カルとマヤの異世界記録

葉っぱ天国 > 創作 > スレ一覧 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701-キーワード▼下へ
1:なかやっち:2020/03/26(木) 12:56

小説として書いてしまっていたのでこちらに移しました💦

483:なかやっち:2020/05/24(日) 12:45

魔耶「…ほんとに大丈夫か〜?手繋ぐ?」
カルセナ「大丈夫だって…手繋ぐとか子供扱いしてる?」
魔耶「ソンナコトナイヨ〜…んじゃ、降りよっか」
ずっと空中を飛んでいたはいいものの、木が生い茂っていて下の様子がわからなかったため下に降りることを提案する。
カルセナ「わ、わかった…。…魔耶、いきなりどっか行ったりしないでね…?」
魔耶「カルセナを置いていくなんてことしないよ…じゃ、降下開始…」
顔に緊張を浮かべているカルセナと共にゆっくりと下へ降りていく。ギャーギャーという声が近くなっているような気がして、魔耶の顔にも緊張と警戒の色が浮かんだ。

484:多々良:2020/05/24(日) 13:00

カルセナ「ち....近くなってる....鳴き声が....」
魔耶「でも、真下にいるって訳では無さそうだから.....まだ大丈夫かな」
カルセナ「て言うか私、武器という武器が無いんですけどどうすれば良いんですかね.....」
魔耶「何かつくってあげよっか?まぁいざとなったらブラッカル出てきてくれるんじゃない?」
カルセナ「んー、今のところ良いけど.....出てきてくれるかねぇ....あいつ。気まぐれだからな〜......」
二人でそっと地面に足を着く。回りには何も居ない。
魔耶「.......さて、どうしようか....」
少しトーンを抑えて話す。
カルセナ「もしその鳥モンスターがいても、盗られたものを持ってる確率は低い....よね」
魔耶「確かに....巣とかに行けばあるかも。じゃあ、もしそのモンスターが居ても持ってなかったら、追いかけてみる?」
カルセナ「うん.....そうするしか無いよね....」

485:なかやっち:2020/05/24(日) 13:31

魔耶「とりあえず…武器は構えておいても損はないかな」
いつものように双剣をつくりだし、握り締める。怪鳥を見つける前に他のモンスターに襲われたりしたら…という慎重な考えからだった。
カルセナ「…魔耶って、色んな武器使うよね」
魔耶「…え?あ…うん。色々使えれば便利だし、攻撃に色んなパターンができるからね。基本は双剣だけど」
カルセナ「へぇ…その武器の使い方?戦い方とかって、独学なの?」
魔耶「…まぁ半分はそうかな。もう半分は他の人に習ったりして身につけたって感じ」
カルセナ「ほうほう」
魔耶「…カルセナは使える武器とかあるの?ブラッカルは素手で戦ってたけど、カルセナもそんな感じ?」

486:多々良:2020/05/24(日) 15:26

カルセナ「うーん....そんな感じと言われればそんな感じなんだけれど....」
魔耶「けれど....?」
カルセナ「私は素手で戦える様な身体能力は持ってないからさ....魔耶みたいに武器をつくる事だって出来ないし、魔法だって使えないし.....ただ未来を読めるだけ」
魔耶「そうなのか.....でも、未来読めるならまだ良いじゃん?」
カルセナ「前にも言った事あるかもしれないけど、私には未来は読めても、それを瞬時に活用する力がないからあんまり意味が無いんだよね.........はーぁ、どうしたものか〜....」
内心では、もっと1人で戦える様になりたい。魔耶やブラッカルの力を借りずとも、自分で対処出来る様になりたいと思っている。だが、今はそれを実現する事が出来ない。そんな事は分かりきっていた。だからこそ悩んでいた。

487:なかやっち:2020/05/24(日) 16:09

魔耶「うーむ…でも、能力は人それぞれじゃない。戦い向けの能力もあれば生活に便利な能力だってある。私の能力はグレーゾーンだったけど、ちょっとだけ工夫をして今の形に落ち着いた。…だからさ、カルセナの能力だからこそできるようなことがきっとあるよ」
落ち込んでいるような、悩んでいるような顔をしたカルセナに笑いかける。だが、それでもまだカルセナの心は晴れていないようだった。
カルセナ「そうかもしれないけど…でも、戦いが出来なくちゃ意味ないじゃん。いつも魔耶とブラッカルに頼ってなんかいられないし…」
魔耶「無理に戦うことなんてないと思うけどなぁ…」
カルセナに聞こえる程度の小さな声で呟くが、そんなことを言ってもカルセナの表情は変わらなかった。私達に任せっきりなのは嫌なようだ。
…そこで、カルセナにある提案をしてみる。
魔耶「…じゃあさ、今度修業でもする?一緒に」
カルセナ「修業…?」
魔耶「そう、修業。能力を使った戦い方を研究したり、実践してみたりするの。私だって修業もなしにこんなんなった訳じゃないからね〜」
カルセナ「でも、魔耶に迷惑なんじゃ…?」
魔耶「そんなことないよ〜。むしろ、私もそろそろ修業して新しい技とかを研究しないとって思ってたんだ〜。この世界は危険が多いからね。……どう?」

488:多々良:2020/05/24(日) 18:10

予想の斜め上を行く魔耶の意見に少したじろぐ。だが、魔耶がそう言ってくれている。ここはひとつ、努力してみる価値はあるだろうと思わせてくれた。
カルセナ「....うん!!賛成....!」
魔耶「....ふふ、じゃあ、私が無事で居られたらそうしよっか」
カルセナ「そんな縁起でも無い事言わないでいてくれ.....」
魔耶「だいじょぶだいじょぶ、悪魔になんか絶対飲み込まれないから!.....それにしても、中々姿が見えないね〜」
会話をしながらも、着々と足を進めていた。鳴き声は聞こえてくるのだが、一向に姿が見えないのだ。
カルセナ「うう〜ん.....でも、鳴き声は近くなっている様な.....」
魔耶「もうちょっと先なのかな、居る場所は....」
カルセナ「そうかもね.....」

489:なかやっち:2020/05/25(月) 20:32



…それから5分ほど散策してみたが、やはり怪鳥の巣どころか姿さえ見えなかった。
カルセナ「見当たらないねぇ…」
魔耶「ね…。声は聞こえるのに…警戒してるのかな?」
カルセナ「それか油断したところをパクっと…?」
魔耶「怖いこと言わないでよ〜。…まぁ、ありえなくもないけどさ…」
雑談しながら棒で藪を突き、覗き込んでみる。やはり怪鳥の姿は見えない。
魔耶「声は近くなってるような気がするのに…どこにいるんだろ〜…」
カルセナ「ね〜。………って、うん…?」
魔耶「…?どうかした?」
カルセナ「いや…あそこ、なにか落ちてない…?」

490:多々良:2020/05/25(月) 21:15

少し遠くに見える、フワフワとしていて軽そうな物体を指差す。
魔耶「ん〜?何だろ....ちょっと見に行ってみよっか」
カルセナ「うん....」
とことこと近寄ると、それは大きな1枚の羽根だった。
魔耶「羽根....?何の鳥の羽根だろう.....あ、もしかして!」
地図の裏にある怪鳥の写真と、その羽根を見比べる。
カルセナ「どうしたの〜?...まさか.....」
魔耶「この羽根と目的のモンスターの羽の特徴が一致してる....!!」
細かい模様などもしっかり見たので、間違いは無いだろう。しかも、その周辺には2つ3つ程度の足跡らしきものもある。
カルセナ「えー!?やった!!遂に手掛かり見っけた!!」
魔耶「でも、ここに羽根が落ちてるって事は、近くにいるって事だよね....」
カルセナ「わっ....そうじゃん......」
歓喜が零れ出た口を慌てて押さえる。

491:なかやっち:2020/05/26(火) 20:19

魔耶「んっと…足跡はこっちがわ向いてるから、多分この先にいるよね…そこまで古くもなさそうだし…近くにいるかもしれないから、慎重にね」
足跡から怪鳥が行ったであろう方向を探り、指を指す。指の先には獣道のような通路があった。…おそらく、長年の間、モンスターや動物達の通路として使われているんだろう。
カルセナ「う、うん…気を付けます…」
魔耶「おう。……それじゃ、行きましょうか」
木々の影で薄暗くなっている獣道に足を踏み入れる。この先に怪鳥がいるのか、巣があるのか、はたまた何もないのか…期待と不安を胸に、二人は進みだした。

492:多々良:2020/05/26(火) 21:32

カルセナ「うわー....圧倒的大自然....って感じ」
足に触る草や、じっとりとした空気に少し戸惑いを表す。
魔耶「そりゃあそうだろうな....生前は都会にでも住んでたのか?」
カルセナ「都会っちゃ都会の方に住んでましたよ....でも逆に、普段都会暮らしだったからこういう所に来ると何か楽しいわ....怖いけど」
魔耶「はっはー、今の内に堪能しておけー」
カルセナ「堪能出来る様な環境でも無いわ.....」
そのまま前へ進んでいると、また抜け落ちた羽根が落ちていた。
魔耶「あ、まただ。やっぱこの辺にいるんだな〜....」
カルセナ「いやぁー、近くなってるって事か....?うぅ、鳥肌が.....ヤバい、こっちが鳥になっちゃう....」

493:なかやっち:2020/05/26(火) 22:21

魔耶「さっきも言ってたぞそれ…」
カルセナ「だってぇ…鳥肌止まんないんだもん…」
魔耶「だからって……あれ、なんか広いところにでたね」
会話の最中に、獣道を抜けて草原に出れた。急な景色の移り変わりに少し混乱する。
カルセナ「え、獣道の先は草原…?なんもなかったじゃん…!じゃあ怪鳥はどこにいるのさ?」
魔耶「…私に聞かれても困るんだけど……ここらへんに巣でもあんのかな…」

494:多々良:2020/05/27(水) 17:19

キョロキョロと辺りを見回して巣を探そうと試みていたとき、またあの声が聞こえた。
魔耶「.....あっ、またこの声....ほんとに、どこから聞こえてるんだよ〜....」
構わずに巣を探す。
カルセナ「それっぽいものは無いねー....てかさっきの声、めちゃくちゃ近かった様な気がするんだけど....」
魔耶「確かに、これまでも近かったけどさっきのは特にね....」
ギャーギャーと声がする。まるで、すぐ側に居るのでは無いか、と思える程の声の大きさだ。
カルセナ「はぁ〜....声の発生源探ってみる?」
魔耶「だね....えーっと........ん?」
耳を澄ませていると、にわかに信じがたいある異常に気付いた。
カルセナ「どうしたの?」
魔耶「何か....地面から聞こえる様な......」
カルセナ「えぇ?だってモンスターは鳥でしょ?んな馬鹿な〜」
魔耶「この世界では常識は通用しないんだぞ、もしかしたらっていう可能性も.....」
カルセナ「鳥が地中に住むって可能性?む〜、想像がつかん....」

495:なかやっち:2020/05/27(水) 18:40

魔耶「いやまぁ、私も想像つかないけど…虫がハーブ食べる世界だし、あり得なくもないかな〜と…」
しっかりと確認するために、地面に耳を当ててみる。やはり地中から怪鳥と思われる声が聞こえてきていた。
魔耶「うん、やっぱり…土のなかにいるわ」
カルセナ「マジかぁ…ほんっとーに、この世界では私達の常識が通用しないねぇ」
魔耶「そうねぇ…いや、そういう鳥もいたっけ……?…まぁいいや。多分ここら辺に入り口があるんだろうし、探してみようよ」
カルセナ「…いや、それより地面掘ってみた方が早くない?」
名案と言うようにカルセナが帽子をピンッと指で弾く。
魔耶「まぁそれでもいいけど…着いた瞬間鳥が待ち構えてるかもよ?」
カルセナ「入り口探しましょうぜ」
魔耶「切り替え早いな…」

496:多々良:2020/05/27(水) 22:07

魔耶「ま、早速それっぽいとこ探しますか。地中に居るって事だし、どこかに穴でも空いてるのかな....」
カルセナ「だとしたら分かる気がするけど.....何かで隠したりしてんのかもね」
広い草原を見渡す。見当たるものは、大きな岩の数々と、背の高い雑草だけだ。
魔耶「うーん....岩の下....とかありそう....」
カルセナ「隠し場所にしては最適ですね.....入り口がそこだとして、そんな重い岩動かせるかな〜」
魔耶「道具を使う事は出来るけど....力が足りるかは分からない....」
カルセナ「んー、どうしよっかー....こう言うのに至っては、すんごい頭硬いからな私.....」
大きな岩を動かす方法を必死に考える。しかし、普通に持ち上げる、ずらす等の考えしか浮かんでこなかった。

497:なかやっち:2020/05/28(木) 19:49

魔耶「うーん…キツいけど、岩の斜め下を掘って傾かせてみる、とか?」
カルセナ「あぁなるほど…そんなことできるのかな…?」
魔耶「やってみるしかないよ〜…今はこれくらいしか思い付かないし…」
魔耶も必死に知恵を絞るが、やはりそれ以外の方法は思い付かなかった。
魔耶「…あとは岩の下を掘ってみるとかか…?」
カルセナ「なるほどねぇ…でも、その両方の案、掘ってる最中に私達が岩に潰されちゃうんじゃない…?」
魔耶「え?…あ…」
カルセナ「考えてなかったのね…」
魔耶「うぐ…やっぱり私の頭じゃいい案が思い付かないわ…カルセナ、なんかいい方法ない〜?」

498:多々良:2020/05/28(木) 21:45

魔耶にそう言われ、腕を組み直して再び考える。
カルセナ「うえ〜....??そうだなぁ〜........」
岩を退ける方法、岩を無くす方法.....。ここで、とある事を思い付いた。実現は難しいが.....。
カルセナ「....岩を壊す....とか.....?」
魔耶「大胆な方法だね.....でも、安全性はそれが一番かも」
うんうんと魔耶が頷く。
カルセナ「そうだとしても、出来るかどうかって言う話だよね.....どうしよう、魔耶どうにか出来たりする?」
魔耶「岩を壊せるかって事?うーん.....」

499:なかやっち:2020/05/28(木) 23:15

魔耶「…流石に無理!」
カルセナ「まぁ、そりゃそうか…」
いくら魔族であるといっても、流石にこんなに大きな岩を壊すことは不可能だと思われる。能力を使ったとしても、こんな岩を壊せるほどの威力のあるものなんて思い付かないしつくれない。
魔耶「ブラッカルが壊せたりしないかな…」
カルセナ「いやいや、あいつでもこれは無理でしょ…」
魔耶「そりゃそうか…素手だしね…岩の前に拳が壊れちゃうか…」
他になにかいい案はないだろうか…二人で腕組みをし、脳みそを振り絞る。
……と、そのとき、カルセナから無茶ぶりを言われた。
カルセナ「…一回でいいからさ、頑張って壊そうとしてみてよ」
魔耶「え、えぇ…?無理だって〜…」
カルセナ「もしかしたら意外といけるかもよ?」
魔耶「流石にキツいって…武器作っても、壊すには自分の力でやんなきゃいけないんだからな〜。こんなか弱い少女一人で壊せると思ってんの…?」
カルセナ「いやぁ、今悪魔に近い状態なんでしょ?ならいけるかな〜って…」
魔耶「む…確かに…いやでも、いくら悪魔でも…」
カルセナ「まぁまぁ、やってみるだけやってみてよ。ね?」

500:多々良:2020/05/29(金) 17:18

魔耶「うー、分かった〜....」
そう言うと、岩を壊すのに最適な武器を考え始めた。
魔耶「やっぱりハンマーかな〜....でも、重いから持てるかどうか....取り敢えずつくってみるか」
いつもの様に頭の中で武器の大体の形を描き、魔力を使ってハンマーをつくりあげた。
カルセナ「おー、格好いい〜」
魔耶「さ、持てるかな.....せーの、よっと!!」
全力で力を込める。やはりかなりの重量があるハンマー、そう簡単には持ち上がらない。いつもならそうだったのだが......。魔耶が思った程の重量は無く、意外と簡単に持ち上げる事が出来た。
カルセナ「すご!!力持ちすぎるなー!」
魔耶「う、うん.....」
岩を壊す第一歩が完了し、安堵の溜め息をを吐いた。だがその溜め息は、悪魔化が進行している証を、この目で見る事が出来てしまった事に対しての溜め息でもあった。

501:なかやっち:2020/05/29(金) 22:52

魔耶「…んじゃ、いくぞ…」
自身の背丈もありそうな大きなハンマーを振りかざし、勢いよく降り下ろす。
カルセナ「いけー!」
巨大なハンマーが空気を切り裂き、岩に当たり、そして…
カル魔耶「……‼」
なんと、二人の目の前で固そうな岩は大きな亀裂を入れ、砕けちってしまった。これには思わず目を見張る。
魔耶「嘘………え、私がやったんだよね…?」
カルセナ「…そうだよ!魔耶すごい‼こんなおっきな岩を…」
魔耶「……はは」
信じられないという思いと悪魔化が深刻だと認識したのとが同時だったため、魔耶はどんなリアクションをとればいいのか分からなくなってきた。

502:多々良:2020/05/30(土) 19:13

カルセナ「うーん、でもこの岩の下には何にも無いね〜....」
魔耶「きっと他の所にあるんじゃないかな?」
カルセナ「じゃあ、お願い出来ますか....?」
魔耶「りょーか〜い」
取り敢えず手当たり次第に岩を壊してみる事にした。モンスターには申し訳無いが、そうでもしないと見つけられないのだ。
どんどんと岩を壊して行く。そうして、4つ目の岩をたった今破壊した。
魔耶「ふぅ.....どうだ....?」
カルセナ「.....わぁ!!魔耶、大きい穴が空いてるよ!!」
魔耶「ほんとだ....て事は、ここが入り口....?」

503:なかやっち:2020/05/30(土) 20:08

カルセナ「そうかもね…行ってみようよ!」
魔耶「了解でーす。待ってくださーい……明日筋肉痛だなこれ…」
ずっと持っていた重たいハンマーを消し、カルセナに続いて暗い穴の中へと入って行った。


魔耶「…わ、思ってたより広い…」
中に入ってみて、思わず呟いてしまう魔耶。
穴の中は意外にもスペースがあり、二人で並んで歩けるほどだった。
カルセナ「そうねぇ…怪鳥はこのぐらい大きいってことか…?」
魔耶「たしかに…え、じゃあすごく大きいじゃない」
カルセナ「いやまぁ、怪鳥が広めにつくっただけでそこまでは大きくないって言う線もあるけど…」
魔耶「そうだったらいいけどな〜…」

504:多々良:2020/05/31(日) 10:43

カルセナ「....あのさ....」
魔耶「ん?」
カルセナ「仮に鉢合わせしちゃって、戦うとするじゃん?」
魔耶「まぁ、戦いは避けられないかもね....」
カルセナ「でも、ここで戦っちゃったらめっちゃ危険じゃない....?」
通路の天井を見て不安を胸に抱く。当然、通路は土で出来ていた。もし崩れて来たらと思うと、心配せずにはいられない。
魔耶「確かに......んーじゃあ、モンスターと出会うか、盗品を見つけたらすぐ穴から出る?」
カルセナ「モンスターを1匹ずつ対処するのは面倒臭いけど、仕方無いね....」
魔耶「モンスターも仲間を呼ぶかもしれないし、思ってるよりは面倒臭くないんじゃない?」
カルセナ「そうだね、頑張るか〜.....」
少しずつ奥へ進んで行くと、段々と暗くなってきた。地中の穴の中なのだから、そうなるのは当たり前の事だった。
カルセナ「......うー、暗いなぁ.....私全然奥の方見えないんだけど....魔耶は見える?」

505:なかやっち:2020/05/31(日) 17:38

魔耶「私も全くみえないよ〜…明かりを持ってくるべきだったな…」
目を細めて先の様子を伺うが、やはりなにも見えなかった。これでは依頼の貴重品とやらも見つからないかもしれない…怪鳥に鉢合わせしないうちにさっさと帰りたいのだが…
カルセナ「能力で明かりつくれたりしないの?ぱぱっと!」
魔耶「おいおい、私の能力はそこまで有能じゃないぞ…この能力は魔力を形にしてものをつくるだけで、個体じゃないものとか細かい部品が必要なものはつくれないの〜」
カルセナ「なるほど…つまり、炎をつくるとか懐中電灯をつくるとかはできないってことか」
魔耶「そゆことそゆこと。この能力、一見便利そうでもできないこととか弱点とかはいっぱいあるんだから」
カルセナ「ほう、弱点なんてあるの?例えば?」
魔耶「うーん…結構大きな弱点といえば………って、いくらカルセナでも自分の弱点は教えられないわ」
カルセナ「むーケチ〜」
魔耶「はは、私にだって秘密の一つや二つありますよー。…っと、ここ分かれ道だねぇ…」

506:多々良:2020/05/31(日) 20:18

二人の目の前に、二つに別れた道が現れた。
カルセナ「あ、本当だ....どうしよう、明かりも無いし....」
魔耶「流石に二手に別れるのは危険だと思うんだよね.....どっちかに行くしかないかな」
カルセナ「うーん、どっちが正解なのかな.....」
魔耶「分からない....あ、そうだ」
カルセナ「うん?何か思い付いた?」
魔耶「こう言うときこそカルセナの出番でしょ?」
カルセナ「....?私に何か出来るかなぁ....?」
魔耶「右に行った場合の未来と左に行った場合の未来、読んでみてよ!」
カルセナ「え、えぇ....?やってみるわ.....」

507:なかやっち:2020/05/31(日) 20:57

多少戸惑いながらも、目をつぶって集中するカルセナ。
…彼女は自分の能力をローリスクローリターンなんて言っていたけど、私はカルセナの能力がとても便利だと思う。使いようによっては、日常でも戦闘でも役に立つハイリターンな能力だ。…カルセナはそのことに気づいていないようだが。
魔耶「…どう?見えた?」
カルセナ「ん〜と…今左いった場合の未来見てる……あ、途中で行き止まりだわ。広いスペースがあるだけで、他にはなんもないな」
魔耶「ほうほう…んじゃあ右行こっか。行き止まりのとこに行ったってしょうがないし」
カルセナ「はーい」

508:多々良:2020/06/01(月) 20:32

そうして、右へ向かって歩き始める。奥へ進むにつれ、どんどんと光が届かない世界へと変わっていく。
魔耶「ほんとに居るのかな〜....まだ出会ってないし....鳴き声もしなくなったしさ」
反響するにも関わらず、耳を澄ましてもあの奇妙な鳴き声は殆ど聞こえない。
カルセナ「うーん、警戒してるのかな..........あ、ここからもう全然見えないや....」
これから進もうとしていた道は完全に光がシャットアウトされ、何も見えない宵闇が広がるだけだった。
魔耶「む、ほんとだ....でも、盗品を探さないといけないし......どうしよう」
カルセナ「んー......おびき出してみる....とか」
魔耶「え?モンスターを....?」
カルセナ「う、うん....怖いけど....」
魔耶「モンスターをおびき出したって、盗品が見つからないと意味は無いんじゃない?」
カルセナ「そうだけど....その前に、本当にここにいるのか確かめるにはそうするしかないんじゃないかなって....もしここが巣だったら、後で明かりを持ってくるとか出来るし....」

509:なかやっち:2020/06/01(月) 21:40

魔耶「…まぁ、それもそうか…怖いけど、やるしかないか…」
カルセナの案に少々不安を抱きながらも承諾し、右の手を前につきだした。
カルセナ「…?なにする気?」
魔耶「いやぁ、楽器でもつくって鳴らせば出てくるんじゃないかなーって…いいかな?」
カルセナ「あぁ、そういうことね…いいと思う」
魔耶「あざーす。…んじゃ、ベルでもつくりますかね…」
頭の中で描いたベルの輪郭を魔力をつかって現実に出す。魔耶の右手に大きめのベルが握られた。
カルセナ「…んじゃあ…鳴らす…?」

510:多々良:2020/06/02(火) 23:41

カルセナ「う、うん....」
ゆっくりとベルを振り上げ、そして振りかざした。
ベルは、カランカラン....と暗い穴全体に光を灯すかの様な綺麗な音色を立てた。大きなベルだった故に、音も大きかった。
魔耶「......どうかな....」
カルセナ「....すぐには来ないのかな?もうちょっと鳴らしてみれば?」
魔耶「そうだね....よっと」
立て続けにベルを鳴らした。

魔耶「....うーん、まだ来ないなぁ....腕疲れた〜」
カルセナ「お疲れ〜、頑張れー。.......?」
魔耶「いくら警戒してると言えども、流石に来なさすぎじゃ.....ん?どうかした?」
穴の奥を見つめながらボーッとしていたカルセナに声を掛ける。恐らく、細かい未来をちまちまと読んでいたのだろう。
カルセナ「......ヤバい....かも......」
魔耶「えっ....?何が....」
カルセナ「....ッ、一旦出よう魔耶!!ここにいちゃ危ないっ!!...気がする!」
魔耶の腕をがしっと掴んで出入口に向かった。魔耶の持っていたベルが、乾いた音を立てた。

511:なかやっち:2020/06/03(水) 16:16

魔耶「なに…?な、なんなの…⁉」
ガラガラと音を鳴らしていたベルを消し、カルセナに問いかけた。
カルセナ「いいから、今はとにかく走って!早く出口に…!」
魔耶「……わ、わかった…」
いきなりこんな状況となり混乱している頭でも、カルセナはなにかヤバイ未来をみてしまった…ということだけはわかった。どんな未来がみえたのかはわからないが、カルセナのこの慌てようは普通じゃない。今はカルセナについてここを出ることが得策であろう。
魔耶「…ど、どんな未来がみえたの…?」

512:多々良:2020/06/03(水) 21:20

カルセナ「えっとね....」
魔耶に説明しようと喋り始めた途端、後ろから聞き覚えのある、おかしな鳴き声がした。その声は、二人を追いかけているかの様に近付き、どんどんと大きくなってきている。
魔耶「この鳴き声.....まさか....!!」
何かを察し、魔耶も全力で出入口に向かう。少し先には、仄かな光が見える。二人が入って来た出入口から差し込んで来ている日光だ。
カルセナ「もうちょっと....間に合え〜っ!!」
足の力を振り絞り、光を目指した。

そうして、目の前が眩しい光に覆われた。
魔耶「うっ......外だ!!」
カルセナ「やった.....出れた....」
一息つこうとした瞬間、後ろの穴から何かが真上に飛び出した。バッと振り替えるとそこには、写真よりも恐ろしく、鋭い嘴を持った大きな鳥型のモンスターが空中で羽ばたき、こちらに警戒の眼差しを向けていた。

513:なかやっち:2020/06/03(水) 22:14

魔耶「ッ…!こ、こいつが…」
カルセナ「…写真よりも怖いね…」
二人で怪鳥に向き直る。怪鳥のランランとした鋭い瞳孔で睨み付けられ、完全に自分達のことを敵対視してるのだと理解できた。…勝手に巣にはいったのだから当たり前といえば当たり前だが。
魔耶「…流石に逃がしてくれるなんてこと、ないよね…」
カルセナ「そりゃそうでしょ…あの目を見ればわかるよ。殺意しかこもってないもん」
魔耶「…うん、殺る気満々だな……戦わなきゃダメかぁ…」
はぁとため息をつく。なんとなくクエストを受けたときから平和的には終わらないだろうなと予想していたけど、やはりこうなってしまうのか…。
カルセナ「今の魔耶なら大丈夫だって!気絶させる程度まで攻撃して、ゆっくり貴重品ってやつ探そう!」
魔耶「今の私でもどうだろうねぇ…まぁ、やれるだけのことはやってみようじゃないか。早くクエストクリアして、悪魔の問題を解決しなきゃな」
カルセナ「うむ、それでこそ魔耶だ」
魔耶は双剣を、カルセナは拳を構えて怪鳥と向き合う。怪鳥はこちらの出方を伺っているようで、攻撃する様子もなく彼女らの動きを観察していた。勝手に巣に入られて怒っている割には冷静な判断だ。…一筋縄ではいかないであろう。

514:多々良:2020/06/04(木) 21:02

魔耶「....さて、どう行こうか....」
巣から出てきたときの身のこなしを考えると、こちらから攻め落とすと言うのは難しいだろう。
何故ギルド側は、こんなにも凶暴そうな怪鳥を相手にした依頼をランクDに設定したのだろうか。自分達の基準が甘いのか、はたまた相手が団体でないからなのか....だが、今はランクなど関係ない。目の前の敵に集中する。
相変わらず様子を伺っている様だったが、二人がこのまま動かない事を察したならば、襲ってくる確率は大いにあるだろう。
カルセナ「む〜.....未来読むの難しいよ〜.......」
怪鳥や自分達が行える動作など、星の数程ある。その全ての未来を読み、攻略法を探すのはとてつもなく難しい事だった。
魔耶「取り敢えず真っ正面から突っ込んでも負けるよね.....」
カルセナ「うん、未来読まなくても分かるわ.....どうする....?」

515:なかやっち:2020/06/04(木) 21:58

魔耶「どうするっていっても…どうしよう…」
正面から行ったら確実にやられてしまう。かといってここでじっとしていたら襲ってくるかもしれない。やはり様子見をしている隙にこちらから行くべきなのだろうが…どう攻めたらいいのであろう?
カルセナ「……未来も読みきれないし、どうしたらいいんだろ…」
頑張って未来を読もうとしてるカルセナだが、やはり未来を読むのは難しいようだった。カルセナの能力に頼ることはできないめあろう。
魔耶は必死に頭を回転させ、策を練る。
魔耶(正面から行ったらやられちゃうだろうし、やみくもに突っ込むのは危険だよなぁ…こっちの動きを観察してるから攻撃しても避けられる確率が高い。…なんとか隙をつくれれば…)
魔耶「……二手に分かれて攻撃するか…能力で人形をつくって不意をつく…今考えられるのはこの二つかな…」
とりあえず思い付いた作戦をカルセナに伝える。魔耶とカルセナで別方向から攻撃し一人に集中できないようにするか、能力でつくった人形を動かして隙をつくる…今思い付くのはこの二つだ。

516:なかやっち hoge:2020/06/04(木) 22:00

『できないであろう』です。さーせん…w

517:多々良:2020/06/05(金) 22:26

カルセナ「前者は良いと思うけど.....後者は大丈夫なの?今もそうだけど、能力たくさん使っちゃったら悪魔化が進行しちゃったりとか......」
魔耶「まぁ、可能性は無くないけど......」
カルセナ「じゃあ、二手に別れようよ。纏まってやられたら大変だしさ」
魔耶「うん、りょーかい」
少しだけ話し合って、改めて怪鳥の方を向く。二人がわずかながら動いたりしていたので、怪鳥はまだ警戒しながら飛んでいるだけだった。
カルセナ「.....じゃあ魔耶、私が頑張って隙をつくるからね!」
魔耶「さっきも聞きましたよ〜....よーし.......行けっ!!」
合図を聞き、二人同時に地面を蹴った。

518:なかやっち:2020/06/05(金) 23:07

魔耶(あんまり能力使わないほうがいいのか…なるべく双剣だけで戦って、カルセナの援護をしよう)
走りながら自分のやるべきことを考える魔耶。カルセナが攻撃に集中できるように、自分はできるだけ怪鳥を引き付けよう。そう考えカルセナとは逆の方向に走っていく。
怪鳥は相変わらず空中でバサバサと羽を上下に動かしているが、目は二人を交互に追っていた。
魔耶(うんうん、意識が分散してるね。作戦通りだ)
魔耶「私はカルセナに合わせて援護するから!どんどん攻撃して、隙つくって!」

519:多々良:2020/06/06(土) 15:51

カルセナ「うんっ、ありがと!!」
魔耶が怪鳥の意識を逸らしてくれている隙に、出来るだけそれに近付くように飛ぶ。
カルセナ(ただのパンチやキックじゃあ効かないよなぁ.....どうしよう.....)
今の状況下において、攻撃方法を考えている時間でさえ勿体無く思えた。また、あいつに頼るしかないのだろうか.....。

カルセナ「.......ねぇ、起きてる?」
ブラッカル「....?...ん〜....何だよ.....」
カルセナ「また力貸してくれない....?」
ブラッカル「はぁ....私はテメェの道具じゃねぇんだぞ」
カルセナ「ごめん!お願いだからさ、今は.....」
ブラッカル「......ったく、分かったよ.....今だけな....」

520:なかやっち:2020/06/06(土) 18:05

怪鳥の狙いをカルセナに向けさせまいと走っていた魔耶だったが、途中でカルセナの様子が変わったことに気づく。
魔耶「…?カルセナ…?いや、あれは…」
魔耶の視界に入ったのは、髪と肌以外が真っ黒になったカルセナ…いつものカルセナとは違うが、見覚えのある姿だった。
魔耶「ブラッカル…?」
ブラッカル「…よぉ、魔耶とは久しぶりだな。…つっても数日くらいか?」
名前をボソリと呟くと、真逆の方向にいるブラッカルに話しかけられた。
…いつも見ている顔なのに久しぶりと言われるのは変な気分だ。中身は違うけども…

521:多々良:2020/06/07(日) 11:25

ブラッカル「....んで、出たは良いもののどういう状況だ?」
魔耶「え....それは分かんないのね....」
周りの景色などを見て、大体を把握する。
ブラッカル「んー....取り敢えず、こいつぶっ飛ばせば良いのか?」
カルセナからブラッカルになった事で、違和感を感じ取り更に警戒している怪鳥を指差し、魔耶に確認する。
魔耶「そゆこと、私が気を引くから攻撃して!」
ブラッカル「よし....んじゃあ、ちょっと体動かすか!」
軽く体を伸ばすと、隙を窺うかの様に怪鳥の周りを飛び始めた。カルセナであったときよりも素早い動きだった。
ブラッカル(狙うんなら頭が良いが.....入り込めるかどうかだな)

522:なかやっち:2020/06/07(日) 13:54

と、ようやく怪鳥が地面に降り立った。様子見は止めた、ということだろうか…だとすると、怪鳥はこれから攻撃を始めるのだろうか。
ブラッカルが攻撃に集中できるように、怪鳥の注意は自分に向けなければいけない。どうすれば怪鳥の注意が自分に向くだろうか?
魔耶(能力使えば簡単なんだけどな…)
ここは大声でもだそうか…それとも、能力を使ってしまおうか…
魔耶(でも今悪魔になったら困るしなぁ…ブラッカルなら悪魔に勝てるかもしれないけど、まだ悪魔の苦手なものとか見つけてないし…でも、くまさんで怪鳥を引き付けられれば…)
…あまり気は進まないが、能力を使うとしかないか…。大きなものをつくるわけではないし、きっと大丈夫だろう…と思いたい。
掌に意識を集中させ、可愛らしいくまのぬいぐるみを思い浮かべる。

523:多々良:2020/06/07(日) 15:56

ブラッカル「....ん?何やってんだ....?」
魔耶が手先を気にしている様に見えたかと思えば、そこに、ぽんっと少々小ぶりなぬいぐるみが現れた。
ブラッカル(成る程な、あれで気を引くつもりか.....あいつは能力使って大丈夫なのか?)
地上近くまで下降したブラッカルは、魔耶の動きを見守る。怪鳥の気があっちに向いたら、一気に片を付けるつもりだ。
魔耶「さて....こっち見て貰えるかな?」
ぬいぐるみを、怪鳥にやられない程度の所まで移動させ、少し鬱陶しい位に動かす。予想通り、怪鳥はぬいぐるみを気にしている様だ。
ブラッカル「ふぅん....何かちょろい鳥だな....そろそろやっちまうか?」
出来れば一発で終わらせたいが、前の試験のときみたいに、そう易々と出来るものでもない。だから、それを達成する為、あらゆる神経を張り巡らせる。

524:なかやっち:2020/06/07(日) 17:21

魔耶(…能力使っちゃったけど、大丈夫そうだな…特になんの違和感もないし)
くまさんを操り、怪鳥の目の前で右へ左へと移動させる。怪鳥が攻撃してきてもヒョイと軽々避けさせるため、怪鳥が怒ったように嘴をカチカチと鳴らした。
魔耶「よしよし、完全にくまさんに夢中になってるね」
これでブラッカルは簡単に攻撃することができる筈だ。
…肝心のブラッカルはというと、怪鳥を一発で仕留める気なのか集中している様子が見受けられた。

ブラッカル「……よし、いくぞ…」

525:多々良:2020/06/07(日) 19:50

足に力を入れ、怪鳥に向かって一直線に飛ぶ。魔耶が操るぬいぐるみに夢中で、ブラッカルの気配には気付いていない様だった。
一瞬にして、怪鳥の頭部へと近付く。ようやく殺意か何かを感じ取ったのか、怪鳥がブラッカルの方に振り返った。
ブラッカル「今気付いたって遅いぜ!!喰らえッッ!!!」
全ての力を足に込めて、怪鳥の硬そうな頭部を横から蹴った。
魔耶「えっ!?横!!?」
踵落としをするのだろうと思っていた魔耶は、驚きの声をあげる。
怪鳥「「 ギャアァァァ!!! 」」
かなりの衝撃が加わったせいで怪鳥は蹴られた方向に大きく飛び、そこにあった岩に激突してしまった。どうやら今は、衝撃で目を回してしまっている様だ。
ブラッカル「....っしゃあ!!見たか!!おーい魔耶、お前は何とも無ぇか?」

526:なかやっち:2020/06/07(日) 22:51

魔耶「うん、大丈夫………ッ?」
ブラッカル「…?どうかしたのか?」
魔耶「…なんか、右目が…痛いんだけど…」
右手で目を押さえる。ズキズキとした痛みが走っていて、思わず顔をしかめた。
そんな私の様子を見て首を傾げるブラッカル。
ブラッカル「ゴミでも入ったんじゃねぇか?」
魔耶「ん〜…どうだろ…」
ブラッカル「ちょっと見せてみろよ」
魔耶「…はい…」
痛みをこらえ、閉ざしていた右目を開く。
ブラッカル「どれど…れ…って、あれ…?」
魔耶「ん…どうかした…?」
ブラッカルは少し混乱したように考え込んだあと、私にある質問をしてきた。
ブラッカル「…お前の目って…両方赤かった、のか…?」
魔耶「…えぇ?右目は青だよ?」
ブラッカルは何を言っているのであろう。カルセナより少ないとはいえ、カルセナの次に長く私と一緒に過ごしているのだ。そのくらい質問しなくてもわかるのではないだろうか?
魔耶「いきなりなんでそんな質問するのさ?」
ブラッカル「いや、だって…お前の右目…」

ブラッカル「赤くなってるぞ…?」

527:多々良:2020/06/09(火) 00:16

魔耶「......えっ?」
自分に無い情報を告げられ、一瞬頭の整理が追い付かなくなる。
魔耶「な、何で.....?」
ブラッカル「何でって言われても.....知らねぇよ」
魔耶「嘘でしょ.....まさか....」
能力を使う事で悪魔化が進行する可能性は大いにあったが、まさかこんなにも分かりやすい変化が訪れるなんて....。
ブラッカル「.....?まぁ良い、怪鳥はぶっ飛ばしたし、後はお前らで考えた方が良いだろ。....私は寝る、じゃあな」
そう言って、ブラッカルの面影は徐々に消え失せていった。そうして、いつも通りのカルセナが魔耶の目の前に現れた。
カルセナ「....ん、モンスターはもう居ないのか....?」
魔耶「....あ、あぁ、ブラッカルがあっちに蹴り飛ばしてくれたよ....」
カルセナ「そっかー。じゃあ、手っ取り早く貴重品を見っけて.......あれ?何か魔耶....目の色変わってない....?」
魔耶「........そうみたい....」
カルセナ「....それも、もしかして....悪魔化してる証拠...なの....?」

528:なかやっち:2020/06/09(火) 20:41

魔耶「そう…なのかも…」
自分の右目を押さえる。もう痛みはないが、悪魔化が進んでしまったという精神的ダメージがあった。
カルセナ「魔耶……大丈夫…?」
魔耶「…うん。さっきは右目が痛かったけど、今はなんともないよ。まだ時間はあるみたいだね」
カルセナを安心させるために、自分に言い聞かせるために言葉を発し、軽く笑い掛けた。
カルセナ「……そういうのじゃ……いや、やっぱなんでもない。なにかあったら言ってよ?」
魔耶「?…うん、ありがと。……じゃあ、怪鳥が気絶しているうちに灯り取ってこないとね」
カルセナ「ん……あぁ、そうね。…でも、片方は怪鳥を見張ってた方がいいんじゃない?灯りを取ってきているすきに怪鳥が復活してて、また戦うことになったりしたら嫌だよ?」
魔耶「確かにね…んじゃ、そうしましょうか。どっちが灯り取りに行く?」

529:多々良:2020/06/09(火) 22:14

カルセナ「うーん....」
双方の状況を考えて、決断を下す。
カルセナ「....私が怪鳥を見張ってるよ。魔耶は灯りを持ってきて」
魔耶「分かった。でも、見張り大丈夫....?ずっと怖がってたりしたから.....」
カルセナ「うん、大丈夫。いざとなったらまたあいつが出てきてくれるかもだし、魔耶にあまり....その....能力を使わせちゃう事が無いようにさ」
両方とも赤く染まってしまった魔耶の目を見つめる。
魔耶「....ん、ありがと。じゃあ、すぐ持ってくるからここはよろしくね?」
カルセナ「了解!!」
そう言って、怪鳥が倒れている側にある岩の上に座った。魔耶が灯りを取りに飛んで行ったのを見送りながらーー。

530:なかやっち:2020/06/09(火) 22:53



魔耶「……ッは〜…」
カルセナと別れて10分くらいはたっただろうか…魔耶は一人、空中でため息をついた。
魔耶「…また悪魔化進んじゃったなぁ…これじゃあ、悪魔になるのがちょっと早まるかも…」
魔耶が言っているのは、先程の右目の件についてだ。
まさかほんの少し能力を使っただけでこんなことになるなんて…自分の考えが甘かったことを後悔する。…が、今さら遅い。時間を巻き戻すことなんて出来ないのだから。
魔耶(後悔先にたたずってやつか…もっと慎重に行動すべきだったなぁ…。カルセナにも心配かけちゃったし、気を使わせちゃったし…申し訳ない……)
後先考えずそのときの直感で行動する。やはりこういうところが自分の悪いところだろうな…。
もう過ぎてしまったことはしょうがないと諦めるしかない。…でも、反省してまた同じ過ちを繰り返さないようにすることはできる。これからはもう少し先のことを考えて行動することにしよう…そう思った。

魔耶「…さて、早くカルセナのところに行かなきゃいけないんだから。さっさと灯り取ってこないとね」

531:多々良:2020/06/09(火) 23:55


カルセナ「....流石にまだ起きないかな.....?」
時折倒れている怪鳥の様子を窺いながら、ほっと空を見上げる。多少の雲はあるが、今の天気は世間で言う晴れであった。もうすぐ日が落ちて夕暮れになると思うと、今過ごしている全ての時間がとても憂鬱に感じられた。
そう思うのも無理はない。時間が進むと言う事は、着実に魔耶の悪魔化が進んでしまうと言う事なのだから。
カルセナ「はぁ.....どうすれば悪魔化を止める事が出来るのかなぁ.....ねぇ、どう思う....?」
先程怪鳥を蹴り飛ばしたブラッカルに語り掛ける。が、返事は無い。いつもそうである。本体が危険な状態、または戦闘体制になっていないときは、元々居なかったかの様に存在を薄め、ずっと寝ている。
カルセナ「....そんなに寝る必要あるかね....でも、本来は封印されてる奴っぽいから、これが正常なんだろうけどさ....」
伸ばしていた背中と首が疲れたので、仰向けでごろんと岩の上に寝転がり、頭を支える為に後頭部付近で両手を組む。
カルセナ「......私にもっと、出来る事があったら良かったのに....」

532:なかやっち:2020/06/10(水) 15:42



それから一時間半後、魔耶はカルセナのもとに向かって飛んでいた。その手にはオレンジ色の暖かい光を放つランタンが握られている。ギルドの係員に頼んでみたところ、快く貸してくれたのだ。
魔耶「買わなきゃいけないかな〜なんて思ってたけど、ギルドで借りられてラッキーだったなー。もうお金がなかったからありがたい…」
ほっと一息つき、ギルドの職員に感謝した。…まぁ、本当はこういう道具を持っていってからクエストに向かうべきなんだろうけども…生憎、魔耶達はまだ数回程度しかクエストを受けていなかったため、そういうことは知らなかった。これからは気を付けるとしよう…。

魔耶「ん、ここら辺だったっけ…」
それからしばらく進み、見覚えのある地点まで来ることができた。出発したところはこの辺りだったはず…。
カルセナと合流するため、降下してスタッと地面に降りたった。辺りを見回して彼女の面影を探す。
魔耶「なんか目印でも付けるべきだったなぁ…カルセナ〜?どこ〜?」

533:多々良:2020/06/10(水) 19:39

カルセナ「.....ん?」
何処からか、名前を呼ぶ声が聞こえる。横になっていた自分の体を起こす。幸いにも、怪鳥はまだ起きていない様だ。これだけ大きな怪鳥が、これだけの時間気絶しているなんて、もう死んでしまっているのではないか....などと思ってしまう。もしくは、ブラッカルがそれだけ強力な蹴りを放ったのか....。そんな考えを片隅に置き、声の主を探す。
???「.......〜」
カルセナ「うーん....?どこかな....あっ!おーい、ここだよ〜」
遠くに見えたのは、紛れもなく魔耶だった。ここからではよく見えないが、魔耶の手に何かが握られていた。
魔耶「.....お、いたいた。ごめーん、お待たせ〜」
小走りになってカルセナの元へ駆け寄る。カルセナも岩から降り、魔耶の元へ向かう。
カルセナ「いやいや大丈夫だよー。灯り持って来れて良かったね!」
魔耶「これであの巣の奥まで探しに行けるね〜。そっちこそ、怪鳥は起きたりしなかった?」
カルセナ「うん、ずっとあそこで寝てたよ〜」
魔耶「それは何より.....んじゃ、ぱぱっと探しに行っちゃいましょっか」
カルセナ「りょーかーい」

534:なかやっち:2020/06/10(水) 20:13


二人で再び巣のなかに潜り、貴重品を探し始める。仄かな明かりを放つランタンを持っているというだけでも、先程とは安心感が違った。
カルセナ「…あ、そういえば、そのランタンどうしたの?買うお金なんてなかっただろうし…」
魔耶「あぁ、うん。最初は買うしかないかな〜なんて思ってたけど、ギルドに行ったら職員さんが貸してくれてね。お金なかったからありがたかったよ」
カルセナ「へぇ…ギルドで借りられるんだ〜。便利だねぇ」
魔耶「ねー。流石ギルド…」
北街の中では大きい方に分類される建物だし、きっとあの街の中心的存在なんだろうなぁ…なんて思う。…実際、ギルドがなかったら街の人は狂暴なモンスターを恐れて暮らす日々だっただろうしね…。

535:多々良:2020/06/11(木) 21:32


魔耶「....さてと、戻って来ましたね〜」
少し前に危険を察知し、探索を断念した場所まで帰って来た。
カルセナ「こっから先にあるのかな?早く見つけて帰ろ〜、魔耶〜」
魔耶「うんうん、暗くなっちゃうしね」
洞窟を照らす頼もしいランタンを片手に、行けなかった洞窟の奥の探索を始める。
カルセナ「こう言うのは、一番奥に置いてあるって言うのがオチだよなぁ....」
魔耶「そうじゃなかったらどうする?」
カルセナ「そうじゃなかったらって.....例えば?」
魔耶「意外と手前の方にあったり....もしくは、そもそもここじゃなくて違うところにあるとかね」
カルセナ「前者はありがたいけど.....後者は嫌だなぁ.....わざわざ怪鳥を倒したって言うのに....」

536:なかやっち:2020/06/11(木) 22:57

魔耶「そうだねぇ…ま、不吉なこと言っちゃったけど、きっと奥にあるよ。パパッと探しちゃいましょ〜」
カルセナ「はーい」

魔耶「…あ、カルセナ〜!なんか穴があるよ〜?」
それからしばらく歩き、そろそろ長い道のりの終盤に差し掛かっていたであろう…というときに、魔耶がカルセナに話しかけた。
カルセナ「ん〜?…あ、ホントだ。通路の横に穴があいてる…」
魔耶が見つけたのは、通路の途中にあった横穴だった。分かれ道があったり通路の途中に穴があったり…なんだか蟻の巣のようだ。
魔耶「穴の中はよく見えないねぇ…行ってみる…?」
カルセナ「うーむ、そうだねぇ…貴重品とやらがあるかもしれないし…行ってみようか」
魔耶「了解でーす」

537:多々良:2020/06/12(金) 19:37

魔耶が見つけた横穴へと入る。少し道が続いたが、やがて目の前に広い空間が現れた。
魔耶「うわぁっ....なにこれ....」
そこには、声を出して驚いてしまう程の、大量の貴重品と思われるものが乱雑に落ちていた。
カルセナ「うわ〜.....ここにたくさん貴重品があるって事は、探してるやつもここにあるかもね....」
魔耶「て事は.....この中からそれを探し出せってことだよね....」
カルセナ「うん....大変だけど、そういう事だね....」
改めて辺りを見回す。ランタンの光が届く範囲内に見える貴重品だけでも、数え切れない。
魔耶「うう.....仕方無い、やるか....」
カルセナ「いつ見つかる事やら....」
そうして二人は、1つのランタンを頼りに大量の貴重品を漁り始めた。

538:なかやっち:2020/06/12(金) 20:24


魔耶「ん、これは…いや違うな…」
乱雑に置かれた物の中を漁る二人。
この大量の貴重品の中からたった1つの依頼品を探すなんて…地道すぎる作業だ。似ている品も多いし……自然とため息がこぼれる。
カルセナ「……こんなにたくさんある物の中から依頼品を探すなんて…日がくれちゃうよ…」
魔耶「ほんとにね〜…。あの怪鳥、貴重品を盗む習性でもあるのかな?」
カルセナ「うーむ…鳥は、綺麗なものとか光る物とかを集めるって聞いたことあるから…そうなんじゃないかな。…っていうか、そうじゃなかったらこんなに集めてないでしょ…」
魔耶「まぁ、そうか…迷惑な鳥だなぁ…」
カルセナ「ほんとにね〜。いつかギルドに討伐依頼がきたりして」
魔耶「そしたらランクDではすまないだろうね」
カルセナ「C,Bはいくだろうね…。そもそも、なんでこのクエストはDランクなんだろ?結構苦労するクエストなのに」
魔耶「さぁねぇ…。ギルドの考えてることはよくわからん」
なんて雑談をしながら、貴重品の山を漁るカルセナと魔耶。目当ての品はなかなか見つからない。

539:多々良:2020/06/13(土) 12:22

カルセナ「うぅ〜.....何かめんどくなってきた〜....」
あまりにも量が多い為、不満を溢す。
魔耶「まぁまぁ、頑張れよー。ここで諦めたら怪鳥を倒した事も水の泡だぞ?」
カルセナ「む、確かに.........頑張れるだけ頑張ってみるかぁ....」

それから、かなりの時間が経過した様に感じた。
魔耶「これでも無い.....えっと....違うなぁ....」
カルセナ「うーん.....ここら辺はもう無いかな.....」
疲れはかなり出てきているものの、貴重品を真剣に探していた。
カルセナ「うわぁ〜、やっぱ見つかんないよ〜」
魔耶「ね....そろっとこの部屋全部見終わるし......さて、ここは...と」
今まで探していた場所とは別のところを見る。
魔耶「ここにあってくれ〜.....!!でないともうキツイ....」
ジャラジャラと貴重品の山を漁る。

540:なかやっち:2020/06/13(土) 14:21



カルセナ「…ん…?あ、これ…!」
カルセナの声に反応して振り返ってみると、彼女の視線がある物に注がれているのが見えた。作業していた手を止めて彼女の方を向く。
カルセナ「依頼品と似てない…?」
魔耶「え、本当…!?見せて見せて!」
カルセナに近づいていき、その手の中にある金属の貴重品を見せてもらった。
魔耶「わ、ほんとだ…。特徴は一致してる、と思う…」
カルセナ「だよね…これなのかな?」
魔耶「いやでも似てるだけってこともあるだろうし…依頼品だけにしかない特徴とかないのかな…?」

541:多々良:2020/06/13(土) 18:15

カルセナ「うーんとね....これにはイニシャルが彫られてるけど....どう?」
魔耶「どれどれ....えーっと....」
カルセナが持っている貴重品と、写真の貴重品を見比べる。
魔耶「.....あっ、ある!!同じ部分に同じ文字が!」
カルセナ「て事は.....」

魔耶カル「「 やったーー!!! 」」

外まで聞こえてしまう位の大きな声を出して喜ぶ。
魔耶「長かった〜......やっと見つけられたね!」
カルセナ「魔耶の言った通り、諦めなくて良かった〜」
魔耶「いや〜お手柄だったねぇ。....んじゃ、早く帰ろ!きっともう暗くなってるだろうしさ」
カルセナ「おー!」

542:なかやっち:2020/06/13(土) 20:04



魔耶「…はーぁ、見つかってよかった〜」
帰りの飛行中、ため息混じりに…そして嬉しそうに呟く魔耶。
カルセナ「ねー。大変な依頼だったけど、その分達成感がすごいわ…」
魔耶「うんうん。今日のご飯が美味しく感じられそうだ」
カルセナ「そうだねぇ…。あ、今日のご飯はどうしようか?自炊?」
魔耶「あ〜……疲れたから…買いたいな…」
カルセナ「はは、そっか。じゃあ買ってこないとね…今度こそ麺類が残ってればいいけど…」
どうやら、カルセナは前にお店に行ったときに麺類が無かったことを引きずっているようだ。
そんなに麺類が好きなのか…流石外国人。
魔耶「どうだろうね〜。依頼品見つけられたから、そこで運を使い果たしちゃったかもよ?」
カルセナ「嫌なこと言わないでよ〜…」
魔耶「えへへ、冗談だって。まだそんなに遅い時間じゃないし、きっと残ってるよ」
カルセナ「…だといいけどねぇ…」

雑談していると、ようやく北街の大きな壁が見えてきた。

543:多々良:2020/06/13(土) 23:07

魔耶「お、戻って来た」
カルセナ「何か久し振りに感じる....」
魔耶「真剣に長時間探してたからねぇ....その分久し振りに感じるのかもね」
カルセナ「うんうん.....あ、そう言えばこの貴重品ってどうすれば良いんだっけ?」
胸ポケットに入れていた貴重品を取り出し、暗くなった空に翳す。
魔耶「確か、ギルドの人に渡せば届けてくれるんじゃなかったっけ?」
カルセナ「あぁ、そうだったか〜」
何て事を話している内に正門へたどり着き、そこから街へと入る。
魔耶「ただいまぁ〜.....よし、じゃあ取り敢えず、ギルドに向かおっか」
カルセナ「だねー、報酬金しっかり貰わないとな」

544:なかやっち:2020/06/14(日) 09:37

魔耶「ほんとだよ〜。じゃないと餓死しちゃう…」
カルセナ「でも魔族(悪魔)なら食べ物なくてもしばらくは生きていけそうじゃない?」
魔耶「えー…どうだろ…実験なんてしたことないし…」
カルセナ「やってみればー?」
魔耶「私に生死をさまよえと言っているのか…?」
カルセナ「はは、冗談に決まってんじゃ〜ん」
魔耶「ほんとかなぁ…」

と、雑談していたとき、不意に後ろから声が聞こえた。
??「ーー魔耶!カルセナ!」
カル魔耶「「わっ⁉」」
??「あはは、脅かし大成功!」
いきなり聞こえた声に振り返り、声の主を探す。…といっても、大体の見当はついていたのだが。
魔耶「ひまり…いきなりやめてよ…」
カルセナ「ほんとに…心臓に悪いわ…」
二人がそう言うと、いつも通りの明るい笑顔で謝る彼女。
ひまり「えへへ、ごめんごめん!偶然二人が歩いてたのを見かけたからさ〜。何してたの?」
カルセナ「クエストクリアして、今ギルドに帰るとこ。ひまりは?」
ひまり「私は夕飯の買い物の帰りだよ〜。そっか、二人ともクエスト受けてたんだ?大変だねぇ…」
魔耶「お金なくてね…」
ひまり「そっか〜」
流れで自然とひまりが会話に加わり、三人でギルドに向かいながら話し始めた。
ひまり「二人とも、なんか最近忙しそうだね?あんまり会わないし…」

545:多々良:2020/06/14(日) 13:36

ひまりの何気無い一言を聞いて、少しドキッとする。
魔耶「!....そ、そうかな?確かに、最近は話したりしてなかったね〜」
ひまり「何か特別な用事でもあったりするの?」
魔耶「いやいや、会わなかったりしてたのは多分偶然だよー....」
それは、真実をあまり隠しきれていない、見え透いた嘘だった。
カルセナ「そんな毎日会うものでもないしさ....ね〜」
ひまり「....ふーん、そっか....ま、何であろうと頑張ってね!」
魔耶「あ、うん、ありがと....」
上手く誤魔化せた....そう思い、一息吐いたところで、ギルドが見えてきた。
カルセナ「あ、ギルド見えた〜」
魔耶「ほんとだ、ささっと返して、早く晩御飯買いに行こっか」
カルセナ「そうだねぇ、もうお腹ペコペコだわ.....」

546:なかやっち:2020/06/14(日) 14:31

ひまり「はは、お疲れさま〜。…じゃあ、私ここで待ってるね。二人で行ってきて〜」
カルセナ「ん、そう?…じゃ、ささっと行ってきますね〜」
ひまり「うん。いってらっしゃーい…」
小走りでギルドに向かっていった二人を見送り、一人ため息をつくひまり。
ひまり「…嘘が下手だなぁ。友達なんだから、もっと色々話してくれてもいいのに…」
ひまりが言っているのは、先程の魔耶達のことであった。あの二人は明らかに何かを隠している様子だった。流石のひまりもそれが分からないほど鈍感ではない。
それは、誰にでも1つや2つの隠し事はあるであろう。でも、ひまりは二人のことを大切な友達だと思っているのだ。なにかあるなら話してほしい。
ひまり「…それに、魔耶の様子が明らかに変わってるじゃん。あんなので誤魔化せると思ってるのかしら…。はぁ、全く…」
自分から聞こうとは思わない。…きっと、自分には話したくないほど重要で大切なことなのだろうから。だから、今の自分は彼女らのことを見守るしかないのだ。
ひまり「…こういうときに、能力とかがあったら…人間じゃなかったら…その秘密を知ることが出来るのかな…」

547:多々良:2020/06/14(日) 22:48


カルセナ「....危なかったねぇ〜....」
魔耶「うーん....あれで誤魔化せたかは分からないけどね....」
多少の不安を抱きつつも、ギルドのカウンターまで歩き、受付の係員にクエストの事を伝える。
魔耶「あの〜....盗まれた貴重品を取り戻すっていうクエストを受けたんですけど....」
係員「はい!えーと....こちらですね?では、盗品は手元にありますか?」
カルセナ「えっと.....これでーす」
ポケットから、怪鳥から取り戻した貴重品を取り出し、受付に提出する。
係員「ご確認致しますので、少々お待ちください!」

係員「......お待たせしました、確かに盗品だったものですね!ではこれは、依頼人の方にギルドからお返し致します!」
魔耶カル「お願いしまーす」
係員「....それでは今回の報酬金です、しっかりご確認下さい!お疲れ様でした!!」
そうして、報酬金の入っているであろう封筒を受け取った。

548:なかやっち:2020/06/15(月) 17:18

魔耶「…うん、これで当分はもつんじゃないかな?」
カルセナ「うんうん。じゃあ、これからは魔耶の問題に集中できるね!」
魔耶「そうだね。さっさと悪魔の嫌いなものとやらを見つけなきゃ」
お金の問題がひとまず解決できたこと、今日で有力な情報と封印方法を知れたことで二人の心にはゆとりができていた。
あとは悪魔の苦手なものを見つけるだけで問題が解決する。…悪魔を弱らせることができるかどうかは別だが。
カルセナ「もう一息、頑張ろう!」
魔耶「うむうむ。…あ、そうだ。この世界には温泉とかってあるのかな?」
カルセナ「??……ありそうっちゃありそうだけど…いきなりどうしたの?」
魔耶の突然の問いかけに首を傾げる。
魔耶「いやぁ、この世界に来てからシャワー生活ばっかりじゃない」
カルセナ「そういえばそうね」
魔耶「だからさ、もしこの問題が解決できたら…温泉入りたい!」

549:多々良:2020/06/15(月) 22:24

カルセナ「おおー!!行きたい行きたい!」
温泉に入った回数がとても少なかった為、大きく喜ぶ。
魔耶「じゃあ決まり!また目標が増えたね!」
カルセナ「そうだね、楽しみにしとくわ〜」
何て雑談をしながらギルドの出入口付近に向かう。そこでは、笑顔のひまりが待っていた。
カルセナ「あっ......」
魔耶「....ん?どうかした?」
カルセナ「あえ....いや、何でも?」
悪魔化の件が終わった後の話をしていたのに加え、ひまりを見て思い出した。魔耶の好きなご飯がありそうな飲食店を探す予定だったのだ。最近ひまりと会って居なかった為、忘れかけてしまっていた。後でこっそりと聞き出してみようか....
魔耶「ふーん....ま、いっか。ひまりお待たせ〜」

550:なかやっち:2020/06/15(月) 23:03

ひまり「ん、早かったね?」
魔耶「まぁ確認と報酬貰っただけだしね〜。……それじゃあ、これから買い出しに行かないと…」
疲れた体の毒をだすようにため息をつく。
ひまり「私も家に帰らないとだな〜。……二人とはここでお別れかな?」
魔耶「そうだねぇ。じゃあ、早速買い出しに……」
カルセナ「……あ、魔耶。私ひまりに聞きたいことがあるからさ。先に買い出しに行っててくれない?」
自分の言葉を遮るようにカルセナに言われて、少し驚く魔耶。
魔耶「え?あ、うん…いいけど……あとで追い付ける?」
カルセナ「うん、大丈夫大丈夫。たいした用事じゃないからさ、すぐに追い付くよ」
魔耶「…そっか。じゃあひまり、またね〜」
ひまり「えぇ、また。………で、カルセナ?何の用なの?」

551:多々良:2020/06/16(火) 19:19

カルセナ「あ、あのね....前に、魔耶にプレゼント貰ったんだよね」
帽子に輝くブローチを指差す。
ひまり「へぇ〜、良かったじゃない!可愛いねぇ」
カルセナ「で、このお返しと言うか....感謝を込めてと言うか....そのー、魔耶に美味しいご飯奢ってあげたくてさ....何か美味しいお店無いかな?」
ひまり「そう言う事ね。魔耶の好きな食べ物とかって分かる?」
カルセナ「確か.....鶏肉が好きって言ってたよ」
ひまり「鶏肉....そうねぇ.....」
暫く顎を支えて考える。
ひまり「.......あっ!そうだ!良いところがあるわよ!」
カルセナ「本当!?どこどこ?」


カルセナ「.......成る程〜、ありがとうひまり!!」
ひまり「いやいや、それよりも、早く魔耶に追い付きなね?」
カルセナ「ん、分かった!それじゃあね〜!!」
ひまりに大きく手を降りながら、魔耶の歩いていった方向へ走って向かった。

552:なかやっち:2020/06/16(火) 20:08


魔耶「カルセナがひまりと二人で話したいって…私、カルセナになんかしたっけ…」
わざわざ自分を先に行かせたのだ。私に聞かれたくないこと、ということだろう。…なら、話しのテーマは自分に関することなのではないかと推測できる。
魔耶「うーーん…」
ここ数日で自分がカルセナに対してやらかしてしまったことはあっただろうか。…もしかしたら自分が自覚していないだけで…ということも考えられる。
魔耶「わざわざ二人で話してるんだしな…私、カルセナに何やらかしたんだよ〜…」
カルセナ「……なんもやらかしてないけど…」
魔耶「いやぁ、もしかしたら私が気づいてないだけかも…………って、うん…?」
違和感に気づいて、素早く後ろを振り向く。
魔耶「か、カル…⁉早かったね…」
カルセナ「…気づくの遅くない?」
魔耶「いやぁ、考え事してたからさ……」
後ろには、綺麗な金髪に水色と黄色の帽子を被った浮幽霊……カルセナの姿があった。…いつの間に……
カルセナ「……で、なんかやらかしたがどーのこーの言ってなかった?」
魔耶「あー…えと、その……カルセナがひまりと二人で話してたから……私がカルセナになにかやらかしちゃったのかな〜…と……」

553:多々良:2020/06/17(水) 22:33

カルセナ「そう言う事ね.....別に何もやらかされて無いから安心しなさいな」
魔耶「そうか....なら良かったわ」
カルセナ「それよりも、早くご飯買いに行こー」
魔耶「だねー。まぁまぁ遅い時間だしね....」
二人が向かう店は長時間の営業をしているので問題は無いが、その他の小さな商店等は早く閉まってしまう所もあるそうだ。
魔耶「うぅ〜ん.....疲れた〜....」
カルセナ「そうだね〜....何か、前の魔耶程じゃ無いけど、足が痛いわ.....筋肉痛かな」
魔耶「そうなの?.....あー...」
そのとき、ブラッカルが怪鳥に喰らわせた強い蹴りを思い出した。
魔耶「....多分筋肉痛だね」
カルセナ「やだわー....早く治れ〜っと......魔耶は今日何食べたいの?」

554:なかやっち:2020/06/19(金) 20:05

カルセナに言われて少々考える。
魔耶「うーん…別に食べれればなんでもいいけども……強いて言うなら、そば…?」
カルセナ「おぉ、和風だな…」
魔耶「私はうどんよりそば派ですからね〜。今はあっさり系が食べたい気分だし」
カルセナ「魔耶のことだから、またおにぎりかと思ったのに」
魔耶「いや、まぁおにぎりがダメというわけじゃないけどさ…今はそばの気分なの!」
カルセナ「ほうほう…」
別におにぎりが食べたくないわけではない。でも、今はおにぎりよりそばが食べたい気分なのだった。我ながら気分屋だと思う。
魔耶「……ん、でもこの世界にそばなんてあるのかな…?」
カルセナ「あ〜……あるかな…」
魔耶「……まぁ、なかったらおにぎりでいいや」
カルセナ「結局おにぎりか」
魔耶「いやいや、なかったら、だからね。カルセナは何食べたいの?」

555:多々良:2020/06/19(金) 22:09

カルセナ「そりゃあ勿論パスタ!!あれは美味しい。体力満タンになるよ〜」
魔耶「そんなにか....じゃあ、そっちこそパスタ無かったらどうする?」
カルセナ「むぅ.....パスタが無かったら....麺類かな。麺類だったら何でも受け付けるぞ」
魔耶「そっかー、お互い目的のご飯があると良いね」

暫く歩き続けると、見慣れた店が二人の前に姿を現した。
時刻は夕方、やはり多くの買い物客がその店を訪れている様だった。
魔耶「わ、お客さんいっぱいいるなぁ....」
カルセナ「ほんとだ〜.....ま、大丈夫っしょー」
他の客を気にしながらも、店内へと足を進める。目的のコーナーにも、そこそこの人数がいた。
魔耶「あのくらいだったら、売り切れるなんて事はそうそう無いかな?」
カルセナ「前に、結構遅く来たときもいくつかあったしね〜」

556:なかやっち:2020/06/19(金) 23:17

魔耶「そういえばそうだったね。まぁほとんど売り切れてたけども…」
カルセナ「それでもあの時間帯にあれだけ残ってればいいほうでしょ」
魔耶「そう…なのかな…?」
多少の疑問を抱きつつも、そういうものなのかと割りきって納得しようとする。…向こうの世界では遅い時間に買い物にいくことなんてほとんどなかったからな…
魔耶「…よし、じゃあ各々の食べたいやつ探しますか〜。まぁまぁ人がいるから、別れたほうが動きやすいでしょ」
カルセナ「あー、確かにそうね…じゃ、そうしましょうか。パスタ探しの旅に出てきます」
魔耶「おう…あ、選び終わったらお菓子コーナー行っててね。お菓子買いたいし、ここで待ち合わせても他の人の邪魔になりそうだから」
カルセナ「なるほど…了解でーす。…じゃ、またあとでね〜」
そう言うと、カルセナはパスタを探しに目的のコーナーへと向かっていった。
魔耶「はーい……んじゃ、私もそば探しに行きましょうかね〜。そばあるといいけど…」

557:多々良:2020/06/20(土) 10:49


カルセナ「.....えーと、パスタパスタ〜....」
この街には麺類が好きな人が多いのか、たまたまだったのかは分からないが、カルセナが向かったコーナーにもたくさんの人がいた。
カルセナ「わぁ....これ取れるかな....」
取り敢えず、人が退くまで待とうと思い、他の客の邪魔にならない程度に辺りをうろうろし出した。コーナーの端から端まで歩いてみたりもした。
そうして、少しずつ人が少なくなってきた。
カルセナ「ふぅ、お目当てのものは残ってるかな〜....」
商品が並んでいる棚の前に軽く屈んで物色する。
カルセナ「う〜ん.....あっ!」
左から商品を見ていたら、あるものに目が留まった。
カルセナ「カルボナーラだぁ!!」

558:なかやっち:2020/06/20(土) 12:52


魔耶「…やっぱり、ないのかな…」
魔耶は今、そばを探して色々なコーナーを歩き回っていた…のだが、そばの姿は見当たらなかった。
この世界にそばは存在しないのだろうか…それとも、単に売り切れてしまっただけなのだろうか。異世界から来た魔耶にそれを知るすべはなかった。
魔耶「ぐむむ…おにぎりとかはあるくせに、そばがないのは痛いぞ……まぁ、ないならしょうがないか…別の探そ…」
そばが食べたかったが、ないなら我慢するしかない。そう思い、そばへの未練を断ち切る。
魔耶「…おにぎり探すか…」

559:多々良:2020/06/20(土) 15:31


カルセナ「良かった〜、前無かった分嬉しさがあるなぁ....」
喜びを声に出しながら、カルボナーラを手に取る。
カルセナ「さて......えっと、お菓子のコーナーに行ってれば良いんだよね」
主食のコーナーを一人離れ、反対側のお菓子コーナーへと向かう事にした。

カルセナ「(....それにしても、悪魔の嫌いなものって何なんだろうなぁ)」
悪魔を封じ込める事が可能なものは見つかった。しかし、苦手なものの見当が未だにつかない。タイムリミットも刻々と近付いている。少しでも良いから、何か見つからないだろうか。
カルセナ「(悪魔ねぇ.......まず、悪魔ってどんなやつなんだっけ....)」
昔、好んで読み漁っていた書籍を思い出しながら考える。
カルセナ「(....魔耶の中の悪魔ってのは、私が思ってるものとは違うのかな?)」
悪魔に侵食されているのは自分ではなく、魔耶。きっと、本人にしか分からない恐ろしさや脅威、情報等があるのだろう。
カルセナ「(私じゃ、完全に助ける事は無理なんだろうな....せめて支えになるようなものが思い付けば....)」

560:なかやっち:2020/06/20(土) 17:44


魔耶「…あ、おにぎり」
ため息をつきながらウロウロしていると、おにぎりのあるコーナーに着いた。
魔耶「ここで偶然出会うとは…今晩はおにぎりで決まりだな。何にしようかしら」
おにぎりは前に来たときよりも色々な種類が売れ残っていた。少し屈んで、梅、鮭、昆布、ツナマヨ…と順番に物色していく。
魔耶(前は鮭だったっけ…今日は何の具がいいかな…)
……数分悩んだあげく、今日はあっさりしたものが食べたいからと梅おにぎりに決めた。ヒョイとおにぎりを手に取る。
魔耶「よしよし。…ん、でもこれだけじゃ足りないかな…?お味噌汁とか探してみよっと」

561:多々良:2020/06/21(日) 11:36


カルセナ「.....あ、ここかな?魔耶の言ってたお菓子コーナーは」
考え事をしている内に、いつの間にか到着していた。
多少数は減っているが、それでも色々なお菓子がずらっと並べられていた。
カルセナ「チョコ大好きだからな〜....何か良いのあるかな」
....そう言えば、カルセナはチョコが大好きで、辛いものなどは嫌いだ。それはもう一人のカルセナ、ブラッカルにも言える事だった。
カルセナ「(....魔耶が嫌いなものと、魔耶の中の悪魔が嫌いなものは一致して無いのかな....それだったら簡単なんだけど....)」
だが、そう言う訳にもいかないだろう。カルセナとブラッカルの好き嫌いが一致しているのは、体も心も共に共存出来ているからだと思われる。しかし、魔耶と魔耶の中の悪魔は真逆の関係。一致している確率はかなり低い。
カルセナ「やっぱり、悪魔が本能的に嫌がるものを探さないとなのかなぁ」

562:なかやっち:2020/06/21(日) 13:09


魔耶「…よし、これくらいあれば足りるでしょ」
ようやく今夜の晩ごはんを選び終え、お菓子コーナーに向かう魔耶。その手には梅おにぎりとお味噌汁、お茶が握られていた。
魔耶「そばがなかったのは残念だ……さて、カルセナはもうお菓子コーナーにいるのかな?」
色々なコーナーを歩いていたが、カルセナの姿は見ていなかった。きっと魔耶がそのコーナーに行くより早く選び終えたのであろう…と予想する。
魔耶「もうお菓子選んでるのかもね……ん、あそこの金髪はカルセナじゃないか?」
お菓子コーナーが見えてきたとき、お菓子が並ぶ棚の前にいる金髪の人の姿が視界に入った。考え事をしているのか、ボーッとしている。魔耶の視線にも気づいていないようだ。

563:多々良:2020/06/21(日) 18:57

カルセナがいるお菓子コーナーへ足を進め、そっとカルセナに話しかける。
魔耶「....カルセナ?」
カルセナ「えっ、うわっ!!な、何だ魔耶か....」
魔耶「どうしたの?やけに不注意だったけど」
カルセナ「あー......悪魔の事について考えてた」
魔耶「そう言う事か....何か思い付いた?」
カルセナ「うーん....悪いけど、何にも....」
魔耶「そっか....まぁ、着実に探し当てていこっか。それより、お菓子どーしよっかな〜」
カルセナ「.....?」
魔耶「.....ん、だからどうしたのよ」
カルセナ「いや.....何にも思い付かなかった事に対しての反応薄いなぁって思って....」
魔耶「ネガティブに考えちゃったらマイナスになっちゃうからね....あんまり深く考え込まない様にしてるの」
カルセナ「なるほどね〜....」

564:なかやっち:2020/06/21(日) 20:04

魔耶「…さーて、そんなことよりキャラメル探ししなきゃ!前はなかったからね…」
カルセナの前に並んだお菓子を覗きこみ、目当ての物はないかとキョロキョロする。
カルセナ「…そうだね。私もチョコ欲しい」
魔耶「チョコねぇ…君も私と同じくらいの甘党だな〜」
カルセナ「魔耶の場合キャラメル党でしょ?」
魔耶「ひっくるめて甘党でいいの!甘いのは大体好きだし!」


カルセナ「…大分お菓子買っちゃったね…」
買い物を終えて宿に帰っている途中、カルセナがボソリと呟いた。カルセナの言葉を聞いて、魔耶は右手に持っている袋に視線を移す。
魔耶「そうかな?…まぁ、買いだめってやつだよ」

565:多々良:2020/06/21(日) 21:53

カルセナ「そうか〜?一杯お金使っちゃうと、今度の........」
流れ出て来るかの様に発していた言葉を詰まらせる。
魔耶「ん?今度の....何さ」
カルセナ「あっ、いや、今度のご飯買えなくなっちゃうよ〜って言うね.....」
魔耶「ふぅ〜ん.....まぁそうだねぇ」
少し何かを誤魔化したかの様な話し方だったが、魔耶は特別気にしない事にした。
カルセナ「うん、そうだよ.....」

少々の間をおいて、空を見上げる。ラメを散りばめたかの様な点々とした星の間に、小さな半月が顔を覗かせていた。どこからか、夜行性の動物であろう声がする。風に乗って、良い匂いが漂って来る。辺りは本格的な夜に向けて静まろうとしていた。
魔耶「.....はぁ。私達、どのくらいこの世界に居るんだろうね」
カルセナ「さぁ....?でも、あの日から結構経ったよね」
魔耶「あの日?.....あぁ、あの日ね」
カルセナ「そうそう、私達が出会った日」
魔耶「何だか昔に感じちゃうなぁ.....魔族にとってはちょっとの時間、に該当するのに」
カルセナ「色々あったからね.....今だって、問題解決し終わってないしさ」

566:なかやっち hoge:2020/06/21(日) 22:44

魔耶「そうだね……まぁ、すぐ解決するよ、きっと。この世界で安定した暮らしを送れるようになれば、日々の流れも早く感じるようになるよね」
カルセナ「……」
魔耶「…カルセナ?」
カルセナの口数が少なくなったように感じ、後ろを振り向く。魔耶の視界に入った彼女は帽子で顔を隠していて、表情が分からなかった。その状態のまま、彼女が言葉を発する。
カルセナ「…魔耶…なんて言ったらいいか分かんないけど…私、今すごく不安なんだよ…」
魔耶「…不安…?」
カルセナ「うん。…もしだけど、魔耶がいなくなっちゃったらって…なんか…考えちゃって…」
魔耶「…」
カルセナ「魔耶が一番不安なのはわかってるけどさ…もっと私にできることがあったらいいのに…って、いつも考えちゃって…魔耶の支えになるようなものとか、あったらいいのに…って…」
魔耶「………なにいってんの」
カルセナに言われて、自然とそれに反応した言葉が口から出た。魔耶はその言葉を止めようとはせず、そのまま喋り続ける。
魔耶「カルセナにできることなんてたくさんあるし、たくさんしてもらってる。それに、支えになるようなもの…なんて、もうあるよ」
カルセナ「……もうある…?どこに…」
魔耶「私を支えてくれてるのは…カルセナだよ」
カルセナ「え…?わ、私…?」
魔耶「うん。君」
魔耶はカルセナを指差すと、にこりと笑いかけた。
魔耶「私も不安なんてない…って言ったら、嘘になる。本当は不安でいっぱいで、今すぐ泣きたいくらい。そんな私がさ、なんで笑顔をつくれるか分かる?」
カルセナ「……わかんない…」
魔耶「…君がいるからだよ。君との思い出があるから頑張れるし、君がいるから笑顔でいようと思える。カルセナがいてくれるだけで、十分なんだよ、私にとっては」

567:多々良:2020/06/22(月) 22:53

カルセナ「.....魔耶....」
並べられた言葉は、体を悪魔に犯されているとは思えない様な温かさを感じた。
カルセナ「......ありがと」
魔耶「そっちがお礼言ってどうするのよ。むしろこっちが言いたいくらい。ありがとう....ってね」
カルセナ「うん.....」
俯いた顔を大きく上げて、魔耶を見る。
カルセナ「...私、頑張るよ!この世界にいる間、魔耶と沢山の思い出を作れるように!!」
魔耶「そうだね、一緒に頑張ろ。....さ、もうお腹の減りが限界だよ、早く帰ろう!」
そう言って、魔耶が宿に向かって駆け出した。
カルセナ「あっ!待ってよー!!」


魔耶「.......ふぅ、良い運動をした」
カルセナ「もう今日の依頼で運動し終わってるのよね....はぁ、はぁ...」
魔耶「んじゃあ手洗って、それぞれのご飯食べよっか」

568:なかやっち:2020/06/23(火) 22:39

カルセナ「はーい。…あ、魔耶は何買ったの?」
魔耶「ん?…あぁ、おにぎりだよ。そばなかった〜」
そばが見当たらなかったことを思いだし、ため息をつく。
カルセナ「あらら…それは…ドンマイ」
魔耶「うーむ…まぁしょうがないっちゃあしょうがないよね。別の世界なんだし」
カルセナ「それもそうか…」


二人とも手を洗い終わり、テーブルに向かい合わせになる形で座った。二人の前にはそれぞれの選んだ美味しそうな晩ごはんが並んでいる。
カルセナ「あー、お腹すいた〜」
魔耶「そうだねぇ…んじゃ、早速食べましょうか。手を合わせて〜…」
カル魔耶「「いただきまーす!」」

569:多々良:2020/06/24(水) 22:25

魔耶がおにぎりに食いつき、カルセナはパスタを啜る。
魔耶「うん.....美味いわ。疲れた体に染み渡る」
カルセナ「だね〜.....美味しすぎて一瞬で食べ終わっちゃいそう」
魔耶「ちゃんと噛めよ〜」
カルセナ「私なりに味わってますよ....所でさ」
少し言い出しづらそうに話す。
魔耶「....ん、何?」
カルセナ「魔耶のタイムリミットって、あとどのくらいかな....」
能力を使ってしまった事などを考え、予測し直す。
魔耶「......あと2日弱くらいかな」
カルセナ「明日どこに行って情報収集する?図書館はもう探し尽くしたし.....」
魔耶「そうだなぁ.....うーんと.....」

570:なかやっち:2020/06/25(木) 16:58

魔耶「……聞き込み、とか…?」
唯一頭に思い浮かんだ案を発する。
カルセナ「あぁ、なるほど…でも誰に聞き込みするの?街の人が悪魔のことを知ってるなんて思えないよ」
魔耶「そうなんだよねぇ…情報を持ってそうで、まだ訪ねてない人いるかな?」
カルセナ「うーん…ニティさんにはもう聞いたし…幹部にはいろんな情報もらえたし…」
モグモグと晩ごはんを食べ進めながら、考え込む二人。
情報を持ってそうな人で、関わりのある人…誰かいただろうか…

…あの人ならば、どうであろう?
幹部達をまとめあげ、街の人をさらい、前に異変を起こしたあの人…
魔耶「…蓬さんは…?」
あの人は魔族と関わりがあるようだった。もしかしたら悪魔についてもなにか知ってるかもしれない…そう思った故の発言だった。

571:多々良:2020/06/26(金) 00:06

カルセナ「あぁー、確かにまだ聞いてなかったね」
魔耶「色んな事知ってそうだしさ....結構良いんじゃないかなって」
カルセナ「てことは、明日またあそこに行く感じ?」
魔耶「そうなるね....まぁまぁ遠い道のりだけど、それでも良い?」
カルセナ「うん、情報がありそうならばどこだってOK!」
魔耶「よし、それじゃあそうしよっか」

暫くして、食事に終符止を打つ二人の言葉が聞こえた。
魔耶カル「ごちそうさまー」
魔耶「美味しかったわ〜」
カルセナ「うむ、満足満足」
後始末をして、カルセナがソファにぐだっと座り込む。
魔耶「食後に寝ると牛になるんじゃなかったのかー?」
カルセナ「寝転んでないからセーフ」
魔耶「そう言うものなのかねぇ....」
カルセナ「うんうん。....今日のお風呂、魔耶さん先に入ります?それとも後が良い?」

572:なかやっち 短くてスマソ。:2020/06/26(金) 20:23

魔耶「あー…どっちでもいいけど…じゃ、先に入らせてもらおうかな。いい?」
カルセナ「いっすよ〜。ごゆっくり〜」
魔耶「ありがと。ササッと入ってきまーす」
カルセナ「うん……うん?」
『ごゆっくり』という言葉をかけたはずなのに『ササッと入ってくる』…という矛盾した言葉を受け取って変な反応をするカルセナ。そんな彼女の反応を横目に、魔耶はクスリと笑ってシャワールームに向かった。

573:多々良:2020/06/26(金) 23:19

そうして、シャワールームの扉の閉まる音がした。
カルセナ「.....ふぅ〜。どうしたものかねぇ....」
いかなるときも、ずっと魔耶の悪魔化について考えていたカルセナ。依頼を達成し終わった後だからか、どっと疲れが出てきた。
カルセナ「ぜんっぜん思い付かないなぁー.....だからと言って、ブラッカルに頼ったら何か怒られるからな....」
ソファから立ち上がり、自分のベッドに寝転ぶ。前に魔耶に言った警告を忘れているかのようだった。
帽子を脱ぎ、仰向けになった自分の顔の上にそっと乗せ、暗闇を作る。活動等をしているときの暗闇は恐ろしいが、考え事をしているときの暗闇はとても落ち着くものだ。
カルセナ「...........」
特に独り言も言わず、黙って考える。端から見たら、眠っている様にも見えるだろう。
カルセナ「(はぁ........早くこの事件を解決して、魔耶と温泉行きたいな......)」

574:なかやっち:2020/06/27(土) 12:51


『ザァアアア…』
魔耶「…はぁ〜…シャワー浴びてるだけで疲れまで流されちゃうよ…」
シャワーを浴びながら満足げに呟く魔耶。
温かいお湯が、泡と今日一日の疲れを流してくれているようでとても心地がよかった。
魔耶「…でも、やっぱりたまにはお湯に浸かりたいよね…この世界にきてからシャワーばっかだし…」
確かにシャワーも気持ちいい。だが、魔耶は前の世界ではお風呂に入ることが多かった。だからか、シャワーよりお湯に浸かるほうが好きなのだった。
魔耶「あーぁ、早く温泉行ってみたいな」
自分の今おかれている状況を解決することができたら…そしたら、カルセナと一緒に温泉に行くと決めたのだ。今は解決まであと一歩というところだが、きっと解決できると信じている。だから、温泉にもきっと行ける。
魔耶「…じゃあ、頑張るしかないよね」

575:なかやっち hoge:2020/06/27(土) 12:53

訂正…
魔耶「…じゃあ、頑張るしかないよね」

魔耶「…そのためには、頑張るしかないよね」

576:多々良:2020/06/27(土) 21:36


どのくらい経っただろうか。ゆっくりと体を起こしたかと思えば、近くの窓から外を眺める。
月には少し雲がかかっている様だったが、本来の輝きを失っていると言う事はなかった。
カルセナ「綺麗だなー......」
この世界で、あの月を眺める事が出来るのはあと何回くらいなのだろうか。
二人してずっとこの世界に居続ける訳にもいかない。お互い、それぞれの事情がある筈だ。しかし、仮に元の世界に帰る事が出来るようになったとしても、今のままではきっと離れられない。未練を残しすぎている。
今すぐに帰らないともう戻れない。そう言う状況に陥ったとしても、今は別れ方を知らない。きっと、何て言えば良いのか、分からず仕舞いになってしまうだろう。
そんな事が無い様に、二人で冒険をしている。思い出を未練として残すのではなく、一筋の輝きとして忘れない様にするために。この世界の、煌々と輝く月よりも輝かしい思い出をつくる為に。

カルセナ「.......あれ?流れ星かな.....?」
空の奥で、二筋の光が見えた。流れ星に祈ると願いが叶う。子供の頃に教えられた事を信じて、カルセナは強く祈った。
カルセナ「どんな壁だって、乗り越えられますように」

577:なかやっち:2020/06/27(土) 22:17


魔耶「ふぅ、すっきりしたぁ。カルセナ〜、あがったよ……って、なにしてんの?」
ドアの取っ手を回すと、カルセナが両手を組んで夜空を見上げている光景が目に入ってきた。
魔耶の質問が聞こえたのか、カルセナがゆっくりこちらを振り返る。
カルセナ「…あぁ、魔耶。空見てたら流れ星があってさ、願い事してたの」
魔耶「ほう…そういうことね。…なんてお願いしたの?」
カルセナ「…これからどんな困難の壁がきても、乗り越えられますように…ってね」
魔耶「はは、なるほどね。カルセナらしいよ」
困難を乗り越えられるように…か…
魔耶「…じゃあ、せっかくだし、私もお祈りしてみようかな」
そそくさとカルセナの隣に移動し、夜空を見上げる。
うっすら雲があるが、むしろそれが風情を感じさせてくれるようだった。絵のように綺麗な、素晴らしい星空であった。
カルセナ「いいね。流れ星がきたら、願い事を祈るんだよ」
魔耶「はーい」


魔耶「よし、お願い完了!」
カルセナ「うんうん。……ちなみに、魔耶はなにをお願いしたの?」
魔耶「……これからの生活が、楽しくて、かけがえのない大切なものになりますように…ってね」
魔耶は少し照れくさそうに笑い、そう言った。

578:多々良:2020/06/28(日) 19:29

カルセナ「あはは、それこそ魔耶っぽいよ〜。.....そんじゃ、私浴びてくるね」
魔耶「はーい、ごゆっくり〜」
着替えやタオルを持って魔耶の元から離れ、シャワールームへと向かった。

カルセナ「.......あ〜、良いお湯ですな」
頭の天辺からシャワーを浴びる。疲れがほぐれていくかの様で、とても気持ちが良かった。
カルセナ「.....そういや修行って、どんな事すんのかな」
依頼を受けている最中に、今の事件が無事に解決したら強くなる為に修行をしないか、と魔耶に誘われた。
カルセナ「アス姉(カルセナの姉)が修行だの特訓だの言って鉄棒振り回してたけど....あんな感じの事すんのか.....?」
何はともあれ、自身が強くなれればそれで良い。今はそう思っていた。

579:なかやっち:2020/06/28(日) 21:17


魔耶「…さーて、なにしよっかなー…」
カルセナがシャワーを浴びに行ってしまったため、魔耶は一人部屋の中で呟いた。
いつもなら能力を使って暇潰しでもするところだが、今は能力を使うことができない。つまり、今魔耶は暇をもて余しているのだ。
魔耶「能力が使えないとこんなに不便だなぁ…ほんと、なにしてよう?これじゃあくまさんをつくって遊ぶこともできないよ〜…」
暇を潰せるものはないかと、部屋をグルリと見渡してみる。だが、目にはいるのは、買ったものが乱雑に置かれたテーブルとベッドくらいだった。
魔耶「…おやつでも食べてましょうかね…」

580:なかやっち hoge:2020/06/28(日) 21:19

訂正
「能力が使えないとこんなに不便だなぁ」

「能力が使えないとこんなに不便なんだなぁ」
(最近ミスが多いぜてへぺろ)

581:多々良 更新遅くなった.....すまん。:2020/06/30(火) 21:17


カルセナ「......あ、また無意識に出ちゃった」
シャワーを浴びながら、自然と鼻唄を歌っていた。心地が良いと、ついついそうなってしまう。
カルセナ「....はぁ〜、今頃家族は何してんのかな....悪霊に取り憑かれたりしてないかね....」
日にちが経てば経つほど、元の世界に残っている家族の事が心配になってしまう。自分が居た頃は、ずっと家族の側で見守っていた。だから、いざ離れるとなるとやはり寂しさが胸に残る。
カルセナ「.........よっと」
蛇口を捻り、シャワーを止める。脱衣場に手を伸ばし、バスタオルを取って頭を拭き始めた。バサバサという音と共に、溜め息が混じって聞こえた。

582:なかやっち 大丈夫よ〜:2020/06/30(火) 23:01


魔耶「キャラメル美味し……ん、おかえりカルセナ〜」
小腹を満たすためにキャラメルを食べていると、ドアの影からカルセナの姿が現れた。風呂上がりだから、いつもよりも髪の毛がしんなりしてる。
カルセナ「うん…あ、おやつ食べてたのね」
魔耶「そうなのよ〜。能力使えないと暇潰しができなくて…普通の人って、こんなに暇な時間をもってるんだね」
カルセナ「なんか上から目線だな……まぁいいや。私にもなんかちょうだい」
魔耶「ん〜」
袋を漁り、カルセナのおやつと思われるチョコをヒョイと投げてよこした。
カルセナ「ちょ、ちょ…うおっと」
魔耶「ナイスキャッチ〜」
カルセナ「全く…人に投げるなって言いながら、魔耶だって投げてるじゃん…」
魔耶「あはは、ごめんごめん…」
悪戯っぽく笑いながら、カルセナに視線を向ける……と、魔耶の顔からいきなり笑顔が消えた。カルセナの目を見たせいであった。
魔耶「……カルセナ、勘違いだったら悪いんだけど…」
少々躊躇いがちに問いかけてみる。
カルセナ「……?なに?」
魔耶「なんか、いつもよりも悲しそうだね…?なにかあった?」


続きを読む 全部 <<前100 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新