カルとマヤの異世界記録

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1:なかやっち:2020/03/26(木) 12:56

小説として書いてしまっていたのでこちらに移しました💦

601:多々良:2020/07/12(日) 09:07


カルセナ「うーん.....」
いくら歩いても変わりの無い景色に、倦怠感が出てきてしまっていた。
カルセナ「本当に何にもないのかなー.....てかこれ移動してるよね?」
ブラッカルの姿が遠退き、見えなくなったので移動はしている筈だが....カルセナにとっては同じ所で足踏みをしているだけの様に感じた。

カルセナ「そろっと起きたくなってきたわ..........ん?」
足を動かしていると、ふと目線の先にあるものが見えた。星の様に仄かな光を放つ、白い点。興味をそそられ近付いてみると、その大きさは蜜柑1個分程度のものだった。動く事もなく、ただ空中で静止している。
カルセナ「何だろうこれ......」
少しばかり神秘的に感じた故の思い込みかもしれないが、その物体から何か引力の様なものを感じた。
好奇心のせいか自然とそれに手が伸びる。近付けば近付く程、引き寄せられる力は強くなっている様に思える。
カルセナ「.........うっ!!?」
指がその物体に触れそうになった瞬間、一瞬にして強い頭痛が走り、手を伸ばす事を止めさせた。
カルセナ「な....何なの....?触っちゃ駄目なのかな.....?」
触ろうとしていた物体は、変化なくそこに止まっている。
カルセナ「....この事、あいつは知ってるかな......」
この正体を知りたい。自分の中にあるもの位、把握しておきたい。そう思うと居ても立ってもいられなくなり、歩いて来た方向とは真逆、ブラッカルが居る方向へと走り出した。

カルセナ「(......そう言えば、あれ触ろうとしたとき...あいつの声が聞こえた気が.........いや、気のせいかな)」

602:なかやっち:2020/07/12(日) 10:07


魔耶「…お、そろそろ明るくなってきたかな?」
ぶらぶらしていたら、いつの間にか結構な時間が経っていたらしい。
道沿いにある民家が太陽の光によって照らされていく。ずっと暗い街中を歩いていた魔耶はつい目を覆った。
魔耶「…わぁ…」
覆った手を下に下げると、そこには神秘的な景色が広がっていた。
街は光と影がくっきりと映し出され、境界線ができていた。後ろに視線を向けると、川に流れている水が太陽の光を反射してキラキラと光っている。街中にある雑草でさえも、朝露を宝石のように輝かせている。
前と後ろの景色が一枚の絵のようで、魔耶は後ろにも目があればいいのにと思った。それくらい、この景色は美しかった。
魔耶「すごい…街の朝ってこんな感じなんだ…初めてみた…」
山に住んでいた魔耶は、街で寝泊まりすることなんてなかった。だから、街の朝の風景を見たことなんてなかった。
初めてみる人工物と自然が合わさった朝の景色に感動する。
魔耶「…いつもと同じ景色なのに、朝ってだけでこんなに違うんだ…不思議だな…」

603:多々良:2020/07/12(日) 18:13


カルセナ「「 起きてっ!! 」」
走っていた足を止め、暗闇の中で叫ぶ。
ブラッカル「......ん、何だよ.....こっちはまだ寝てたってのに....」
少し不満げに目を擦る。胡座をかいている足の上に肘を置き、片手で顎を支えるような体制になってカルセナを見つめる。
カルセナ「....ハァ、ハァ、ちょ...ちょっと待って.....」
ブラッカル「相変わらず体力ねぇな.....」
カルセナ「.......ふぅ、あの....ちょっと聞きたい事があって」
ブラッカル「聞きたい事だぁ?....ま、何でも良い。言ってみろ」
カルセナ「うん.....あのさ、さっきまでこの空間を探検してたんだけど....変なものがあって」
ブラッカル「.....変なもの?」
そのワードに反応したのかピクッと手を動かし、背筋を僅かに伸ばす。
カルセナ「そう、えっと.....仄かに光ってる球体?みたいな......このくらいの大きさの」
記憶に残っているその物体の大きさを手で表す。それと同時に、ブラッカルの目付きが変わった。
ブラッカル「......触ったりしたか?」
カルセナ「えーと...気になったから触ろうとしたんだけど、そのときはいきなり頭痛がして....結局触るの諦めちゃった」
そう言うと、ブラッカルは立ち上がってカルセナの目の前で言葉を放った。いつもより険しい目付きで、焦っている様にも見える。
ブラッカル「......次にそれを見っけても、絶対に触るな....関わるんじゃねぇ」
カルセナ「.......え?」

604:なかやっち 短い。:2020/07/12(日) 18:35


魔耶「…さーて、いい景色も見れたし、そろそろ帰りましょうかね〜。…カルセナ起きちゃったかな…」
朝の景色にしばらく見とれた後、自分が何も言わずに宿を抜け出したことを思い出し、回れ右をした。
もしカルセナがもう起きていたら、私がいないことを心配するかもしれない。あの人早起きだし…せめて書き置きでも残しておくべきだっただろうか?
そんなことを考えながら、明るくなった道をスタスタと歩く。
魔耶「…さすがにそんな早起きじゃないか?ま、お腹空いたし、どっちにしても早く帰った方が良さそうだね」

605:多々良:2020/07/13(月) 21:45


カルセナ「な、何で.....?もしかして、あれが何か知ってるの....?」
まるで元から知っていたかの様な注意に、そう問う。
ブラッカル「......いや....とにかく、変なもんには関わらねぇ方が身の為だ」
カルセナ「.....らしくない...」
ブラッカル「......あ?」
カルセナ「ほんとに知らなかったら、もっと興味を持つ筈でしょ?だって、私なんだから」
核心をついた疑問。それを聞いたブラッカルは小さく溜め息を吐いて目線を逸らしたが、そんな態度を取ってもなお否定し続けた。
ブラッカル「....知らねぇって」
カルセナ「嘘!!ぜーったい知ってるじゃん!何で今目線逸らしたんだよー!」
ブラッカル「たまたまだよ」
カルセナ「んじゃあ溜め息は?」
ブラッカル「お前が疑い深いからだ」
理屈を述べて話を逸らそうとするブラッカルに、カルセナの不満であり好奇心でもあるおかしな気持ちが高まっていった。
カルセナ「む〜.......んじゃあ、もっかい行って確かめて来る!」
ブラッカル「ちょ、ちょっと待て!さっき私が何て言ったか覚えてねぇのか!?」
謎の物体のある方向へと歩き出したカルセナの肩を慌てて掴んで止める。
カルセナ「だったら教えてよ!そしたら多分行かないから」
ブラッカル「!.......はぁ....分かったよ.....だが、取り敢えずお預けだ。もう外は朝だ、一旦起きた方が良い。私もまた寝る」
カルセナ「やっぱ知ってたんじゃんか......じゃあ、また後で」

606:なかやっち:2020/07/13(月) 22:20


魔耶「ただいま〜…」
ようやく宿に到着し、部屋のドアを開ける魔耶。
適当にぶらぶら歩いていたつもりだったが、思ってたよりもずっと遠くまで行ってしまっていたようで、帰るのに20分ほどかかってしまった。
魔耶「…カルセナ〜?起きてる…?」
心配を顔に浮かべながらそっと部屋を覗くと、布団に潜っている金髪の少女の姿が見えた。それを見てほっとする。
魔耶「よかった…まだ起きてなかった…もし起きてたら心配されちゃったからかもだからね、よかったよかった」
安心した表情で台所のテーブルに移動し、そっと腰かける。
魔耶「…とりあえず、カルセナが起きるまでまちましょうかね…牛乳でも飲んでよっと」

607:多々良:2020/07/15(水) 19:14


カルセナ「.........う」
ゆっくりと目を開けて近くの時計を確認する。窓から入る光を見て、早朝であることは間違いないと思った。
カルセナ「(....まだ6時半くらいか....)」
もう一度眠ろうかと、魔耶がいる筈のベッド側に寝返りをうつ。
カルセナ「(......あれ?魔耶いない....?そう言えば、昨日も..........って)」
ベッドの向こう側を見ると、キッチンに見慣れた人影があった。それは間違いなく、魔耶だった。
カルセナ「(いるじゃん.....)」
魔耶「....あ、カルセナおはよー」
明るい笑顔でカルセナに挨拶をする。
カルセナ「ん、おはよ〜.....朝早いね......」
魔耶「あー....何か目が覚めちゃってね」
カルセナ「そっか.....ん〜....よく寝た」
むくっと起き上がって背伸びをし、目を擦る。
カルセナ「魔耶はよく寝れた....?夜に起きてた....よね?多分...」

608:なかやっち:2020/07/15(水) 21:19

魔耶「え…?あ、バレてた?」
唐突に自分が起きてた事実を言い当てられ、どきりとしながらも照れ笑いを浮かべる。
カルセナ「夜にちょっとだけ目が覚めたんだけど、そのときに魔耶がいなかったからさ…。最初はトイレにでも行ってるのかと思ったけど、ずっと起きてたの?」
魔耶「…うん、そうだよ。なんか眠れる気がしなくて、ずっと外で散歩してたんだ〜」
ここで下手な嘘をつくよりも正直に言ったほうがいいだろうと判断した魔耶は、ありのままをカルセナに話した。
魔耶「普通なら外に行くときはカルセナに声掛けるけど、君が熟睡してたからさ。起こすのも悪いと思って、勝手に外に行っちゃった。…その件については反省シテマス」
牛乳を口元に持っていき、軽くうなだれる魔耶。
カルセナ「ふーん…まぁ、別にいいけどね。私寝てたし…ただ、今度から書き置きくらいは残しておいてね」
魔耶「はーい…」

609:多々良:2020/07/17(金) 21:08

カルセナ「私も何か食べるか飲むかしよっかな.....」
ベッドから降り、髪を少し整える。
魔耶「牛乳美味いぞー」
カルセナ「あんま飲まないからな〜」
冷蔵庫まで向かい、何を食べようかと考えていたとき、ある事を思い出した。

「明日には、どうするか決心しねぇと手遅れになるだろうな」

カルセナ「(そうだ.....)」
突き付けられた現実から逃れ、いつまでもこんなのほほんとした生活を送っている訳にはいかない。魔耶と、どうするか決めないといけないのだ。
カルセナ「........」
魔耶「....?どった?」
手を止めて呆然と立ち尽くしているカルセナに魔耶が声を掛けた。
カルセナ「....あ、あぁ...ちょっとね...」

610:なかやっち:2020/07/17(金) 22:18

魔耶「…?」
立ち尽くしたままのカルセナの様子を見て不信感を抱くが、起きたばかりでまだ意識がぼんやりしているのかもしれないな、と考え、そのときはあまり気にしなかった。…が、魔耶が声をかけたあとも、カルセナは考え事をしているかのような真剣そうな顔つきでその場にいる。流石の魔耶も異変に気づいた。
魔耶「…なによ?なにか言いたいことでもあるの?」
もう一度声をかけてみる。今度は曖昧に誤魔化されないよう、はっきりと言ってみた。
カルセナ「……あのさ、ちょっと…二人で決めたいことがあるのよ…話、聞いてくれる?」
魔耶「うん、もちろんいいよ。……んで、その内容は?」

611:多々良:2020/07/19(日) 10:19

カルセナ「...魔耶の悪魔化のことなんだけど......」
魔耶「......!!」
カルセナ「もう決めないと....手遅れになっちゃうって.....」
魔耶「......うん。私も、自覚してる...私の中の悪魔もそんなこと言ってた」
首から提げたペンダントをぎゅっと握る。
カルセナ「悪魔を封じ込める方法は分かったし、その準備も出来てる。後は戦うか何かして弱らせるだけ....あ....ねぇ、魔耶の悪魔ってどんな感じで出てくるの?」
もし、出てきたときに本体とは別々になるのであれば良いのだが...ブラッカルの様に、魔耶の意識を乗っ取って出てくるのなら、痛め付ける事は出来ないと考えた故の質問だった。

612:なかやっち:2020/07/19(日) 14:06

魔耶「…多分、私の意識だけが消えて、悪魔耶の意識が出てくるんだと思う。…君達と同じような感じかな」
悪魔耶の今までの言動を思いだしながら、カルセナに伝える。彼女は悲しそうな表情で「…そっか…」とため息混じりに言った。
カルセナ「…じゃあ、どうやって攻撃すればいいんだろ…もし魔耶の意識を取り返せたとしても、魔耶の体にダメージが残っちゃう…」
魔耶「……」
確かに、と思わず声を出しそうになる。魔耶はそんなこと全く考えていなかった。
意識が違っても、体は同じ。つまり、悪魔耶にダメージを与えれば、自分の体が傷つくのだ。悪魔を封印したら、その残ったダメージは自分にいくのだろう。
…それを踏まえ、私は一つ気になる点ができた。
魔耶「…そもそも、カルセナは悪魔(私)を攻撃出来るの…?」
カルセナ「………!」
いくら悪魔と言っても、魔耶は魔耶。容姿はほぼ同じなうえに、体は一つ。この世界でずっと同じ時を過ごしてきた自分を、カルセナは攻撃出来るのだろうか…そんな疑問を抱いた。

613:多々良:2020/07/19(日) 15:44

カルセナ「......多分出来ない.....魔耶に攻撃するなんて、私は考えたことないもん...」
魔耶「.....だよね」
カルセナ「.....あいつは分からないけど」
魔耶「.....あいつ?もしかして、ブラッカルのこと?」
カルセナ「う、うん.....」
魔耶「えっ、私を攻撃しようと考えた事があるってこと....??」
一瞬戸惑う魔耶を見て、語弊を生まない様に少し焦って説明する。
カルセナ「あ!!いやいやそうじゃなくて.....!あいつ結構無差別だから、そう言うの関係ないかなって.....だから、いざとなったら任せるつもりでいたんだ。今回ばかりは頼るの許してくれそうだし.....」
魔耶「そっか......それなら....」
カルセナ「...でも、本当にどうすれば良いのかな....魔耶を傷付けたくないし.....」

614:なかやっち:2020/07/19(日) 18:09

魔耶「…でも、他に弱らせる方法なんて思い付かないし…精神と体力どっちも疲弊させなきゃ、封印なんてできないよ…」
カルセナ「そしたら魔耶が…」
魔耶「…うん…これはしょうがないからね。このぐらいしなきゃ悪魔を封印するのは難しいってことなんだし。…勿論攻撃したカルセナを恨んだりなんてしないし、悪魔の回復力は凄いから…だから、大丈夫だよ」
封印に失敗すればどのみち私は消えてしまうのだ。だから、体の傷がどうこうなんて言ってられない。むしろ、悪魔相手に手加減してたらカルセナの身が危ないのだ。本気でやってもらわないと困る。
魔耶「…だからさ、傷つけたくないって気持ちは分かるけど…でも、これ以外の方法なんてないと思うからさ…私を救うためだと思って…ね?」
カルセナ「……」
カルセナがなにか反論しようと口を開くが、結局なにも言わずに俯いた。無理もない。もし私とカルセナが逆の立場だったら、私もカルセナを攻撃なんてできないだろう。

615:多々良:2020/07/19(日) 20:27

カルセナ「.........分かった。...魔耶を信じるよ」
決意を固め、今一度魔耶の顔を見る。カルセナをじっと見ている瞳の色は変わっていても、前持った意思は変わっていない様だった。
魔耶「ありがとう、カルセナ。心置き無くやっちゃって、そうして私の悪魔に...勝って」
カルセナ「....うん、約束する。絶対....絶対に、また冒険出来る様にしようね...!」
魔耶「....あはは、お別れの台詞みたい」
カルセナ「ごめんごめん、そんなつもりじゃ.....」
申し訳無く、照れ臭そうに頭を掻く。
魔耶「.....じゃあ、実行は今夜....もしかしたら、早くて逢魔が時ぐらいになるかな。そのときには場所移動しておいた方が良いね」
カルセナ「そうだね、戦える様なところ.....向こうの、離れた草原とかかな....」
初めて北街へ来るときに通過した、岩場や森の近い草原。そこならば誰の事も気にする事なく戦えるだろう。
魔耶「うん.....じゃあ、そこにしようか。取り敢えずカルセナ、着替えて来たら?」
カルセナ「ん....あぁ、そう言えばそうだった....んじゃそうする」

616:なかやっち:2020/07/19(日) 21:28



カルセナ「…んで、今日はなにするんだっけ?」
着替え終わったカルセナが、コーヒーを啜りながら尋ねてきた。
魔耶「えっと…あ、そうそう、蓬さんのところに行こうって計画だったよ」
昨晩の会話を思い出しながら答える。確か、悪魔の苦手なものを探るために蓬から情報を得られないか、という会話だったはず。
カルセナ「あー、そういえばそんなこと言ってたね。じゃあ、今日は蓬さんのところに訪問して…悪魔の苦手なものを突き止めるのか」
魔耶「そゆことそゆこと〜。……あっ、そうだ」
魔耶がなにかを思い出したように手を叩き、首を傾げているカルセナにペンダントを手渡した。
魔耶「下手したら今日悪魔になっちゃうかもだから…一応、念のため、カルセナがペンダント持ってて。念のため、ね」

617:多々良:2020/07/22(水) 19:46

カルセナ「ん、分かった....じゃあ預かっとくね」
ペンダントを受け取り、大事そうに胸ポケットに仕舞う。
魔耶「ありがと。....ふぅ」
大きく息を吐いて、椅子の背にもたれ掛かる。
カルセナ「....どーしたの、まさか緊張?」
魔耶「いや〜?.....緊張というか、安心...かな」
カルセナ「はぁ、安心.....緊張させるつもりはないけど、今の状況で安心出来るの....?」
コーヒーの入ったカップを両手で包み込むようにして魔耶に問う。
魔耶「逆に、凄い緊張が〜...ってなる状況でもあるのかな....?」
カルセナ「えー、私だったら結構そわそわしちゃうけどな....魔耶はどうしてそんなにリラックスしてられるの?」
魔耶「...カルセナの事を信用してるからって言うのが一番の理由。そりゃあ、全く緊張してないって訳ではないけど....でも、今は緊張感より安心感が勝ってるの」
カルセナ「へぇ〜.....お役に立ててるのか分からないけど、嬉しいわ」

618:なかやっち:2020/07/22(水) 21:07

魔耶「ふふっ、お役に立ててますよ〜。カルセナがいなかったらどうなっていたか…」
柔らかく微笑みながら飲みかけの牛乳に視線を落とす。そんな彼女の微笑みは、安心と信頼がまざったような感じがあった。
カルセナ「運命ってやつかねぇ…私も魔耶にいっぱい助けてもらってるから、むしろ私がその言葉を魔耶に言いたいよ」
魔耶「そっか。…ありがとね、カルセナ」
カルセナ「こちらこそ、ありがと〜」
二人の視線が合い、カルセナと魔耶の表情に微笑みが浮かぶ。

魔耶「…さて、そろそろ朝ごはんでも食べない?お腹空いちゃったよ」

619:多々良:2020/07/23(木) 08:51

カルセナ「うん、そーしよっか。戸棚とかに何かあったっけ?」
魔耶「どうだろう....前に買ったパンがあった気がする」
そう言って立ち上がり、キッチンの奥の戸棚をガサガサと漁る。
カルセナ「その戸棚パン多いな....」
魔耶「よく買い置きしてるからね....えーっと、食パンやらクリームパンやら、色々あるけど」
カルセナ「じゃあ今日は〜....トーストにでもしようかな」
魔耶「オッケー、ここのトースターに入れとくよ〜」
カルセナ「ありがとー。あ、4分でよろしく」
魔耶「りょうかーい」
トースターに食パンを入れ、タイマーをセットすると、ジリジリと焼き始める音が聞こえてきた。
カルセナ「魔耶は何にすんの?」
魔耶「ん〜.....どーしよっかな」

620:なかやっち:2020/07/23(木) 12:53

もう一度戸棚を覗きこむ。
しばらくパン達とにらめっこをしたあと、クリームパンを手に取った。
魔耶「ん、これにする〜」
カルセナ「…甘党だねぇ」
クリームパンを選んだ魔耶に、カルセナが一言呟く。そんなカルセナの一言に笑顔を返す魔耶。
魔耶「当ったり前よ〜。甘い物こそが私の力の源なんだから」
カルセナ「まぁ、分からなくもないけども…甘いものばっかとってると太るぞ〜」
魔耶「む、大丈夫だよ。能力使ってれば糖分も消費されるもん」
カルセナ「今は能力使えないじゃん」
魔耶「…あっ…ま、まぁ、一日二日くらい大丈夫大丈夫」
カルセナ「ほんとかねぇ…」
魔耶「本当だってば〜」

621:多々良:2020/07/23(木) 20:24

クリームパンを片手にカルセナがいるテーブルへと戻り、椅子に座る。
カルセナ「魔耶先食べちゃって。私もうちょっとかかるし」
魔耶「そう?じゃあ、お先にいただきまーす」
手を合わせた後、袋を開けてクリームパンを口に運ぶ。一口かぶり付くと、中からとろっとした濃厚なクリームが溢れ出し、一瞬で口の中がポップな甘さに包まれた。
魔耶「....わ〜、やっぱ甘いもの最高.....」
カルセナ「中々美味しそうに食べるねぇ」
魔耶「だって美味しいんだもん。牛乳牛乳〜....」
中身が減ったコップに牛乳を注ぎ足し、それをぐいっと飲む。
魔耶「....っはぁ〜...濃厚なクリームが通った甘い口の中をリフレッシュさせるかの様なすっきりとした牛乳....良いわぁ」
カルセナ「食レポみたいになってるけど.....」
魔耶「最高すぎてついつい....」
そんな調子で魔耶が食べ進めていると、キッチンから食パンを焼き終わった音が聞こえてきた。
魔耶「むむ、焼けた」
カルセナ「あー、魔耶見てたら更にお腹空いた〜....早く食べちゃおーっと」

622:なかやっち:2020/07/24(金) 19:21

カルセナがトーストを皿にのせると、香ばしいパンの焼けた匂いがふんわりと漂ってきた。
魔耶「美味しそうですね…」
カルセナ「魔耶にはクリームパンがあるじゃん」
魔耶「いや、まぁ、そうなんだけども…いいきつね色だなーって」
カルセナ「ああ、そーゆーことね。うん、いい感じに焼けたわ」
魔耶「流石だね〜。今日から君はパン焼き名人だ」
カルセナ「なんだその称号は…」
魔耶の言葉に呆れながらも、軽く微笑んでパンを口に運ぶ。
焼く前とは違うカリッとした食感と、甘くて香ばしいパンの香りが口に広がった。美味しいパンを味わい、自然とカルセナの表情に笑顔が広がる。
カルセナ「ん〜!美味しい‼」
魔耶「それは良かったわ〜」
カルセナ「ただ焼いただけなのに、なんでこんなに美味しいんだろ…パンを発明した人はきっと天才だな」
魔耶「はは、そんなにか…。…あ、バターとか付ける?確か冷蔵庫にあったと思うけど…」

623:多々良:2020/07/26(日) 18:34

カルセナ「あ、ほんと?んじゃ付けよっかな。取ってくるわ」
再び席を立ち、冷蔵庫を開ける。
カルセナ「うーんと.....あった!」
端っこにぽつんとバターの容器が置いてあった。パン屋で買い物をした際に買ったものだ。
カルセナ「お、何かジャムみたいなのもあるじゃん」
魔耶「それイチゴジャムだった筈....それも付けんの?」
カルセナ「一応持ってくわ」
そう言ってバターとジャムの2つを取り出し、席へ戻った。
カルセナ「ふぅ、何か席を立つこと多いような.....忙しいな」
魔耶「事前に準備しとけば良かったねぇ」
カルセナ「ま、良いでしょう」
食べかけのトーストにバターを塗り、その上から更にジャムをかける。
魔耶「わ、甘そう」
カルセナ「魔耶の大好きな甘々だぞ。再びいただきまーす」

624:なかやっち:2020/07/27(月) 20:34

バターとジャムで更に甘くなったトーストをパクリと食べる。
先程のほのかな甘みとはまた違う、人工的な甘さのジャムとバターが口のなかで溶け合う。あまりの美味しさに思わず目をつぶった。
カルセナ「ん〜、美味しい‼ジャムとかつけるだけでも全然違うね!」
魔耶「うんうん、ちょっとしたアレンジでも一味違うよね〜」
カルセナ「そうそう。パンになにかをつけるって革命的な考えを世に広めた人、誉め称えたい…」
魔耶「あー、分かるわ〜。パンにチョコとかクリームとか、本当に革命的な考えだよね」
カルセナ「分かってくれる?」
魔耶「分かってあげますとも〜」



カル魔耶「「ごちそうさま〜」」
パンについて語り合いながらも、美味しいパンを食べ終えた二人。テーブルの前で手を合わせ、完食の言葉を示した。

625:多々良:2020/07/29(水) 20:57

魔耶「さてと、色々済ませてから、蓬さんを訪ねる準備しますか」
カルセナ「おー」
それから洗い物をし、歯を磨いたり顔を洗ったりなどの身支度を素早く完了させた。

宿の外に出ると、燦々と輝く太陽が空に浮かんでいた。北街の人々も活動を始めているようだった。
魔耶「んー、今日も暑くなるかもね....」
カルセナ「干物化する前に行きましょ〜」
魔耶「干物て......ま、そうだね。早く行くか」
いつも通り軽快に地を蹴り、大空へと飛び上がる。上昇する際に顔に当たった風が涼しかった。
カルセナ「ふぅ〜....朝は気持ちが良いですなぁ」
魔耶「うんうん、昼間の上空は死ぬほど暑いからな〜」
カルセナ「....何か進展あるといいな、魔耶の悪魔についてのこと」
魔耶「何も収穫無しでも、聞きに行かなかったよりは良いと思うよ」
カルセナ「確かに....それはそうだ」

626:なかやっち:2020/07/29(水) 22:20

魔耶「ま、あの人のことだし、きっと何かしらの情報を得られるって」
カルセナ「うん、そうだよね…だといいけど…」
カルセナが少し不安そうな表情を浮かべたため、魔耶はカルセナを元気付けようと笑って言葉をかけた。
魔耶「カルセナが私より心配してどうすんの〜。ポジティブにいきましょ、ポジティブに」
カルセナ「…あ、ごめんごめん。そうだよね、ポジティブにいかなきゃ…!」
魔耶「うんうん。悲観するよりも、明るく前向きに考えた方がいいよ」
その後「どう考えたってその先の未来は変わらないんだから、どうせなら明るくいかなきゃね〜」と付けたし、カルセナの表情を伺う。さっきよりも明るくなったカルセナの表情を見てホッとした。
魔耶「…そういえば、私が話したのはクエストのとき以来だけど、最近ブラッカルとは話した?」

627:多々良:2020/08/01(土) 16:41

カルセナ「あぁ〜.....話したよ、昨日の夜」
魔耶「へぇ〜、どんな事話したりしてたの?」
カルセナ「どんな事?うーんと......」
腕を組んで昨日の会話を思い出す。
カルセナ「えっと.....話した内容では無いんだけど....」
昨日あった出来事を、全て魔耶に話してみた。

魔耶「.....謎の光る物体かぁ、何なんだろう?」
カルセナ「私も分からないわ.....今度話す〜みたいなことをあいつに言われたけど」
魔耶「もしかして、すごいものかもよ?」
カルセナ「まっさかー、私の中にすごいものがあるとは思えないな〜。面白かったら良いけど」
けらけらと軽く笑う。
魔耶「面白かったら良いのか.....」
カルセナ「魔耶こそ、昨日は悪魔と話した?」

628:なかやっち:2020/08/02(日) 09:35

魔耶「う〜ん…話したっちゃあ話したんだけど…どっちかというと、『自分達の意見を主張しあった』って感じかな…」
カルセナ「…?どういうこと?」
魔耶「実は…」
カルセナに、昨日の夜悪魔耶と話した内容を伝えた。

悪魔耶が絆や愛をくだらない綺麗事だと貶したこと、魔耶の言葉に全く耳を貸さなかったことまで話すと、カルセナはう〜んと顔を傾げた。
カルセナ「…一応悪魔耶も魔耶なんでしょ?なのに、そんなに考え方が違うものなのかな?」
魔耶「私もそこは疑問に思ってた。でも、悪魔耶は悪魔だから、そういう点に対しては人間の私とは考え方が合わないのかも…って思った。悪魔特有の考え方みたいなものかと…」
カルセナ「あぁ、なるほど…悪魔と人間では、根本的に考え方が違うのか…」
魔耶「多分ね。私が何を言っても耳を貸してくれなかったし、その考え方を変えることは難しそう」

629:多々良:2020/08/03(月) 07:53

カルセナ「そうか〜.....んじゃあ、説得は効かないってことか」
魔耶「多分そう言うことだね。蓬さんのとこで何か見つかると良いな〜」
カルセナ「だね、期待はしておこう」


それから暫く飛び続け、段々と見覚えのある建物がくっきりと見えてきた。
魔耶「....お、着いたんじゃない?」
カルセナ「あー、ほんとだー。長かった〜」
魔耶「今回はスッと入れるかな....流石に大丈夫だとは思うんだけど」
前回ここを訪れたとき、見張りに止められかけたのだ。そのときは幹部の1人で知り合いでもある、火憐柚季のお陰で入ることが出来たが....。
カルセナ「取り敢えず行ってみないと始まらないって言うし、行こうよ」
魔耶「うん、了解」

630:なかやっち:2020/08/03(月) 13:22

カルセナの言葉の同意し、そっと建物の近くに着地した。建物の入り口には以前と同じように二人の見張りが見える。
カルセナ「やっぱり見張りはいるよね…」
魔耶「そりゃそうだよね…どうしよ…普通に行って大丈夫かなぁ?」
前回はたまたま近くにいた柚季のおかげで中に入れてもらえたが、今回もそう都合よく柚季と出会えるとは思えない。見張りに入れてもらえればいいのだが…昔この建物で暴れたことがある二人を入れてくれるだろうか…
カルセナ「まぁ下手に変装なんかしたら怪しすぎるし、普通に行った方がいいでしょ」
魔耶「む、確かに…入れてもらえるものも入れてもらえなくなるか…」
カルセナ「うんうん。じゃ、行ってみましょう」


カル魔耶「あの、すみません…」
見張りA「ん?なんだ、ここはガキが来るところじゃ…」
以前と同様、見張りに追い返されそうになるかと覚悟したカルと魔耶だったが、二人を追い返そうと言葉を発した見張りをもう一人の見張りが止めた。
見張りB「お、おい待て。こいつら、あの二人だぞ」
見張りA「あの二人??」
見張りB「ほら、昨日柚季さんが言ってただろ?この二人は建物に入れてやれ、って…その二人じゃないか?」
見張りA「あぁ、そういえばそんなこと言われたな…確か、茶髪で青っぽい服を着たやつと、金髪で黄色と水色の帽子のやつ、だったか。……お前たち、特徴に合ってるな」
魔耶「あ、はい…えっと、魔耶とカルセナです。今日は蓬さ…会いたい人がいまして。入れてくれませんか?」
前回幹部の名前を言い当てたら逆に不審がられたため、名前は伏せ「会いたい人」、とだけ言った。
見張りA「ふーん…ま、幹部の言うことは絶対だ、通してやる」

631:多々良:2020/08/04(火) 19:30

魔耶カル「ありがとうございます」
見張りに軽く会釈をし、扉を開けて中に入る。
魔耶「....ふ〜、取り敢えず入れたー。このまま地下4階まで降りてって良いかな....?」
辺りをキョロキョロと見回す。しかし幹部たちの姿はなく、ただ変わらぬ内部の景色が広がっていただけだった。
カルセナ「知ってる人いなさそうだし、良いんじゃ........ん?」
魔耶「...?どうしたの?」
視線を向けている方向は、恐らく手下あろう人たちがせっせと働いているところ、その中の1人に向いていた。
カルセナ「あれー....あの人見たことあるなぁ.......あっ!!」
魔耶「まさか、こんなとこに知り合いが居たりとか?」
カルセナ「....そのまさかだね」

???「......あれ!?おーい!」
二人が視線を向けていた何者かがこちらに気付き、近寄って来た。
???「もしかして、前に私が新入りさんと勘違いした侵入者さん?」
カルセナ「あぁ....そうです....久し振りっちゃあ久し振りだね、8番さん」
彼女の正体は、前に二人が侵入した際、カルセナが話した事のある手下の1人だった。
8番「えへへ、まさかこんなとこで出会えるなんてね!あ、そーだ、名前聞いてなかったけど....」
カルセナ「あー、私の名前がカルセナで....んでこっちが...」
魔耶「魔耶でーす。初めまして」
8番「うん、よろしくね〜。....で、何しに来たの?また侵入しに...とか?」
カルセナ「違う違う、えーと....ちょっと上層部の人に用があるんだけど....」
魔耶「どうすれば良いかなって思って。そのまま降りてっても大丈夫かな?それとも何か...やらないといけないことあったりする?」

632:なかやっち:2020/08/04(火) 20:46

8番「んーん、特にやらなきゃいけないことはないから普通に行ってもいいと思う。あ、部屋に入る前にノックと自分の名前を言ってね」
カルセナ「そっか、それくらいなら楽でいいね。教えてくれてありがと」
8番「このくらいお安いご用ってものよ。あ、じゃあ私は仕事に戻るからまたね!暴れたりしちゃだめよ〜」
魔耶「分かってますよ〜…うん、またねー」
8番は魔耶達に忠告をすると、笑顔で手を降りながらもとの仕事場に戻っていった。

魔耶「…さて、いい情報をもらえたし、早速蓬さんに会いに行きましょう!」

633:多々良:2020/08/07(金) 09:25

カルセナ「おー!」
そうして、二人は少し広い階段を降りて行く事にした。

魔耶「えーと、地下4階.....」
カルセナ「ここが1階で、次が2階だから...もう少し先だね」
魔耶「て言うか、一番最後まで降りれば良いんじゃない?蓬さんがいるところ、最深部だし」
カルセナ「あ、そっか」

やがて、降りる階段が無くなり地下4階に到着した。
大きな扉の前に立ち、魔耶がノックをする。コンコンと硬い音が二人のいる空間に響いた。
魔耶「すみません...彩色魔耶です」
カルセナ「カルセナでーす....」
8番に言われた通り、名前を述べると聞き覚えのある声が返って来た。
???「どうぞ、お入りなさい」
二人で扉をぐっと押して中に入った。

634:なかやっち:2020/08/07(金) 20:10

???「…貴女達が、わざわざ何の用ですかね?」
重い扉の先には、仮面をつけた着物っぽい和服姿の女性が立っていた。その身長は魔耶より少し低いくらいだが、なめてかかってはいけない相手だということは二人ともよく分かっていた。
魔耶「…実は、お聞きしたいことがありまして…。お話、聞いてくれますか?蓬さん」
魔耶はそう言い、蓬をまっすぐ見た。前と変わらず威圧感のようなものは感じられず、表情も見えないので彼女の感情を読み取るのは難しかった。
蓬「…あなたは、私の大嫌いな魔族です。そんな魔族と一緒にいる元人間も同様です」
カルセナ「……っ…」
蓬「……ですが、貴女達に私が救われたことに変わりはありません。魔族は今も好いてはいませんが、貴女達は別とします。私が力になれるかは分かりませんが、話だけでも聞きましょう」
魔耶「…‼あ、ありがとうございます!」
蓬「立ち話もなんでしょう、どうぞお掛けなさい」
そう言って椅子を勧めてくれた蓬は、前よりも雰囲気が和らいでいるように感じられた。蓬の協力がえられ、魔耶とカルセナは二人でそっと微笑みあった。

635:多々良:2020/08/09(日) 21:56

蓬が勧めた椅子に腰掛ける。ずっと立ったり歩いたりしていた足腰に、僅かな安らぎをもたらしてくれた様に感じた。
蓬「....それで、どの様な用件でここへ?」
魔耶「あの、実は.....」


蓬「.....成る程。つまり、貴女の中にいる悪魔への対抗法を探している...と」
魔耶から詳しく話を聞いていた蓬は、その話から本題を察した。
魔耶「はい、そう言う事です。何か...知っている事はありませんか?どんな情報でも良いんです」
蓬「そうですね......私がまだ少し幼い頃に、集落で言い伝えられていた事があるのですが、どうでしょう」
カルセナ「是非お願いします」
蓬「...分かりました、ではお話ししましょう。悪魔にも有効なのかは認知していませんが、私の集落には魔族に対するいくつかの言い伝えがありました」
魔耶「そうなんですか....一体、どんな....?」

636:なかやっち:2020/08/09(日) 22:56

蓬「例えば、『魔族は夜活発に行動する』とか、『魔族は人間の子供を好物とする』とか。全てが全て本当というわけではないかも知れませんが…」
カルセナ「えっ…魔耶、人間食べるの…?」
魔耶「人間は食べないよ‼……多分、その集落で言われてる魔族は、私よりずっと悪魔の性格が色濃く反映されてるんじゃないかな…。いや、人間らしさが薄い、って言ったほうが正しいか」
魔族一口に言っても色々な種類がいる。ほとんど悪魔の姿をしたものもいれば、魔耶のように人間に近い姿のものもいる。性格も同様で、悪魔に近いものと人間に近いものと色々いる。だから蓬の言ったような魔族がいても可笑しくはないだろう。
魔耶「あ、遮ってごめんなさい。続けて」
蓬「…全てが本当というわけではないかも知れませんが、私の集落ではこのような言い伝えが数多く存在していました。…その中の一つに、『魔族は清らかな心や物を嫌う』というものがありました。そのため、集落では清めの塩、祈りを捧げるための祭壇などがよく使われていました」
カルセナ「…!清めの塩…」
蓬「はい。魔族は悪魔と類似する、穢れを好む種族。人を堕落させることを悦びとしてると言います。そのため、親切心や信仰心、清らかな物といったものを嫌うのだとか」
魔耶「…なるほど…」
あの悪魔は愛や絆が嫌いだといっていた。愛や絆、つまり清らかな物を嫌っているのだとしたら…塩は効果があるのかもしれない。

637:多々良:2020/08/10(月) 07:51

蓬「....さて、悪魔に対抗出来るものと言えばそのくらいですかね」
魔耶「嫌いなものとかも分かったし、参考になりました。ありがとうございます」
カルセナ「ありがとうございます。....あのー、さっき話していた清めの塩?みたいなやつって、どうすれば手に入るんですか...?」
素朴な質問をすると蓬は軽く顔を俯かせ、何かを考えているような様を見せた。が、直ぐに正面を向き話し始めた。
蓬「.....私の住んでいた集落には、小さいながらも大きな信仰が集まる神社がありました。魔除けの祭典を行う日にはそこの主である神主から塩を受け取っていましたが」
カルセナ「じゃあ、そこに行けば.....」
塩が貰える。そう言おうとしたとき、蓬が差し出した掌によって言葉が食い止められた。
蓬「......もう随分昔の話です。今そこに神社があり主が居るのかは分かりません」
魔耶「そんな....」
蓬「...しかし、神社が無くなろうとも神自体はそこへ居座り続ける事が多いです。...物には八百万の神が宿ってるなんて話、聞いたことがありませんか」
魔耶「あ....あります。小さい頃に....」
蓬「それは本当の事で、神が宿る器さえあれば本当は神社など必要がないのです。神が居ると言う事はつまり、信仰者が居る筈。その信仰者から何らかの情報は得られるかもしれません。....あわよくば、清めの塩を入手出来る可能性も」
カルセナ「なるほど....でも、信仰者がどこにいるかも分からないよね....」
魔耶と顔を見つめ合う。それを見た蓬が助言した。
蓬「信仰者、と言うのであれば参拝に来たりもする筈です。参拝するには朝が適していると言います。....まぁ、殆ど関係ないでしょう。但し、夕方以降になってしまえば話は別ですが」
魔耶「参拝者からって事か....あっ、肝心の場所ってどこですか...?」

638:なかやっち:2020/08/10(月) 09:24

蓬「ここから南東にありますが、だいぶ距離があります。今から行って、ギリギリ夕方になるかならないか、ってところですね」
カルセナ「…っ…そ、そんなに遠いの⁉そしたら、帰ってる途中に魔耶が…」
悪魔になってしまう可能性がある、と言いかけたが口をつぐむカルセナ。わざわざ皆まで言う必要はない、と理解したのだろう。
魔耶「…そうだね…それだけ遠ければ、帰りは夜中になるだろうね。……でも、もし帰ってる途中で悪魔になっちゃったとしても、戦う場所が変わるだけだよ。だからそこまで心配しなくても大丈夫じゃないかな…」
カルセナ「……そ、そっか…」
蓬「…私の持っていた情報は全て話しました。先程も言ったとおり、その集落はここからだいぶ距離があります。もし行くのであればお急ぎなさい」
魔耶「…はい。ありがとうございました。今から向かわせていただきます」
カルセナ「あ、ありがとうございました…!」
蓬から今すぐに出発しろ、と言われたような気がして、お礼を言いながら立ち上がる二人。それに応じて蓬も立ち上がった。
蓬「…また何かあったら、いつでもいらっしゃい。必ずしも力になれるとは限らないけれど、私の持っている情報は可能な限り教えます。…お気を付けて」
カルセナ「はい。…失礼しました」
魔耶「失礼しました」
蓬に背を向け、部屋から出たカルセナと魔耶。二人がいなくなった部屋で、蓬は一人、ポツリと呟いた。
蓬「…魔族に手を貸すようになるなんて、私も丸くなったようですね。…これも、あの二人に救われたお陰、でしょうか」

639:多々良:2020/08/11(火) 07:40


駆け足で階段を登って行き建物の外に出た二人は、早速南東へ向かって飛び立っていた。
魔耶「良い情報を貰えて良かった....後は運に頼るのみ、かな」
カルセナ「そうだね、私たちが到着したときに参拝者が居ると良いけど.....」
ちょこちょこ話しながら、風を切って進む。蓬と話していた間にも日は昇り、急ぎ足な二人に汗をかかせる位の暑さになっていた。
魔耶「暑い.....」
カルセナ「うん...ちょっと下降ながら飛ばない?」
魔耶「そうしよう。まだ距離があるっぽいしこんな高く飛んでたら焼け焦げちゃいそう......」
二人は今まで飛んでいた高さから30m程ゆっくりと下降し、少しでも暑さを和らげる行動を徹底しようと試みた。
カルセナ「魔耶、その上着暑そうだけど良いの?」
腕捲りをしながら上着を羽織っている魔耶に問い掛ける。
魔耶「私も丁度脱ごうかな...って思ってたとこ。まあ袖口広くて通気性良いから、まだ大丈夫かな」
カルセナ「ふーん、なら良いけど.....あーあ、氷の魔法とか使えたらな〜」
陽射しは二人の事なんか気にも留めず、燦々と降り注いでいる。午後の暑い時間帯を耐えれば少しは涼しくなるだろう....。そう考え、今は飛ぶことと熱中症対策に集中する事にした。

640:なかやっち:2020/08/11(火) 15:39


しばらく飛んでいると、魔耶は背中に悪寒のようなものを感じた。まるで恐ろしいものを目視してしまったかのようにゾクッという感覚が襲ってきて、思わず後ろを振り向いた。しかし、後ろには何もいない。それもそのはず、今は上空にいるのだ。誰かが追いかけてくることなど、あるはずがない。
カルセナ「…魔耶?どうかした?」
魔耶が急に後ろを向いたため、どうしたのかとカルセナが声をかける。
魔耶「…ううん、何でもない。なんか、一瞬だけだけど悪寒がして…気のせいだとは思うんだけど…」
カルセナ「悪寒…?熱でもあるんじゃない?」
魔耶「うーん、多分そういう感じじゃないと思うんだ。なんて言えばいいか分かんないけど、そういうのじゃない。なんか、怖いものを見ちゃったときみたいな…そんな感覚だった」
カルセナ「ふーん………あっ、もしかして…悪魔化の…⁉」
ハッとした表情で問いかけてくるカルセナ。しかし、私は彼女の言葉に首を振った。
魔耶「あー…ありえなくはないけど…でも、悪魔化が進んだのなら体の部位が痛くなるはずなんだよね。いつもはそういう感じだった」
カルセナ「えー…じゃあ、なんだっていうのさ?」
魔耶「だから、きっと気のせいだよ。それか、暑さで変になったのかも」
カルセナ「うーん、そうなのかな…」
まだ割り切れなそうなカルセナの表情に、大丈夫だよ、という笑顔を向けた。



悪魔耶「…なんか、やな感じがしたな…。神聖なパワーを感じた、って言えばいいかな?」
魔耶の意識の届かない深い意識の中で、ほとんど鎖が外れかけている悪魔耶が嫌そうな声を出した。
悪魔耶「全く、あの人はどこに行こうとしてるんだろ?無駄だって分からないかな〜」
はぁ…とため息をついた後、「それに…」と言葉を紡ぐ。
悪魔耶「…あの人はもう私と同じくらい悪魔に近くなってるんだから、神聖なところなんて毒みたいなものなのにさ〜。死にはしないけど、体調を崩したり弱ったりしちゃうじゃん。私の体でもあるんだから、勘弁してほしいよ」

641:多々良:2020/08/12(水) 19:20

カルセナ「まぁ、魔耶の大丈夫なら信用出来ない事もないけど....」
少々の心配を抱えながらも、魔耶の笑顔を見たカルセナはとにかく目的地へ向かう事を最優先にした。


それから二人はちょくちょく休憩しながら飛び続けた。木々が生い茂る山を越え、底が見えない程に真っ暗な渓谷を越え、気が付けば日がどんどんと西へ傾いていっている最中だった。
魔耶「時間帯で言ったらどのくらいかな....まだ5時にはなっていない気がするけど...」
カルセナ「この辺じゃないのかな〜....結構飛んだのに」
四方八方を見渡しながら注意深く空を飛んでいると、魔耶があるものに反応した。
魔耶「.....うん?」
カルセナ「ん?もしかして見つけた?」
魔耶「何かそれっぽい感じのものはあるけど.......ッ?」
見つけたものは、小さな祠の様なものだった。その周りにいくつかの小さな灯籠も見える。それを見つけると同時に一瞬、魔耶は再び強い悪寒を感じた。
カルセナ「....どうしたの?」
魔耶「また悪寒が.....何なんだろう...でも、止まった」
カルセナ「なら...良かった。....ちょっと行ってみる?」
魔耶「....うん、そうだね。行ってみよう」
もしかしたらあの祠が、自分たちが目指していた所かもしれない。そう思って、少し探索してみる事にした。

642:なかやっち:2020/08/12(水) 20:22

ずっと飛び続けていた足をようやく地面に着ける。スタッと着地して辺りを見回すと、祠から少し離れた場所に他の建物もいくつか見えた。
カルセナ「…祠じゃない建物もいくつか見えるね」
魔耶「あ、ほんとだ…なんか住居に見えない?」
カルセナ「うん、見える…ってことは、ここが蓬さんの言ってた集落、かな…?」
魔耶「どうだろう…とりあえず、祠のとこに行ってみよっか。なにか手がかりがあるかも」
カルセナ「りょーかい」


カルセナ「近くまできてみたけど…特に怪しいものはないね。ただの祠……って、大丈夫?魔耶」
魔耶「う、うん……なんか、祠の近くに来てから変な感じがあって…」
祠の前まで来た二人だったが、そこに来てから魔耶の調子が悪かった。
悪寒があり、祠を見るとまるで幽霊を見てしまったかのように恐ろしく感じ、それは祠に近づけば近づくほど強くなっているような気がした。
魔耶「なんか…祠が怖い、って感じてるのかも…」

643:多々良:2020/08/13(木) 20:29

カルセナ「怖い....?」
魔耶の様子をよく見ると、若干足が震えている様に見えた。こんな魔耶を見るのは初めてだった。
カルセナ「....良く分からないけど、あんまり無理しないで」
魔耶「うん、勿論.....それにしても....」
辺りをキョロキョロと見回す。祠の周りには自分たち以外の人がいる気配は無く、陽に照らされながらひっそりと静まり返っている。
魔耶「....誰も居ないね」
カルセナ「そうだね.....もうちょっと待ってみれば、もしかしたら参拝者か誰かが来るかも。....魔耶、まだ大丈夫そう?」
少し心配そうな顔をして魔耶の顔を覗き込む。
魔耶「あまり祠の近くに居なければ大丈夫....かな。待ってみよっか」
カルセナ「そっか....んじゃあ、もう少しあっち行こ」
そう言って祠と離れ、日陰になっている木の下を指差した。
魔耶「うん、ありがとう」
そうして二人は参拝者が祠目当てで来る事に期待し、大きな木の下で待つことにした。

644:なかやっち:2020/08/13(木) 21:34


魔耶「…カルセナは、祠に何か感じたりしないの?」
木陰で参拝者が来るのを待っている間、魔耶は祠の謎を突き止めようとカルセナに声をかけた。
カルセナ「う、うん…特に何も感じないよ」
魔耶「…そっか…」
カルセナから帰ってきた答えは『特に何も感じない』。では自分のこれはなんなのだろう。祠から少し離れたからなのか、さっきよりは恐ろしさを感じないが、まだ祠に視線を向けると悪寒が走る。
魔耶「なんなんだろ、これ……これも悪魔化の影響なのかな」
カルセナ「悪魔化が進んだせいで祠が怖い…ってこと?」
魔耶「もしかしたらね。それくらいしか思い当たるのなんてないし…」
そういうと、カルセナは少しだけ俯いて、何かを考えているような態度を見せた。
カルセナ「…悪魔化が進んで…祠に恐怖を感じる………悪魔は、神聖なものが嫌い………あっ、もしかして…」
魔耶「……?何か思い当たるの?」
カルセナ「うーん、あくまで予想なんだけど…悪魔は神聖なものが嫌いっていう仮説がたってるじゃない。もしそれが本当なら、悪魔化が進んできてる魔耶も神聖なものが無意識のうちに嫌いになってるんじゃないかなって。いや、嫌いっていうよりも、苦手とか恐ろしいとかの方が正しいか」

645:多々良:2020/08/14(金) 14:52

魔耶「.....そう言う事か」
カルセナ「でも、ほんとにそうかは分からないからね?」
魔耶「...いや、多分そうだと思う。そうでなければ、私が祠に恐怖を感じる意味が分からないし」
両方とも紅く染まってしまった目のうちの、右目を手でそっと押さえる。少しずつ夕陽に変わって行く陽の光を浴びている大地が、更に濃い橙色に見えた。
カルセナ「.....早く来ないかな、参拝者」
待っている暇があるのならば、少しでも解決策を探り出したい。そうは思っているのだが....。この場所では、何をどうすれば良いのか分からなかった。
小さく細い声で鳴く蜩の声が、不安定な心を締め付けてくるように感じた。二人の間では、暫くの無言が続いた。

気が付いたら蜩の声が止み、辺りは先程よりも薄暗くなっていた。
二人は疲労のあまり、無意識の内に木に寄り掛かってうたた寝をしてしまっていた。
魔耶「う...ん.......」
眠い目を擦り、辺りを確認する。当然祠の辺りも見た。すると、魔耶の目に人影らしき、動くものが映った。
魔耶「...あ、あれってもしかして....参拝者?カルセナ、起きて!」
カルセナ「ん〜.....あ、ごめん....」
魔耶「良いよ、私もうたた寝してたし....それよりもほら!誰か来たよ!」
カルセナ「....?あっ、ほんとだ!」

646:なかやっち:2020/08/14(金) 20:50

少し遠いことと辺りが薄暗いことも相まって、人影らしき影はぼんやりとしかその形が分からなかった。
カルセナ「参拝客なのかな?」
魔耶「分かんないけど…とりあえず行ってみよ!なにか情報もらえるかもしれないし…」
カルセナ「うん、わかった!」

軽く小走りして、人影の方へと歩みを進める。近づいていくうちに輪郭が少しずつはっきりとしてきて、人間らしきフォルムが確認できた。その人物はなかなか歩みが早かったので、魔耶とカルセナも急いで追いかける。
魔耶「はぁ、はぁ…あの、すみません…ここの参拝客の方ですか?」
カルセナ「ちょっとお聞きしたいことが…あるんですけど…」
魔耶とカルセナが若干距離をおいて話しかけると、前を歩いていた人物がこちらを振り返った。

647:多々良:2020/08/15(土) 22:42

???「....?どうかされましたか?」
振り返った人物は、50歳後半くらいの男性だった。竹製の大きな籠を背負っている。
魔耶「もしかして、その祠目当てでここへ?」
???「そうです。毎週この曜日に、祠まで来ているんです」
カルセナ「何で来てるんですか?」
???「ここには昔、小さな集落と神社がありまして。私の祖父、父は共にその神社の管理人だったんです」
魔耶「成る程....じゃあ、跡を継いでここを管理しに来てるって事ですか」
管理人「そう言う事です。....それで、本題の聞きたい事とは....?」
二人を見つめ、首を傾げる。
魔耶「あっ、そうだ....あの、ここの集落では魔族を嫌っていたと言う情報があったのですが....」
管理人「そうですね、結構な頻度で魔除けの儀式も行われていましたし」
魔耶「それならば、魔族に関する情報を何か持っていませんか?例えば、悪魔を払える方法とか....」

648:なかやっち:2020/08/15(土) 23:20

管理人「悪魔、ですか…」
ボソリと悪魔という単語を呟くと、顎に手をおいて考えるような仕草をとった。
管理人「…やはり、魔除けの塩が必要なのではないでしょうか…」
カルセナ「…蓬さんと同じ…そ、その魔除けの塩って、ここにありますか?もしあるなら、少し分けてもらいたいんですけど…」
魔除けの塩と聞き、少々切羽詰まった様子で尋ねるカルセナ。まぁ、無理もないだろう。もう日は落ちかかってるし、ここになかったらもう対処法はないのだから。魔耶も心の中で手を合わせる。神様、どうか……
管理人「…えぇ、まだ祠に少し残っていたはずです。もうすぐ新しい塩をつくらなければいけないと思っていたので、古いものはお譲りしますよ」
ハッと顔を上げて、二人で顔を見合わせる。二人とも満面の笑みで、少し泣きそうな表情になっていた。
管理人「では、着いてきてください。祠の中に塩が保存してあるので」
カルセナ「分かりました!ありがとうございます!いこう、ま………って、魔耶は祠に行けないのか」
魔耶「えっ……あ、あぁ、そうだったね…ごめん、私はここで待たせてもらってもいいかな?」
管理人「…??あなたはここで待つんですか?」
魔耶「はい、すみません……」
カルセナ「あ、あの…この子は体調が優れなくて…私一人で十分ですからっ!」
管理人「…そういうことなら、まぁ…分かりました。では、いきましょう」

649:多々良:2020/08/18(火) 07:32

管理人と祠へ向かう際、魔耶に掌を軽く向けて「ちょっと行ってくるね」とサインを出した。
魔耶「....行ってらっしゃい」
送り出す言葉を添え、魔耶も掌を向けてサインを返した。

管理人「....余談なのですが、何故魔除けの塩が必要なんですか?」
カルセナ「え?あ、えーっと......それは....」
管理人「あぁ、すみません。言いたくない内容ならば言わなくて大丈夫です。...物が物なので、恐らく魔族関係の事と思われますが」
カルセナ「あっ....まぁ、そんな感じです」
管理人「やはりそうでしたか。だったらきっと、ここの塩は役に立ちますよ」
そう言って祠の前に立つと、小さな鍵を外して戸を開けた。薄暗い祠の中には色褪せた包み紙が1つ入っていた。
管理人「よっと....こちらが魔除けの塩です。量はそこまで多くありませんが、魔族や悪魔を祓うのには十分でしょう。どうぞ、お受け取り下さい」
身を屈めてその包み紙を取り出し、カルセナへ手渡した。

650:なかやっち:2020/08/18(火) 10:09


魔耶「…よかった…これで、悪魔を迎え撃つ準備はできたよね…」
ホッと一息つき、悪魔への対処法を手に入れられて安心する魔耶。あとは悪魔を外に出して、カルセナに任せて……
魔耶「…なんか、カルセナを巻き込んじゃって悪いな…自分の問題なのに…」
カルセナに任せて、と考えたときに、胸にチクリと罪悪感が刺さった。
それもそのはず、これから魔耶はカルセナに戦いを強いらなければならないのだ。しかも、人間などとは比べものにならないほどの力を持つ、悪魔。負ければ魔耶とカルセナ、共に無事ではいられない。二人の命運…いや、下手したらこの世界の命運をカルセナ一人に任せなければいけない…
魔耶「………カルセナが悪魔に勝ったら、ちゃんとお礼を言わなきゃね………あ、帰ってきた」
ぼんやりと考え事をしておると、祠から出てきたカルセナの姿が見えた。包み紙のようなものを持っている…あれが魔除けの塩というやつだろうか。

651:多々良:2020/08/19(水) 19:34

カルセナ「(結構軽い.....折角貰ったものだし、無駄にしないようにしないとなぁ)」
魔除けの塩が入った包み紙を掌に乗せ、重さを確かめる為に手を上下する。
管理人「では、私はもう暫く祠に用事があるのでここで....」
カルセナ「あ、魔除けの塩、ありがとうございました!」
管理人「いえいえ、貴女方のご健闘をお祈りします」
胸の前で合掌をし、カルセナを見送った。
カルセナ「.....さて、この塩をどうやって使うんだっけ〜......あれ、待てよ...どうやって使うんだ....??」
効き目のありそうな魔除けの塩を貰ったは良いが、肝心の使い方がいまいち分かっていない事に気が付いた。
カルセナ「塩と言えば、アニメや漫画で悪霊退散!とか言って投げ付けるイメージだけど....魔耶に聞いてみよっと」
駆け足気味に魔耶のいる所へ戻る。その途中、ふと疑問を抱き走るのを止めた。
カルセナ「魔耶って、この塩を近くに持ってこられても大丈夫なのかな.....」
魔耶が嫌がってしまったら....そう思って躊躇していたが、結局本人に聞かないとどうしようもない。包み紙を開け塩が溢れないように用心しながら、今居る場所から大声で魔耶に問い掛けた。

カルセナ「「 魔耶ーーっ!この塩怖くないーーーっ? 」」

652:なかやっち:2020/08/19(水) 20:30

魔耶「…?…カルセナ、なにしてるんだろ」
祠から出てきたカルセナは、最初小走りでこちらに向かってきていたものの、いきなり立ち止まって手に持っている包みを開け始めた。
そして、中にあった小さな塩の山があらわになったかと思えば、大きな声でこちらに問いかけてきた。
カルセナ「「魔耶ーーっ!この塩怖くないーーーっ?」」
その言葉を聞き、カルセナが途中で立ち止まった理由が分かった。私が塩を嫌がるのではないかと考え、わざわざ遠くから聞いてくれたのだ。
魔耶「(…そう言われてみれば…祠は怖かったけど、塩はなにも感じないな…)」
祠は視線を合わせるだけでも恐怖を感じたのに、塩には特になにも感じなかった。もしかしたら触れなければ効果はないのかも…そう思い、カルセナに同じくらい大きな声で返事を返す。
魔耶「「多分大丈夫だよーーーっ‼」」
そう言うと、カルセナはホッとしたような顔でこちらに向かって再び走ってきた。

653:多々良:2020/08/20(木) 19:40

カルセナ「....ふぅ...良かった〜、もしかしたらこれも苦手かと思ってさ」
帽子の鍔を掴んで角度を調整し、魔耶の顔を見て微笑む。
魔耶「ありがと。多分、触らなければ大丈夫って感じかも」
カルセナ「そっかー....じゃあ、どうする...?また戻る?」
魔耶「....うん、そうだね。移動しよっか」
もう日が落ちかけている時間帯なようで、魔耶の悪魔化も容赦なく、刻一刻と近付いている。この場所で戦うなんていう事態を避ける為、二人は元来た道を戻る事にした。

昼間より気温が僅かに下がった空を飛びながらカルセナは、ふと、ある事を思い出した。
カルセナ「.....あ、そうだ」
魔耶「?」
カルセナ「この魔除けの塩って、どうやって使うと思う?」
魔耶「あー.....そう言えば、確かに....うーんと」

654:なかやっち:2020/08/20(木) 20:16

魔耶「…多分だけど、普通に投げつければいいんじゃない?今私が近くにいても効果ないっぽいし…きっと直接当てれば効くと思うから」
今の自分の状態を踏まえ、塩の使い方を考察する。
カルセナ「そっか、やっぱりそうだよね。ありがと」
魔耶「いえいえ。……って、カルセナ管理人さんに使い方聞かなかったの?」
魔耶がそう訪ねると、カルセナはばつの悪そうな顔で「すみません…」と謝ってきた。
魔耶「…まぁ、私も使い方なんて気にしてなかったし、別にいいけどさ。でももし私の推測があってなかったらどうしよ……」
カルセナ「きっと大丈夫だよ。アニメとか漫画とかでもそんな感じじゃん?それに、それ以外の方法なんて思い付かないし」
魔耶「…まぁそうね。ところで、塩を当てたら悪魔はどうなるんだろ?効果があるとは言われたけど…弱ったりするのかな?」

655:多々良:2020/08/21(金) 20:17

塩を投げ付けたときの反応を頭の中で想像する。
カルセナ「怯んだりとかしそうだけど....撃退まではいかないくらいだろうなー.....」
魔耶「んー....じゃあ、隙を突くしかないって事だね」
カルセナ「だねー。ちょっと緊張してきたな....」
日がかなり暮れても魔耶が悪魔化しない事に対し、もしかしたらこのままで居てくれるのではないかと期待してしまったりしていた。寧ろその方が嬉しいが....きっとそうはいかないのだろう。魔耶の体が確実に、悪魔に蝕まれていっていたからだ。そんな心境の中で唯一、魔耶の意識がまだ「魔耶」であることが幸いに思えた。
魔耶「.....カルセナ」
カルセナ「....ん?」
魔耶「....私の中の悪魔を、お願いね。...頑張って」
カルセナ「いきなりそんな事........うん、分かった...」
急な励ましに少し驚いたが、すぐに平静さを取り戻して返事をした。
カルセナ「....魔耶も、完全に悪魔に取り込まれないように頑張ってね」

656:なかやっち:2020/08/21(金) 20:59

魔耶「ふふっ、魔耶さんはそう簡単に悪魔になったりしないよ」
カルセナ「…そっか…」
もし悪魔が表に出てきたら自分はどうなるのかなんて分からなかったが、出来る限りの抵抗はしようと心に刻む魔耶。…そう簡単に体を渡してなるものか。
カルセナ「…今のところはなんともなさそう?」
魔耶「うん…まぁ祠が怖かったりはしたけど、特になんともないかな………ッ⁉」
カルセナ「⁉…ま、魔耶…‼」
なんともないから大丈夫、そう言おうとした正にその瞬間、魔耶は頭にズキッとした痛みを感じた。一瞬意識が朦朧として地面に落ちそうになったが、すぐに立て直す。
魔耶「…なんか…一瞬すごい頭痛が…」

657:多々良:2020/08/22(土) 21:51

カルセナ「....!!...一回降りよう、魔耶」
魔耶「う、うん....」
塩の入った包み紙をポケットに仕舞う。魔耶の身を案じ、近くにあった少し広い草原へ降下する事にした。急に起こった頭痛が、今最も二人にとって起こって欲しくない事が起きようとしている前兆に感じられたからだ。

魔耶は短い草が生い茂る地面に降り立つや否や、その場に座り込んでしまった。
カルセナ「魔耶....大丈夫?...じゃないよね.....」
魔耶「うーん....今はさっきよりも安定してるけどまた....定期的に来そう...かな....」
カルセナはどういった言葉を掛ければ良いか分からなかった。こんなにも不安と恐怖に襲われる事はそうそうない。さっきからずっと心が抉られるかのような感覚を味わっていた。しかし、誰よりも大変なのは魔耶の方だ。自分が弱気になってしまったらもうどうしようもない。出来るだけ顔に出さないよう、魔耶の前では強くいられるようにした。
カルセナ「魔耶.....頑張れ......」

658:なかやっち:2020/08/23(日) 14:18

魔耶「…うん……ッ…」
再び襲ってくる頭痛に、反射的に頭を押さえる魔耶。頭痛は一瞬痛くなっては何事もなかったかのようにフッと消えるのを繰り返しており、それが二人の不安を煽っていた。

魔耶「……カルセナ…」
カルセナ「ん…?な、なに…?」
魔耶は親友の名をつぶやくと、重い頭を上げて無理矢理カルセナと視線を合わせた。
魔耶「…相手は悪魔だから、人間とは全てにおいて根本的に違う。身体能力も、考え方も……だから、戦い方もきっと違う。卑怯な手を使ってくるかもしれない」
カルセナ「…うん…わかってる…」
魔耶「…だからね、無理だけはしてほしくないんだ。もし自分の身が危ないと思ったら、すぐに逃げてほしい。カルセナがそんな行動をとっても、私は、絶対…カルセナを恨んだりしないから」
カルセナ「…でも…!そんなことしたら魔耶が…‼」
魔耶「いやまぁ…そうなんだけどさ…何度も言ってるけど、私は自分なんかよりも、カルセナ達…みんなの方が大切だから。もしカルセナが自分を犠牲にして私を助けたとしても、カルセナがいない世界で私が暮らしていけるとは思えないし」
カルセナ「でも…そんなの私だって同じだよ…!それに、魔耶がいなくなっちゃったら…また一人になっちゃうじゃん…」
魔耶「……大丈夫、私がいなくても、ひまりやみお達がいるでしょ?」
カルセナが悲しそうに反論するのを見て、魔耶は軽く笑いながら言い返した。…が、まだ言いたい言葉が残っていたようで、魔耶は俯いて言葉を続ける。

魔耶「………ただ、これは独り言ね。ただの独り言。……できることなら、私もまだ生きていたい…もちろんカルセナと、みおと、ひまりと…みんなで。だから、できたらでいいから…本当に、できたらでいいから…」
そこまで言ってスゥと息を吸うと、言葉を吐き出すようにこう言った。
魔耶「…全員、救ってほしいの…!」
魔耶は、カルセナさえ無事なら自分は犠牲になってもいいと考えていた。もちろん嘘偽りのない本心である。…しかし、この後に及んで、魔耶は自分も生きていたいと思ってしまっているのも事実だった。矛盾しているというのもわかっている。大変な我儘だっていうのも分かってるけど…魔耶は、自分の心を隠し通す事など出来なかった。気づけば、自分の頬を温かい液体が伝っていた。もう、泣かないって決めてたのに…自分の弱い心を恨めしく思う。

659:多々良:2020/08/24(月) 21:14

カルセナ「......救うよ」
ポツリとそう呟く。
カルセナ「魔耶が...私たちが想っている人たち....皆みんな救うから.....!」
その言葉は端から聞けば、とても無責任な言葉だったかもしれない。勿論、悪魔に勝てる確信だってない。でも、皆を救う。その思いだけは濁りのない本物の想いだった。その証拠に、カルセナの眼には覚悟と勇気の光が灯っていた。
魔耶「...カルセナ.....」
カルセナ「.....今のは私の独り言、だからね」
僅かに顔を上げた魔耶と向き合う。
カルセナ「魔耶....魔耶が悪魔に変わっちゃったとしても、安心して。二人でこれまで、色んな事を乗り越えて来たんだもん。『私たち』で悪魔を倒そう!」
魔耶の濡れた顔に向かって柔らかく微笑む。そのときには、先程まで感じていた不安感や恐怖心は薄れていた。
魔耶「!......うん...ありがとう....ッ」
ボロボロと頬を伝う涙を手で拭いながらお礼を言う。
カルセナ「もう、お礼はこの事件が解決してから言ってよ〜」

660:なかやっち:2020/08/25(火) 20:25

魔耶「うん……よろしく頼んだよ、カルセナ…」
カルセナ「任せておいて!きっとみんな救ってみせるから…!」
カルセナの強く真っ直ぐな瞳を見て柔らかく微笑む。
わざわざ忠告する必要もなかったな…この人なら、きっとやってくれるだろう。直感的にそんな事を考えた。



痛みが出てから一時間は経っただろうか。
魔耶の頭痛は時間が経つごとに痛みを増し、いよいよ痛みが酷くなってきた。
魔耶「……はぁ、はぁ…」
カルセナ「…魔耶…大丈夫…?」
魔耶「ッ……そろそろ、キツイかな…気を抜いたら意識が飛んじゃいそう…」

661:多々良:2020/08/27(木) 21:26

カルセナ「...無理しないで....」
魔耶「う、うん......」
カルセナ「.....早く悪魔になっても、いいよ」
魔耶「....えっ?」
一瞬カルセナが何を言っているか、魔耶には分からなかった。悪魔に蝕まれてしまう事を、一番恐れていた筈なのに。
魔耶「それって...どういう....ッ」
カルセナ「....もう、あんまり魔耶に苦しんで欲しくないの。...私も戦う準備は出来てるし、このままずっと苦しんで、結局悪魔になっちゃうなんて辛いに決まってるし.....」
魔耶は、痛む頭を抱えながらカルセナの話をじっと聞いていた。定期的に歪む顔は、意識を悪魔に脅かされているかのような表情を見せていた。
カルセナ「...だから、安心して意識を飛ばしてもいいよ。それこそ、魔耶の判断によるけど....」

662:なかやっち:2020/08/28(金) 20:32

魔耶「……っ……」
カルセナから発せられた言葉を理解しようとするが、頭の痛みといきなりの発言に頭が回らなかった。
カルセナは自分の苦しむ顔が見たくないんだろう。たくさん苦しんで悪魔になるのなら、今悪魔になってしまえばあまり苦しまなくてすむから、と。そう言っている。…しかし、魔耶は怖かった。自分が悪魔になってしまったら、自分はどうなってしまうのだろう?カルセナはどうなってしまうのだろう?確かに今は苦しいが、ずっと耐え続ければ悪魔は自分に身体を乗っ取るのをやめてくれるのではないか……そんな考えが、魔耶の中にはあった。
…しかし、本当はわかっていた。どんなに耐えても悪魔になることは変わらないのだということを。そして、自分が身体を乗っ取られたら、あとはカルセナに任せるしかないのだと。…なら、そんな未来しかないのなら…

魔耶「……わかった…………あとは任せたよ、カル…私も、がんば…る…」

カルセナの言葉を受け入れ、意識の薄れゆくままに身を任せると、だんだんとまぶたが閉じていくのがわかった。思ったよりも限界は近かったようだ。
だんだんと視界が暗くなり、聴覚がシャットダウンされていく中、カルセナの言葉が聞こえた気がした。

カルセナ「うん…!一緒に、頑張ろう…!」

663:多々良:2020/08/30(日) 19:56


ガクンと頭を垂らした魔耶から、念のため少し離れる。悪魔が飛び出して急に襲ってくる...なんて事があるかもしれないからだ。
カルセナ「.....魔耶...」
魔耶が意識を失い、太陽が顔を殆ど隠した暗く広い草原にポツンと一人佇む。これまで僅かに吹いていた風が急に止み、辺りには静寂が訪れた。それはまるで、これから悪い事が起きようとしているかのような雰囲気だった。
そんな事を考えながら周りを見渡した後、言葉を発しないまま胸に手を当てる。久々の孤独に小さな恐怖を感じた故にした行動だった。そのとき、カルセナの手にコツンと何か固いものが当たった。
カルセナ「.....あ、そう言えば預かってたな....」
おもむろに胸ポケットから取り出したペンダントは、事前に魔耶から預かっていたものだった。辺りが暗くなってもなお、紅い輝きを放っている。
カルセナ「.......」
静かにそのペンダントを握り締める。そうする事によって、何故かいつも感じている安心感を得られる気がしたのだ。

カルセナ「....どんと来い!」

664:なかやっち:2020/08/31(月) 20:50



魔耶「…んぅ……ん…?」

悪魔耶「…あ、目が覚めた?おはよー…いや、もう外は夜だからおはようはおかしいか?」
うっすら目を開けると、自分と全く同じ顔が魔耶を覗き込んでいた。
いきなりの光景にびっくりして後ずさりしようとするが、なぜか動くことが出来ない。そのかわりに、ジャラジャラという重いものが動く音が聞こえた。
…これは…鎖…?私は今、鎖に繋がれている…?
魔耶「…ッ…⁉な、なにこれ…どうなって……」
魔耶は混乱しきった声を出し、鎖から逃れようと体を動かす。しかし、魔耶の体にしっかりと絡みついた鎖は彼女を離そうとしなかった。その光景を見た悪魔耶は軽く微笑んで説明をしてくれた。
悪魔耶「あはは、この状況に混乱してるみたいだね?…じゃあ、大サービスで説明してあげましょう。君は現実世界で意識を手放したよね?そこまでは覚えてる?」
魔耶「……うん」
悪魔耶「よしよし。それで、意識を手放した君はこの空間にいるわけだ。んで、今は君と私が入れ替わる直前?みたいな状態。君が鎖に繋がれてるのは、私が鎖から外れたからだね。私が寝ちゃえば、もう君と私は入れ替わり完了!もう会うことはない!って感じよ。感謝してよね?最後に話す時間あげてるんだからさ〜」
魔耶「……」
つまり、今私は現実世界から離れてこの空間にいるということか。
さっきまで混乱していたはずだったが、悪魔耶の説明を受けて妙に納得できた。そして、少しだけ冷静さが戻ってきた。この状況を飲み込めたからかもしれない。
魔耶「…なら、今これは私と君の最後の会話、だよね…」
悪魔耶「…うん。そうだね」
魔耶「…ならさ、教えてくれない?君の目的。わざわざ私と入れ替わって、なにをするつもりなの?カルセナに、何かするつもりなの?」
これは、魔耶の単純な疑問だった。最後の会話なら、教えてくれるかもしれないと思っていたのもあった。
魔耶の質問に最初は驚いたような表情をしていたが、やがてゆっくりと語り始めた。

665:多々良:2020/08/31(月) 21:40


魔耶が意識を落として数分経ったが、何も起こる気配がない。そんな状況に、少しだけ困惑した。
カルセナ「ほんとに入れ替わっちゃうのかな....魔耶、大丈夫...なのかな」
まだ悪魔になるような予兆はない....カルセナは少し、魔耶に近付いてみる事にした。
すぐ目の前まで近付き、顔を覗き込む。眠っているかのような表情を見せているが、寝息は聞こえない。不思議な感じだ。
カルセナ「.....あいつはまだ寝てるのかな....」
あいつとはすなわち、ブラッカルのこと。前まで魔耶の中の悪魔に、敏感に反応していた事が記憶に残っている。似た者同士とでも言うからなのだろうか。
カルセナ「...『私たち』で、魔耶をしっかりサポートしないとね」

666:なかやっち:2020/09/01(火) 20:40


悪魔耶「…そうだね…今の君は何にもできないんだし、最後の会話サービスで教えてあげてもいいかな。私の目的はね……私達の同類…悪魔を、生き物のトップに立てることだよ」
魔耶「…悪魔を、トップに…?」
悪魔耶「うん。今この世の中は人間が牛耳ってるじゃない。人間なんて、己の幸福しか考えてないような愚かな生き物なのに、なんで人間なんかがトップにたってるのかな…なんて思った私は、悪魔の地位をあげようと思ってるんだ」
魔耶「……なるほどね…その計画では、どんなことを…」
悪魔耶「ストップ!これ以上は言わないよ?目的は言ったもの。方法とかは話してあげるなんて言ってないでしょ?」
魔耶「……狡いなぁ」
魔耶がボソリと不満気に呟くと、悪魔耶は「悪魔ですから」と明るく笑った。自分は笑ってないのに自分の笑顔を見るなんて、変な感じだ。
悪魔耶「……ふぅ。じゃあ、私はそろそろ行かせてもらうよ。最後に目的まで話したんだし、これでいいでしょ?この空間は辛いだろうけど、私が死ななければ死にはしないから大丈夫だよ〜」
魔耶「…⁉ちょ、そんな…いきなり…」
唐突に別れを切り上げられ戸惑う魔耶。まだ聞きたいことがたくさんあったのに…心の準備も、できていない。なのに、この悪魔は私と別れを告げようとしている。唐突に別れを言うことで私に引き止めさせないつもりなのだろうか?もしそうなのだとしたら、本当に狡い悪魔だ。
悪魔耶「あはは!ばいばい、魔耶!元気でね〜」
魔耶「待って‼まだ……」
魔耶の叫びにも近い言葉は、悪魔の耳には届かない。私が言葉をかけたにも関わらず、悪魔耶はその場に座って目を瞑った。そして、魔耶が瞬きをした次の瞬間には、悪魔の姿はきえていたのだった。

魔耶「……っ……カルセナ…」

667:多々良:2020/09/02(水) 23:18


カルセナ「....何か今、一瞬動いたような....」
ピクッ、と体を震わせたように見えた魔耶の顔を改めて覗き込む。
カルセナ「いつ悪魔化してもおかしくないとはいえ、これだけ時間が空くと怪しくなるな〜......」
と、そのとき、ずっと閉じていた魔耶の目がゆっくりと開いた。
カルセナ「魔耶!!......ッ?!」
一瞬、いつもの魔耶だと感じ、思わず喜んだが....何か異様な雰囲気を感じ取った。いつもの魔耶にはない、威圧するかのような気配。それを警戒し、後ずさった。
悪魔耶「ふぅ.....やっとこのときが来たよ」
垂らしていた頭を上げ、軽く背伸びをする。それを見て、確信した。あれは魔耶ではない。本当の「悪魔」だと。
カルセナ「........」
悪魔耶「....君がカルセナだね?私と君は、初めまして..かな?」
カルセナ「.....そうだよ...」
初めて見る本当の悪魔に、顔が強張る。
悪魔耶「まぁまぁ、そんな怖い顔しないでよ。...折角頼りにされてるみたいなんだしさ」
カルセナ「...そこまで知ってるんだね」

668:なかやっち:2020/09/03(木) 19:41

悪魔耶「ふふ、一応外の様子は把握してるからね。特に君は私(魔耶)との交流が深かったから、よく知ってるよ」
カルセナ「…魔耶は、今どうなってるの?無事なの?」
悪魔耶「………無事っちゃあ無事だけど…そんなの気にしてどうするのさ。もうあの人は外に出てこれないんだよ?無事かどうかなんてどうでもいいじゃん」
そう言い切ると、パッと身体を起こしてカルセナに視線を向けた。
悪魔耶「…今から私が【魔耶】なんだしね」
カルセナ「…ッ」
悪魔耶の発言にザワッとするカルセナ。悪魔耶の発言から、もう魔耶に身体を返すつもりはないのだと理解できた。
カルセナ「……残念だけど、そうはいかないよ。力づくでも魔耶を返してもらうから…!」
悪魔耶「…あぁ、やっぱり戦う気なんだ?まぁその方がこっちとしても都合はいいし、別にいいけどね〜」
カルセナ「…都合がいい…?」
悪魔耶「うぅん、こっちの話だよ。……じゃあ、始めよっか」

669:多々良:2020/09/03(木) 22:19

悪魔耶の不可解な発言に疑問を持ちながらも、カルセナは能力を発揮して構える。
悪魔耶「君に私の動きが読み取れるかな?...肩慣らしのつもりで、最初だけ軽く遊んであげるよ」
余裕な表情を浮かべながら、スタスタと歩み寄って来る。
カルセナ「(........来る..っ?!)」
数秒先の未来を読み、とっさに右へ避けた。悪魔耶の動きはとても素早く、先読みして避けても頬に傷を付けられてしまった。
横を通り過ぎた悪魔耶の手には、小さな果物ナイフのようなものが握られている。恐らく能力でつくり出したものなのだろう。
悪魔耶「お、避けたね。やっぱりただの人間じゃないだけあるのかな?」
ナイフをくるくる回し、ポンッと消した。その間に頬を伝う、細く温かく赤い筋から伝わる感覚が涙と似ていて少し嫌気が刺した。
カルセナ「..褒め言葉なんて結構だよ....」
悪魔耶「はは、冷たいな〜。...あ、あと君の横を通り過ぎたときに感じたけど....変なもの持ってるよね?」
カルセナ「...?何のこと?」

670:なかやっち:2020/09/04(金) 17:26

カルセナがそう言うと、悪魔耶はうーんと考え込む。
悪魔耶「ん〜、なんて言えばいいんだろ…私と似て非なるもの…と言うのかな……」
カルセナ「(……ブラッカルのことかな…もしかして、悪魔耶はブラッカルのことを知らない…?)」
悪魔耶は自分の第2の人格であるブラッカルのことを言っているのだろうか…まぁ、魔耶がブラッカルと過ごした時間は少ないだろうし、知らなくとも不思議ではない。第2の人格であるブラッカルは、確かに悪魔耶と似ているが異なる存在だろう。
悪魔耶「あ、教えてくれないの?まぁいいけど」
カルセナの沈黙を教える気がないのだと勝手に解釈し、独り言を進める悪魔耶。
悪魔耶「……んじゃあ、お喋りはほどほどにして…ちょっと本気でいくよ〜?今度はついてこれるかな?」
そう言い放つと、悪魔耶は右手に太刀らしき剣を持ち、再びカルセナに向かってきた。

671:多々良:2020/09/07(月) 18:47

カルセナ「...!!速ッ......」
悪魔耶のスピードに戦き、判断が僅かに遅れた。悪魔耶が凪ぎ払った一太刀目は何とかかわし、次の攻撃に備える為に悪魔耶の横に回り込む。しかし、その判断が大きな仇となった。
横に回り込もうとしたカルセナに気付いた悪魔耶は、重そうな太刀をいとも簡単に持ち変え、カルセナを狙って突いた。
カルセナ「「 うわぁあッ!!! 」」
その鋭い太刀先はカルセナの右肩を易々と貫いてしまった。感じたことのない激痛に思わず後ずさる。その拍子に、肩を貫いた太刀は鮮血を纏いながらズポッと抜けた。
カルセナ「.....ッ〜〜!!」
ズキズキと痛む傷口を手で押さえながら悪魔耶の追撃を警戒する。しかし、悪魔耶は襲ってこなかった。太刀を地面に突き刺し、狂気を纏った笑みを浮かべながらこちらを見ている。魔耶に似ているせいか、その笑みがとても恐ろしく感じた。
悪魔耶「一発目を避けた事は褒めてあげるよ〜。次も頑張って避けれるかな?....まぁ、その感じじゃ無理だと思うけどね...」
軽く背伸びをし、僅かにずれた帽子を整えながら言葉を続ける。
悪魔耶「君ならもっとやれると思ったんだけど...意外と期待外れ..だったかな?まぁ私の...悪魔のスピードに着いてこれないのは当然っちゃ当然か。...やっぱり、あっちの私が言ってた事は間違いだね。愛とか絆?ってやつとかに感化されなくて正解だったよ」

672:なかやっち:2020/09/07(月) 19:52

カルセナ「ーー〜っ……」
悪魔耶の言葉になにか言い返そうとするが、肩の痛みのせいでうまく頭が回らず、何も言い返せなかった。魔耶の姿でそんな言葉を言われたことに、少なからずショックを受けてしまったのもあったかもしれない。そんなカルセナとは裏腹に悪魔耶は淡々と言葉を続ける。
悪魔耶「あっちの私ったら、愛と絆は存在する〜とか言って…なんで同じ私なのに考え方が違うんだろ?そりゃあ、多少は種族間の考え方の違いってのもあるとは思うけど……」
カルセナ「…………」
悪魔耶「どんな善人だって、いざ自分が危なくなったら自分のことを一番に考えるに決まってるのにね〜。ほんと、戯言はいい加減にしろ?って感じ」
カルセナ「………ちがう…」
悪魔耶「ずっと信じていた相手にも、いつかは裏切られる。それはもう道理のようなものでしょ。私達(悪魔)は、そんな人間をずっと見てきた。だからこそ、愛とか絆なんて存在しないって知って……」
カルセナ「「違うッ‼」」
悪魔耶「……!」
魔耶の口からそんな言葉が流れてくることが耐えきれなかったのか、それ以上悪魔耶の言葉を聞きたくなかったのか…気づいたら、カルセナは自分でも驚くくらい大きな声で悪魔耶の言葉を否定していた。感情に流されるまま、カルセナは次の言葉を繋げる。
カルセナ「愛も絆も!確かに存在してる‼じゃなきゃ、私は魔耶を助けようとなんてしてない!私と魔耶の間には絆が…愛があるから、私は魔耶を助けようとしてる!私が魔耶を助けたいって気持ちは、確かに存在してるんだからッ‼だから…だから……」
悪魔耶「…………あー…もういいよ。分かった分かった」
カルセナが更に言葉を続けようとしたが、悪魔耶の制止に遮られ、それ以上言葉を続けられなかった。…悪魔耶は、自分の言ったことを理解してくれたのだろうか…?微かな期待を含めて悪魔耶を見る。
…しかし、悪魔耶への期待は無残に散ることとなる。
悪魔耶「…君の言いたいことはよく分かったよ。愛、絆は本物…そう言いたいんだね。でも、私は言葉なんかじゃ理解できないからさ…ちょっと、取引してみない?」
カルセナ「…取引…?」
悪魔耶「そう。今君は、肩に怪我を負ってるね?そして、君はもう私の攻撃を避けられないだろうね。だから、次私が攻撃すれば、簡単に君を倒せる」
カルセナ「…だから…なに…?」
悪魔耶「君はまだ死にたくないよね?もっと生きてたいよね?…だからさ、こんな取引はどう?」

悪魔耶「私は、君を逃がしてあげる。そのかわり、君は私を封印しない。…自分の命と魔耶の人格…君は、どっちを取る?」

673:多々良:2020/09/09(水) 07:22

カルセナ「.....ッ!!?」
悪魔耶が提示した取引内容を聞いて、背筋にぞわっとした寒気を覚えた。
悪魔耶「簡単な話だよ。君がこの場から逃げるか、逃げないか。...今君が逃げて、どこかに行ったって私は追いかけないよ」
まるで、カルセナに逃げる事を催促するかのような語りを見せる。
悪魔耶「命なんて一つしかないんだから。幽霊の君なら分かるでしょ?命の大切さが....さぁ、どうする?」
カルセナ「......ない」
悪魔耶「...?」
カルセナ「私は、逃げない.....!!...だって、魔耶と約束したんだから....ッ!」
振り絞るような声で宣言すると、悪魔耶は溜め息を吐いて体制を立て直す。
悪魔耶「そっか。.....まぁそう言うと思ったよ。...そんなに私に終わらせて欲しいんだね」
地面に突き刺していた太刀を抜き、ヒュンヒュンと目の前で回す。
悪魔耶「人間...いや、幽霊の愛なんかが見れて良かったよ。...それが戯言だって事を、あの世でよーく見ておいてね」
狂気の光を目に宿すと、カルセナの元へまっしぐらに向かってきた。
カルセナ「......ッ!!」

カルセナ「.....やっぱ無理かも...」
ブラッカル「おいおい....大口叩いといてこんな結果かよ」
カルセナ「ごめん....」
ブラッカル「....終わったら、お前には死ぬほど反省してもらうからな」
カルセナ「...ありがとう」

カルセナの体に、悪魔耶が太刀を思い切り振りかざした。
悪魔耶「......!!」
ブラッカル「...もう終わらせちまうのか?もっと楽しもうぜ」
そこには、悪魔耶が振りかざした太刀を素手で掴んでいるブラッカルの姿があった。

674:なかやっち:2020/09/09(水) 15:47

悪魔耶「……へぇ…君、さっきとは違うね…誰かな?」
冷静な表情をしながらも、カルセナの急な変化に違和感を感じる悪魔耶。初めてカルセナ(?)に対して警戒を見せ、太刀を消して距離をとった。
ブラッカル「私は、コイツの心の住民ってやつだ。お前は悪魔耶…とか呼ばれてたっけか」
悪魔耶「……うん、私は確かに悪魔耶なんて呼ばれてたねぇ。ま、魔耶って呼んでくれてもいいけど」
ブラッカル「バカ言うな。魔耶は魔耶だけだろ」
悪魔耶「もう私が魔耶だよ?」
ブラッカル「…まだ魔耶は救えるってのに、なんで魔耶の存在を消さなきゃいけないんだよ。魔耶は魔耶、お前はお前だろ」
悪魔耶「…あと数時間でこの体は私の体になるんだよ?魔耶を救うってことは、その前に私を倒して封印するってことだね。………その前に私を倒せるとでも?」
ブラッカル「……あぁ。約束、したからな」
悪魔耶「………ふぅん…じゃあ、もう少し楽しもっか」

675:多々良:2020/09/11(金) 19:45

先程太刀を仕舞った悪魔耶は、今度は大きな斧を出した。斧の刃はギラギラと光っていて、触れるもの全てを傷付ける事が出来る、と自ら主張しているかのようだった。
悪魔耶「そう言えばさぁ....」
ブラッカル「何だよ」
悪魔耶「君の気配も感じ取ってたけど、もう一つ何か違うもの持ってるよね〜....何て言うんだろう....」
それを聞いたブラッカルは、魔除けの塩の事だろうとすぐに察した。
ブラッカル「さーな。自分の体で確かめてみるか?」
悪魔耶「どうしよっかな〜。....いや。君が、私に勝てないって思ったときにでも使いなよ。きっと最終手段みたいなものなんでしょ」
ブラッカル「....半分正解って感じだな」
悪魔耶「そっか、まぁいつか正体が分かるかな。遊んでれば..ね」
右手に斧を持ち、地を蹴って再びブラッカルの元へ迫ってきた。
ブラッカル「っしゃあ、何でも来やがれ!」
手をポキポキと鳴らすと、悪魔耶が振りかざした斧の刃を躊躇いなく受け止めた。
悪魔耶「....ふぅん、結構強いね。もしかしたら期待以上かも。...無傷ではなさそうだけど」
止めていた斧を突き放す。ブラッカルの手には、うっすらと切れたような後が残っていた。
ブラッカル「ふん、こんなの無傷に等しいよ」

676:なかやっち:2020/09/12(土) 09:46

悪魔耶「そっか。……まぁ、このくらいで喚いてたりしたら、とんだ期待はずれものだもんね」
悪魔耶はあははっと笑いながら斧をクルクルと回す。斧が悪魔耶の手を離れるたびに月明かりで光る様がなんとも不気味だった。
ブラッカル「こんなんで喚くような私じゃねぇよ。………さて、そろそろ私も攻撃させてもらおうか。ずっとお前と遊ぶのも楽しそうだが、ちんたらしてたらあいつに怒られちまうからな」
悪魔耶「あいつ……君のもう一つの人格かな?」
ブラッカル「さぁ、どーだかね…」
準備運動代わりに地面をトントンと軽く叩くと、悪魔にも負けず劣らずのスピードで悪魔耶に向かっていくブラッカル。そのままの勢いで、悪魔耶に猛烈な蹴りを繰り出した。
悪魔耶「わぉ」
悪魔耶はその蹴りを持っていた斧で受け止める。
悪魔耶「凄いね〜。君、ほんとに元人間?」
ブラッカル「はは、さぁな。…あと、一つお前に教えておいてやる…」
斧で蹴りを受け止められたブラッカルはそのまま斧を足で蹴って空中で一回転すると、地面に着地して再び蹴りを繰り出した。
ブラッカル「「私の名前は…ブラッカルだッ‼」」
悪魔耶「…!」

677:多々良:2020/09/14(月) 07:10

その強力な蹴りは悪魔耶の腹部に当たり、流石に耐久性のある悪魔耶も後ろに退いた。
悪魔耶「ッ.....はぁ〜、なかなか良い蹴りだね.....」
ブラッカル「思い知ったか?悪魔耶...いや、悪魔!」
そう言い直して、睨み付ける。
悪魔耶「うん...良かったよ、君に....ブラッカルに出会えて」
ブラッカル「どうだ、素直に封印される気になったか?」
悪魔耶「封印か....またあんなつまらない所に行くのはゴメンだな〜.....」
ブラッカル「....まぁ、封印しようがしまいが、取り敢えず私はお前をぶっ飛ばすけどな」
悪魔耶が屈めていた体を起き上がらせ始めたため、警戒して構える。
悪魔耶「ふふ....あははっ」
ブラッカル「.....?何笑ってやがる」
悪魔耶「ごめんごめん...面白い絵空事だって思ったから。...ほんとに倒されるのは君の方だろうに」
体を立たせ、鋭い瞳でブラッカルを見つめる。
悪魔耶「知らないよね...?本物の『悪魔』の本領....」
ブラッカル「.....あぁ」
悪魔耶「やっぱり。....特別に見せてあげるよ」

678:なかやっち:2020/09/14(月) 20:03

悪魔耶「…とりあえず、これは邪魔だから脱がせてもらうよ」
そう言うと、悪魔耶は着ていた上着と猫耳付きの帽子を地面に投げ捨てた。地面に叩きつけられた服達は、くたっとして地面に横たわる。
ブラッカル「…何をするつもりだ?」
悪魔耶「さて、私はこれからなにをするんでしょうね〜。……今の私のまま倒されてれば、痛い目をみることはなかっただろうにね…いや、むしろ瞬殺されたほうが痛くなくていいかな……ま、どっちにしても命が無くなることに変わりはないし、どうでもいいか……」
ブラッカル「何をブツブツ言ってやがる。この間は、お前に攻撃してもいいですよっていう意味なのか?」
悪魔耶「わ、好戦的だねぇ…怖いなぁ…。別に攻撃してもいいけど、多分君の攻撃は当たらないしおとなしく見てたほうがいいと思うけど?」
ブラッカル「…寝言は寝て言ってくれ。隙だらけの相手がなにかしようとしてるのに、それをおとなしく見てろって?…そんなことを私がすると、本気で思ってるのか?」
悪魔耶「……はは、だよね〜。じゃ、攻撃してみなよ。吹き飛ばされても知らないよ?」
ブラッカル「ぬかせ…‼」
隙だらけの悪魔をめがけて再び走り出すカルセナ。悪魔耶が何かしようとしていることは一目瞭然……なら、その『なにか』をする前に阻止してしまえば良い話……‼
ブラッカル「くらえっ‼」
今度は蹴りではなくパンチを繰り出そうと、右の拳を前につきだす。
…すると、悪魔耶は身を守ろうとしているのか、己の蝙蝠のような漆黒の翼を使って自分の身体を包み込んだ。…しかし、あんな柔らかそうな翼に攻撃が通らないはずがない。翼ごと殴り飛ばしてやる……そう思ったブラッカルだったが……
悪魔耶「…ーーー。」
ブラッカル「……ッ⁉」
次の瞬間、ブラッカルの体は大きく後方へ吹き飛ばされてしまった。


悪魔耶「…ハァ、だから言ったのに…。…この姿になったばっかりなんだし、もう少しくらい遊べるよね?…ブラッカルさん」
大きな風圧で巻き散らかされた塵や砂埃が晴れ、悪魔耶の姿が確認できた。しかし、その姿は先程とは大きく違っていた。
茶髪の頭には黒く細長い二本の角がたち、背中には先程よりも一回り大きな翼が付き、スカートの下からはライオンを思い出させるような尻尾を生やしている。
その姿は、正に悪魔そのものだった。

679:多々良:2020/09/17(木) 00:06

先程吹き飛ばされたブラッカルは、辛うじて受け身を取り、体勢を立て直していた。
ブラッカル「ゲホッ...くそ、何だ....?あんな姿じゃあまるで、本物の悪魔じゃねぇか」
悪魔耶「いや、本物の悪魔だって言ってるじゃん」
ブラッカル「あぁ....そうだったな。今のところ、姿が変わっただけか」
悪魔耶が見せた変化を、まじまじと見つめる。
悪魔耶「ふふ....見かけ倒しだと思う?」
ブラッカル「どうだかね。ま、今のところ、見かけを恐ろしくしただけで動かずとも敵が退く...って事を主張してるように見えるな」
悪魔耶「つまり見かけ倒しだって思ってるんだね。...良いよ、そうしてても」
掌を下に向け、その中にパッと鎌をつくり出す。その刃は相変わらず大きく、威圧感を演出していた。
悪魔耶「その内、そうじゃない事に気が付くだろうから」
次の瞬間、斧を持っていたときとは段違いの速度でブラッカルに向かってきた。
ブラッカル「(速くたって関係ねぇ...!受け止めさえすれば....ッ!?)」
鎌の刃を再び素手で受け止めようとしたとき、何かを感じ取りとっさに横へ避けた。鎌は空振ったが、その斬撃のせいか奥にあった岩に大きな切れ込みが入った。
悪魔耶「....よく瞬時に避けたね。あのまま受け止めてれば、楽に逝けてたんじゃない?」
ブラッカル「......既に一回逝ってるさ。...成る程、見かけ倒しじゃねぇことはよーく分かった」

680:なかやっち:2020/09/18(金) 20:17

悪魔耶「あはは、わかってくれたようで良かったよ。…さて、君はこの力を見ても、まだ私に勝てると思ってるの?」
ブラッカルの動きに注目しながらも、挑発するような言葉をかけて反応を伺う。
ブラッカル「…さぁな。私はお前の力をしっかりと見れてねぇし、お互い探り合いを続けてる……勝敗なんて予想できないな」
悪魔耶「…そっか、君らしい答えだね。…確かに、多少は探り合いもしてたかも。…でも、もう必要ないんじゃない?私のスピードだって見せたし、君の戦闘スタイルも分かったから…」
ブラッカル「…つまり、何が言いたいんだ?」
悪魔耶「簡単なことだよ。…そろそろ、探り合いなんてしてないで、真っ向からぶつかろうよ。君はまだ私に一撃しかいれられてないし、このままだと防戦一方になっちゃうよ?」
ブラッカル「……なるほど…」
確かに、今ブラッカルは一撃しか攻撃を入れられていない。このまま観察ばっかりしてれば、悪魔耶の言う通り防戦一方になってしまう。耐久戦では勝てないだろうし、ここは……
そこまで考え、ブラッカルはニヤリと笑った。そして、悪魔耶に向かってこう言った。
ブラッカル「…よし、のってやる。様子見なんてまどろっこしいことやってらんないからな。…後悔…するなよ?」
悪魔耶「はは、そっちこそ」

681:多々良:2020/09/19(土) 22:23

悪魔耶は不吉な笑みを浮かべた。それはまるでブラッカルに対しての余裕、もしくは力の差を見せつけているかのように思えた。
ブラッカルはその笑みを頭から掻き消し、悪魔耶に向かって走った。
悪魔耶「そうそう、最初から君がそうやって攻撃して来ればよかったのに」
ブラッカル「馬鹿野郎、最初が肝心なんだよ...喧嘩ってのはな!」
悪魔耶の懐に素早く潜り込み、再び拳を繰り出す。またそれに素早く反応した悪魔耶は、腕で自分の顔を守った。それで出来た一瞬の隙に、ブラッカルの背後に鎌を構える。先程の、岩をも斬った鎌だ。食らってしまえばひとたまりもない。
ブラッカル「食らうかよ...っ!!」
殺意を感じ取り、柔らかい体で足を後ろに蹴り上げる。足は鎌の刃に当たり、鎌の切っ先が逸れた。
悪魔耶「へぇ....」
声を漏らした悪魔耶をギロッと睨み、残っていたもう片方の足で地面を蹴る。懐に潜り込めていたのが良かったのだろう。ブラッカルの繰り出した頭突きは見事に悪魔耶の額に直撃した。双方、後ろに後ずさる。
悪魔耶「ッ.....う〜、結構効くなぁ....そんな下らない技なのに....」
ブラッカル「どっかでも言われたぜ、その言葉....」
額を擦る悪魔耶が、急に話を始めた。
悪魔耶「...君はさぁ、そのままで居ようって思わないの?」
ブラッカル「あ?どう言う事だ?」
悪魔耶「簡単に言えば私みたいに、外と中の役割を交代しないのかなって。もし君が強いんだったら、外にずっと出てないと意味が無いよ?」
ブラッカル「うるせぇな。私はお前みてぇに悪い事しようとする気にはなんねぇんだ。それに、ずっと外に出てても意味ねぇだろ」
悪魔耶「そうかなぁ....やっぱ価値観の違いなのかな。私と君の」
ブラッカル「そうだな。生憎、テメェとは考えが合わねぇようで」
悪魔耶「ふふ.....じゃあ、考えが合わない人とは仲良くしないようにしないとね....」
ブラッカル「...最初から仲良くしようなんて思ってねぇよ」
もう一度立ち向かおうとすると、今度は悪魔耶から向かってきた。

682:なかやっち:2020/09/19(土) 23:04

悪魔耶「酷いなぁ。ま、別にいいけどさ」
そうすねたように呟くと、先程と同じように物凄いスピードでブラッカルに向かっていく悪魔耶。その両の手には鎌の柄が握られていたため、鎌で攻撃されるのだと考えたブラッカルは反射的に横に避ける……が
ブラッカル「…‼」
悪魔耶「フェイントってやつだよ、ブラッカルさん」
悪魔耶は鎌でブラッカルを斬りつけるのかと思いきや、走っていったままの勢いで跳んだあと空中で一回転して方向転換し、瞬時にブラッカルの背後をとったのだ。どうやら走ってきて斬りつけようとしていたのはフェイントだったらしい。
そして、ブラッカルの隙だらけの背中にヒュッと鋭い鎌の刃が降り下ろされる。
悪魔耶「…ははっ、じゃーね‼」
ブラッカル「……ッ‼‼」
あんなに鋭い鎌で斬りつけられたら一たまりもない。悪魔耶の急な攻撃転換に頭が追い付けず、避けきれないと思った。このままでは攻撃を喰らってしま……


「(やらせないッ‼‼)」
悪魔耶「…ッ⁉」


ブラッカル「…うおっ‼」
間一髪、攻撃はブラッカルのすぐ隣を掠めた。ギリギリ避けることができたようだ。
ブラッカル「(……今…悪魔耶の攻撃が一瞬だけ止まったような…)」
悪魔耶「〜〜ッ……いいとこだったのに…邪魔してほしくないな、魔耶…」

683:多々良:2020/09/20(日) 07:42

ブラッカル「(魔耶....?まさか、内側にいる魔耶が直接肉体を制御したのか?そんな事....)」
顔を強張らせる悪魔耶から距離を取って考える。
ブラッカル「......まぁいい、よく分からねぇけど助かったぜ」
悪魔耶「全く、根性だけは強くて困るよ....人の戦いに手を出さないでほしいね」
愚痴を溢しながら肩をグルグルと回し、体を解す。
ブラッカル「....そうか。お前は一人で戦う派の奴なんだな。....ま、当然っちゃ当然か」
何かを思い付いたかのように間を開けた後、言葉を続ける。
悪魔耶「...?まぁ、一緒に戦う人もいないしね」
ブラッカル「可哀想な奴だな」
悪魔耶「そりゃどうも。...でも、君だって一人じゃない」
ブラッカル「あぁ、これまではな。....お前、攻撃を魔耶に止められたんだよな。魔耶は内側に居るってのに....つまり、人によっちゃ内側とコンタクトを取ることも可能って事になる」
悪魔耶「確かにね....それがどうしたの?今更君になす術があるとは思えないけど」
そう言うと、ブラッカルは悪魔耶と同じような薄ら笑いを浮かべた。
ブラッカル「....戦ってるとき、何でいちいち距離を取ってたか分かるか?」
悪魔耶「さぁ?私は反撃に備えてたように見えたけど」
ブラッカル「それもある。.....私はその間、あいつを起こしてたんだ」
悪魔耶「.....あいつ?」
ブラッカル「...もう一人の、私をな....!」
言葉を言い放った瞬間、ブラッカルの両手両足が黒い炎のような、光のようなものに包まれた。これまで受けた傷もじわじわと癒えていっているように見えた。
ブラッカル「外と中の役割を交代するんじゃなくて、協力しねぇと意味がねぇ。お前の考えが間違ってること、思い知らせてやるぜ」
悪魔耶「へぇ.....協力なんてもので、そんな大きく変わるとは思えないけどね」
ブラッカル「戦ってみれば分かるだろ」

684:なかやっち:2020/09/20(日) 12:39


??「ーー攻撃を、阻止…できた…‼」
壁と床の境界線も分からないような、果てしない空間……その中で、「やったぁ!」と嬉しそうに叫ぶ少女の声が響いた。
少女は鎖によって身体の自由を奪われており、身動き一つできそうにない状態であった。
??「つまり、まだ完璧に身体の主導権を奪われたってわけじゃない…ってことだよね…!頑張れば内側からブラッカルの援護が出来るかも……!」
そんな状況下でも、少女……いや、彩色魔耶は前向きになっていた。なぜなら、彼女は、先程自分の身体の自由を奪った犯人である悪魔耶の動きをとめ、ブラッカルへの攻撃を一瞬だけ中断させてみせたのだ。そしてその結果、悪魔耶の攻撃は不発に終わった。
魔耶自信もそんなことが可能とは思っていなかったので、成功したときは大きく驚いた。そして、同時に喜んだ。
この空間では、外界の様子は大体伝わってくるものの、そこに内側から干渉する術がなかった。しかし、外側からは干渉できるようで、ブラッカルが悪魔耶を攻撃したときには、魔耶にも多少のダメージがあった。そこで、魔耶は「外側のダメージがこっちにもくるなら、私がなにかをすれば悪魔耶にも影響が出るハズ」と思い、悪魔耶の攻撃がブラッカルに届こうとしたその瞬間、身を強張らせてみたのだ。それが項をなしたのだろう、悪魔耶の動きを止めることに成功した。
魔耶「…でも、今身体を強張らせてもなんも起きないなぁ……悪魔耶の意識が薄れるとき…ダメージを食らったあととかじゃないとダメなのかな…?」

魔耶「ーーま、なんにせよ、私もサポートができそうなことは分かった‼カルセナ、ブラッカル…頑張れッ‼」

685:多々良:2020/09/23(水) 20:25


悪魔耶「.....ッ!」
鎌での強烈な一撃が拳で弾かれ、大きく逸れた。
ブラッカル「食らえっ!!」
隙が出来た悪魔耶の脇に蹴りを入れる。倒れることはなかったが、パワーアップしたブラッカルに思いの外圧倒されているようだった。
悪魔耶「ケホッ....驚いたよ...まさか本当にパワーアップしてるなんてね」
ブラッカル「悪魔に嘘なんか吐いても意味ねぇだろうしな。しっかり注意しただろ?」
悪魔耶「...うん、そう言えばそうだったね」
ブラッカル「このままテメェを追い込んで、ちゃちゃっと封印してやるよ!」
悪魔耶に殴りかかろうと走ったそのとき、悪魔耶が言葉を発した。
悪魔耶「あ、そうそう。君は知らないだろうけど....君が私に与えたダメージは魔耶にも行くシステムになってるんだ。さっきの蹴りもそう。....これは私の命乞いなんかじゃない。....『注意』かな」
しかしブラッカルは勢いを止めず、そのまま悪魔耶を殴った。悪魔耶は腕で庇い、結局この攻撃は失敗に終わった。
ブラッカル「チッ、入らなかったか....まぁいい、次は殴る」
悪魔耶「....魔耶の事を想って止まるかと思ったよ、君なら」
ブラッカル「バーカ、想ってるから止まらねぇんだ。あいつの為だったら、私は何発でも殴ってやるぜ」
右手をパキパキと鳴らしながら悪魔耶を睨んだ。

686:なかやっち:2020/09/23(水) 22:44

悪魔耶「…へぇ…仲間想いだねぇ…」
ブラッカル「当たり前だろ。魔耶とは少しの間だったが一緒に過ごしてきたんだ。たとえこれが魔耶を傷つけることでも、それで結果的に魔耶を救えるんだったら、別にいい。迷って救えずに終わるよりかはましだろ?」
悪魔耶「…思ってたより利口だね」
ブラッカル「そりゃどーも」
悪魔耶は苦虫を噛み潰したような顔で、負けじとブラッカルを睨み返す。
ブラッカル「…あぁ、そういやお前、そういうの嫌いなんだっけ?明らかに嫌そうな顔だな?」
悪魔耶「……うん。大っ嫌いだよ」
吐き捨てるように言い放つと、悪魔耶は自分の回りに剣をつくりだした。その数は…3本だ。
ブラッカル「…なにをしてるんだ?」
悪魔耶「…攻撃の準備。…覚えてるかな?私は、能力でつくったものを操れる。それがぬいぐるみだろうが、剣だろうが関係ない」
ブラッカル「………まさか…」
悪魔耶「ふふ、そのまさかだよ。これから、この剣達で君に攻撃する。いくら君でも、この量をかわしながら私を攻撃するのは難しいんじゃないかな?」

悪魔耶「「さぁ、切り刻まれてしまえ‼」」
悪魔耶がそう言い放つと同時に、3本の剣がブラッカル目掛けて飛んできた。

687:多々良:2020/09/24(木) 23:26

ブラッカル「ッ...!!こんなもの....!」
始めに飛んできた剣を手で弾き、残りの2本を何事もなくかわして悪魔耶の元へ向かう。しかし、避けきった筈の剣が全て立ち直り、再びブラッカルに刃先を向けて飛んできていた。
悪魔耶「つくったものは自由自在。どんなに逃げても弾いても、逃がさないよ」
剣に対する反応が僅かに遅れたのが悪かったのか、3本の内の1本がブラッカルの左足をかすってしまった。
ブラッカル「....くそっ」
剣の切れ味は抜群で、少しかすっただけでも鮮血がじわりと滲み出てくる。だが怯むブラッカルに容赦などなく、剣はまた向かってきた。
ブラッカル「(....ここからあいつまで大した距離はねぇ...あの操れる剣に隙が出来れば....!)」
頭の中で大雑把な作戦を考え、向かってくる剣に立ちはだかる。
悪魔耶「ずっと追いかけっこしても意味ないよ。...さ、どうするつもりかな?」
頭を一瞬だけ冷やすため、大きく息を吸う。
ブラッカル「そんなに怪我して欲しいんだったら...この体くれてやるよ!!」
勢いよく飛んできた剣に突っ込み、なんと全ての剣を左半身に食らった....いや、食らわせたのだ。
悪魔耶「!?何を...!!」
ブラッカル「〜〜ッ....!!へへ...これで隙が出来ただろ!」
剣が貫通した体を走らせ、悪魔耶を渾身の一撃と言えるくらいの力で殴った。その結果、悪魔耶は大きく後ろに吹き飛ばされた。
悪魔耶「ぐっ....!!」
ブラッカル「ハァ、ハァ....う...くっそ....やっぱ痛ぇ.....もっとやり方あったかもな」
激痛が走る腹部や左足に刺さった剣を抜く。地面に放った血塗れの剣は悪魔耶がかなり怯んだせいか、フッと消えてしまった。

688:なかやっち:2020/09/25(金) 18:45

悪魔耶「…ッ…」
吹き飛ばされた悪魔耶は、そのまま後ろにバク転して威力を殺し、なんとか体制を立て直す。…しかし、相当ブラッカルの一撃が効いたようで、フラフラとおぼつかない足取りだった。
先程よりも弱々しい声で、ブラッカルに話しかける。
悪魔耶「…ゲホッ…今のは、だいぶ効いたよ…」
ブラッカル「……はは、効いてないなんて言われたらショックだったよ…ここまでしたんだもんな…」
悪魔耶「……なんで、そこまでして…自分を犠牲にしてまで……?」
ブラッカル「お前を殴るために決まってんだろ…?こうでもしなきゃ、殴れなかったもんな…」
悪魔耶「……違う」
ブラッカルの返事を聞くと、悪魔耶はうつむいてブラッカルの言葉を否定した。
悪魔耶「なんでそこまでして……魔耶を救おうとするの…?」
ブラッカル「はぁ…?」
悪魔耶「だって……君達人間は、いっつも自分の損得しか考えてないじゃない…!自分のために、他人を平気で裏切るような、そんな愚かな種族……のハズなのに…君は、文字通り自分を犠牲にしてまで魔耶を救おうとしてる…‼なんでそこまでするの⁉人間なのに…!人間なら、人間らしくさっさと見捨てちゃえばいいじゃない!」
声を荒げ、そんな言葉を言う悪魔耶。
悪魔耶は、ブラッカルが自分を犠牲にしてまで魔耶を救おうとする行動が納得できないらしい。…きっと、悪魔としての本能と自分の見た光景が矛盾しているからであろう。

689:多々良 くっそ遅れてすまぬ。:2020/09/28(月) 21:16

ブラッカル「....うるっせえなぁ。...もしかしてお前..そんな奴らしか見てこなかったのか....?」
悪魔耶「.....!」
図星を突かれたかのように、ブラッカルの言葉に反応する。
ブラッカル「人間をそう評価するって事はそう言う事だよな....確かに、そう言うモンだよな。人間は...」
血が止まることのない痛む腹を押さえながら話を続ける。
ブラッカル「実質私だって、こんな状況に置かれたら見捨てて逃げるに決まってんだろ....あんな約束しなけりゃ」
悪魔耶「....約束...」
ブラッカル「あぁ。....『必ず魔耶を救おう』って、あいつに言われた。....言っちまえばあいつの強い意志が、私の体を動かしてる...のかもな」
悪魔耶「...だから.....何で、そんなに....」
拳をぎゅっと握り締め、大きな疑問を投げかける。
ブラッカル「そう言えばそんな質問だったな.....寂しいんだろ。あいつも」
悪魔耶「寂しい...?そんな事で、ここまで出来る訳ないじゃない....!」
ブラッカル「.....知らねぇよ、あいつの本当の気持ちなんか。...でも、あいつからしたら正真正銘最後の命よりも....魔耶を見捨てたときの後悔の方が大きいんだろ。.....一人で寂しく暮らす生活を知ってるからこそ、な...」
悪魔耶「......」
目を細め、睨むような表情でじっと前を見る。相変わらず拳は握られたままだった。
ブラッカル「....ま、お前を説得でねじ伏せる事なんて考えてねぇ...体をあいつに動かされてようが、私は私のやり方でやってやる....!」
曲げていた背を伸ばし、悪魔耶と対面する。

690:なかやっち 大丈夫よ〜。暇なときに書いてくれればオケオケ:2020/09/28(月) 22:29

悪魔耶「……ッ…そんな体で、まだやる気満々みたいだけど…流石にそれじゃあ、心はよくても体がついていけないんじゃない…?」
ブラッカル「…そんなの、今は気にしたってしょうがねぇだろ。やらなきゃやられる、だからお前を殴る!それだけだ!」
そう言って、斬りつけられて痛む左半体に鞭をいれ、悪魔耶に向かっていくブラッカル。
一歩地面に足をつけるたびに、重力によって傷に負担がかかり、新たな鮮血が滲み出る。しかし、ブラッカルはそれを気にも留めなかった。
悪魔耶「ッ…」
悪魔耶「(いくら戦闘中でアドレナリンが出てるっていっても、流石に少しくらいは痛み感じるでしょ…⁉こんなに深手なのに…なのに、まるで傷なんて負ってないかのようにこっちに向かってくるなんて……無茶しすぎ……)」
ブラッカル「考え事してる余裕があんのか?」
悪魔耶「‼」
ブラッカルは棒立ちになっていた悪魔耶に、思いっきりパンチを繰り出した。ハッとした悪魔耶は、それを右手で受け止める。両者共に衝撃で後ろに下がったが、目はしっかりと相手を見すえていた。
悪魔耶「……ははっ…君は、ほんとに末恐ろしいよ…。約束したなんていったって、そんな無茶をしてたら果たせる約束も果たせないんじゃない…?深手なんだし、もう少しセーブしないと、ほんとに死ぬよ…?」

691:多々良:2020/10/02(金) 19:12

ブラッカル「うるせぇ!!私は私のやりてぇようにやる!...邪魔すんじゃねぇ....!!」
退いてもなお、再び悪魔耶に向かって攻撃を繰り出す。その言動からは、勢いで痛みを吹き飛ばしているかのように思えた。
悪魔耶「邪魔...勢いを止めるなってこと?じゃあ、君のその気力はやっぱり無茶なんだね」
攻撃を受け止めながら核心をつく言葉を放つ。ブラッカルが戦闘を重ねていくにつれ、息遣いが荒くなっている事にも気付いていた。双方が再び後ろに下がる。土埃が舞うその戦場には深手を負い、血が足りず意識朦朧とするブラッカルと、多少の攻撃は食らったもののまだ余裕がありそうな悪魔耶が立っていた。
悪魔耶「....もう随分弱ってきてるみたいだね」
ブラッカル「ハァ......ハァ....ッくそっ...!!」
重傷とも言える傷がブラッカルの動きに着いていける筈がなく、もはや勢いだけでは悪化を食い止めることが出来なくなっていた。
悪魔耶「そりゃあそうだよ。君が耐えられると言っても、体のベースはもう一人の方でしょ?...そんなんじゃ、耐えられる訳がない」
ブラッカル「......」
悪魔耶「...魔耶だって、君が傷付くことなんか期待してない筈だよ?そんなの、ある意味約束を守れてないんじゃない?」
言い返す言葉が思い当たらず、ただただズキズキと痛む傷を押さえる。特に足は既に限界を超えていたようでガクガクと震えていた。

692:なかやっち:2020/10/02(金) 20:16

悪魔耶「…辛そうだね………ブラッカル、カルセナ。…そろそろ、終わらせてあげる」
ブラッカル「…‼」
悪魔耶はニヤリと笑うと、大きな翼をはためかせて宙に浮いた。
満月をバックにし、真っ暗な夜空に向けて右手を上げる。
悪魔耶「楽しい一時だったよ。ありがとう。…お礼に、とっておきを見せてあげるね」
そう言い放つと、悪魔耶は右手から光の玉のようなものを出した。最初はピンポン玉くらいの大きさだったが、徐々に、しかし確実にだんだんと大きくなっていく。
初めて見る技に、ブラッカルが警戒を示す。
ブラッカル「……なんだそれ」
悪魔耶「これは、私の魔力をエネルギーに変換したもの…とでもいうのかな。ま、エネルギー弾だね。私の残りの全魔力を入れたから威力は凄いだろうね」
ブラッカル「……いいのか…?全魔力なんか使っちまって…私がこれを避けたら、お前はもうなんもできない…ぞ?」
悪魔耶「ははっ、そうだねぇ。……でも、君が避けれるとは到底思えないなぁ。今は立つこともままならないような状況でしょ?そんな人が、この攻撃を避けて、しかも私を攻撃するなんて出来るわけないだろうし」
クスクスと笑いながら大きなエネルギー弾を持つ悪魔耶。それは、もうすでにバックの月を覆い隠すほどの大きさになっていた。
悪魔耶「……さよなら、ブラッカル、カルセナ」
そして、エネルギー弾は真っ直ぐにブラッカルの元へと投げられた。

693:多々良:2020/10/05(月) 20:48


『...て....早く...』
カルセナ「...!!?な、なに...!?」
ブラッカルの戦いをサポートしていたカルセナは、自分に何かを呼びかける声に気が付いた。
『早く....走って...!!』
カルセナ「走って....?だ、誰なの?どこに走れば良いの!?」
『真っ直ぐ....早く....』
カルセナ「で、でも今は手が離せないよ....!」

『『 ーー走れッ!! 』』

ふと気が付くと、真っ正面に向かって一目散に走る自分がいた。止まろうとしても、別の意志に勝手に体が動かされているかのように止まることは出来なかった。息を切らし辿り着いた場所には、前に見た覚えのある白い光の玉が微動だにせず浮いていた。
カルセナ「ハァ...ハァ.....!これって....」
それを見た瞬間、ブラッカルの忠告と表情を思い出した。「絶対に触るな」と、焦っているかのような表情でそう言われたのだ。
『触れて....早く...!』
聞き覚えのあるような声がかの脳内に響く。
カルセナ「ッ....!!だけど、触っちゃいけないって....きっと、いけないものだよね...!?だから....」
『早く!!!』
カルセナ「...!!?うぁっ...!!」
瞬間、のたうち回るような強い頭痛が走り、無意識の内に手を伸ばし、その白い光に触れていた。

悪魔耶「.....ふぅ...流石に起き上がって来ないよね」
先程放ったエネルギー弾は物凄い爆風と共に地面を抉り、景色を一変させた。硬い地盤には大きな穴が空いてしまっていた。
悪魔耶「.......ちょっと休まないと...私も過労死しちゃうね.....」
地面に降り立ち、その場に座り込もうとしたそのとき、何かを感じ取り再び視線を穴に向けた。
悪魔耶「...そんな馬鹿な...!?あの弾を受けて生きてる筈が......ッ!!」
夜空に吹く冷たい風で、少しずつ土埃が晴れて行く。その中に感じる強い気配の主は、紛れもなくカルセナーーいや、その姿は土埃の中に居ようとも汚れることのない、髪まで真っ白なカルセナだった。悪魔耶を見るなり、カルセナとブラッカルが混じったような声で宣戦布告した。
カルセナ「....まだまだやってやんよ!!」

694:なかやっち:2020/10/05(月) 22:17

悪魔耶「ど、どういうこと…⁉私の全魔力を喰らったのにまだ生きてるなんて……それに、姿が変わってる…⁉」
自分の予想していた結末の遥か上をいく事実に混乱する悪魔耶。

…それは悪魔耶だけでなく、中にいる魔耶も同様だった。

魔耶「ーーッ⁉………か…カル、セナ…?」
悪魔耶を制御することができず、エネルギー玉を飛ばされたときはもうだめだと思った。なのに、カルセナは吹き飛ぶことはおろか、怪我一つさえおっていない。それに、カルセナのあんな姿は見たことがない。
いつものカルセナの姿、黒くなったブラッカルの姿が脳裏に浮かぶが、それともまた違う姿。
…もしかしてまた別の人格…⁉突拍子もない考えだが、あり得なくもないな…なんて、混乱した頭で考えを巡らせる。
魔耶「…カル…」

695:多々良:2020/10/08(木) 20:48

カルセナ「本当はこの姿になりたくなかったけどなぁ....こればっかりは仕方無いか」
真っ直ぐな瞳で視線を悪魔耶に向ける。
悪魔耶「...これは油断したよ、まだ手段があるなんてね。...でも、それも『完璧』ではない。何か欠点があるでしょ?」
カルセナ「ありゃ、バレたか....そうなんだよね〜....まぁ、ハイリスクハイリターンなんで!」
そう言って隙のない構えを見せる。
悪魔耶「そっか....だけど、いくらパワーアップしようと私に...本物の悪魔に敵う筈がない!」
大きく羽を広げ、僅かに残っていた本当の最後の力を振り絞る。
カルセナ「うげ、まだ戦えるの....?..よし、上等だ!」
意気込んだ直後、悪魔耶がカルセナに向かって一直線に飛んできた。右手には魔力の節約の為なのか、小型のナイフが光っている。その刃をかわし、右手首を掴んで悪魔耶の顔を狙う。しかし、悪魔耶もそれをもう片方の腕で防ぐ。
そんな攻防が暫く続いた後、戦いに変化が現れた。魔力を全て使いきったと言っても過言ではなかった状態の悪魔耶が、パワーアップした白いカルセナを圧倒し始めていた。
悪魔耶「...かなり息が乱れて来てるけど、最後のパワーアップはそんな温いものなの?」
カルセナ「ッ....!!..まだまだ....!」
戦いの土壇場で、悪魔の本性を見せつけられている気がしてならなかった。そのとき、腕での防御が弾かれたカルセナの真上にナイフの刃が光った。
悪魔耶「今度こそ、さよならッ....!!」
カルセナ「....!!....まだまだって言ったでしょ!」
咄嗟に胸ポケットに手を突っ込み、そこに入っていた小さな紙包みの中身を悪魔耶めがけて放った。

696:なかやっち:2020/10/08(木) 22:43

悪魔耶「…ッ⁉こ、粉…⁉」
驚いた悪魔耶は後ろに後退し、自分の状態を伺う。
悪魔耶「……これ…塩、みたいだけど……目眩まし…?」
カルセナ「どうだと思う?」
悪魔耶「は?何をいって…………ッ⁉」
カルセナの言葉に嘲笑しようとしたその時、悪魔耶がガクンと崩れるように地面に膝をついた。
急に自分の身体に力が入らなくなり、困惑する。
悪魔耶「………な…力が、抜ける…」
カルセナ「清めの塩だよ。君と戦うまでに私と魔耶で色々準備したんだよ」
悪魔耶「……ぐッ…」
カルセナ「…形勢逆転、だね」
悪魔耶は負けるものかと無理矢理立ち上がるが、もう戦うどころか歩くことも辛そうな状態になってしまっていた。
これは塩の効果もあるだろうが、なにより今までの疲労や魔力切れの反動なども重なっているだろう。

697:多々良:2020/10/09(金) 23:40

カルセナは塩を仕舞っていた胸ポケットに再び手を突っ込むと、今度は深紅に輝くペンダントを取り出した。
悪魔耶「....!!それは.....」
カルセナ「...魔耶の大事なペンダントだよ」
弱々しく立つ悪魔耶に近づくと、肩を下に押した。すると悪魔耶は力が抜けたかのように呆気なく地面に膝をついた。その顔にペンダントを向ける。
悪魔耶「ぐっ.....こんな所で...封印なんか....!」
伸ばされたカルセナの腕を掴み、有り余る僅かな力を込める。しかし魔力を消費し切ってしまった悪魔耶にカルセナの腕を痛める力はなかった。
悪魔耶「........ッ」
カルセナ「....もう、終わりにしよ。私ももうすぐしたら...動けなくなっちゃうから....」
悪魔耶「....君を...君たちを勝たせたのは.....一体何なの...?」
額にペンダントを当てようとしているカルセナに、消え入りそうな声で問い掛ける。
カルセナ「......『絆』だよ。魔耶と私...ううん、もっと色んな絆。...悪魔に言っても、そんなの信じないだろうけど...」
悪魔耶「.....絆....か...相変わらず...意味が分からないなぁ.....」
カルセナ「いいよ、まだ分からなくて。きっと、そのうち....ね、魔耶....」
そう呟いて、ペンダントを額に当てる。大きく広げられていた羽は縮み、頭から生えていた角は跡形もなく消え始める。悪魔耶の体は眩く光を放ち、悪気のような暗い光がペンダントに吸い込まれていった。その光景は悪魔から感じられる悪意とは裏腹に、心が清められるくらい輝かしいものだった。

カルセナ「......終わっ...たのか...な....」
頭をガクンと垂らしている魔耶を前に、悪魔を封印したからか、更に深紅に染まったように見えるペンダントを地面に転がす。それとほぼ同時に、カルセナは眠りに就いたかのように地面に倒れ込んだ。

698:なかやっち:2020/10/10(土) 13:13


悪魔耶の封印が終わったと同時に、魔耶のいた空間にも変化が起きていた。
魔耶「…あっ!鎖が…」
魔耶を頑丈に封じていた鎖が、次の瞬間『パリン』と音を立てて崩れ去り、ほぼ同時に鎖に繋がれた悪魔耶がこの空間に連れてこられた。
魔耶「…!悪魔耶…」
悪魔耶「……」
魔耶「……また会ったね」
魔耶が多少の皮肉を込めて言うと、悪魔耶はゆっくりと視線をこちらに向けた。
悪魔耶「…そうだね。もう会わないと思ってたのに…残念だなぁ」
魔耶「誰かさんが封印されちゃったからね」
悪魔耶「……ほんと、最悪だよもう………」
そういって項垂れる。魔耶はその様子を伺っていたが、ふと悪魔耶は言葉を続けた。
悪魔耶「…だけど、なんでだろ…ちょっと、楽しかったな」
魔耶「…そっか…」
悪魔耶「……君は、きっとまた戦うよね。この世界から出るために」
魔耶「うん。そのつもりだけど…」
悪魔耶のいきなりの質問に首をかしげる。
悪魔耶「…そしたら、きっと高い壁も待ち受ける。私より強い奴等だっているかもしれない」
魔耶「…だから?」
悪魔耶「……カルセナと、二人で…頑張ってね、魔耶」
魔耶「!………言われなくたって、二人で頑張るよ」
悪戯っぽくニヤリと笑って返すと、彼女はうんうんと頷いた。
悪魔耶「ふふっ、そうだろうね。……じゃあ、早く行ってあげなよ。カルセナのところへ」
魔耶「…うん」
魔耶が返事を返すと、いつものように空間が歪みはじめた。白い空間と悪魔耶の青や茶色、色んな色が混ざって、濁って、黒くなっていって…

そして、魔耶は目を開けた。

699:多々良:2020/10/13(火) 19:53

魔耶「......」
意識が現実へ引き戻されたばかりだったからか、暫く空間を見つめながら上の空でいた。その内意識が段々はっきりとしてきて、視界に入る景色はより鮮明に映し出された。
魔耶「....!!カルセナ!」
ふと地面に視線を移すと、さっきまで一生懸命戦ってくれていたカルセナが紅く輝くペンダントの隣で倒れていた。急いで側に寄り、意識があるかを確認する。
魔耶「ねぇ、カルセナ!大丈夫!?」
カルセナ「......う〜ん...」
寝起きを思わせるような重たい声を出すカルセナに、一安心した。
カルセナ「...あっ、魔耶......?」
魔耶「...うん。そうだよ、私だよ...!」
自分が自分であることを噛み締めるかのように、カルセナに訴えかける。
カルセナ「...!!お帰り、魔耶....」
魔耶「...ただいま、カルセナ.........ありがとう」
双方とも瞼が熱くなり、思わず零れそうになった涙を堪えて笑った。月は沈みかけて東の空は青碧色になり、間もなく夜明けを迎えようとしていた。
魔耶「....帰ろ、カルセナ。...立てる?」
北街へ帰ろうとカルセナに促す。が、カルセナは1ミリも動く気配がない。
カルセナ「いやーそれが....」

ブラッカル「だから触んなって言ったんだ....!これじゃあ体は1日使い物にならねぇし...私も丸1日寝ないといけねぇし.....」

カルセナ「....って言われて...つまり全然動けないの.....」
申し訳なさそうに言葉だけを発する。

700:なかやっち:2020/10/15(木) 18:13

魔耶「そっか…ま、あんな力を使っておいてまだ全然動けたらそれはそれで怖いしね。…よっと」
カルセナ「わっ」
魔耶はカルセナをヒョイと背負い、北街まで戻ろうとする。
カルセナ「ちょ、魔耶……魔耶、大丈夫?歩けるの…?」
魔耶「一応……まぁ調子がいいとは言えないけど、人一人背負うくらいなら大丈夫」
カルセナ「う、うぅむ……でも、体動かないしなぁ……重くない…?」
魔耶「魔族をなめないでほしいね。このくらい余裕よ余裕」
カルセナ「…なら、いいけど…」
そうして、二人は街に向かって進み始めた。
魔耶達が街への道を歩いているうちに大陽がだんだんと昇り始め、薄暗かった空が光を纏う。

魔耶「…そういえば、あの白いカルセナ…?はなんだったの?…また別の人格とかではなさそうだったけど…」


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