
Avatarと云う物を
作ってみる

パァツが
色々ある

パチリとした
大きい目や

化粧の紅い唇

スラリとした
細長い手足

何れも現実で
私が持たざる物

目頭が
熱くなるも
私はAvatarを作る

Avatarが出来た

サラリと長い髪に

パチリとした二重の目

スラリと細長い手足

私が現実で
持たざる物を
詰めてみた

Avatarは
画面にて
手を振っている

皆は可愛いと
褒めてくれる

だが其れは
Avatarであって
私では無い

其れでも
己の事の様に
錯覚する

現実で
涙を流す
私に対して

Avatarは
仮想世界で笑顔で

他のAvatarに
挨拶する

205:アビス◆wc:2018/02/02(金) 20:47

「暴客」

呆れた云い分と
云う物は
本当に存在する

嘘だと
思われるかも
しれないが

一人一個の
限定物を
二個寄越せと云う

理由は
腹の中にいる
赤子の分だとか

焼肉をしていた
女等は

肉が焦げたと云い
料金も払わないと云った

理由は
食べて無いからだと

靴のせいで
異性に
振られたと云う

理由は
店員のあどばいすの
せいだとか

他にもあるさ
祭りのお面に説明が

バスの番号が
縁起悪いと
変えさせられ

明らか
いちゃもん

客の方が
悪いと云うに

悪いのは
店の者だと云う

店員の
身と心は
如何に

206:アビス◆wc:2018/02/03(土) 17:02

「夢の悪」

寄らば招かれ
招かば魅いられ
魅いらば入れる

夢の中

甘く匂う
ムラサキの花
幻をみせよう

絡まる
棘のツタ
現の痛み

私は痛い
逃れたい

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入る

夢の中

天頂に刺さる
白骸に手を引かれ

血走る
眼が見てる
檻へとおいで

私は嫌だ
逃れたい

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入った

夢の中

貘は
助けに
来ちゃくれない

感覚なんて
わからない

私は何処に
私は誰

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば逃れられず

悪夢の中

207:アビス◆wc:2018/02/04(日) 21:07

「蜚(ひれん)の観察」

蜚に
出会った

蜚は
彼方此方
動いている

噴射器が
手元に無い

しょうがないので
暫し観察する

相変わらず
蜚はカサコソ
動いてる

八つ時に食べた
カステイラの破片を
蜚の方へ投げる

蜚は長い触角で
カステイラをつつき乍
食べていた

其の隙に
蜚を
捕まえた

仰向けに
してみる

六本ある足を
一本千切ってみる

其れでも未だ
元気に動くので
全部千切った

見た目はもう
蜚では無く
達磨だ

馘を切り取った
其れでもまだ
生きている

段々動かなく
なったので

蜚を
ちり紙に丸めて
捨てた

208:アビス◆wc:2018/02/05(月) 21:15

「塵捨ての歌」

塵を捨てた
燃えない塵を

歯ブラシ コップ
プラスチック

塵を捨てた
燃える塵を

ちり紙 写真
指輪と箱

塵を捨てたら
気分が良くなった

二人の人間は
泣いているけど

未だ何処か
気分が晴れない

粗大塵を
捨てたら
気分は晴れるのか?

塵を捨てた
粗大塵を

箪笥 自転車
掃除機も

私は捨てたい
塵を捨てたい

生塵は
捨てただろうか

そういえば
生塵は明日だ

少し重たく
なるかも
知れないが

何回にか
分ければ
良いだろう

209:アビス◆wc:2018/02/06(火) 20:53

「水沈」

目を閉じている
冷たい感覚が
私を包んでいた

目を開いた
水に刺す日光が
私を照らしていた

沈む音と共に
吐き出される泡は

直ぐに消えては現れ
直ぐに現れては消えた

何処迄
沈んでいくのだろう

今 足掻いて泳げば
助かるかもしれない

だがそうはしない

私は見てみたい
沈める水に
此の身を委ねて

其の先に
辿り着く
底の国を

其して又
私は目を閉じる

次に私が
目を開ける時は
何時だろうか

210:アビス◆wc:2018/02/07(水) 22:25

「九相図」

美人様が
横たわて
おりました

草場の陰で
ひっそりと

息はしてないので
経過を見守る事に
致します…

先ずは脹相と
なりました
体が瓦斯で風船みたく

次に壊相と
なりました
皮膚が 破れ 壊れ出し

次に血塗相と
なりました
脂肪 血液 体液滲み

次に膿瀾相と
なりました
体が溶けてる

次に青?相と
なりました
体が青黒く

次に?相と
なりました
虫が湧きて鳥獣喰らう

次に散相と
なりました
部位が彼方此方に

次に骨相と
なりました
骨だけに

最後に焼相と
なりました
燃えて灰となったのです

どんな人様も
此の美人様の様に

辿る末路は
皆同じなので
御座います…

211:アビス◆wc:2018/02/09(金) 00:50

「刻と老」

刻は動きて
今の我在り!

この世に
生を授かりて
只の一度も

この世の刻は
止まった事無し!

刻は我を我等を
置いてゆく!

過ぎ去りし刻は
我を我等を
老い得させる!

ならば刻を
止めとするならば
老いをやめられるか?

否!其れは!
生くる事を
やめし者だ!

そうなるならば
我は老い得る方を選ぶ!

212:アビス◆wc:2018/02/09(金) 19:34

「時よ止まれ今こそは」

カッカコ カッカコ
私の中で動く時計は
世話しなく

私を意味無く
駆り立てる

動かねばならない
兎に角兎に角
周りの者は皆遅い

あぁもう早くしてくれ…!
あぁもう焦れったい!

周りは私の事を
せっかちだと云う

何をそんなに
急ぐ事あるかと

止められる物ならば
止めたいさ…

時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!

カッカコ カッカコ
それでも時計は
容赦なく

私を意味無く
駆り立てる

もう止められはしない
私が身時計

だれか止めておくれよ
もう疲れたわ…

私の身抱きしめ云ってくれ…
もう止まってよいのだと…
急く必要は無いのだと…!

時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!

213:アビス◆wc:2018/02/10(土) 21:42

「猫について」

可愛い可愛い
あぁ可愛ゆらしぃ…!

何かしらの反応示す度動く
其の三角耳

明るひ時と暗ひ時で
魅力が変わる二つの眼

四つ足全てにつく
桃色の肉球

ふりふりふるう
感情表現のしっぽ

全身覆う
もふもふやわ毛…!

小首かしげて
此方を見るな…!

にやうと鳴いて
此方に近づくな…!

あぁもう何処まで
私をまどわせる!

214:アビス◆wc:2018/02/11(日) 21:35

「汝ヲ 己ガ罪デ 償ワソウゾ」

汝 侵せし罪は
汝 侵せし罪で
償うが良かろう

己が児を
己が鬱憤のみで打つ親は
親より力強き者で打つが良ひ

己が児に毒言吐く親は
児に吐いた毒言を反芻させやう耳元で

己が情欲満たさんが為に
児を玩具にする親ならば
己が玩具になる事知らずに

児の行動一片一片に
点数付ける親よ
御前の行動一片一片に点数を

付けてやろうか?

目には歯を!
歯には牙を!
そして牙には金剛を!

215:アビス◆wc:2018/02/12(月) 21:15

「修道毒女」(ポイゾシスタァ)

教会の鐘が鳴る
幼児を抱く聖母描かれし
彩色玻瑠に光入る

十字架の前に跪つきて
黒の聖布纏う修道女は今日も祈る

或る日を境に修道女は
祈らなくなってしまった

修道女は知ってしまった
背徳の蛇と毒林檎を

蛇に惑わされ毒林檎を食べた
味を知った修道女は
祈らなくなってしまった

では代わりに修道女は何になる?

毒を伝える者となるかいや?

216:アビス◆wc:2018/02/14(水) 21:22

「猪口齢糖あげます」

鍋の中ぐつぐつ煮える猪口齢糖
渡したい貴方を想い乍作ってる

ドロドロに溶けた猪口齢糖に
私なりの呪いを掛けてあげる

私の片と私の糸とか
魔法じゃないわ 呪いよ

貴方は虫が直ぐたかるから
私が守ってあげなくちゃ

渡す日になったら
少し照れくさくなるわね

でも貴方の事が好きだから
勇気を出して渡すわね

見返りなんて
要らないわ

貴方が食べた時から
私が貴方の中にいるもの

217:アビス◆wc:2018/02/15(木) 14:06

「雪上の侵略者」

雪だ

積もった雪に
誰一人足跡は
ついていない

僕は一歩
踏みしめる

もう一歩
踏みしめた

ざくざくざくざく

あぁ楽しい!
楽しいなぁ!

僕はあれだ
そうあれだ

侵略者!
侵略者だよ!

雪の上を
我が物顔で
歩いて

僕だけの
足跡で満たした!

218:アビス◆wc:2018/02/15(木) 21:22

「三途」

小石等の上に立っていた
中通るさらさら流れる川の向こうは
彩色溢れる花達が埋めていた

彼方に行き 花を摘んで持ち帰りたい
渡ろうとした 出来なかった

向こうに在る者達が止めたから
皆同じ格好をしていた
三角巾の白装束

お前が此処へ来るのは 未だ早い
帰るが良い 帰るが良い

目覚めた時
私の手には花が一本握られていた
何処で取ったかは 覚えが無い

219:アビス◆wc:2018/02/16(金) 19:15

「狂い鬼女」

呪うてやる!呪うてやる!
我裏切りし者を呪うてやる!

おまへの毛髪は手に入れた
後はおまへを苦しめるだけだ!

おまへが長く苦しむやうに
心臓より遠き端から打ってやらう

おまへを模した人形の右足から打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の左足に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の右手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の左手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の脳天に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の首に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の胸に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを七日呪うた!
あぁおまへが我が呪いによりて

苦しみ悶え命果てる姿が
想像出来るわ!

苦しめ 苦しめ 苦しめよ!

220:アビス◆wc:2018/02/16(金) 22:26

「赫い牙の黒い鬼」

彼奴はもういない
遂に我は裏切り者に復讐終えたり

彼奴の最期は
それはそれはもう
陰惨たるものだったと云う

我 呪い 込めし 部位が
全て 有り得ぬ 方へ 捻曲がって
いたそうな

あ はは ははは
はは は はははは…!

此れで如何して笑いが
込み上げて来なかろうか!

我を苦しめる彼奴は
我が呪いにより命果てた!

…こいつは誰だ?
水面に映るこいつは誰だ?

乱らた髪に赫い牙
まるで鬼のやう…

…嗚呼 我か
これが今の我か…

221:アビス◆wc:2018/02/17(土) 21:31

「しゃあぼん玉」

しゃあぼん液に
ちゃぽんとストロォつけて
ぷぅと吹いたら

しゃあぼん玉が出来た
ふうわりふわり浮いていき

呑気にとびては
突然ぱちんと消えてった

しゃあぼん玉は何処へと
消えたろか

幼き私は考える

久しく吹いていたら
幼き頃を思い出した

222:アビス◆wc:2018/02/18(日) 22:20

「まほろしの骸」

私は誰だ?
私は骸か
ならば招かねば

がしゃがしゃ揺らして
甘幻にて誘い
何時までも飾りの骸ではいられない

おや 人が来たようだ
現世で受ける痛みをどうやら
忘れたいらしい

ならば好都合
ならば招かねば
ならば夢を見せねば

おいでよ おいで
痛みで流れる血を止めて

逝き先は彼方
此方の方へ

君は方向音痴か?
ならば手を引こう

怖いからと泣いても
引き摺って連れていく

望んだのは君だ
今更帰す訳が無い

甘い汁だけすすって帰る?
馬鹿云うな

あぁ 五月蝿いな
口を塞げば良かった

でも駄目だ
 君が云うから

さぁ着いた
此処なら思う存分泣いても良い

誰にも聞こえはしないから
勿論私にも

223:アビス◆wc:2018/02/19(月) 21:18

「私の友達」

遊びに行く
友達が待っているから
じめじめした所で

蜚と百足と蛾とかが
私の友達だ

何が可笑しい?
私に人間の友がいない事に
笑っているのか?

ならば聞こうか
何故お前は
私に人間の友がいない事で

笑っている?

ほら黙った
黙るくらいなら
私を笑うな

あぁ ごめんよ
蜚と百足と蛾よ
さ 遊ぼうか

皆が忌み そして嫌う者等が
私の友達だ

蜚は私の頭を這い回る
百足は私の腕に絡み伝う
蛾は私の体にしがみついた

こうやって なついてくれるから
愛着が湧いて
そして今や私の友達なのだ

224:アビス◆wc:2018/02/20(火) 21:17

「春をみせよう」

月に照らされた
地面を歩く
土の色は白かった

それでも俺は
白積もる土から
おまへを見つけて救ってやる

おまへに春を
見せたいから

土を掘る
手が冷たくそして痛い
それでも俺はやめない

おまへが此の下で
日光を浴びれずに
眠り続ける事に比べれば

俺は此んな手の痛み位
此の白土共にくれてやる

皮膚は裂け
白土は赤土に変わる

全て持っていくがいいさ…!
其れでおまへに会えるのなら
安い対価だ…!

…見つけた
やっとおまへを
見つけた…!

嗚呼 此れで
おまへは日光を
浴びれるな!

そして俺は満足だ
おまへに春を見せてやれたから…

俺は眠るさ
なに ほんの少しだけだ…

225:アビス◆wc:2018/02/21(水) 20:38

「多恨酩酊感」

やぁ 今日もおまへは
善の皮を被りやて
人に欺滿しやがるの

だが私は知っていなかった
だから近付いて仕舞ったのよ

私がおまへの機嫌損なうならば
おまへは激昂して私を打つ

其の癖おまへは鉄面皮で
私に摺り寄り他の女と酒へ
享楽に更ける

あぁ私は鳩でありたい
かの英国お伽噺踊靴の
姉二人の目をくり貫いたから

あぁ私はガロットでありたい
私におまへを座らせて
鉄の輪で馘を絞めるかへし折るか

ただ何方も叶わぬ事よ
せめておまへの私へした事の
非道の数々を

おまへの友人 家族 そして
おまへの愛人へ送ってやらう

其しておまへは
私以外の全てを
失った時

おまへは私に対して
泣いて請うのだろうな

そうしたら愛してやるさ
おまへが私の隷属になる迄

其してそうなったら
私は梟になっておまへの元を去る

其しておまへは
酔生夢死を送るがいいさ

其して私は
酩酊感に浸るのだ

226:アビス◆wc:2018/02/21(水) 20:43

(作者ヨリ)
>>225ニツイテ

以下ノ言葉ハ、コウ云ウ読ミ方デアル

・英国お伽噺踊靴(シンデレラ)
・酩酊感(エクスタシー)

227:アビス◆wc:2018/02/22(木) 18:13

「枯花」

私がお話しましょうか
私の膝の上に座りなさい
却説 どんな話が良いかしら?

こんな話が良いわね

昔々 大変美しい少女がいました
ですが少女は容姿を理由に
何時も村の人々を馬鹿にしてました

人々は願います
少女に何時か罰が下ればいいと

其の願いが通じたのでしょうか?

或る日少女は森で遊んでいると
体の一部に花が咲きました

幾ら抜いても幾ら抜いても
其処から新しく花が咲くばかり

少女はやがて花になりました

其れを見た村人は
花を持ち帰りました

綺麗な花は
村の人々に代わる替わる
愛でられました

ですが花は枯れる物です
其して花は枯れました
ボロボロのシワシワに

花は 枯れて 棄てられた
誰も 見向き なんてしない
踏みにじられて 其れで お終い

228:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:38

「銀短剣」(題材人魚姫)<全5章>
<1章>
海の岩の上にて
玲瓏の歌声で
単吟たる者あり

彼女は憧れた
何時か地上に行く事を

でも其れは叶わない事
判ってい乍も
憧れて仕舞う

或る荒波立つ夜
海の中で沈みつつの
眉目秀麗の男がいた

彼女は助けて
近くの浜辺へ男を置いた

男が目覚めぬ内に
彼女は海に戻る

自分の姿を
見られる訳にはいかないから

其の日を境に
単吟は聞こえない

229:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:47

<2章>

寝も覚めも
想ふのは
彼の人ばかり…

あぁ彼女は恋をした
愛しの… 愛しの…
会いたい… 会いたい…

彼女は魔女に云ふ
どんな対価も払って良いから
地上に行きたいと

魔女は等価に
彼女の声を欲した

彼女は魔女に
声を捧げた

魔女は彼女に
足を与えた

彼女は喜んだ
地上へ行ける
彼の人に会いに

魔女は笑った
想いを伝えられ無い時
お前は泡沫になるよ…

230:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:55

<3章>
彼女は地上にいた
己の足であって
足で無いので

歩く度に痛みが…
痛い… 灼ける様に…

砂浜にて倒れる
彼女を助けたのは
あの男である

気付いた彼女は城の中
礼を云おうと歩き回る

話し声聞こえて
知って仕舞った
彼の人の結婚話

彼女は悩む
彼の人の愛が欲しい…
彼の人を助けたのは…

目の前に彼の人が
礼を云いたいのに
声が出ない…!

彼の人が心配している
彼の人が私に優しくする…

231:アビス◆wc:2018/02/23(金) 20:00

<4章>
お願いよ…
これ以上私に
優しくしないで…!

こんな心になるのなら
彼の人に恋など
抱かねば良かった…!

砂浜にて
うつ向く彼女

魔女は其処に
銀の短剣を差し出す

其れで彼の人を
刺しなさい

そうすればお前は
泡沫にならないよ

彼女は決めねばならない

海の為の単吟か
彼の人の為の泡沫か

刻限は
教会が祝福の鐘を
鳴らす迄

232:アビス◆wc:2018/02/23(金) 20:07

<5章>

月昇の夜
彼女は眠る彼の人の横にいた
銀の短剣を握り閉めて

振り下ろせば終るかな…?
彼の人に対する私の苦しみが…

矢っ張り無理だ…
彼の人には
生きていて欲しいから

そもそもは
私が勝手に彼の人に
恋をして苦しんだ事なのよ…

祝福の鐘が鳴った
砂浜に一人の女がいた

彼女は海に向かい
歩き出した

漣が彼女に触れる
彼女は自分が泡沫になり乍も

彼の人への愛を忘れずに
最終単吟叫喚を
黙して何時までも…

233:アビス◆wc:2018/02/26(月) 14:58

「菓子幻譚」(全6章)(1)
(題材ヘンゼルとグレーテル)

仲良し兄妹
木こりの父と母の話をきいて
怖気が立った

明日子供達を
捨てちまおうよ
口減らしの為にさ

妹はわんわん
泣いていた

兄はコソリと森に行き
月の光で照らされた白石を集める

父と母
実の子捨てる為
手を引き森へと入る

兄は歩き乍
石を落とす

父は聞いた
何故歩く度家の方を振り向くか

兄は云った
屋根の上にいる 飼い猫シロが
バイバイしてるんだ

234:アビス◆wc:2018/02/26(月) 15:06

(2)

兄妹に麺麭を渡して
父と母は去ってった
木を切りに行く為だとさ

勿論其れは嘘であると
兄妹は判っている

でも只木を切る為に
去っただけなのだと

兄妹は信じたかった
無理も無い

宵闇の森の音は
不安がる兄妹を
嘲笑けて笑う

月の光と白の石が
兄妹を導く標となって
二人は家に帰る

父と母は
大層驚いた

兄と妹は
ベッドにて
すやすやぁ眠った


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