「兎に思ひ 角も人」
起きた時
私は泣いていた
嗚呼 私は未だあの時の事を
忘れられてはいないのだ
必死に記憶から消そうとした
だが体に染み付いた
見えなひ傷は
私を確実に蝕んだ
空に浮かぶ細の三日月と
足元の靄は
心の現れだろうか
私を笑うな細の三日月よ
早く消えて仕舞え
忌々しき靄よ
兎 叫ぶ私は
角に狂人
周りは只云う
忘れろと
消せぬのだ
無茶云うな
其れしか
云えぬのなら
黙っててくれ
された事が無いから
云えるのだろう
忘れろと
汚れの淵に
落ちて仕舞え
悲の深に
溺れて仕舞え
兎 思ふ私は
角に咎人