遠い街のどこかで。

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1:しおん:2015/08/06(木) 20:27

絶え間なく、セミが鳴き続ける。
太陽が容赦なく照りつける中、僕は、ある人のお墓に来ていた。
墓石に掘られた名前は「近藤ゆかり」。
僕は、その名前から顔をそむけ、お供え物のバームクーヘンをおいた。
それから手を10秒ほど合わせると、そそくさと立ち去る。
僕の時間は、ある時からずっと止まったままだ。
そう、6年前のあの日から―。

5:ゼシル :2015/08/07(金) 18:46

>>4
一応小説書いてるのでw
アドバイスですよー!

6:しおん:2015/08/07(金) 19:04

2話「夏祭り」

ゆかりとバームクーヘンを食べに行ったあの日から2か月がたった。
暑さはますます厳しくなってきている。
俺は太陽の陽ざしに耐えながら一人で通学路を歩いていた。
吹奏楽部のゆかりは、今日は部活があるからと言って部活に向かってしまった。
どうやら、近々コンクールがあるらしい。
特に、3年生が引退して、2年生がリーダーとなったこの時期は、とても大切らしい。
俺は暑さでボーっとしている頭をたたいて、ふと電信柱に目を向けた。
そこには、ポスターが貼られていた。
『7/14〜7/16まで、富岡神社で夏祭りを開催!ぜひ来てください!』
夏祭りか……。
そう言えば、ゆかりとデートしたのはまだ一回しかないな。
ゆかりを誘おうかどうかさんざん迷ったが、やっぱり彼女といかないのは少しおかしい気がして、ケータイを取り出した。
ゆかりにメールを送って、返事が来るまで家で待つ。
夜の7時頃、ようやくメールが来た。
『いつから?』
あ、そういえば、日付を書いてなかった……。
『7/14〜7/16まで。いつ行く?』
すると、すぐに返事が返ってきた。
『できれば16日がいいかな?後の二日は部活あるし。圭太はどう?』
俺は嬉しくなって超高速で親指を動かした。
『もちろん!』
『そっか!じゃあ、浴衣着ていくね☆』
浴衣……。
俺は、少しゆかりの浴衣姿を想像してみた。
きっとかわいいんだろうな……。
俺は笑いをこらえるのに必死だった。

7:しおん:2015/08/07(金) 19:29

当日、俺は鳥居の前でゆかりを待っていた。
もうすぐ待ち合わせの7時になる。
すると
「圭太〜!お待たせ!」
耳触りの良い明るい声がした。
見てみると、案の定、ゆかりがそこにいて。
ゆかりはメールの通り蝶の模様が付いた浴衣を着ていて、普段は腰辺りまで自然におろしていた髪の毛を、ポニーテールにして結んでいた。
少し癖のある髪の毛なので、パサッとなっているが、それもまたかわいい。
「……」
俺が無言で見つめていると、ゆかりが不思議そうに「どうしたの?」と聞いた。
「あっ、わ、悪ぃ!あー、そのー……えっと……」
「圭太?」
「ゆっ、浴衣!」
「え?」
さらに不思議そうにするゆかり。
「浴衣っ!似合ってんじゃん!」
きっと、俺の顔は、真っ赤になっているに違いない。
ゆかりはそんな俺を見て、目をぱちくりさせた後、笑顔でにっこりと笑い
「ありがとー」
と言った。
何だか恥ずかしくなってこれ以上は我慢できない。
「いっ、行こうぜ……」
「うん!」
しかし、いざ屋台まで来てみると、人だらけで少し暑苦しかった。
はぐれたりしないかな?
そんなことを思っていると、ゆかりの方から手をつないできた。
「えっ!?」
俺がオーバーに驚くと、ゆかりはさも不思議そうに返してくる。
「だって、はぐれちゃダメでしょ?」
「おっ、おう……」
ゆかり……なかなかSだな。
そんなことを思っていると、ゆかりが手を引いてきた。
「ね、イカ焼き食べていい?」
「あっ、ああ……」
マイペースなゆかり。
でも、そこがかわいい。
……俺は、ゆかりをかわいいとしか思ってないんだろうか?
いや、そうじゃないと思う。
確かにゆかりはかわいいけれど、それだけじゃない気がする。
「圭太?どうしたの?」
ゆかりが俺の顔を覗き込んで尋ねてきた。
「い、いや……何でもない……」
「本当にどうしたの?圭太……」
「いや、いいんだ。次はどこに行く?」
話題を変えると、ゆかりはそうだねぇと言いながら歩き始めた。
ゆかりはあまり深入りしない性格なので、こういう時は、ありがたい。

8:しおん:2015/08/08(土) 18:38

「あ、そうだ!」
ゆかりは思い出したように手を打った。
「おみくじ、買お?」
「うん」
ゆかりに連れられ、本堂の方へときた俺たちは、適当に10円お賽銭をしてからおみくじを買った。
少しわくわくしながら開くと、そこには「小吉」というまあまあな文字が印刷されていた。
「圭太は?」
「俺は小吉。ゆかりは?」
「ちょい待ち……」
ゆかりは紙を開くと、少し唖然とした表情を見せ、俺の方に向き直った。
「ゆかり?」
「圭太……これ……」
ゆかりが渡したおみくじを見ると、そこには「大凶」という不吉な文字が。
大凶って、ホントにあるんだ……。
俺が感じた率直な感想はそれだったが、それを言うわけにもいかず、ゆかりの頭にポン、と手を置いた。
「大丈夫だって。気にすんな」
「うん!」
俺が言うと、ゆかりはようやく安心したような表情を見せた。
「じゃあ、もう帰るか?」
「そうだね」
ゆかりを家まで送り、俺は夜道を一人で歩いていた。
俺は、ゆかりとずっと一緒に居たい―。

9:しおん:2015/08/09(日) 13:36

3話「フルートの時」

夏休みに近づいてきたころ、俺は自転車で文化会館へと向かっていた。
今日は、ゆかりが所属している吹奏楽部の発表会。
ゆかりはフルート担当で、今日演奏する曲ではメインになる楽器だ。
だから、すごく緊張していると思う。
俺は、自転車置き場に自分のものを置き、鍵をかけて会場へ。
会場に入ってみると、クーラーがすごく効いていて、少し肌寒かった。
腕時計で時間を確認すると、開始まで10分近くある。
だから、俺はパンフレットを見たりして時間をつぶしていた。
そんなことをしているうちに、だんだん眠くなって……。
まぶしいライトに目を開けると、もうゆかりたちは準備を始めていたらしい。
そして、俺はそのゆかりの格好に目を見開いた。
俺が、その自分の彼女に抱いた印象は、クリアな白。
まぁ、白い服だったから、そう感じただけかもしれないけれど。
でも、少なくとも俺は、その子に目を奪われたよ。
だって、そのポニーテールをした白い子は、綺麗だったんだから。
とても、とても。
それから俺は、正直に言うと、演奏はほぼ聞いていなかった。
ただ、そのゆかりの白に目を奪われていただけ。
それだけ、俺はゆかりの事が好きだったんだ。

10:しおん:2015/08/09(日) 18:50

無期限休業と取らせていただきます。
気が向いたら書く予定ですのでお願いします。


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