【正味】自由に書きますわ【新しくスレ作るんもうエエ】

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1:ぜんざい◆A.:2016/10/07(金) 22:41 ID:74A



 どうもこんばんはぜんざいです。

 私、思ったのです。書きたい作品が多すぎて、その分だけスレを作ると数がとんでもないことになるからどうしようと、完全に無駄だぜ? と。そして答えがこうなりました。


 もういっそ全部引っくるめて自由に書いてしまえと(

 終着点がここなのです。

 なので、とにかくひたすらジャンルバラバラの夢小説書きます。
 コメント及び感想待ちます! 小説投稿はやめてほしいんだぜ?(⊂=ω'; )

 まあ簡単に言うと、私の落書きのようなものなので、他の人は感想だけということになりますね。うわあ上から目線だぁ! 恐らくコメントには感涙します、めっちゃなつきます。ビビります。

 ジャンルは大まかに言えば、wt、tnpr、妖はじ、turb、krk、FT、中の人、FA、mhaです。
 これからも増えるだろうと思われる模様。
 2ch的なものも出てくると予想されます。

 これまでの上記で『2chやだ!』「作品がやだ!」「ぜんざいがやだ!」言うからは目がつぶれないうちにご帰宅or gohome(΅΄ω΄→ ハヤク!

 2ch系では顔文字や「wwww」表現が出るかと思われます。嫌な方はブラウザバック!


 それでは、そしてーかーがやーくウルトラソheeeeeeeey((

 文的にうるさくてすいません。



.

2:ティアカルレ◆AY 私もジャンル自由の小説、ここで書きたいなぁとか思ったり思わなかったり:2016/10/07(金) 23:42 ID:hl2

フフフ、面白い方ですね🎵

あ、私、ティアカルレと申します

突然入ってきてダメ出しすみません

8まとまり目(?)の言うからはというところ、言う方はではないでしょうか?

本当に突然ですみません


こんな夜遅くにすみませんでしたm(__)mドゲザチュウ

3:ぜんざい◆A.:2016/10/08(土) 07:47 ID:74A


 あっ。

 ほんとですね、『言うからは』ではなく『言う方は』でした。気付いてくださりありがとうございました。
(なぜ推敲したときに気付かなかったのだ自分!)

 ……め、メモのところのコメントに御返事返した方が良いですかね……!!(嬉震)



.

4:匿名さん:2016/10/08(土) 08:36 ID:zAQ

応援してますよ!自分はスーパージャンル超越大戦というスレタイの全ジャンルごちゃ混ぜ+オリジナル設定ありなスレでSS的なものを書いてます。

5:ぜんざい◆A.:2016/10/08(土) 15:57 ID:74A



 ありがとうございます! 
また今度スレを見物させていただきますね!(*´人`*グフフ)


 それでは、元気よくいきましょう! レッツ夢小説☆! れっつ……何にしよう。
 ……とりあえず刀剣乱舞で2ch!



.

6:ぜんざい◆A.:2016/10/08(土) 16:39 ID:74A

THE、男主。


【俺の本丸は】我が家の癒し【平和過ぎる】


1:名無しのさにわ
 立ったかね?

2:名無しのさにわ
 癒しと聞いて他スレから!(ヒューン)

3:名無しのさにわ
 癒しと聞いて地面から!(ボコッ)

4:名無しのさにわ
 癒しと聞いて大窓から!(ガラッ)

5:名無しのさにわ
 癒しと聞いて本丸から!(シツレイシマース)

6:名無しのさにわ
 癒しと聞いて玄関から!(アッ、コンニチハー)

7:名無しのさにわ
 癒しと聞いてテレビから!(クール、キットクルーキットクルー)

8:名無しのさにわ
 やめろ怖いわ! 貞子か!



 アッ、とりあえずコテハンとスペック頼む

9:癒し本丸主
 はーい(´∀`*ノシ)

主 ←俺

 とりあえず刀剣は全部揃えたぜ! 他の刀剣がひょいひょい拾ってくるから直ぐだぜ! みんな可愛いぜ!(ドャァ)
 歳は25の男! 身長170cmぐらい! 黒髪黒ぶち眼鏡のインテリかと思わせておいてかなり残念な奴だぜ! 

 とりあえず本丸で漫画描いてます連載してます。よろしければ一巻の表紙を……

つ『とある漫画の表紙』

 それくらいかな!

10:名無しのさにわ
 待って俺コイツ知ってる(テンションウザァ……д`; )
 多分演練当たったわ、その時連れてた刀剣たちのステータス上限振りきってたわ。
 でもってなんか刀剣たちぽやんぽやんした雰囲気してたわ。

11:名無しのさにわ
 あれ? 俺いつの間に書き込んだっけ

12:名無しのさにわ
 俺も

13:名無しのさにわ
 ま、まあまあ。とりあえず話聞こうぜ

14:癒し本丸主
 >>13イケメェン

 てなわけで、我が本丸の刀剣達はドロップでも鍛刀でも数名ぽやんぽやんした感じなのだ! だからCCPのオカンスキルがお母さん過ぎる。癒し。

15:名無しのさにわ
 は、早く!

16:名無しのさにわ
 (*◇ω◇*)早く!

17:癒し本丸主
 では、そんなエピソードをご覧ください。
 これはとある夕飯時の三日月と蛍丸と俺と燭台切。



三「……ううむ」(皿に残った人参を前に)
蛍「……むむう」(皿に残ったピーマンを前に)
俺「どうしたお前ら」
三「人参を食いたくない」
蛍「ピーマン食べたくない」

 二人して頭抱えてどうすれば食べずに済むかというすこしばかりお馬鹿な事を考える二人に俺苦笑い。かわいすぐる。かわいすぐるよ。
 そこで二人は顔を見合わせ、ハッとする。

蛍「三日月さん、ピーマンと人参交換しましょう!」
俺「(何てこと考えてんだコイツら、お刀さんに怒られるぞ)←(俺は怒らない)」
三「良きかな良きかな」
燭「二人ともだめでしょ! 好き嫌いせずちゃんと自分で食べなさい!」←お刀さん乱入。
俺「……(´ω`;)」
蛍「えー……」
三「( ´ω`φ)よきかなよきかな」
燭「ちょっと! 三日月さん! 僕の皿に人参移そうとしないで!
 このあとのお八つ無しでも良いの!?」


 これ聞いた二人は目の色変えて(苦い顔しながら)ちゃんと食べた。みたいな事が数分前に怒った。隣の鶴丸が俺の書き込み見て笑ってる。

18:名無しのさにわ
 癒しはここにあった。

19:名無しのさにわ
 あの三日月のお爺ちゃんがぽやんぽやんしてる

20:名無しのさにわ
 蛍丸もぽやんぽやん

21:名無しのさにわ
 俺の三日月と代えてくれ! アイツハーレム作りやがった!

22:名無しのさにわ
 そんなお爺ちゃん早くおいで

23:名無しのさにわ
 お黙り難民

24:癒し本丸主
 こんな感じでちょこちょこ癒しエピソード書いてくな

25:名無しのさにわ
 おー、頼むわー(和み)

26:名無しのさにわ
 期待してるぞー(和み)




*

 おそらくこれから突発的に出てくるであろうシリーズ。


.

7:匿名さん:2016/10/09(日) 00:18 ID:zAQ

あげるぜ

8:ティアカルレ◆AY hoge:2016/10/09(日) 17:25 ID:hl2

面白いですよ
ただ、1つだけ
名無しのさにわは複数いるんですか?
それとも1人ですか?
もし複数いるのなら、区別を付けた方が良いかと思います

9:ぜんざい◆A.:2016/10/09(日) 21:42 ID:74A


 分かりにくくてすみません!

 名無しのさにわは複数居ます。ですが、2ch風なものなので、掲示板的なものに書き込んでいる(という設定)なので、わざとわからないようにしています。
 あ、コイツがコイツっぽいなとか想像していただけたら嬉しいです。
 アドバイスありがとうございます! 事前に設定など書いておけば良かったと後悔しています。混乱させてしまい、すみません。

 多分次はちゃんとした小説だと思われます。(台本書きは2chのみですのでご安心下さい)



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10:ティアカルレ◆AY:2016/10/10(月) 14:56 ID:hl2

>>9
頑張ってくださいね🎵

11:ぜんざい◆A.:2016/10/13(木) 23:09 ID:hyI


 ありがとうございます!
 とりあえず出来るところまで『MHA×FT(逆も然り)』書きます!

 年齢操作が酷く、フェアリーテイルメンバーがヒロアカ世界にトリップしてくれば、記憶はそのまま年は全員16歳となります。
 フェアリーテイルからはナツ、ルーシィ、グレイ、エルザ、ジュビアがトリップします。


**

Noside


 ギルド『フェアリーテイル』の書物室にて、ミラから整理を頼まれた五人はたくさんの本を抱えて右往左往とあちこち行き来していた。こう言うときに役立ちそうな空飛ぶエクシード、ハッピーやシャルル、ウェンディは仲良く三人で依頼へと出発しており不在、時々怒鳴りをあげながらもみんな整理に励んでいた。



「なあルーシィこの本どこ直すんだ?」
「その魔導書はあっちの棚よ」
「おう!」



 ナツとルーシィが本を抱えて会話するのを横目に、エルザは先程手にした感じたことのない魔力を放つ魔導書を怪訝に見つめていた。
 その傍ら、グレイとジュビアがなにやら楽しげな(ジュビアが問題天然発言をグレイが慌てて訂正すると言う)会話をしていたので、小耳に挟みながらこの魔導書をどうするか検討しているところだった。だが、厄介な奴がそれを発見してしまう。ナツだ。



「おー? なんだエルザ、そんな難しい顔してその本見て」
「え、なになに!? 本ですって!?」



 ナツの声にみんなが反応し、先程まで散り散りに本を片付けていた一行はエルザの周りに集まってしまった。
 エルザは諦めたように溜め息を吐いて説明する。



「いや、この魔導書から妙な魔力を感じてな。どうするか検討していたのさ」
「ねえエルザ! それあたしに貸して! 読みたいの!」
「……別に構わないが、何が起こるか分からん。気を付けろ」
「うん、分かったわ!」



 魔導書はエルザの手からルーシィへと渡り、そこかしこにある木製の椅子に腰掛けて意気揚々とルーシィが本を開く。そこで淡い光が溢れだし、一気に目を瞑りたくなるくらいに眩しくなった。



「ええ!!?」
「うおっ、眩……!」
「くっ、」
「え!?」
「なんだァ!!?」



 各々が声を挙げながら、グッと目をつむる。そしてふっと五人は浮遊感に襲われ、だがすぐ重力に沿い皆一様に悲鳴を挙げつつドサドサと地面に落ちた。
 一番下敷きになったナツは書物室とは違う、固くてひんやりと冷たい床に違和感を感じ、上に乗っている者たちのことも考えずガバッと起き上がる。



 彼らの周りには、目を大きく見開いた奇怪な格好の人々が居たのだった。



.

12:ティアカルレ◆AY hoge:2016/10/15(土) 09:14 ID:hl2

どこに飛ばされたのでしょうか?
続きが気になりますわ🎵

13:ぜんざい◆A.:2016/10/15(土) 22:52 ID:hyI


 驚きだぜ! な所ですよ(笑)


**

 次々に起き上がるフェアリーテイルのメンバーにその場にいた他の大人が固まる。そして皆一様に誰だこいつらと必死に思考を回していた。
 ここは雄英高校ヒーロー科職員室中央、つまり周囲は全員ヒーローである。



「えっ、ここどこ!?」
「くそっ、やはりもう少し注意していれば!」
「あんまり気にすんじゃねーぞエルザ」
「グレイ様服!」
「いつの間に!」
「ねえだからここはどこなのよ!?」
「知るか! ギルドじゃねーのは分かる!」
「見りゃ分かるわ!!!」



 目の前で怒鳴り合いを始めたルーシィとナツに教師陣は目を見開く他ない。そこでなぜかいきなり「やんのかコルァ」「上等だテメェ」と取っ組み合いを始めたナツとグレイ。どういう経緯でそうなったのよ、と呆れるルーシィ。



「おめぇは毎回毎回うっとーしいんだよ露出魔野郎!」
「いちいちつっかかって来るんじゃねークソ炎!」



 ついには魔法を発動させて殴り合いをし出す二人はいつぞやのハデス編より激しい戦いを繰り広げている。ルーシィはその力を本線で出してほしかったわと溜め息を吐く。そこで、ぼっさぼさの髪に幾重もの布がマフラーのように連なる小汚ない男がルーシィに声を掛けた。エルザは仲良きことは良いことだと微笑んでいるし、ジュビアはグレイに声援を送っていたので、この中では比較的常識人だと自負するルーシィは声を掛けてきたとこに納得する。ルーシィに声を掛けた彼は相澤消太、日々合理性を追い求める人物であり、ルーシィに声を掛けた理由はあの二人の騒動に入っていくことになんのメリットもないと踏み、近くにいたルーシィに声を掛けただけだった。恐らく近くにいれば誰でもよかったと推測される。



「ねえちょっと」
「はい、なんですか?」
「君達の行動は合理性に欠く、話も聞きたいからアレを止めてくれ」



 ピッ、と指差した相澤の指は現在進行形で職員室を破壊している炎と氷の男に苛立ちを感じていたようだ。悟ったルーシィはこの世の終わりのような顔をして、とぼとぼと二人の近くによる。



「ね、ねえあんたたち、もうそろそろやめにしてくれない?」
「「うるせえ!!!」」
「ぎゃん!!!」



 意を決して二人の仲裁に入ったルーシィだが、二人の拳を顔面に受け、呆気なく悲鳴を挙げながら吹っ飛んだ。ドゴッ、と壁にぶつかったルーシィを見たヒーロー教師たちは唖然と口を開き、その中でやっと動き出したミッドナイトがルーシィに駆け寄る。



「だ、大丈夫貴方!」



 だがしかし、ルーシィは鼻血を隠すことなく垂らしながらむくりと起き上がると、ミッドナイトの声掛けが聞こえていなかったのか「あの男共はあああ!!」と怒鳴り散らしながら腰に下がる鍵を取り出して叫ぶ。そしてミッドナイトはルーシィも彼らと同類かと密かに感じとった。



「開け! 獅子宮の扉、レオ!」



 リンゴーン、と言う音共にいきなり現れた猫耳の生えたサングラスの男に教師たちは再び目を剥くこととなってしまった。



「お呼びかな!」
「あいつら、やっちゃって!」



 その声と共に駆け出すレオ、もうすでに職員室は戦線崩壊、ひどい有り様である。相澤は声を掛ける人物を間違えたと頭を抱えたくなった。



.

14:ぜんざい◆A.:2016/10/22(土) 22:30 ID:jl2


 恐らく上記の小説は度々出てくるであろう物となりました! 言わばシリーズ!

 と言うわけで、一週間悩んだ結果、刀剣乱舞×魔法先生ネギま! の混合夢小説を書きます!

 大まか内容設定は交通事故で亡くなったあと、愛読していたネギまにトリップし、大阪生まれの京都育ちで神鳴流剣術のほぼ最強に位置してネギと女性の事で語り合う、ヒロイン達中学三年生より2つ年上の高校二年生の男装イケメン女主(胸が千鶴さんと一緒より少し大きい※普段サラシ巻き)が、とある雑魚敵の魔法で異世界、というか死んでしまった世界とそっくりな世界へ飛ばされて、そこで神力(魔力・気)があったので時の政府に出陣出来る戦う審神者としてブラック本丸の清掃及びそこの主を任される感じです。

 主人公設定です。

伊達 いおり(18) 高2

 完璧に男なイケメンで関西弁、常に持っている竹刀袋に入っているのは本物の真剣。桜咲刹那の夕凪みたいなタイプではなくがっつり日本刀、太刀。生まれた頃から一緒だったりする、名前は『緋斬(あかぎり)』。魔法は炎系が得意だが、剣士してポジションにいるのであまり使わない、と言うか使えない(だって学園側から固く止められてるんだもん、破壊するなって)。神鳴流ではオリジナル技を少し作ったくらい。
 身長は184cm、頭脳は前世で大学を出ているのでそこそこに良い。一人暮らしなので炊事洗濯出来る。家は居合いの名家。但し規則は緩い。
 ヒロイン達の兄的存在、但し3-Aは全員が女だと知っているしかし! ネギと似たような目に遭う。ネギ・スプリングフィールドの理解者、狗神小太郎とも仲良し。
 学園側から特別に男子制服着用が認められている紳士的人たらし。
 但しお化け屋敷やドッキリ等は全く駄目、ビビると刀が出てくる。鞘で峰打ち!(っごーん☆)
 一ヶ月に一回ネギ達の待つ元の世界に帰れる様に時の政府に頼み込んだ、THE土ぅ下座ぁっ!

 とりあえず後輩が可愛い! な人。


 では!



.

15:ぜんざい◆A.:2016/10/22(土) 23:02 ID:jl2


 コタくんの名字に誤字がありました。『狗神』ではなく『犬上』でした。


**

【伊達side】


 魔法世界と我が学園、麻帆良の空が繋がり、魔法世界を消去すると言う敵方の野望は10歳ながらにハーバード大学を卒業して麻帆良女子中等部の英語教師兼3-A担任兼魔法使いのネギ君が仮契約をした女の子たちと共に阻止された。まあ、仮契約をしたと言う女の子の中に、俺も含まれているのだけれど。

 俺がネギ君と仮契約をして出てきたアーティファクトは『焔の斬剣(イグニアーティスヴェルヴァルト)』。多分焔の斬剣の英語の当て名は適当だと思われる。なにやってんだアーティファクトの精霊さんよ! 最初は焔を纏った西洋の一本の剣だと思っていた。緋斬と二刀流かー、なんて思っていたが、違った。あれだ、刹那の小刀を自在に操れるアーティファクトの、焔を纏った太刀程の大きさのものを自由自在に操れるものだった。威力やべー。フェイトに聞けば俺のアーティファクトのレア度は世界最高を誇るらしい。明日菜達のアーティファクトもレアらしいけど、比べ物にならないと言う。なんてこった。

 とまあ、そんな話は置いといて、俺は今麻帆良の路地裏で不正に魔法を使っていた奴をネギ君、コタ君と共に追い詰めていた。



『さすがに観念したらどうや。人類最強のネギ君がおるんやで? お前勝ち目無いやん』
「う、うるせえ! くそっ、こうなったら!」



 そういうと、ローブを目深に被っているソイツは、俺に向かって何かをぶん投げた。側で「いおりさん!」「いおりねーちゃん!」とネギ、コタの順番で叫ばれる。もう間近だ、避けられない。俺はそれに当たった瞬間、その場から跡形もなく消えた。



「いおりさん!?」
「てめえ!」



 ネギがいおりのいた場所を唖然と見つめ、小太郎が狗神を出しながらローブを被った男に殴りかかる。



「お前! いおりねーちゃんに何したんや! 返答次第で俺の式神がにいちゃんの首噛みきるで!」



 倒れた男の上で馬乗りになりながら胸ぐらを掴む小太郎と、グルルと怒りの表情の狗神達。ネギはハッとし、慌てて男を拘束して学園へ連れていった。

 取り調べ室に入れられた男はグラヒゲ先生の威圧に震えながら、いおりの処遇を話したと言う。



「俺が女最強に投げたのは異世界転移ゲートのタネだ、女は別の世界で生きていると思う……!」
「……場所は?」
「分かるかよ! あれは術者も行き先がわかんねえんだよ! もういいだろ!」



 ネギは小太郎と安心し、同時にこう思った。あの人ならきっと別世界でもしぶとく生きているだろうと。



.

16:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 10:06 ID:jl2



【伊達side】



 俺が何かをぶつけられた次の瞬間、俺はとある一軒屋の中にいた。あれか、楓の天狗の隠れ蓑みたいなやつか。

 中を隅々まで調べるも、人が住んでる様子もない。外に出てみれば麻帆良の町並みはない。手持ちのスマホで麻帆良を調べてみるが反応がなかった。そうか、ここは異世界か。超次元魔法戦闘がない平和な世界か!



『……もうここに住んだらエエんちゃうやろか』



 あ、駄目だ。愛しの後輩達がもとの世界で待ってるわ。うん、これからもとの世界へ帰還の方法を探しながら普通ライフえんじょいだ。表札を見てみると札は有るものの名前がない。よし書こう。



『……伊達……っと』



 達筆で石を削った表札を眺め、感嘆して家に入る。中々に広い家のふわっふわなソファに腰を下ろし、携帯しているアーティファクトカードと竹刀袋をコーヒーテーブルに置く。
 さて、アーティファクトはこの世界でも発動するんですかね? と言う実験ですはい。



『来れ(アデアット)』



 そう言えばズラッと出てくる焔の太刀にハハハと笑った。以前ネギに見せたとき「翼見たいですね」と言われたが、目の前で広げるとあながち間違ってないかもしれない。脳内で動く様を想像すればすいすいと空中を移動する太刀達に愛らしさが沸く。竹刀袋の中の緋斬を取り出し鞘から抜き出して刃を見れば、薄い赤色のそれが天井の光に反射してきらきら輝く。



『……魔法が使えることに変わりはないなぁ』



 少しホッとした。これで俺はこれからも女最強を誇れる。



『……!』



 ピンポーン、と軽やかにチャイムの音が聞こえた。なんだよ、まさか表札が着いてるからあんた何者だとか言われるの? 言い訳めんどくせー。
 俺は自分の赤みが差す、毛先が外に跳ねた肩上までしかないショートカットをがしがしと乱雑に掻く。

 足音もなく玄関に辿り着き、うぃーすと扉を開ければそこには黒服を着た男性達の姿が。神妙にお縄につけー! みたいなやつ?



『なんすか』



 目付きが悪いと自負している目で軽く睨めば動じていないようで、気後れせずはきはきした様子で言葉を口にした。



「あなたは異世界から飛ばされてきたものですね」



 ……なぜ知っているんだ貴様あああ!

17:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 10:40 ID:jl2



 どうやら彼らは『時の政府』所属らしく、ここで時空の歪みを発見したから至急やって来たと言う。なるほどなるほどといっているうちに政府に連れていかれて、話を聞かれた。

 俺がこの世界に来た経緯を話せば魔法? 魔法だと……? とざわつく会議室。



『とりあえず、もとの世界に返してくれはりません? 時空移動的なやつできはるんやろ』



 背中の竹刀袋が不意に揺れ、俺がそう言えばお偉いさんから待ったが掛けられた。



「条件がある」



 そう言われ、提案されたのは審神者になってくれないかと言うことだった。さにわってなんぞ?
 どうやら……さ、審神者? は西暦2205年、歴史改変を目論む「歴史修正主義者」によって過去への攻撃が始まったらしい。なるほど、だから時の政府はそういう時空関係がわかるのか未来ってすごい。まあそれを阻止するために審神者なるものを各時代へ送り出すらしい。審神者は眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる技を持つ者。その技によって生み出された付喪神『刀剣男士』と共にため過去へ飛ぶらしい。
 その刀剣男士を出陣させたりとからしい。

 ほう、俺には審神者の力があると。



『あ、エエですよ』



 へらっ、と笑って言えば逆に驚いた顔をされた。え、なんでなんで? 



「君は、なぜそんな簡単に」
『え、いや、やって、出陣ですやろ? 体動かしとかんと鈍りますわ』



.

18:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 11:10 ID:jl2



 月一で帰れると約束してもらい、早速もとの世界へ戻り、月一しか帰れないことを学園長に話せばいいんじゃね? と許可を頂いた。



「いおりさん!」
「ねーちゃん!」
『や、いきなりどっか行ってもてすまんなぁ』



 駆け寄ってくるチビっこの頭を撫で回して事情を説明すると寂しそうな表情をするも、一ヶ月に一回は帰ってくるので帰ったときには手合わせしてねと約束された。なんて、なんって可愛いんだ!



**


 俺は普通の審神者とは違い、審神者ながらに出陣し、何やら自分の欲にまみれて刀剣男士たちに夜伽を強制したり無理な出陣をさせたり暴力を振るったりとそう言うことをする本丸をブラック本丸を更生すると言う仕事を任された。



 そして俺が今ここにいる場所はブラック本丸の門前だ。万が一と言うか確実に戦いになると政府から聞かされたため、緋斬とアーティファクトを持ってきた。服は仕事服である。



「中に入ればこんのすけと言うこの本丸の式神が居ますが政府側ですので安心してください」
『俺はこの本丸の主をどないしたらええんすか』
「倒してこちらに引き渡してください。最悪死体でも構いません」
『物騒やけど俺そんな手加減できひんから、死ぬこと前提で動いてください』
「わかりました」



 さて、本丸を救いに行きましょーか!

19:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 14:28 ID:jl2


 なんでブラック本丸を潰さないのかと政府の役人さんに聞けば、そういうブラックなところに限ってレア刀が多いのだと言う。なんだそりゃ。

 とりあえず、役人さんが帰ったあと、俺は結界が張られている門の前で腕を組んで唸っていた。



『この結界どないしよ、なるべくバレずに中に潜入したいんやけど……』



 この世界で言う神力は俺たちの世界の魔力と一緒だ。ネギ君なら次の瞬間にはバレずにスッと解いて中に入っていただろう。俺は無理だ。なにせ不器用なものでね!
 まあ、正面突破ですよね。



『焔の斬剣(イグニアーティスヴェルヴァルト)』



 一応発動だけさせておいて、腰に下がる緋斬で結界を叩き割る!



『雷鳴剣!!!』



 刀が雷を纏い、刀の腹が結界に当たった瞬間ドドオオン、爆発音、よし。無事破壊。あ、門こなごな……門の請求書は時の政府へ!
 雷鳴剣とは、神鳴流剣術の奥義である。自身の気を使い、雷を刀に纏わせて叩き斬る技である。



『さて、行くか』



 ざかざかと服を翻しながら堂々と中へと侵入する。現在の服は白いワイシャツに黒いネクタイ、同色のベスト、緋と金の装飾が着いた黒色のコート、下は二重のベルトを交差させ、七分丈のズボン。下はロングブーツである。いや、決して俺の趣味じゃない。エヴァちゃんの趣味だ、アーティファクト時の服はほぼこういうタイプなので、本丸に居るときはほぼこれらだろうと思われる。



 ……それより、殺気がどんどん強くなってるな。



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20:ティアカルレ◆AY hoge:2016/10/23(日) 15:01 ID:hl2

ひさしぶりに来てみたら、ものすごく進んでいますわ!

21:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 17:04 ID:jl2



 お久しぶりです(笑) 
 お話は違いますが楽しんでいただけたら嬉しいです。

 とりあえず、今回のとうらぶ×ネギま! の夢主のイラストです。イメージ壊したくない! と言う方はしれっとした顔でスルーしてください(笑)

https://ha10.net/up/data/img/13995.jpg

 小説は後程です。



.

22:ぜんざい◆A.:2016/10/23(日) 22:41 ID:jl2


 Noside

 いおりが門を粉々に壊し、結界が破壊されたことに、この本丸の審神者は驚きの声をあげた。



「なっ、なによ!? 何が起こったの!?」



 鏡の様なもので本丸内を見渡し、侵入者の姿を発見した女審神者は政府の寄越した人員ね……! と怒りを露にする。近侍には数々の刀を犠牲にしてやっと顕現させた三日月が。ここの本丸がブラックになったのは大方この三日月を顕現させたいと言う理由だ。彼女は欲にまみれた卑しい性欲を放置した女だった。
 諦めきったような無表情の三日月の腕を引き、刀剣達の集まる大広間へと久しぶりに赴いた、刀剣達の前では『時雨』と名乗っている審神者が主命を下す。



「お前たち! 侵入者を倒しなさい! これは主命よ!」



 高らかにどう? 私は今本丸のために動いてるのよ! と言いたげな雰囲気を晒す時雨に、刀剣男士たちは傷だらけで嫌々ながらも主命と言う言霊に縛られ、自然と体が動いていく。ここの本丸の刀剣男士は三日月以外、ほぼ中傷か重傷しかおらずまともに戦えるわけが無いのに。



**

 一方のいおりは、本丸内の空気の悪さに顔をしかめていた。だが、いおりの様な神力の強い物が歩き回ると空気の清浄は行われるらしいと言うことは聞かされていたので我慢して本丸内を練り歩く。



『それにしたって、酷いわぁ』



 空気は悪く池は干上がり草木は枯れ果てている。こんなところ、よく住めるものだと呆れを通り越して感嘆の息を漏らしたところで、ガギン! と金属同士がぶつかり合う鋭い音が耳に届いた。発生源は本丸縁側に面する左頬すぐそば。振り向いてみれば小学生ぐらいの少年が傷だらけながらもいおりに刀を向けていた。
 ただ、いおりは攻撃を受けていない。アーティファクト『焔の斬剣(イグニアーティスヴェルヴァルト)』は術者の危険時には太刀が自動で動き、主の身を守る設定になっているのだ。流石世界最高レアアーティファクトと言ったところである。
 いおりはネギ君と軽く仮契約(キス)しただけなんに、なんでこんな便利なレアもん出て来たんやろといまだに疑問を持っている。

 日本の赤い太刀が少年の攻撃を受け止め、空中で静止する。だが、少年が飛び退いたことによって太刀はいおりの背に戻ってきた。それを皮切りに空中から魔法陣が現れ、そこから多くの太刀が出現し、宙に浮いたままいおりの背に並ぶ。



『……子供やんけ』



 黒い服を着た少年は、短刀を構え、目を見開きながら態勢を崩さない。なるほど、彼も刀剣男士かといおりは納得するが小学生ぐらいの子も居るとは。短パンから覗く白い太股が眩しい。



『……流石、神様やな。焔の斬剣が攻撃を受けるときに太刀を二振りも使わせるとか、ホンマ舌巻きますわぁ』



 政府から刀剣男士の名と姿の書いてあるノート、刀帳を一度読ませて頂いたので、彼が誰だか分かる。



『薬研藤四郎……』



 そう呟いたあと、彼の後ろからぞろぞろと刀剣男士達が現れた。ううむ、彼らは傷付けたくないなぁ。俺も刀は好きだから折りたくないし……。



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23:ぜんざい◆A.:2016/10/24(月) 15:52 ID:jl2



「主命とあらば、敵などと!」



 そう俺にとびかかってきたのはへし切り長谷部、性格は確か主に尽くす忠犬のようなものだったと思う。だがしかし、表情は苦しげに歪められている。
 現在俺が多対一で戦っているのは前の薬研、長谷部の他に鳴狐、平野藤四郎、鯰尾藤四郎、鶴丸国永、浦島虎鉄、恐らくリーダー格は燭台切光忠だろうな。
 みんな目に生気が全くなくて、どんだけ非道な事をしたのだとここの審神者の思考回路を疑った。マジふざけてる。



「くそっ」
『お前らみたいに傷だらけで弱った刀なんかに俺のイグニアーティスヴェルヴァルトが負けるわけないやろ』



 俺が腕をすいすい動かして後ろの太刀を動かして刀剣達の攻撃を受けたりこちらから攻撃したりしながらあくびをする。
 そこで、燭台切の刀が焔の斬剣を掻い潜り懐に突っ込んできた。



「もらった!」
『残念』



 咄嗟に緋斬を抜いて燭台切を受けて鍔迫り合したのち弾き返す。そのまま振り抜けばギリギリと言ったように苦い顔をしながらギィンと自身の刀で緋斬を弾いた。返す刀で横一線に剣を走らせると燭台切は咄嗟にしゃがんで回避しそこから俺の腹を切り裂く。っぶしゃあっ、とスプラッタな音をたてて激しく流れた血が帰り血として燭台切のその端整な顔に降り注いだ。しかし、俺は今ネギ君と同じく不老不死化(仮)しているらしい。服を切り裂いたまま傷がみるみるうちに塞がり血液が止まる。後ろではまだ俺が指示を出しているのでイグニアーティスヴェルヴァルトは刀剣男士を相手にしている。イグニアーティスヴェルヴァルトは言いにくいのでイグニと縮めて読むときもある、うん関係無かった。



「っ、君の体は」
『話しとる暇無いで!』



 態勢を建て直されないようにすぐ様彼の後ろ首に肘を落とす、うち下ろしと言う技だ。それでもふらつく体で立ち上がるので緋斬の柄の先で燭台切の腹を突く。尻餅を着いた燭台切の首に緋斬の切っ先を向けた。



「……降参だよ、いっそのこと、折れた方が」
『……なに言っとるん?』



 刀剣の折る折らないは元々折らない方向で決定してるし、そもそも自分から折れる、なんて言わないで欲しい。



『そんなこと言うな。ここの審神者は俺が捕まえて政府に差し出せって言われとるから、もう安心しても大丈夫や』



 そういうと、酷く泣きそうな顔をして微笑んだ。燭台切が降参したことを始めとし、次々と刀を鞘に戻して肩の荷が降りたと言うように経たりこんでしまった。



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24:ぜんざい◆A.:2016/10/25(火) 00:30 ID:5iA


「全く、君は、恐ろしいくらい強いね、太刀が何振りも自在に宙を舞うし」
『俺の能力や、気にしな。それと、安心しとるとこ悪い。あんたらの審神者はどこに居るんや?』



 先程までへたりこんで「今の僕、格好っ、悪いなあっ」と安堵の涙をぽろぽろ控え目流すイケメンこと燭台切に審神者はどこにいるんだと少し屈み視線を合わせながら聞けば震える指であそこの離れだよと教えてくれた。



『なぁ鶴丸。ここの本丸の刀は他に居るんか? 初期刀とかは?』
「刀は……一振りを除いてここに居るのが全刃だ。初期刀は、既に折られた。……気ぃつけな。ここに居ねえあいつは練度こそ俺達と同じだが、軽傷のみだ。その軽傷は俺達の手入れを物申したときに……主命で、俺が……」



 その先は言わなくていいと、元々はとても綺麗な白色だったと思われる、今では全身乾いた血でほぼ鶴の面影も見えない赤掛かった白い髪の頭をぐしゃぐしゃに撫でればせきを切ったようにギャン泣きを始めた。恐らく俺に襲い掛かって来たこのメンツの中では一番の年長者だから気を張っていたのだろう。何回か撫でたあと、刀を担いで立ち上がる。



『待ってろよお前ら、審神者捕まえたら手入れしてやるから』



 走り去るときにそう告げれば後ろから一段ぶわっと泣く声が聞こえてきた、声が幼いから短刀か脇差だろうか。それほどまでに疲労がたまっていたのだろう、可哀想に。



**

 俺は怒りに身を任せつつ冷静に離れに突っ込んで行った。もうこの際、この離れ潰してしまうか、なんて考えたが流石にやめた。
 片っ端から襖や障子の戸を開けて審神者と残りの一振りを探す。彼らを見付けたのは一番最後の部屋だった。運が悪いぜ!
 スパンと扉を開いてイグニを完全戦闘態勢で御対面。



『まっさかここの審神者さんが女の人やったとは、思わんかったわぁ』



 みんな傷が酷かったから男の審神者かおもとったわぁ、なんて言えばここの審神者、時雨はそばに居た……なるほど三日月宗近に「行きなさい三日月!」と、瞳のハイライトが消え、全てを諦めた顔をしているのに言霊で縛り付け、俺に攻撃させた。三日月宗近とは、刀剣の中では一番の古参で爺と呼ばれる事も多い見た目がとても言葉では言い表せないほど見目美しい刀剣だ。確か彼は常に朗らかに微笑み、どこか喰えない雰囲気を纏う天下五剣の一人だったはず。そんな彼をどうしたらこんな風に憔悴させられるのか、どうしてそんなことをするのか皆目検討すら付かない。
 とりあえず。



『三日月宗近! お前はもう自由だ!』



 そう言いながら俺は向かってくる三日月の背後に回り、緋斬を持つものしか見えない主従の糸を、三日月を縛る言霊の人をパキィンと斬った。



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25:ぜんざい◆A.:2016/10/25(火) 20:40 ID:5iA



 だが、三日月は止まらない。先程と変わらぬ光を失った瞳のまま何やらぶつぶつと呟きそのまま俺の緋斬と剣を交えてた。耳を澄ませば「コイツを殺せばコイツを殺せばコイツを殺せば」と狂気染みた雰囲気で高速呟き、何やらこれで一気に俺の精神力削られた気がする。
 恐らく俺を倒せば自由にしてもらえると思ったのだろう、酷く暗示を自身に向けている。だんだんと太刀筋が鋭くなってる気がしてきた。鍔競り合いになり、ギシギシと両の刀を軋ませながら俺は怒鳴る。



『聞きや三日月宗近! お前と審神者を繋ぐ主従の鎖は切ったんや! そんな暗示を掛けんでもええねん!』
「うるさいぞ!」



 バンと押しきられブチッ、ゴリッと言う音と共に左肩を貫かれた。奥の審神者がにやにやと「もう終わりね」と言う雰囲気を漂わせるが三日月は焦った顔をして刀を抜いた。正しい判断である。刀を刺したままでは俺の体はそのまま再生しようとし、最終的には折れるだろうから。でも、三日月の表情を見る限り、それだけでは無いようだ。
 服を置いたまま肌だけがみるみるうちにもとに戻っていく。審神者はそれを見て目を見開いた。だがしかし! 俺はそんなの気にしない!



『どないした、来ーへんのか?』
「……っ!」



 俺の一言で慌てて態勢を建て直した三日月に今度はこちらから斬り掛かる。先程のお返しと言うように突きを返せばギリギリ避けられ、そのまま横に腕を引く。三日月はそれを一歩下がって避けたのち縦に刀を振り下ろした。それを緋斬で受け止め、ギャリギャリと二人とも力で押しきろうとする。



『さっきまでの鋭さが無いで三日月宗近!』
「っ、黙れ!」
『お前、俺斬ったときに動揺したんちゃうか!? 怖かったんやろ! 俺が失血死するのが! 人間(ヒト)を斬るのが!』
「刀である俺が! ヒトを斬るのが怖いだと!?」
『ああそうや! お前ヒトが恐ろしいんやろ! そこの愚行をした社会的屑な審神者のせいで!』
「っ、ふざけるな! 恐ろしくなどない! あの審神者に従っているのは契約があるからだ!」
『だから! その鎖を俺が! 今! 斬ったやろうが!』
「……!」
『お前はもう! 自由やねん!』



 ふっ、と緩んだ力の隙を逃さず刀を弾き返し、天下五剣である三日月に尻餅を着かせた。呆然とした三日月にふうと息を着くと手を伸ばした。



「なんだ、この手は」



 震えた声でそう告げた三日月に曖昧に笑い、無理矢理手を掴んで立ち上がらせる。



『謝罪の握手や』
「……」



 一瞬ほけっ、と言う顔をしたが、次の瞬間には三日月は花が咲くような笑顔で「解放してくれて感謝だ」と手を握り返してくれた。その直後だったのだ。



「ふざけんじゃないわよ!」



 女審神者が、懐にしまっておいたらしい小刀で俺の首をザシュッと飛ばした。



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26:ぜんざい◆A.:2016/10/25(火) 21:20 ID:5iA



 視界が反転、上下逆さまに三日月の顔が写る。女審神者の高笑いが聞こえた。うん、笑ってるとこ悪いけど……。



『残念やったな』



 少しばかり離れた頭を腕でピタリとくっつける。そのまま振り向いてドカッと正面蹴りを喰らわせた。ドサッと巫女服のまま尻餅を着いた審神者に冷たい視線を送る。



「きゃっ」
『きゃっ、ちゃうし』



 きゃっ、なんてあの大冒険した仲間やそのクラスメイト位しか似合わないなぁ。
 はぁ、と溜め息をつけば審神者はボッと顔を赤くさせた。大方怒りで顔が真っ赤になったんだろう。お前それ逆ギレって言うんだよ。知ってた?



「ねえあなた、私のお婿さんになってくれないかしら!?」
『ん?』



 ……ん?

 目を見開き審神者を凝視。三日月も凝視。女審神者は顔を赤らめてやだ言っちゃったとくねくねしている。ぁ、このパターン知ってるよいおりさん。何回目だろうね。俺女だよ。



『あんた、さっき首飛ばした男に向かってよおそんなこと言えたな』
「えっ、でもでも! 貴方はまだ生きてるじゃない! なら良いじゃない! 関係無いわ!」
『そういうこと言うとんちゃうねん。お前の行いは人間の倫理を外れてる、現に俺の首を飛ばした。ましてや神様に手を挙げるなんて最悪や。
 生憎やったな、俺は女やし、あんたんこと殺してもええて政府から指示出とんねん!』



 チンッ、と俺が刀を鞘に納めれば、三日月と女はなぜ殺すといった側から刀を納めるのかと疑問に思ったらしいが、次の瞬間には女は縦に二つに割れた。居合い抜きと言う音速技である。

 ドチャリと倒れ込んだ審神者を目に、三日月はなんの感情もないようだ。



『すまん三日月、勢いでお前の主、斬ってもた』
「いや、構わん。あんなもの、主ではない」



 ふいっと一瞥した三日月は此方を見て、「感謝する」ともう一度口にした。『ああ』と言葉を返せば、泣きそうになって、俺はどうしていいか分からず頭をがしゃがしゃと撫でる。そこで通路からバタバタと慌てた様な足音。



「どうしたんだい!?」
「大丈夫か青年!」
「わっ、主が!」
「アンタがやってくれたのか!?」



 わらわらと入ってくる刀剣男士たちに苦笑いしながら頷けばパアッとみんなから誉れ桜が降り注ぎ、やれ解放されたと騒ぎ出した。あの長谷部ですら少し安心した様な表情をしている。
 気を取り直して。



『お前ら、俺を手入れ部屋につれてってんか?』



**



 そのあとはみんなを気合いで手入。みんなには名前を教えていないから、あだ名で恩人さんと呼ばれるようになった。
それからすぐ、政府に事が無事終わったことと死体回収に来てくれと連絡、そして引き取り手の情報。スマホから顔を離し、振り向いて笑顔で言えば、緊張の糸が切れたみたいだ。



『君達は他の本丸に丸々移動になったわ。そこの本丸の審神者さんは刀好きで穏やかな事で有名でな。多分べったべたに甘やかしてくれるで』
「そりゃ本当か恩人さん!?」
『おん』
「驚きを提供しても怒られないか!?」
『当たり前や』



 きゃっきゃと騒ぎ出す刀剣男士たちがいる部屋からそっと出て、すっかりきれいになった本丸を縁側に座りながら眺める。いやあ、ホンマきれいになったなぁ。



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27:ぜんざい◆A.:2016/10/26(水) 21:50 ID:5iA




「ちと良いか恩人殿」



 ふと後ろから声を掛けられ、振り向けばにこにこと笑っている三日月の姿。『どうしたんや?』と聞けば三日月は「頼みがあってな」と横に座った。



『頼み? なんや、ゆーてみ』
「いや、そこまで大した事ではない。俺を連れていって欲しいのだ」
『……ん?』
「なんだ、聞こえなかったか? 仕方がない、もう一度だ。俺をお主の刀として連れていって欲しい」



 三日月はにこにこと穏やか且つぽけぽけした雰囲気を纏わせているが、話の内容はぽけぽけしていることではなかった。大したことないってお前、大したことだぞ。これからの人生に関わるんだぞ。困惑した顔をしていれば「その話、僕も聞きたいな」と柔和な声が反対側から聞こえてきた。振り向けば、にこにことイケメンスマイルを浮かべて、且つ唯一の左目で「なら僕も連れてって」と訴えている燭台切。コイツは雰囲気が柔和じゃない。反対隣の三日月が「燭台切、お前もか」と朗らかに告げる。
 俺はたまらず溜め息を吐いた。



『……理由はなんや?』
「お主の持つその太刀に惚れた」
『ん?』
「僕自身が着いていきたいと思ったんだ。それに、君の体躯(からだ)のこと、なんで傷が塞がったのか、そうなった経緯」
「俺もだ」
『お、おん』



 二人の言葉を聞きながら、正面を向いて、景色を見ながら唸る。っていうか、三日月は緋斬に惚れた? え、なんで?



『俺、一ヶ月に一回、現世に戻んねんけど』
「それでも良いよ」
「俺達は着いていくからな」
『俺、お前らの仲間の刀剣が行く本丸の主みたいにべったべたに甘やかしできへんで』
「適度に甘やかしてくれればそれで良いよ」
「構わぬ」



 俺は一箔置いて告げる。



『訓練するけど、厳しいで』
「!! 全然構わないよ!」
「俺もだ、俺の様な爺がどこまで出来るが分からんがな」
『決まりやな』



 よろしゅーなと二人と両手で握手し、自分が女だと伝えると燭台切がすごくびっくりしていた。「女の子に刀を向けてたなんてかっこ悪いなあ!」と笑う燭台切に苦笑、三日月は俺と元主の会話を聞いてたから知ってたようだ。



『ところで、三日月は緋斬に惚れたゆうとったけど、どない意味なん?』
「なるほど、あかぎり、と言うのか。なんだ主、知らんかったのか? その緋斬と言う刀。付喪神が憑いておる」
『え¨、ホンマ!?』
「ああ、眼鏡を掛けた、短い髪の乳がでかい刀剣女士だ。どことなく主に似ておる。今度顕現したらどうだ、俺が嫁に貰おう」
『よ、嫁!!!?』



 なるほど、コイツ戦闘中俺の左肩突いたとき、緋斬見てあんな顔してたのか。それにしても一目惚れて、どんな美人なん? 緋斬。

 緋斬は当時、平安に打たれた太刀で、伊達家ができてからは伊達家が緋斬を引き取り俺のような気を自由自在に操れる天才の時の為にと倉で厳重保管されていた。まあ三日月とほぼ同い年か。俺に似てるのは生まれた時から一緒だったからだろう。どんな美人だろう、楽しみだ。



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28:ぜんざい◆A.:2016/10/27(木) 23:20 ID:5iA



 それから、とりあえずまあみんなが三日月と燭台切を見て羨ましいだの俺も行きたいだのと行っていたがもう登録的なことが終わってたので残念に思いつつあの子たちとは別れた。
 その後本丸を頂いたのだ、時の政府から。うわー、広いー! とか言いつつエヴァの城の方がでかかったなーとか考えて部屋を散策。



『いやぁ広いわー、なんやお嬢様の家の方がでかかった気ぃするけど』
「? お嬢様って誰なんだい? 主」
『俺の家が代々使える近衛家の一人娘でな、近衛木乃香様言わはるねん。美人やで』
「ほう、主従関係なのか」
『まあそうなるな』



 そんな会話を終えてさて早速初鍛刀と行きますか! とかいいながら鍛刀部屋で可愛い妖精に依頼札を差し出して適当な資源を渡して三人で誰が来るのかな何ていってれば申し訳無さそうな顔をした精霊さんが!



『ど、どないした!?』



 指指した方を見れば失敗した刀剣、まあまあ次があるよともう一度やるも失敗。俺には鍛刀運が無かったようだ、悲しみ。
 ならばと出陣してみるも手応え無し。もう俺出陣運も鍛刀運も皆無みたいだ、もうこれ以上刀剣増えない。
 二人に泣きすがって見れば、これでも構わないからゆっくり行こうと慰めてくれた。うわあああああ!



『あああ、三日月どないしょう』
「あなや、主がこんなに落ち込むとは、俺にとっても予想外だなあ」
『そのほけほけ雰囲気今の俺には薬やねんわ』



 うおおおお、とか言いながらいつもの戦闘服ではない、頭にバンダナを付けた服装の三日月の肩に頭を押し付けてぐりぐり。それでも動じずズズズとお茶を飲む三日月。流石、爺さんなだけあるな。



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29:ぜんざい◆A.:2016/10/28(金) 19:43 ID:5iA



 緋斬を顕現しようと思ったのだが、それより早くもとの世界の彼らから誘われていたウェールズへの旅行の日がやって来た。
 長期になると時の政府に言えばブラック本丸の件のボーナスを全て注ぎ込んで休暇を頂いた。約一ヶ月である。三日月と燭台切の同行許可も取ってある。準備万端だ。



『俺の仲間と初対面やな』
「その人たちと外国に行くんだよねえ僕達」



 外国なんて初めてだ、その人たちと仲良くできるかなと少しの不安とわくわくが混ざった様な顔をしている燭台切。俺はとりあえず大丈夫や、と告げておく。

 今から俺達はネギま部の旅行と言う名目で、ネギ君の故郷イギリスのウェールズから魔法世界にいくのだ。
 そう、魔法先生ネギま!の原作で有名なあの魔法世界編。俺が審神者になる前にネギ君の事を世界最強と告げたのは原作を知っていたからだ。現在のネギ君はまだエヴァの『闇の魔法(マギア・エレベア)』は習得出来ていない。
 俺は一応エヴァとの修業で死にかけになりながらも命からがら炎のマギア・エレベアを習得した。そしてなぜか覚醒し不老不死(仮)化してしまったと言う訳なのだ、本当に不老不死かは数年経たないと分からないが、不老は本丸の審神者になったので確立され、不死もあのくそ女審神者に首を飛ばされても生きていたので立証した。
 俺は今完全に不老不死だ。やったー。



『さて、行くか』
「うむ」
「楽しみだなあ」



 ……とりあえずうちの刀剣男士が癒やし過ぎるな!



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30:ぜんざい◆A.:2016/10/28(金) 21:16 ID:5iA


 とりあえず、二人には魔法で絶対に神隠しをしないと言う契約の元、名前を教えました。
 成田空港にて。三日月と燭台切に洋服を着せてやって来たのだが、如何せんあの子たち目立つなあ。



「主、行かないのかい?」
『いや、あの美人達の中に割り込むてなるとどうもなあ』
「主も退けは取ってないぞ」
『三日月お前』



 うおー、とかやって皆の前に出る。千雨居るしあとは俺達だけやってんな。



『すまん、待たしたなあ』
「いおり先輩来たよー!」
「御勤めごくろー様伊達先輩!」
「いおりちゃん今回もよろしゅーなあ」
「お嬢様共々よろしくお願いしますいおりさん」
「お久しぶりですいおりさん!」
『おー、久しぶりやなあお前ら。ネギ君もお疲れさん』
「おやおやぁ? 後ろの二人はいおり先輩の刀剣男士かなあ?」
「かっ、かっこエエな!」



 わらわらとたかってくる可愛い後輩たちに挨拶し、後ろでみんなのテンションの高さに固まる燭台切とにこやかに微笑む三日月を見やる。っていうか燭台切、助けてどうしよういおりちゃん!と視線で助けを求めている。とりあえず笑って自己紹介を。



「僕は長船が祖、燭台切光忠だよ。これからよろしくね」
「眼帯してイケメンなのに僕+穏やかキャラだとおおおお!?」
「かっこええなあ君!」
「!?」



 早乙女ハルナがアホ毛をびゅんびゅんと稼働し、このかが目をキラキラ。俺は戸惑う燭台切に苦笑いしながらほわわんと微笑む三日月を見やった。



「俺は三条宗近の打った刀、三日月宗近だ。よろしく頼むぞ」
「び、美人だー! 和風だー!」
「あなや、少々喧しいが静かよりマシだな」
「心も広かったー!」
「この爺とも仲良くしてくれよ」
『三日月は約千百年前の刀やから自分の事を爺言うねん』
「僕もそこそこだけどね」



 みんなでキャッキャと仲良くなったところでフライト。三日月と燭台切が身を固くしていたが、まぁ初めての経験だったらしく少しばかりはしゃいでいて可愛いかった。



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31:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 09:02 ID:5iA



 やって来たイギリスにて、奇跡的にいいんちょ率いる一般人後輩と遭遇。一通りネギ君と熱い抱擁を済ませたいいんちょがこちらを見て目を輝かせた。



「いおり御姉様! いおり御姉様もいらっしゃっていたのですね!」
『久しぶりやなああやかちゃん、学園祭ぶりか』
「そうですわね!」



 そして後ろの燭台切が「妹さん?」と聞いてくるが、そう呼び慕ってくれているだけだと教える。そしてみんなが興味津々に見つめるイケメン__燭台切と三日月に自己紹介をさせる。とりあえず一般人だから刀だと言うことは明かすなと教えて。



「僕は燭台切光忠、変な名前だけどよろしくね」
「三日月宗近だ、爺だが仲良くしてくれ」
『三日月は言動が爺さんやねん、気にせんといて』
「キャー、イケメン!」
「私の知る刀と同じですわね」
『ぐ、偶然やで!』



 雪広あやか、恐るべし。日本刀の名前をちゃんと覚えているとは、さすが金持ち、財閥の次女。
その後ウェールズへみんなで出発。到着時にネギの義姉、ネカネさんとネギ君の感動の再開を見届けた。
 そして翌日、魔法世界に旅立つそこへ、あの事件が有ることを俺は完璧に忘れていた。



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32:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 09:46 ID:5iA



 ストーンヘッジで光に包まれながら俺たちは魔法世界に到着した。そこから外を見てみれば、それはもうファンタジー! な光景が。



「乗り物と言うものは浮いてるし、すごいね、ここは……」
『せやな……!』
「流石の俺も感嘆だ」



 そして、そのすぐあと。ことは起こった。



「ネギィッ!!! ネギーーーーー!」 



 そんな叫び声にハッとする。しまった、完全に忘れていた! これから起こる事に気を取られて目先の事件が思考から外れていた。今しがた、ネギ君が鋭い石の槍に右胸を貫かれている。



「な、ネギ君が!」
「坊や!?」
『お前ら剣出して抜け! 俺明日菜呼んでくるから、ネギ君守れ!』




 二人はこくりとうなずくと武装してネギ君の所に駆けていった。ふたりがなぜ武装出来たかと言えばほぼ俺特製の術を掛けたお陰である。
 とにかく、俺は今緋斬も焔の斬剣(アーティファクト)もない。ネギ君の傍らには密航したのか偶然か、一般人である大河内アキラ、佐々木まき絵、明石裕奈とローブを被った女の子が突然現れて和風な武装の三日月と燕尾服に防具の燭台切に、刀を持つ二人に驚いていた。

 そこでいきなりの敵からの攻撃、敵は、フェイト・アーウェルンクス。長瀬楓と桜咲刹那がネギくんを庇うように攻撃を防御した。慌てて跡を追うようにその場に降り立つと一般人後輩は目を見開いていたが、他の後輩は「い、いおりさぁん!」「どうしよう、ネギが、ネギが!」「アーティファクトカード等の武器があの箱に!」と泣きそうになりながら懇願してくる。俺は歯噛みしながら明日菜に告げた。



『明日菜、あの箱を壊せるんは君だけや、分かるな?』
「え、ぅ、うん……」
『君は魔法完全無効化能力者や、殴ったら壊せる!』
「!」



 そういうとばたばたとせわしなく箱に駆けていく神楽坂明日菜を見届け、仲間を連れてやって来たフェイトを睨む。そこで小太郎、楓、刹那が飛び出した。

 半ば乱闘になりつつも、楓は敵の術にやられて黒い球体に閉じ込められ、小太郎は敵の神鳴流の睡眠技を喰らわされ、刹那がフェイトに吹っ飛ばされた。
 あの威力、普通の刀剣男士なら即折れている強さだ。二人には俺の術を掛けているし、救ったあとに練度もカンストさせたので大丈夫かも知れないが、それでも心配だ。
 やられてしまった三人に声をあげる二人に『お前ら! いいって言うまで動くなよ』と心配オーラを撒き散らして、牽制。

 その後ぼろぼろなネギ君がフェイトの顔に一発ぶちこみ、そのあと明日菜が箱を叩き割り、武器を解放した。


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33:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 13:20 ID:5iA



 アーティファクトをアデアットして各々の部具を手にした明日菜と木乃香を見てネギはもう大丈夫だと悟り、明日菜にアーティファクトカードと緋斬を投げるよう指示する。



『明日菜! 緋斬とカード!』
「分かりました!」



 ブォンと飛んでくる二つを無事キャッチして発動させる。両隣で刀を構える、かちゃりと言う音が聞こえた。



「坊やのあの怪我は治るのか?」
『三日月か。木乃香お嬢様の力は治癒や、絶対治る』
「なら話は早いよ。かっこよく行きたいよね!」



 ちょうど明日菜とクーフェイが相手方に飛び出してフェイトが木乃香の目の前に出たところで燭台切がフェイトに豪剣を振るう。ハッとしたフェイトが石の息吹を発動し、それに反応して燭台切が木乃香を抱え込んだ。



『光忠!!』
「コノカ!!」



 だがしかし、石の霧が晴れれば木乃香と燭台切は石化しておらず、ばさりと、刹那の背から生える真っ白い翼が庇ってくれたようだ。



「この人たちには、指一本触れさせん!!」



 鬼気迫る表情でフェイトを睨み付ける刹那を一瞥し、アーティファクト能力、匕首 十六串呂(シーカ・シシクシロ)でフェイトと激しい攻防線を開始する。
 そして斬!! とフェイトの体を二つに斬るが、偽物で刹那を後ろから狙うもクーフェイに阻止される。そこからみんな入り乱れての乱戦。ほとんどが爆発や剣威の猛攻だ。



『はじめましてぇフェイトアーウェルンクス!』
「君は見たこと無いな、でも君……人間じゃないね」
『不老不死体や! 伊達いおり! これからまた会うなあ!』
「くっ」



 刹那に代わり、フェイトの相手をする。緋斬でついて、全方向からの太刀攻撃。太刀は全て石化されたが、緋斬は石化の霧を一閃する。緋斬に斬れないものは何もない!
 途中にネギ君の傷も治り、戦線に出てきたところで、転送ゲートをフェイトが破壊。そのあと、冷たい瞳でフェイトがネギ君を見て言い放った。



「こちら側へ来るには君は少しぬるま湯に浸かりすぎて居たんじゃないかな。ここからの現実は僕から君へのプレゼントだよ。
……またね、焔の剣士」



 最後にこちらを見てフェイトは転移ゲートで去っていった。俺は咄嗟に三日月と燭台切の手を握る。バッと振り向いた二人に真剣な顔で『手ぇ離したあかんで』とぐっと力を込める。二人は困惑したような顔をしたが、ぎゅっと握り返してくれた。腰に差さる緋斬がかしゃんと揺れた気がした。

 そのあと、フェイト達一味により仕掛けられた転移ゲートにて、俺達三人とみんなは散り散りになってしまった。



.

34:ぜんざい◆A.:2016/10/29(土) 19:49 ID:5iA



 それから。無事どこか見知らぬ街へと転送された俺達三人。慌てて刀を構えれば路地裏らしくだれも居ない。幸い刀を抜いて臨戦態勢だった事は見られていなかった。チン、と言う金属音が続けて鳴って刀を鞘に納める。



『……どこやここ』
「町のみたいだね」
「見たら分かるな」
「分かるね」



 二人とも武装は解けて俺が与えた私服へと服装が代わっているが、俺も多分同じだ。今回はシャツにパーカー、短パン、ブーツと動きやすい格好である。
 辺りを見回せば、大きな地図が。そこでここの町の名を確認、のち俺はだんだん頬をひきつらせた。



『オスティア……』
「……“おすてあ”だと?」
「“オスティア”だよ三日月さん」
「はっはっは、異国の言葉は苦手でな!」



 端正な顔に似合わず、少し大きい声を挙げて笑う三日月に微笑んだ。三日月は扇子を持っていると思ったのか、手を口元に持っていった、そして「あなや、扇子が」「扇子は武装の時だよ」と言うやり取りが行われる。なんて可愛いんだうちの刀剣男士は。


**


 それから数日、年齢詐称薬で大人になったネギ君と小太郎君が拳闘士として闘技場で戦い始めた。名前は小太郎君は犬上小次郎、ネギ君はナギ・スプリングフィールドと名乗っているようだ。ネギ君の父、ナギ・スプリングフィールドはこの世界じゃ有名らしく、ネギ君が名乗った瞬間闘技場がざわめいたらしい。元々この旅行はネギ君の父、ナギを探す旅だったので、なんら問題は無い。まあ拳闘士になった理由は奴隷となってしまった大河内アキラ、和泉亜子、村上夏美の100万ドラクマ(お金の単位)の借金の為だろう、今回の拳闘士大会の優勝賞金が100万ドラクマだから。

 今日はその一般人三人組が奴隷として働く店へとやって来た。今まで退治仕事とかで食い繋いできたからかなりお金が余っているから。
 テラス席に腰を下ろし三人で待っていれば注文を聞きに来て目を見開くアキラに笑いかける。



『久しぶりやな、アキラ』
「伊達先輩! 無事だったんですね、良かった。……あの、も、もしかして伊達先輩も、魔法使い、なんですか……?」
『まあ、種類はちゃうけどな』
「……と、とにかく本当に無事でよかったです。……三日月さんや燭台切さんも魔法使いですか……?」
「いや、僕らは違うよ。ね、三日月さん」
「ああ。俺達は伊達いおりを主とし、人型になる力をもらった刀剣の付喪神だ」
「つ、つくもがみ!? え、神様ですか!?」
「まあ僕らは神の中では末席に位置するから、気にしなくていいよ」



 と、会話したところで「伊達先輩はもう知ってますか?」とアキラが俺に声を掛けてきた。



『なにがや?』
「ナギ……いや、ネギ先生が右腕を飛ばした場外乱闘のこと」
『あ、あー』



 しまった、もうやっとんか。と顔をしかめる。向かいに座る燭台切が「え、腕!? いおりちゃんならまだしもネギ君は治るのかい!?」と目に見えて慌て出した。三日月は出されたお冷やを慌てる様子なくずずずとすする。



「まあ、ここは摩訶不思議な事が起こる世界だ、腕くらいくっつくだろうな」
「あ、そっか」
『あっさり過ぎやろ光忠』
「はっはっは」



.

35:ぜんざい◆A.:2016/10/30(日) 15:34 ID:5iA




「よしっ、大丈夫そうだな。亜子さんに心配かけちゃったなあ、多分みんなにも……。でもこの危険は覚悟の上で父さんの名を名乗ったんだし、それに……みんな、どうしてるだろう。元気に……して、るかな……」




朝焼けに包まれながら呟いたネギを、三日月は見つめていた。光忠といおりは近くの宿でまだ宿で睡眠をとっているのだが、なにゆえ自分は爺、早く目が覚めてしまったので昨日来たところへやって来ている。書き置きは残してきた。



「やあ、坊や」
「み、三日月さん!!? 無事だったんですね! よかった……って事は」
「うむ、いおりも光忠も無事だ」
「よ、よかったです! 怪我でもしてたらどうしようかと……」
「はっは、安心しろ。我ら刀剣男士、依代である本体さえ傷つけられなければ怪我はせぬ」
「すごいですね」
「ふむ、俺は驚いたぞ。俺より一回り程小さかったお主が大人になっているのだ。鶴が見れば飛び付くな」
「……鶴、ですか?」
「ああ、鶴丸国永、奴も付喪神でな、常に驚きを追い求める奴だ。確か驚きがなければ俺は死ぬと言っていた俺とそれほど変わらん爺のよ。アイツは驚かすのが好きでな、畳の下から天井から、挙げ句秘密の通り道だといって壁に穴を開けたり落とし穴を作ったり」
「じ、自由奔放な方だったんですね」
「暇はせんかったし、腕は確かだしな」



 そうですかと笑うネギに三日月は微笑みかけ、隣に行こうと一歩を踏み出した時だった。固くてトゲトゲしたものがボコッと頭に直撃した。
 三日月の頭に。



「うっ」
「三日月さーん!!?」
「うわっ、わり三日月さん!」
「大丈夫ですか、三日月さん」



 ぱたりと倒れた三日月に駆け寄るネギと固くてトゲトゲしたもの、パイナップルを投げた長谷川千雨と付き人の様な絡操茶々丸が駆け寄ってきた。三日月は気にするなと笑い飛ばし、むくりと起き上がる。



「いい威力だったぞ、なんといったかな」
「長谷川千雨だよ、大丈夫か三日月さん」
「そうか千雨か、いい名だ。神に名を教えるとは度胸があるな。神隠しされるやも知れんと言うに」
「え」
「まあする気は無いがな。俺の嫁は決まっている」



 かかかと見た目のわりに野太い笑い声をあげた三日月に唖然とする二人と一体のロボットだった。



.

36:ぜんざい◆A.:2016/11/02(水) 00:01 ID:9dc



 その後、ネギは小太郎と共に大会を勝ち上がり、他のメンバーがオスティアに来たところでマギアエレベアを覚えたり、フェイトと交渉決裂したり、ラカンが参戦した大会で引き分け、賞金は半々になったが時の気まぐれかラカンが残りの賞金を渡して来た。俺は基本、空気だったけど。怒濤の展開についていけなかったのだ。
 ネギ達がいる控え室で光忠や三日月も安心、またはよきかなと笑っている。光忠はにやにやと笑うラカンに声を掛けた。


「いやぁ、亜子ちゃんとネギ君のこととか、あの拳闘大会? みたいなののラカン君とネギ君の戦いすごかったね。でも、あの全身から光線を出す、なんだっけ『エターナルネギフィーバー』? 名前がかっこよくないよラカン君!」
「こまけえ事は気にすんなよ光忠! かっけーじゃねーかあれ!」
「全く、君は…」



 全くかっこよく無いよラカン君! と小言を言い出す光忠にみんながざわめく。「あの人にラカン君なんて言える人いたんだ」とか。もちろんみんなは光忠がエヴァより歳上なのを知らないのが理由なんだが。



「はっはっは、なにゆえ凄まじい戦いであったぞラカン。流石の俺も息をするのを忘れたからなあ」
「おいおい三日月さん、あんたほどの奴に褒められると照れるぜ!」
「ちょっと! 三日月さん、褒めちゃダメだよ! 彼はかっこいいとはなにかわかってない!」



 他のみんなは今度はあのジャック・ラカンが三日月にさんをつけたことに驚愕している。確かに、二人とも見た目はラカンより若いけど。

『あー、みんな。光忠と三日月は実はなエヴァちゃんより年上やねん。三日月に関したら1100越えとるねん』
「「「ええ!?」」」
「だから爺だと言ったろう」
「僕もそこそこだけどね」
「光忠はともかく11世紀から歴史を見てる人に敬称は外せねーだろ」



 ネギや小太郎には既に教えていたのでそれ以外のみんながなんだそうなのかと納得しているとき、小太郎が口を開く。



「やっぱ三日月の爺ちゃんの言う通り、俺も旗から見とってビビったわ」
『あー、ほんまなぁ。ネギ君もマギアエレベア覚えたし俺と同じになったなあ』



 すると、みんなが『え?』と一斉に俺を振り向いた。あれ、いってなかったっけ。



『俺、一応マギアエレベア使えんねんで? オリジナルエヴァ直々に叩き込まれたし副作用を自分の一部として飲み込んだから俺既に人間ちゃうし。俺もネギ君みたいにオリジナルスペルとか作ったわー、火力がぶっとんどったけど』



 そう言うとなんでいってくれなかったんだー! とか教えてあげればよかったじゃなーい! とか言われた。



『俺もネギ君みたいにふたつともコンプレクシオーしたわ、エヴァちゃんと対戦して引き分けたでドヤァ』
「な、なんで教えてくれなかったんですかー!? 偽マスターに教わって僕はあんなに血ヘド吐いたのに! いおりさんに教えてもらった方がよかったですー!」
『ん? そんなん言ってエエのネギ君? 俺の特訓は多分……エヴァより血ヘド吐くことになっとったで?』
「!?」



.

37:ぜんざい◆A.:2016/11/02(水) 18:11 ID:9dc



 そしてその後、行方不明だったユエちゃんと合流、記憶喪失でしたが無事だった。その時にメガロメセンブリアの元老院の一員、クルト・ゲーテル総督と衝突して逃げ帰った次第である。

 そして、まあそのクルトゲーテルさんに今夜行われる舞踏会に誘われた所存であります。
 キャイキャイと騒ぐ女の子たちはメガロメセンブリアから支給されたドレスに目移りしてかわいい。俺はタキシードというか、タキシードですがネクタイしてますはい。
 そして、光忠と三日月がゆーなたちに絡まれている。



「三日月さんは絶対和服よね! ほんわか和風美人なんだから!」
「褒められるのに悪い気はせんなあ、ありがとうよハルナ」
「いえいえー!! 次は光忠さんだー!」
「おー!」
「いえー!」
「ぅえっ!? いやいや、いいよ僕は。武装用の燕尾服が有るから! その方が動きやすいんだよね! ね!? 三日月さん!?」
「俺たちはいおりのお陰でいつでも武装出来るではないか。何をそんなに焦ってるんだ光忠?」
「さっすがお爺ちゃん! つー訳で光忠さん覚悟! このか! まき絵! パルナ! 明石ゆーなが命じる! かっかれェェエエ!」
「「「イエッサー!」」」
「うわあああああ!?」



 女の子大勢に掴み掛かられてもみくちゃにされる光忠を見て三日月と笑う。やっと解放された光忠はタキシードを着ていたが、『あんま変わらんなぁ』「変わらぬなあ」と穏やかな会話のネタにさせていただきました。
 そこで突然ハルナが口を開いた。



「んっふふー! 祭りの夜の宮殿での舞踏会かぁ、花火に照らされた二人きりのテラス、星空のしたに花咲き乱れる中庭……これ以上ロマンチックなシチュは、二度とないかもねぇ」



 恐らくパクティオーのキスの事を言っているのだろう、現に数人があらゆる態度を取った。そして、ハルナは俺達三人を見て、びしりと指を指した。



「三日月さんと光忠さんもよ! いおりさんが主ならパクティオーは必須! いおりさんとキスしなさい!」
『おー、分かったわ』
「あーてぃふぁくと? ないと流石の僕らも辛そうだもんね、分かったよ」
「俺も了解したぞ」



 あっさりな俺達三人にゆーなやパルナ、朝倉和美があら? と顔を歪める。



「え、なんですか? 抵抗無いの?」
『んー、抵抗言うても……』
「俺と光忠は刀だからな」
「そんなの気にしないよね、たかがキスだよ?」



 そこで数人の女子がピッシャーーンとショックを受ける。ショックを受けた理由は知らないが、そんなに重視することなんやろか。



『俺がネギ君としたときもそんな気にしてへんかったで』
「えー、女の子としてそれは」
「刀じゃないんだし」
『俺の見た目見てや』



 そして、みんながじろじろと俺を見て「ああ、男顔」と納得した。そこでハルナがとんでもない提案をしでかすのである。



「ならいおりさん、今日はタキシードじゃなくてドレスにしましょ?」
『はぁ!!?』



 似合うわけないやろ!



.

38:ぜんざい◆A.:2016/11/02(水) 18:29 ID:9dc



 結局無理矢理ドレスを着せられた俺。髪はショートカットでいじりようが無いからとカチューシャを付けられました。
 胸元の大きく開いた黒の上ドレスに腰の明るい赤の帯、黒のスリットが入った布のしたにみんなの様な赤の長いスカート、二の腕まである長い暗紅色の手袋。全体的に赤っぽいものを着せられてしまった。ううむ、寒い。せめてもの抵抗としてブーツは履かせていただいた。



「う、わーーーー! いおりさん、そういうかっこするとちゃんと綺麗だね!」
「胸デカッ! 一番でかくない!?」
「に、似合ってますよ10代目!」
『10代目言うんやめてや刹那』
「かっこよく決まってるよいおりちゃん!」
「馬子にも衣装だな」
「ダメでしょ三日月爺ちゃん!」
「似合っとるでいおり姉ちゃん」
「綺麗ですいおりさん!」



 みんなから賛辞を述べられ、気恥ずかしくなる。
 その後、魔法世界が火星だと言うことが判明したが特に驚きはなかった。なんやかんやでやって来た舞踏会、とりあえず。



『広いわあ』




.

39:ぜんざい◆A.:2016/11/03(木) 14:42 ID:9dc


 舞踏会と言えば豪華なものを連想するが、まさにここは絢爛豪華、きらびやかな装飾や超豪華ディナー食べ放題、まるで別世界だ。そこで少しボウッとしているネギ君に声を掛ける。

『どないしたネギ君』
「い、いや、ラカンさんトイレ遅いなーと思いまして」
「(ネギー! それよかちゃんとコイツらの相手してんか、俺には無理や)」

 視線でそう訴えてきた小太郎は帝国拳闘協会や取材の報道人、そこらの貴族に囲まれていた。
 俺は面倒事はゴメンだとばかりに少し離れる。ネギ君たちが囲まれたのを良いことに素早くその場を離れて徘徊し始めれば、ディナーを頬張る刀剣二人を発見。おおー美味しそう。

『お前らこんなとこ居ったんか、向こうでパクティオーすんねんで?』
「分かったよ、というかこのご飯美味しいね」
「よきかなよきかな」

 モグモグと頬張る二人に溜め息を吐き、『ほら、行くでお前ら』とテーブルから二人を引き剥がしてテラスへ連れていく。わざわざそんなところにいかなくてもいいと思うが、人目が憚られるからなあ。

『じゃあするでー』
「う、うん」
「任された」

 二人と無事パクティオーして二人にアデアットしていただいた。
 燭台切が『重層剣燭』、三日月が『月光一閃』、ふむ、姿はいつもの武装なんだな。なら能力か。

「僕のは、本体が炎を纏うみたいだね、能力はよく分かんないけど」
「俺は素早さと機動が月の満ち欠けと共に上昇するようだ。俺も実践で使わんと分からんな」
『まあ大丈夫やろ、剣技なら誰にも負けてへん』

 カモ君に聞けば「その二人のアーティファクトは丁度対になるもんだな、能力はほぼ同じだ、斬れないものは何もないぜ!」と教えていただいた。

**

 そのあと、ネギ君とゲーテル総督が対峙したことを聞き、朝倉のアーティファクトでナギとアリサの昔話を放映していただいた。

「くぁー!! こりゃハッピーエンドだね、いやまいった!」
「はああー、良かった二人が一緒になれて」
「捕まってもうた時はどうなることかと思ったんやけど」
「しっかし亡国の王女と大戦の英雄の恋物語だなんてハマりすぎだよねえ」
「アリカ様の最後の笑顔、良かったなあ」
「こんな壮大なお話にあのネギ先生に繋がっているなんて実感わかないね」
「見てみてココ、アリカ様とナギが話してた場所だよ!」
「げげっ、ホントに歴史的名所じゃん、写真撮らなきゃ!」

 とわいわいきゃいきゃい騒ぐ傍ら、光忠は「ネギくんっ……こんな、おおごとが……」と眉間を押さえている。

「あー、ハルナ? 今の映画が難しくて何が何やらわからなかたアル」

それを皮切に私もー、と手をあげ始めた周囲にまじって扇子で口許を隠しながら優雅に「俺もだ」と手をあげている。

「まずMM元老院ってのが悪者だったわけ! もう超巨悪!ほんでアリカ様は超美女なんだけどコイツらに利用されてズタボロに。そこに現れる我らがヒーロー『サウザンドマスター』ナギ! 即救出! 即結婚の大ハッピーエンド! そんな二人の間に生まれたのがネギ君なんだけど、このネギ君の村を襲った真犯人ってのがMM元老院だってんだからさあ大変!つまり親子二代に渡ってコイツらはネギ君一家の仇だったってことさ!」
「ふむ、爺でも分かりやすい説明だハルナ」
「さっすが三日月さん理解が早い!」
「あのラスボスぽいのとかフェイトの一味がネギパパの敵ではなかたアルかね?」
「両方敵なのよ!」

そう断言したハルナにくーふぇは「ふぅーむ、難しいアルねぇ」と頭を悩ませた。そこからゴチャゴチャして、この場から逃げなければならなくなった、うむ意味不。

「ちょっとパル! こんなとこでグズグズしてていいの!? 早く逃げようよー!」

 すると次には「そこの女ども! 動くな!」と叫ばれた。その言葉に小太郎、光忠、三日月が各々男だと反応する。

「賞金首であるお前たちを拘束する! 全員武器とカードを捨てろ!」
「ほらあああ! 捕まっちゃったじゃん!」
「ふふふ……これも計算道理よ! 来たわ!」
「来るって何がさ!?」

 すると塀のしたからグレートパル様号が姿を表した。俺たちはそれに少し唖然とし、その甲板から固定ガトリングガンを持ったさよちゃんが出現、ハッピートリガーと言わんばかりにぶちまけ始める。そこで黙る訳でもないMM元老院戦闘捕獲部隊も応戦してきた。

40:ぜんざい◆A.:2016/11/05(土) 18:21 ID:9dc



 そこからアーティファクトを交えた乱闘を開始する。



「まず僕からだね!」



 行くよ! と駆けて行った光忠の広い背中を見送り、片手間に襲いかかってくるメガロを切り捨て、アーティファクトを遠目に確認する。



「『炎切燭台』!」



 そう叫びながら、相手からぶちまけられる『紫炎の捕らえ手(カブトゥス・フランメウス)』を切り裂く光忠はそのまま遠距離にまで届く火を巻き込ませた広範囲攻撃を食らわせた。遠くの三日月は重そうな装備をものともせず軽々飛び回り、「次は俺か」と激戦の中穏やかに笑う。一際敵が集まったときに、三日月は呟く。



「『月光・壱式【三日月】』」



 背後に闇夜の三日月が見えた気がしたが、三日月は瞳の中の三日月を闘志に揺らめさせながら次の瞬間トッ……とその大量のメガロ兵の後ろに降り立った。チンッ、と納刀した音が聞こえれば、メガロ兵は撃沈した。



「なるほど、壱式は身体能力が一時的に上がるのか」
「僕のは威力は上がってるし…本体が纏える物質も、炎だけじゃないみたいだ」



 物珍しそうに二人して自身の本体を握ったり緩めたり。後ろでみんなが「うおおお!」とか言ってますが大丈夫ですか?
 そこで、楓と刹那と同じタイミングで俺もアーティファクト『焔の斬剣(イグニ・アーティスヴェルヴァルト)』を出して動きやすいストックの服へ変換し、緋斬を敵に向ける。



『百花炎斬!!』
「百花繚乱!!」
「縛鎖爆炎陣!!」



 三人の技名が重なり、一帯が大爆発。そろそろ頃合いか、と煙が晴れたところで、俺は緋斬を三日月に投げ渡す。



「……いおり!」
『すまん三日月、溶けるかもしれへんから緋斬をお前に預ける!』
「……」
『将来夫婦なんやろ!? 時間ないねん!』
「……任された!」
『光忠!! 三日月頼むで!』
「オーケー、任せてよ」


 緋斬を安置に置いたところでひと安心し、彼のことを思い浮かべながら呪文を唱えた。



『シュヴェルツ・シェルヴィス・ヴァン・シュヴァルツ!! 来れ深淵の闇燃え盛る大剣(アギテー・テネブラエアビュシィ・エンシス・インケンデンス)!! 闇と影と憎悪と破壊(エト・インケンディウム・カリギニス・ウンプラエ)! 復讐の大焔(イニミー・キティアテ・デーストルクティオーニス・ウルティオーニス)! 我を焼け彼を焼け(インケンダント・エト・メー・エト・エウム)!! 其のただ焼き尽くす者(シント・ソールム・インケンデース)! 『奈落の業火(インケンディウム・ゲヘナエ)』!! 
 固定(スタグネット)!!! 掌握(コンプレクシオー)!!』



 炎系威力最大の大魔法を唱え、右手のひらに固定し握り潰す。周りがどよめいたり、味方の中には「やっと来た!」とにやつく者もいた。だが、まだ終わらない。



『シュヴェルツ・シェルヴィス・ヴァン・シュヴァルツ!!! 契約により我に従え奈落の王!』
「「「「!!!?」」」」
「え、ネギ君と違う!?」
「まだやんの!?」
『地割り来れ千丈舐め尽くす灼熱の奔流!! たぎれ! ほとばしれ! 赫灼たる亡びの地神! 『引き裂く大地(テッラ・フィンデーンス)』!!
 固定(スタグネット)!! 掌握(コンプレクシオー)!!』



 左手のひらに固定し握り潰す。これが闇を自分の物とし、取り込んだネギ君より一歩先にいる俺の、俺流マギア・エレベア【術式兵装(プロ・アルマティオーネ)『焔の騎士(イグニスナイトティア)』】である。
 これのお陰で俺は不老不死となったわけだ。エヴァとこれで引き分けたことも有るし、常時炎化で腕が飛ばされても治るから平気。全力ではないが俺の最大威力の戦力だ。



『俺は今からネギ君たちの所へ行く! ここは任したで!』
「あい、分かった」
「了解しました師匠!!」




 俺はそれを聞いたあと、塀から飛び降りて目的の場所を探しに宙を飛んだ。



.

41:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 11:03 ID:9dc

Noside



 総督の部屋を無事脱出したネギ、朝倉、千雨、古罪(クー・フェイ)、のどかは大きな揺れの中足元おぼつかず走っていた。ネギはマギアエレベアの副産物をまだ受け入れられておらず、半分化け物になって古罪に肩を貸してもらっている。



「ちっ、なんだこの揺れは」
「連絡ついた? 千雨ちゃん」
「ダメだ、念話が妨害されてる」
「大丈夫アルかネギ坊主」
「は、はい」



 ネギは古罪にそう返事をして、不思議な紋様が浮かび上がった自身の腕を見つめてヤバいかもと内心焦る。そこでいきなり千雨が叫んだ。



「やっぱり上で何かあったらしい! 集合地点変更プランBだ!」
「プランB? 総督の手下に追われてるの!?」
「いや、なにか事故が起こったらしい」
「もしかして新たな敵!?」




 そこでのどかは先程総督から聞き出した世界の秘密の最後の一ピースを知り、顔を青くさせ知らそうとしたところで、のどかとネギ達他を隔てるように通路が割れた。そこで朝倉が地面に手が届かず浮遊し落ちかけたところで、何者かが朝倉を腕に抱え、朝倉へと手を伸ばしたのどかもついでとばかりにネギ達の反対側に下ろした。



「え、い……いおりさんアルか!?」
「伊達先輩だとぉ!?」
「……術式兵装『獄炎煉我』!? いや、服も髪も薄いカーマイン『炎化』!?……僕のとは違うんですか!?」
『おいおい、俺より先に女の子の安否や、大丈夫か?』
「は、はいー……!」
「いやぁ助かったよ、ありがとういおり先輩」



 いおりはふうと一息吐いたところで向こう岸のネギにこの術式兵装の名前を教えてやる。



『これは術式兵装(プロ・アルマティオーネ)【焔の騎士(イグニスナイトティア)】や』



 そこまで教えたところで「オーイ!」「大丈夫かー!??」と走ってくる男女の影、のどかがお世話になった冒険者(トレジャーハンター)の女性がアイシャさん、男性がクレイグさんだ。いおりたちを見た二人はネギに叫ぶ。



「おーい坊主! 今嬢ちゃんから話は聞いたぜー! ここは任せろ! 嬢ちゃんたちは俺たちが合流地点まで届けてやる!」
「し、しかし!」
「のどか嬢ちゃんはもう俺達の仲間でもある! トレジャーハンターはこれでも仲間意識は強ぇんだ! 勝手ながらこの子たちの面倒見させてもらうぜ!」
「え、」
「な?」



一通りネギに宣言したクレイグはのどかを見て同意を求める。その時のわずかばかりのリア充雰囲気を見ていおりは『中学生乙女はエエなあ』とほのぼのした。かわゆす。そこでいつの間にか出現していた外の化け物の攻撃が襲ってきた。そこでネギたちとは別れ、みんなで走り出す。



「はははは! まさか嬢ちゃんとまた一緒に走ることになるとは思わなかったな」
「は、はい! そうですね!」
「俺そっちの坊主の名前知らねえや、名前は!?」
『俺? 俺は伊達いおりや! こう見えてれっきとした女やで!』
「「!!?」」



 そんなことを話ながら走っていれば、黒い長身の男が立ちはだかるように立っていた。いおりはバッとアーティファクト焔の斬剣の指令刀を構える。



「ミヤザキノドカ……危険だと聞いている」
「嬢ちゃん!!!!」



 次の瞬間、のどかを庇ったクレイグの上半身が男の「リライト」と言う言葉と共に塵となって消えた。



.

42:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 11:30 ID:9dc



 それから、色々あって放心するのどかを庇いアイシャも姿を消す。そして立ち直ったのどかはいどのえにっきを駆使し、二人を消したときに使用した鍵のような杖のようなものを奪い「リロケート」と言う転送魔法で俺達はその場を離脱した。


**


 その後、パル様号へ戻って来たネギ達は今共にいる明日菜が偽物と言うことを知り、情報を聞き出したのち、ネギのマギアエレベアの暴走を止めるためにネギが習得に使った巻物のなかにいる偽エヴァに教えてもらうことにした。いおりは今爆睡中である。



「マギアエレベアは元々私固有の魔法技だ、ただの人間が使うことは想定していない。闇の眷属でもない貴様が使い続ければ闇と魔に侵食されることは予測できていた。ただ、フフ、ここまでぼーやと相性が良いとは思わんかったがな。
 このまま行けば__恐らく精神も肉体も完全に魔に支配されて人外の化け物になる。二度と人間には戻れないだろう、私の様にな」
「ま、待てよ! なら伊達先輩は!? 伊達先輩は普通に使ってたぞ!?」



 千雨が慌てて焦るようにエヴァに問い掛ける。少しでも良いからネギが化け物にならない可能性が欲しいんだろう。だが、エヴァはそれを切り捨てた。



「アイツは化け物に……不老不死に自ら進んでなったよ、「これでエヴァも寂しく無いなぁ」とな。アイツは「これからの守りたいもの」の為に副作用と真正面からぶつかり、私でも驚くほどの圧倒的な “力” “技術” “剣技”を用いて副作用を服従させ平伏させ飼い慣らし、あまつさえ自らの一部として受け入れたのさ、まあ本体直々に教えられたんだからそれくらいしてもらわんと困るがな。だからアイツも私と同じ不老不死。見た目も身長も中学から変わっとらん。まったく、度胸と実力のある女だ。ましてや、2つの炎系大魔法を片方ずつの腕でコンプレクシオーするなど、私も考えたことがなかったことをやってのけた女だからな。見ていて面白い。
 ……話を戻すがその過程で耐えきれなければ死ぬかもしれんがな。しかしこれは言ってみれば生物種としてより上位の存在への転生だ、悪いことでもないかもしれんぞ。
 むしろ父の偉業を継ごうと決めた貴様ならそういった存在となった方が有利ではないかな? くっくっく……」




 エヴァの言葉に真剣に悩んだネギは、それでも良いと決意してエヴァに授業を頼んだのだった。



**
いおりside



『お前ら! 無事やったか!』
「逆に聞くが、俺たちがやられるとでも思ったのかな?」
「大丈夫だよいおりちゃん、僕らはいおりちゃんの神力……こちらで言えば魔力で姿を保っているからいおりちゃんの不老不死の性質も受け持っている。傷なんて受けてもすぐなおるよ」
『……俺の魔力便利やな』



.

43:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 12:06 ID:9dc


 残りのネギま! をスッ飛ばします。私の文章力では……(泣)

**


 あの魔法大戦と体育祭、明日菜の旅立ちと帰還を終え、それから七年後。
 俺達は昨日の同窓会を終えて本丸でのんびりしていた。七年の月日は長く、三日月、光忠と共に出陣演練遠征を三人で繰り返し、俺は「戦闘系審神者」「焔の騎士」と名を馳せて俺の本丸は超少数ながら数ある本丸の中で最強の座に君臨した。それでもちょくちょく現世に行ってエヴァとマギアエレベアが鈍らないように訓練したりネギ君と修行したり、あれ? 戦いしかしてなくね?



『あー、あの魔法大戦からもう七年経ってんねんなぁ』
「いおりや、早く緋斬を顕現してくれ」
『急かしなや三日月』



 俺は今、鍛刀部屋に来ていた。別に鍛刀するわけではない。だって出来ないもん。あ、ひとつお知らせが。昨日、たったつい昨日! やっとドロップの刀を手に入れました! 七年間ずっと三人で寂しかったんだよ! まあそのあと「また見つかるかも」と進んでみたら収穫なし。どうやら奇跡だったらしい。その刀は大太刀で、『蛍丸』と言う。大太刀なのにちっちゃくて可愛い。相棒の愛染国俊を早く見つけてあげたいが、鍛刀運もドロップ運もない俺には無理だ。そう言えば蛍丸は「気にしないでいいよ、直に来るって」と励ましてくれた。蛍丸天使ぃ。名前は神隠ししないと言う契約で教えました。緋斬とは刀に契約させました。
 三日月と光忠と蛍丸が見守る中、俺が緋斬を顕現させてみれば、そこには格好いい系のクールな雰囲気と色気を振り撒く眼鏡の、赤髪にバンダナを巻いた長身かつ巨乳の女性が。なるほど、三日月の言っていた刀剣女士とはこういう……。



「緋斬や、よろしゅう、こっち(私)の主」



 一人称は『こっち』らしい。まあなんてきれい。



「他の刀も、よろしゅう」
「うん、よろしくー」
「よろしくね」
「ふむ、賭けは俺の勝ちだ緋斬、お前を貰う」
「……」
『賭けってなん? 三日月』
「いおりと戦って俺が尻餅を着いたときに緋斬と賭けをしてな。
 俺がいおりと一緒に行きたいと言い……了承されたら俺の勝ち、拒否なら緋斬の勝ちというものをな」
「……賭けや、しゃーない」



 そのハイライトの入っていない瞳を遠い目にして後ろから飛び付く三日月にされるがままの緋斬に蛍丸、光忠と苦笑いする。



「それよりいおりちゃん、蛍丸くんにいおりちゃんの説明したほうが良いんじゃない?」
「説明?」
『せやな。蛍丸、俺は人間ちゃうねん』
「……ん?」



 俺がそう言えば蛍丸は意味不明と言わんばかりに首をかしげる。光忠から「言葉が足りない!」と叱られた。



『俺な、魔法使い言う存在やねん。その魔法の中でも命を落とすかも知れん魔法を習得してな? いやーそれの副作用が体を蝕んで化け物になりかけたり死にかけたりしてん。やけどそれを自分のものにしたら、不老不死になってん。正確には吸血鬼よりの不老不死やな。やから俺人外やねん』
「……光忠。これほんと?」
「副作用、とかは初耳だけど、不老不死とか化け物とかは事実だよ。首飛ばされてもくっつけた人だから」
『まあそんな俺の神力を体に取り込んだお前は俺と同じ不老不死になってもうた訳や、いややったら言いな』
「いや、別に良いよ。傷つかないなんて最高じゃん」



 へにゃっと笑う蛍丸に光忠と癒されていれば、三日月の腕に抱え込まれる緋斬が「いおり様」と口を開く。



「本部からの手紙来たらしいで、こんのすけが」



 縁側のところでこんのすけがちょこんと座り、口に手紙をくわえているのを見て、手紙を渡され見てみれば。



『……なんやこれ』
「え、何が?」
「どうしたの?」
「ふむ?」
「どないされました?」



.

44:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 12:57 ID:9dc



 その指令にはこう書いてあった。



『……【家庭教師ヒットマンREBRN!】の世界に時間溯行軍が出現。討伐を指令する。尚、原作は曲げても構わない』
「家庭教師ヒットマンREBRN! って何? いおり」
『すごい有名な漫画や。時間溯行軍が原作を潰しに世界を渡って行くらしい。それの討伐指令や、しばらく滞在になるやろから本丸もその世界にこのまま写すらしいわ』
「どういう意味だ光忠?」
「ちょっと違うけど、ネギ君たちの時みたいなものかな」
「なるほど」
「いおり様、付け足しておきますがあたしはいおり様が『焔の騎士(イグニスナイトティア)』を発動させたときも溶けませんので使ってくださいや」
『……マギアエレベア使う機会あったらそのときも使うから安心し』



 さて。出発しましょうか。



**



 いろいろ手続きをして、本丸ごと『並盛町』へと引っ越してきた。そう、馬鹿広い本丸ごと。庭に中庭、塀に手合わせ棟、離れに本丸。わーどこの伊達本家?
広い日本家屋風本丸の表札が必要だと言うことで名字は『伊達』とした。俺はもう社会人設定だが金は時の政府から振り込まれるので自由にしてていいらしい。さて、主人公たちと接触を図りますか。



『オーイ! ちょっと外散歩してくるなー!』
「あ、待っていおり俺もいく!」



 俺がそう言えば他からははーいと聞こえてきたが蛍丸がとててとついてきた。戦闘時の制服のジャケットを脱ぎ、代わりにと内番の時のジャージに袖を通し、チャックは閉めずに。
 俺はワイシャツの袖を肘下まで折り曲げ黒ベストと赤ネクタイ、七分丈の仕事時の黒ズボンだ。



「この世界は……平和だね」
『せやなあ。ここに時間溯行軍来る言うねん、阻止するで蛍』
「光忠も宗近も緋斬も居るし」
『おん』



 そこで曲がり角に差し掛かれば、何者かと衝突した。待て待て、この流れでいくと……。



「いてて……あっ、ごめんなさい!!」
『おー、大丈夫か少年』



 うわー、沢田綱吉やー。隣の蛍丸が「ねえいおり、この人誰?」と今にもアーティファクトを取り出して斬り掛かりそうだ。ちなみに蛍丸とは既にパクティオーしました。
 俺は沢田に手をさしのべながら「しまっとき」とポケットに手を突っ込む蛍丸の腕を制す。「ありがとうございます」『いやいや』とか会話していると沢田綱吉の番犬、獄寺隼人が吠えた。



「大丈夫ですか!? 10代目!」
「うん、だ、大丈夫だよ獄寺くん」
「てめー10代目にぶつかるたぁいい度胸だな!」
『いやぁすまんすまん、ケガ無いか少年』
「10代目に馴れ馴れしくすんじゃねー!」
「ご、獄寺くん!」



 ガルルと警戒してくる獄寺に苦笑いしていると、沢田のそばのもう一人が口を開いた。



「落ち着けよ獄寺。ぶつかったのはツナだし、あいこなのな」
「うるせえ野球馬鹿! 10代目にぶつかったんだぞ!?」



 俺を指差しながら怒鳴る獄寺を宥める沢田と野球馬鹿と言われた少年、山本。すると、そこに子供らしい声が響く。



「ねえ、謝ったんだから事を大きくしないでよ。うるさいな」



 俺のそばでベストに握るように寄り添い、微かに殺気を滲ませて獄寺を睨む蛍丸。俺は慌てて『落ち着きや蛍!』と頭をポムと叩いて殺気をしまわせるが、依然睨んだままだ。もうポケットから手を出してよカード握ってんじゃないよ!



「あぁ? んだガキ」
「ガキ? ガキはそっちじゃないの? どうせ14辺りでしょ」
「はぁ!? どっからどー見たってお前は小学生じゃねーか」
『ストップや、蛍……危ないからカード出して』
「……ん」



 すっとジャージのポケットから出てきたアーティファクトカードを受け取り、『蛍がすまんなあ』と苦笑いする。後ろの沢田が「あ、いえ、こちらこそ」と頭を下げた。だが、再び蛍は「良かったね」と獄寺を煽る。



「はぁ?」
「命拾いしたね」
『蛍! もうやめとけ! 煽るな!』
「あのねえ、俺はこれでも我慢してるんだよ? 光忠が居たらあいつの首は飛んでたからね」
『ストォォォォォップ!!!』



.

45:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 13:53 ID:9dc



『ふう。俺は伊達 いおりや』
「さ、沢田綱吉です! こっちが獄寺くん、こっちが山本」
『このちっさいのが蛍な。こんな小学生みたいな見掛けしとるけど俺より年上やねんで』
「「「はぁ!!!?」」」
「ふん」



 そうして彼らに大きな驚きをもたらし、じゃ、と颯爽と俺は散歩の続きを再開した。



『あかんやろ蛍丸』
「ごめん、でもいおり悪くなかったよね」
『世の中にはそんなこともあるねん。……せや、こっちの世界でのお前らの名前決めなあかんな』
「俺『蛍丸』だけだもんね」
『ならはよ家帰ろなぁ』



 蛍丸を肩車して屋根を駆けながら家へと帰った。とりあえず、名前の事を三人に伝えれば口を揃えて「名字は伊達が良い!」と伝えられ、ちょうどいいのでみんなで姓は伊達になった。



『あとは名前やけど……』
「僕は『光忠』だね。この世界にいる間だけだし」
「俺は『三日月』か『宗近』かどちらでも良いんだが……緋斬はどちらが良いか?」
「……三日月のほうで。あたしは……緋斬以外にないんで『緋斬』で御願いしますわ」
「俺は『蛍』でいーよ」
『決定やな』



.

46:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 14:47 ID:9dc



 数日後、手紙入れに半分に欠けた指輪と手紙が入っていた。……ん?



『うわあああああ!』
「どうしたの主!?」
「どうなさりはりました主様!?」
「む? どうした主」
「なにかあったのー?」



 指輪をちらりとみんなに見せると「?」と揃いも揃って首をかしげる。訳がわからなそうなので、説明。ちなみに主様呼びに戻ってるのはネギまの様に一般人の混じった世界じゃないからだ。この世界はあのときほど人口密度多くないし主様呼びに戻した。



『あのな? REBORNの世界ではな、最初の方に指輪編があるねん。それがな、みんなこんな形しとるんや』
「……あ、それに巻き込まれたって訳?」
『せや』



 うわあああ、とか遠い目をしていたら、緋斬が三日月の隣で「主様なら全てを蹴散らせます。ご安心くださいや、あたしも刀としてついていきます」といい顔して言われた。


 手紙を読むにこれは『夕焼のリング』、どうやら指輪編から結構経っている様で、雲戦手前で……今日の夜に並盛中学校で決戦らしい。……夕焼なんてなかったはず……原作早速崩壊かよ。夕焼の守護者はボスは直接関係無く、俺は沢田側だがもし俺が夕焼で勝ち、ヴァリアーが勝てばそのままそちらの守護者になるらしい。特別扱いなのか!「夕焼はリボーンでも知らない。沢田家光より」と書いてあった。俺はトップシークレット扱いか!



『今日、夜に俺は出ていくけど見物人居る? 緋斬は使うから行くときなったら顕現解いてな』
「了解しました主様」
「僕は見物人としていくけど、アデアットして行くからね」
「俺もだ」
「俺もー」
『みんな行くねんな……』

**
Noside

 一方その頃、綱吉はめちゃくちゃにリボーンに聞き立てる。



「ねえ! 夕焼の守護者って誰なの!!? 俺夕焼だけ聞いたこと無いんだけど!! 大丈夫なの!?」
「聞けツナ、俺も夕焼の守護者だけは知らねぇんだ。家庭教師も付いてねえから不安だな」
「それってヤバイじゃん!!」
「夕焼の守護者は『他の追随を許さない圧倒的な力を使う切り札になる』と言う使命を担ってんだ」
「……大丈夫かな?」



.

47:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 16:21 ID:9dc

Noside
その夜、綱吉たちは中庭に居た。大きなリングで囲われた中庭の外から夕焼の守護者を待っているのだ。

「……おっそいなあ」
「時間まであと五分ですね」

相手方、ヴァリアーの方の夕焼の守護者はリアナ・メルリア、女である。彼女はショッキングピンクの長い髪を高いところでツインテールにし、瞳には細かい星が飛び交っているやけに口紅が紅く、猫撫で声をあげている。その様子を見て綱吉側の守護者は顔をしかめた。その時、複数の足音とやけに間延びした声が聞こえてきた。

『遅れましたわ』

現れたのは赤と白の装飾品の付いた黒いコートに昼間の服装、それにスニーカーを履いている長身の人物、いおりである。他に三人、それぞれが燕尾服、着物等の戦闘装備のない服を着ていた。光忠、三日月、蛍丸だ。いおりの姿を見た綱吉たちは「ええ!? 伊達さん!??」と各々に反応する。

「てめー守護者だったのかよ!」
「歓迎なのな!」
「極限に誰かわからんぞー!」

極限と叫んだのは笹川了平、晴の守護者だ。

『伊達 いおりや。夕焼の守護者として呼ばれました、そこそこになあ』

へらっと笑った彼女の指には夕焼のボンゴレリングが填まっていた。そもそも守護者とは、ボンゴレファミリーと言うマフィアの幹部のことを指す。

「……チッ」

相手が来たことに関して柄の悪い舌打ちをしたリアナが視線を逸らす。光忠は鋭い目付きのままリアナを睨むが、チェルベッロ機関の女性の声で意識がそちらへ向いた。とりあえずリングに上がれば、ブーツの底がジュッと音をたてる。なるほど高温か、だが不老不死である俺は関係無い。

「では、夕焼のリング、リアナ・メルリアVS伊達 いおり。バトル開始!」

 その声と共に銃がいおりを襲った。

「あはははっ! 夕焼は圧倒的力で敵を圧しきる! それが使命なのよ、私が体現してるわ!」

白煙にまみれても打ち続けるリアナに綱吉達は顔を青くさせた。

「わ、わあああ! あの人一般人だよ!? 死んでない!?」
「お、落ち着いてください10代目! き、きと大丈夫ですよ!」
「獄寺、ちっせえ『つ』が抜けてるのな」
「うるせえ!」

リアナは下婢た笑みで白煙を見つめるが、晴れた煙からはケロリとした顔のいおりが見えたことにみんなが驚く。

「くっ」
『悪いなあ』

もう一発パンといおりに打ち込むリアナだが、いおりは手に持っていた緋斬でそれをビッと切り落とす。

『京都 神鳴流剣士に飛び道具は効かへん』
「「「な、なんだそりゃー!」」」
「おいリボーン、何者だあの女。コラ」
「俺も知らねえが、神鳴流なんて聞いたことねえな」

外がそんなことを話しているとも知らず、いおりはリアナに斬り掛かった。

『行くで! 神鳴流奥義、百花乱れ桜!』
「いやあぁっ!!」

ざぁっと斬撃を食らわせればわざとらしく一歩下がった。どうやら下がって銃撃しようとしたらしいが、いおりがそれを許すはずもなく絶え間なく剣撃は続く。ガギギギギと鋭い攻撃を拳銃で受けながら見てリアナは頬を緩め、短刀を懐から取り出した。それを見ていおりは一歩下がる。

「っ、国俊!!!」
『蛍!!! ……ちっ、お前……それは愛染国俊か?』
「あら、よく知ってるわね。お父様から頂いたのよ」
『ふうん』

リングに上がろうとした蛍丸を他二人が取り押さえる。そうだ、今リングに上がれば俺は失格になるし、何より危険だ。地面の鉄板が熱を持ちすぎて赤く変色してきている。高温なのだ。ブーツの底が溶けきり、ブーツを投げ捨てた。足の裏から煙が出てきたことにみんなはうわっと声をあげ、リアナはにやりと笑う。もう一度言う、いおりは、不死者。

『そろそろ本気で行くかなあ』
「な、今のは本気じゃなかったって訳!?」
『当たり前やろ、あんな温い攻撃』
「は……」

あの高密度の斬撃が、本気じゃない?
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48:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 17:33 ID:9dc




 いおりは足の裏をじゅうじゅうと焼きながら、涼しい顔で駆け回る。それを見て外の連中はあんぐりとした顔で、またはびっくりしたような表情でそれを眺めた。

 まだまだ余裕のある笑みのいおりに対し、リアナはだんだんと表情が焦りに変わって来る。

(やだ! 体力もたない! はやく!)



 そこで、いおりが大振りの縦斬りを食らわせる。それをギリギリで交わしたリアナはカカッと溶けかけのハイヒールを鳴らし、愛染国俊でいおりの鎖骨辺りから腰まで大きく切り裂いた。ザクッ、ぶちぶちと醜い音をたて、いおりの血しぶきが彼女に振り掛かる。ぐらりと、ふらふらになったいおりはたたらを踏んだ。



「あははははっ! どう!? 見た!? 傑作よ! ぶちぶちって! ザクッて! ああ楽しい! ふっふふ! あははは!」



 血しぶきで右腕を濡れそぼらせ、べろりと血液を舐めあげるリアナに綱吉たちが震え上がる。彼女は元々、殺人鬼だ、人の体を切り裂く音が大好きな、イカれた殺人鬼。

 綱吉たちが「うわ!」「あの出血量……」「ひ、人が!?」と騒ぐが、いおりはダン、と地面を踏みしめて『あー、』と唸る。それを見たリアナは驚愕で目を見開いた。手応えはあった、なのになぜ立てる声を出せる? 切り裂かれたところからバラバラと地面に落ちるサラシ、この場にいるものたちはここではじめて彼が彼女だと言うことを知った。それよりも、目の前のリアナが驚いたのは別の理由だった。



「き、傷が……ない…!?」



 普通、怪我をすれば次の瞬間なくなっているなんてあり得ない。それを知っているからこそ、リングの外の刀剣以外はそれに驚いた。



『うわー、ボロボロや……』



 自身の有り様を見てうげー、と顔をしかめるいおり。その顔はすぐに笑みに変わり、上の千切れた、もう不必要な衣類を脱ぎ去った。



「「「「「!!?(なんで脱いだ!? 丸見え……)」」」」」
『光忠ぁ! 任した!』
「え、ええ!??」



 ばっと投げられた衣類に困惑した顔でみんなが見るなか、いおりは『久しぶりやわー、怪我したん。俺の体に傷つけた奴、片手で数えるほどしか居らんのに!』と豪快に笑い、アデアットと唱えれば、先程とほぼ変わらない服へと変身する。やはりそんなもの見たことがなかった彼らは目を見開いた。



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49:ぜんざい◆A.:2016/11/06(日) 17:50 ID:9dc



 そこから『奈落の業火』と『引き裂く大地』の呪文を長々しく唱え、その間も攻撃してくるリアナを避けながらいおりは叫んだ。



『両固定(スタグネット)!! 両掌握(コンプレクシオー)!!』



 そう叫んだのを見て、光忠、三日月が「出た!」と興奮気に声をあげる。それに小さな赤ん坊二人、ボルサリーノを被った赤ん坊と鷹に頭をつかんでもらって飛んでいる赤ん坊が声を掛けた。



「おいお前ら、出た! って何がだ?」
「ん? えー……と」
「ちゃお、俺はリボーン」
「俺はコロネロだ、コラ!」
「僕は燭だ……伊達 光忠。で、出た! って言うのはあるj……いおりちゃんの全力だよ」
「あなや、小さな赤ん坊だな。俺は伊達 三日月だ」
「おう、よろしくな光忠、三日月」



 煙が晴れ、現れたいおりの姿は肌以外が薄いカーマインに輝き、宙に浮いている。



「なんかすげえぞ光忠、コラ」
「あれはね、『術式兵装(プロ・アルマティオーネ)【焔の騎士(イグニスナイトティア)】』だよ。焔の騎士の時は常に炎化してて、攻撃しても効かないし移動はほぼ瞬間移動ってやつ」
「いおりの傷が治っていたのはどうなんだ?」
「我らがある……いおりは不老不死者だ。何せ俺の元ある……、いや、俺が首を飛ばしても掴んで引っ付けるくらいだ。最初は俺もあなや、と呟いたものだな」
「なにそれええええ!」



 遠くから聞いていた綱吉達が近くに来て光忠たちの話を聞いていた。



「あの服が新しく出てきた原理は?」
「んー、俺もよく知んないんだけど、【魔法】って言うらしいよ。俺は世界を救うための魔法世界大魔法大戦には参加してないから。詳しいことはあの二人に聞いたら? 参加してたみたいだし」
「へえ」



 後ろで綱吉達が「魔法世界大魔法大戦ってなにー!!?」とパニックになっていたが、いおりの戦いが終わるまで放置された。



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50:ぜんざい◆A.:2016/11/07(月) 23:15 ID:T0I

結果はいおりの圧勝に終わった。いおりは完成した指輪を填め、リングを出れば綱吉側の守護者に囲まれ、変身したのはどんな魔法だとか傷が治ってたのは本当に不死だからなのかと問い詰められる。いおりはそれに丁寧に答えながら、呆れた様に光忠達を見た。

『お前らなぁ、ホイホイ人に話したらあかんことやねんで? 魔法の事。今やからエエけど、あの死ぬかと思った冒険の前やったら俺一般人にバレたらおこじょにされるとこやねんから』
「ごめんねいおりちゃん」
「あなや、それは知らんかったな。はっはっは」
『三日月お前今ここで緋斬呼んだろか』
「三日月ってば緋斬に頭上がんないもんね」
「愛ゆえだな、はっはっは!」
『お前マジ首ったけな』

そこまで会話したところで、リボーンがいおりに質問する。

「途中で叫んだ『アデアット』ってラテン語で“来れ”って意味だよな、あれはいったいなんなんだ? 俺も見たことがねえ」
『ああ、あれはアーティファクトを呼ぶ言葉や。主とする人と仮契約(パクティオー)すれば出てくんねん』

ピッと長方形のカードを手に持ち、自分の武器を持っている絵が乗るオモテを見せれば、おお……と声が上がる。すれば、コロネロが主とする相手は誰だと聞いてきた。

『んー、ざっくり言うと、魔法世界大魔法大戦トンデモ冒険の中心人物やな。世界滅亡を阻止した世界の英雄我らが味方、そんで女子中学校英語専攻で担任クラスを持つイギリスのウェールズから来たネギ先生や』
「す、スペックがやばいですね……」
『せやろ? そう思うやろ綱吉くん! ところがどっこい、その先生なあ、その時まだ10歳やねん、フルネームはネギ・スプリングフィールド。お父さんはネギ君が生まれる二十年前に一回世界救ってる』
「「「「「はぁ!!!?」」」」」
『せやろ? 驚くやろ!? 最初はな? すぐに泣いて頼りなくて周りに流される典型的な気弱な少年やってん、でもそっから自分の生徒を守りたくて、300億ドルの賞金首で悪の大魔法使いがその生徒やったから、その人に弟子入りして、地獄のような訓練して強なってん。あの修業はネギくん来る前に一通り受けたことあんねんけど、覚悟なかったら即死やで。雪山に全裸で放り出されたり、砂漠に着の身着のまま放り出されて一週間自給自足、死ぬ。まあそっから魔法世界に行って、俺と同じ『闇の魔法(マギアエレベア)』を覚えて、世界の英雄になったんや。なにぶん常に紳士的態度でモテる子やったからなあ、自分のクラスの生徒ほぼ全員からアプローチ受けて、とパクティオーしとったな。生徒に裸で迫られるとか、ラッキースケベがやけに多かった和。あれからもう七年たってるから今17歳やな、いやぁつい先日同窓会してんよなぁ』
「若い! 若すぎるよ英雄になるのが! ラッキースケベって何!? 迫られるって何!?」
「才能と運のあるやつがそういう大物になるんだぜ沢田、コラ!」
「いおりが仮契約したのはいつなんだ?」
『今からちょうど七年やな、俺が17の時や。光忠や三日月は俺とやけど七年前。蛍とはつい先日や』

その言葉に一斉に三人を見る他の人。三人はパクティオーカードを手に苦笑、または穏やかに笑う。そして、リボーンが核心を突いてきた。

「それで、パクティオーってのはどうやりゃ出来るんだ?」
『パクティオー用魔法陣書いて、キス』
「……キス?」
「キスってあれか? コラ」
『そのキスや』
「……えええええ!!!?」
「お、驚きなのな……」
「はあっ!? 待てよこの女、合計四人と……!?」
『いや、もう一人悪の大魔法使いとした』
「五人ーーーー!!?」
「き、極限に……うおおおおおお!? 訳が分からん!」
『……待ちや、俺がそんな風に言われるんは心外や。ネギ君は10歳ながらに自分のクラスの15歳の女子中学生30人(幽霊含むロボット含む(全員は31人))プラス魔法世界の皇女と世界の敵としてるから計32人とやぞ!? 親友の小太郎君も10歳でネギの生徒の一人としてるけど、その後結婚しとるからまだマシや! ネギ君はその32人の女の子ほっぽってお父さんの跡を継ぐとか言うてしばらく両全世界各国飛び回っとってんからな!? 最終的には一人に決めたけど!』
「なにそれ女の敵!」

びっくりして振り向けば、ボロボロのリアナが鬼気迫る表情でプンプン怒っていた。バックには話を聞きに来ていたヴァリアーの皆さんが。すると、光忠にいおりは呼び止められた。

51:ぜんざい◆A.:2016/11/08(火) 22:05 ID:T0I




「いおりちゃん! 本命がここから東に現れたみたいだよ!」



 本命とは、恐らく時間遡行軍のことだろう、大方脳内にこんのすけの声が届いたか、刀剣としての能力で気づいたに違いない。



『なら行くかぁ、ここら辺はまだ現代やから敵もそんな強くないはずや』
「池田屋は強いからなあ」
「“けびいし”来たらどーすんの?」
『俺の緋斬で奥義を出すか、“焔の斬剣”で猛攻撃や。行くで!』
「相変わらずかっこよく決まってるね」
「どれ、この老いぼれも敵を斬ろう」
「俺の大太刀で一発だし!」



 偵察と言う形で光忠が様子を見に行った。光忠を含めた三人はアデアットしていつもの戦闘服へとなり変わっている。すると、蛍丸がいおりに口を開いた。



「ねえいおり。あそこの女の子の持ってる国俊。来派として、俺の相棒は返して欲しい」
『や、そうやでリアナちゃん』
「名残惜しいわ」
『せやろな。無理にとる気は無いし、気にせんといて』
「でもでも主! それで良いの!? 鍛刀は失敗しかしたことない、どろっぷって事もしないんでしょ、チャンスだよ! 新しい仲間が増えるよ! もう無いかも知れないよ!」
『愛染国俊さん下さい』



 バッと頭を下げたいおり。先程までと言っていたことがまるで違う。びっくりするほど綺麗な手のひら返しだった。リアナは渋々それを承諾し、いおりへ愛染を引き渡すと無言のプレッシャーを掛けてくる蛍丸へと横流しにすれば、「国俊ー!」と嬉しそうに笑っている。大太刀と言えど蛍丸の見た目は子供、やはり身内が居なくて心細かったのだろう、このときばかりは自分のドロップと鍛刀運の無さを呪った。光忠と三日月もこんな思いならなおさら申し訳なかった。
 そこで、リボーンが疑問を叩きつけた。



「さっきから聞いてたら鍛刀やドロップ、主と聞こえたな、そこの蛍も愛染国俊で喜んでるみてえだし……」
「全部答えてもらうぜ、コラ!」
『うぃっす』



 二人の赤ん坊の威圧感にやられ、洗いざらい吐いてしまった。隣で蛍丸が俺の服の裾を握りしめてるのが唯一の救いだった、ありがとうメシアよ我が天使よ。ところでそこの三日月のお爺さんはなに呑気に茶をすすっているのかな? 湯呑みはどっから出したんや……。



**

 その後、何事もなく時間遡行軍を倒し、本陣までたどり着いて帰ってきた。とりあえず指令は果たしたので元の本丸へと帰ることに。
 もちろん、俺は夕焼の守護者になってしまったので一ヶ月に一回この世界に来なければならない。なので計二回、現世へ戻るのだ。
 沢田達に別れを告げて帰ってきた元の時代の本丸で、愛染を顕現してみれば「俺は__」と愛染が自己紹介をし始めたところへ蛍丸が飛び付きその場は一気に和んだ、可愛すぎか。それから数日、今日も本丸は人数が少ないながら元気です。



【完】


 長編終了しました! いやぁ長かった長かった。とりあえず楽しくかけたのでよかったです。ちょくちょく番外編は書きます。これからは多分短編メインで。
 とりあえず次の小説内容はこれの番外編です。



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52:ぜんざい◆A.:2016/11/08(火) 22:48 ID:T0I

番外編【燭台切と主が恋人になるまで】

 今日も今日とて人数の少ない本丸だが、とても平和だ。REBORN界へ行ったあとは大変だった。雲雀恭弥は戦え戦えと煩いし、10年後に行って疲れたし、継承式とかアルコバレーノ編とか大変だったんだからな! なんだよネオ・ボンゴレの初代って! ボンゴレ新しくしたのかよ面白いことしてくれるよ! とは言え、それももう20年以上前になるのだが。あれからかなり時間が経っているのだ、久しぶりに会ったみんなからは「本当に不老不死なんだな」と実感された。信じてなかったんかい。
 とまぁ、何だかんだ充実した毎日を送っています。少し変わった事と言えば、緋斬が三日月に惹かれ始めていると言うことだけだ。と言うか、20年と7年掛けてやっと惹かれ始めるてどんなスローペース恋愛や、じれったいわ! なんや? とある時期から三日月が盛大に緋斬に甘え始めたからか? そうなのか?
 どんなわけかは知らないが、そんな訳で縁側に居ます。ただいま光忠と庭を駆け回る愛染と蛍丸と鶴丸を眺めている、光忠といるのは近侍だからだ、この本丸に来てから一度も変えたことはない。まあ、20年も経てば刀剣も増えると言うわけで、仲間が一人増えました。20年で一人かよとか言うな、血眼で誰でもいいからと探し回ったんだぞ。
 やって来たのはそう、さっき言った鶴丸国永さ! あの驚き大好き真っ白爺さんだ! 生憎短刀は来なかった。だが、驚きを提供してくれているので暇しない! 楽しい! うおぉぉお!

「最近楽しそうだね、主」
『せやな、ちょっとずつやけど仲間も増えてきたしな』
「鶴さんが来て一気に賑やかになったよねえ、壁に穴を開けたのには驚いたよ」
『ホンマな』

 二人でその時を思い浮かべれば、自然と遠い目になってしまう。大変だったんだよ、色々と。

『最初はお前と三日月だけやったんよなあ』
「僕は主に着いていけてすごく嬉しかったのを覚えてるよ」
『やめや、照れるやろ』

 ふいっと視線を逸らし後ろ髪を掻く、本当に照れてしまったのだ、情けない。光忠が穏やかに笑って居るのが視界に入ってやけに気恥ずかしくなってしまい、顔ごと光忠から背ける。これだからイケメンは……。

「いおりちゃん」

 久しぶりに呼ばれた真名に反応して前を向いた。もう10年ほど彼らの口から俺の真名を聞いたことがなかったのでびっくりだ。光忠の顔を見れば、少し口をもごもごしたあと、くしゃりとはにかんだ。

「僕はね、君にすごく感謝してるんだ。僕をあの地獄から救ってくれた……頭を撫でてくれたっていうことに、こんな気持ちにさせてくれることに」
『……?』
「僕は今、君と居れて幸せだよ」

 満足気に笑った光忠につられてこちらも笑う。光忠は俺に向かい合う様に腰を置き直し、俺の目を見てまっすぐ言葉を紡ぐ。

「君の近侍で僕は今、君の隣にいるけど、近侍の時じゃなくても、ずっと一緒に居たい、隣に居たい側に居たい生涯寄り添っていきたい。……僕は君が好きだよ」

 笑って俺の手を握る光忠の言葉に一気に顔に熱が集まるのが分かった。女の子の「好きです、付き合ってください!」と言う淡白な告白には慣れている。だが、俺は異性から好意を寄せられたことが一度もないのだ、ましてこんなにはっきりと想っていた事を真っ直ぐに。無理もない。わたわたしてる俺を前に、光忠は言葉を放った。

「僕と、結婚を前提としたお付き合いをしてください」

 微笑みながら告げられた心のこもったコレに、俺はふっと冷静になり、笑ってコクリと頷いた。

『……はい』



.

53:ぜんざい◆A.:2016/11/09(水) 23:37 ID:T0I

番外編【緋斬が三日月に少し気を許した時】上記の番外編と完結時から5年前の話。
緋斬side

刀として1000年、人の身を主様から受けて……鬱陶しい夫(不本意)ができて25年。こっち、緋斬は今日も今日とて三日月の爺の相手や。確かに、歳で言えばこっちも婆やけど。生まれたときから今の主様に渡るまでずっと京都に居たからか、特有の訛りが抜けないが仕方ない。容姿は主様に遠く及ばないが、そこそこだと自負している。なにせこっちを初めて顕現したのが主様なので、似てしまったのだ。割愛申す。
最近主様は男装をお止めになった。いや、お止めになったと言うか、本丸の時はサラシを巻かず……相変わらずかっこよくてクールな服を着るが、ズボンが短くなったのだ。それと、眼鏡を掛け始めている。とても女らしくなった、勇ましく男勝りな性格は変わって居ないが。(これを切っ掛けに5年後、燭台切と主様が婚約するとは思わなかった)不老不死になる前、元々主様は目が悪くて今までコンタクトだったらしい。眼鏡を掛けてどちらがどうなのか似すぎていて分からないと鶴丸に言われたのでこっちが眼鏡を外した、元々伊達眼鏡だ。
問題は、最近やけに甘えたになったコイツ、三日月宗近だ。主様の最初の任務、ブラック本丸潰しに言ったときのそこの審神者が近侍にしていたのがコイツで、その時は本当に人の形を取った意味が見いだせない、と言う顔をしていた。
主様も気付かなかったこっちに気付き、口には出さず脳内会話をしていればなぜか主様に三日月が着いていきたいと願い、了承されれば三日月の勝ち、拒否ならこっちの勝ちと言う無謀にも程がある賭けをしてしまったのだ。主様が助けを求める者を断ると言う気持ちをまだ持って居なかったばっかりに。アイツが勝てばこっちがコイツの妻になり、こっちが勝てば二度と姿を表さないと言う賭けに負けてしまったばっかりに。
とりあえず、話を戻そう。そう、憎くも賭けに勝った三日月はすごく甘えたになっている。現に今も縁側に腰を掛けて団子を食していた座っていたこっちの太ももに頭を乗っけて寝始めたのだ。コイツ……。内番服の都合上、こっちは今『みにすかーと』なるものだ、生足晒してるのである。皮肉にもコイツの柔らかな髪が当たってくすぐったい。

「どけ三日月」
「あなや? 俺は眠いぞ?」
「眠いんやったら布団行けや……」
「緋斬のももが良いのだ、柔い」
「色惚け爺め……」
「俺は来るもの拒まず去るもの追わずだ。いや、緋斬は当てはまらんな。緋斬のみ来るのは拒まんが去るのは絶対許さん」

へらっと笑う三日月に呆れた顔しか出来ない。天下五剣で最も美しいと言われる刀が、こっちの様なちんちくりんにここまで執着しベタ惚れなのか全く理解できない。まったく、天下五剣がそんな気の抜けた顔を見せるなよ。

「そんなへらっと笑うなや、天下五剣」
「天下五剣、そんなもの肩書きでしかないな、緋斬が居ればそれでいい」

こっちはそれを鼻で軽く笑い飛ばし、三日月の頭に巻き付けてあるバンダナを緩く引っ張って外した。その際でも慈愛に満ちたと言うかのほほんとした笑顔で居るものだから腹が立って三日月の目元をバンダナで押さえつける。

「ふむ、お前の顔が見えないぞ」
「見んでエエわボケ、寝とけ」
「なんだ、優しいな。なら、遠慮なく寝させて貰うとするか」
「口角が上がっとる……気に入らん」

ふとそんな事を呟き、バンダナは彼の目に押し付けたまま、自身の唇を迷いなく三日月の唇に押し付けた。そこで我に変える。しまった、完全に無意識だった。素早くそれを離して黙るが、それを許さないのが三日月と言う刀だ。

「なんだ、口元に柔い物が当たったぞ、妙に甘かった。覚えのある甘さだ」
「っ……」
「はて、なんだったか」
「ん……?」
「……思い出したぞ! 団子だ! どうりで柔く甘い訳だな」

相変わらずふにゃっと笑う三日月に、本当にバンダナで目を押さえつけていて良かったと溜め息を吐く。きっと今のこっちの顔は見るに耐えないぐらい、きっと赤い。口を開けて団子を待つ三日月にとりあえず団子をひとつ突っ込み、様子を見る。もごもご動く頬の様子を見るに完全に団子と勘違いしてくれたらしい。

「旨いんか」
「あぁ旨いな」
「ふっ……」
「緋斬、次だ。もうひとつ寄越せ」

そういう口にもう一回やってやった。

54:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 02:03 ID:T0I

番外編【鶴丸と仮契約したときの話】


 鶴丸がやって来て数日、もう人の身にも慣れただろうと言うことで、新入り刀剣が来る度やる恒例行事をするべく、三日月が鶴丸を呼び出した。仮契約陣はこの本丸敷地を覆うように常に大きく描いてあるのでいつでも自由なのだが、なぜか毎回大広間でやることになっている。



「なんだなんだ? 三日月、お前が面白いものを見せてやるから、なんて珍しいじゃないか」
「そうか? それより驚き好きのお前もきっと驚くものを期待してみてはどうだ?」
「期待しておくぜ!」



 ハードル上げんな。とここで恒例行事を聞き付けてきた来派二人と光忠が参戦し、鶴丸は首をかしげた。



『鶴丸、今から仮契約や。ちょい、蛍丸と国俊来てや。お前のカード見せたって』
「おう!」
「ほら、鶴さん。これが俺の仮契約カードだよ」
「なんだ、綺麗な絵だな。これが三日月の言ってた驚くものか? そこまでじゃないか?」



 そう首をかしげる鶴丸にこういうのは実物を見せた方が良いだろうと国俊に目線を送り、国俊が「アデアット」と口にする。するとそのカードは国俊本体になり代わり、もといた場所に鎮座する。もちろん国俊は内番服だったので、服装も戦闘服へ変化していた。それに目を輝かせたのが鶴丸。



「なんだ!? 一体何が起こった!? このカードがあれば出来るのか!? みんな持ってるのか!?」
『おん、せや。今から鶴丸のカード作るから、大人しくしとって』



 きょとん、とする鶴丸にそのカードを出す条件がキスだと伝えればなんだそんなことかと軽く流した。



『ほんじゃ、やるで』
「いつでもこい!」



**


 結果、鶴丸とパクティオーは成功した。鶴丸はひゃっほーとカードを作ったあと、子供の様に蛍丸と国俊と鬼ごっこを始めて去ってしまっている。



「一段落だな」
「無事終わって良かったっすわ」
『せや、緋斬。お前三日月と仮契約しとくか?』
「主様の命令でも断らせてもらいますわ」
「俺は良いと思うがな」



 そう言った三日月はたった今拒否した緋斬の腕を引き、強引に仮契約を済ませてしまった。緋斬のみカードを出していなかったので安心っちゃ安心してますが。だって光忠が女の子同士は駄目だって言うんだもん。なめないで!(ガジガジ)



『……あ仮契約が強すぎるからなかなか新しい刀剣が来ーへんのやろか』
「……可能性は無いとは言い切れないよね!」
『むっちゃエエ笑顔や……』
「お前ふざけんなマジでぶっつぶす三日月ィ!!!」
「おお怖い、たかが口づけ、たかが仮契約だろう」
「こっちはお前とするぐらいなら主様が良かったわ!」
『え、なんで俺引き合いに出されとん?』



.

55:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 22:06 ID:T0I

if【とうらぶ×ネギま! 主が飛ばされた世界がとうらぶではなくre!だったら】

ネギ君たちの世界から別世界に飛ばされて数日。飛ばされた家にて生活しているが、俺は若返りトリップなるものをしてしまったらしい。俺の戸籍がなぜか作ってあって、見てみれば年齢が中学三年生なのだ、見た目は少し身長が小さくなって180ぴったり(2cmしか縮んでねーよ!)。なぜ? とか思ったけど中学生ライフをもう一度エンジョイしようかと転校生として近くの中学へ編入した。ここは並盛町、言わずもがな家庭教師ヒットマンREBONの世界だ。並盛中学三年生て……雲雀と同じ学年やん、アイツ今何歳か知らんけど。

ちゅーわけで。

『伊達いおりですわぁ、よろしゅう』

背中に緋斬の入った竹刀袋を背負い、クラスを前にへらっと笑って見ると「きゃあああああ」「いけめええええん」と女子が騒ぎ始めた。なぜかこの世界でも校長先生から特例で男子制服を着ても良いことになったから男子制服ですけど、とりあえず訂正するか。

『えーと、学校側から特例で男子制服着さしてもらってんねんけど、こう見えて女やで』

そう言えばそこかしこから上がる驚きの声。3-Aと同じぐらい喧しいなここ。

**

色々あって昼休み、顔が男やけど性別が女やからか声が掛けやすかったらしくクラスのみんなとも仲良くなって昼食に誘われた。今日はとりあえず一人で食べたかったので今日だけ血眼で断り、屋上の給水タンクの上で昼食を取っていた。

『(流石俺。うまかった)』

褒めてくれる子がこの世界には居ないので自画自賛して、虚しくなる。あーだのうーだの唸りをあげながらタンクの上に寝そべりゴロゴロと寝返りを打つ。ちょうど仰向けになったのでぴたりと動きを止めて、タンクにおいていた緋斬が入った竹刀袋をたぐり寄せ、中からパクティオーカードを取り出す。空に掲げてしばらくカードに乗った自分の絵を眺めた。あれから、念話(テレパティア)をしてみたが応答なし、物理的倫理的距離が離れすぎているせいだろうか。

『一人になるとあの子等の騒がしいのレベルの酷さが身に染みるわ……うるさかったんやな』

あの喧しさになれてしまえば、一人になると寂しくなるなあ。とか内心思いながら、先程扉が開いた様な気配がしたので下を見ると、雲雀さんが鋭い目付きで睨んでるじゃないですかやだー。

「君、僕に気付いてたのに一人言続けてたね? なんで?」
『第一声それなん?』

タンクから身を乗り出してそう言えば彼の眉間に皺が寄る。『シワなるでー』と自分の眉間を押さえながら告げれば、「降りてきなよ、噛み殺してあげる」と雲雀君が言うので、すとんと竹刀袋を持って着地した。その瞬間仕込みトンファーで襲ってきたので袋に入ったままの緋斬でそれを受け流した。

『お前身長ちっちゃいなー、中三か?』
「僕は今っ、中二だよっ」
『俺より一個したなんかー。腕につけとるのは……風紀委員の? ああ、噂の委員長さんか』
「わお、僕のことっ、知らないやつなんていたんだね……!!」
『俺今日転校してきたからなぁ』

どかどかと激しい攻撃をしてくる雲雀君のトンファーを受けるか捌くか避けるかして雲雀を眺める。すると、雲雀はいきなり攻撃をやめてトンファーを下ろした。

「僕が攻撃してるのに、そんなに余裕そうに避けるやつは初めてだよ」
『実際余裕やしな』
「……君、ムカつく」
『本音や』

そうして俺はどかりと地面に座り込んだ雲雀の隣に腰掛けて、『俺伊達いおりなー』と告げれば彼はああ、と声を出し、資料で読んだと返してくる。写真まで見てなかったようだ。

「でも伊達いおりは女だと書いてあったよ」
『俺は女や女』
「……ふぅん。僕は雲雀恭弥、知っての通り風紀委員だよ」
『……風紀委員なー、面白そうやなぁ』

ふあ、とあくびしながら言えば「君くらい強ければ歓迎してあげるよ。これでいつでも戦える」と雲雀は言った。あれ? 俺、雲雀君に気に入られた系のやつ?

『せやな、じゃあ俺今日から風紀委員っちゅーことで』
「なら卒業するのは僕と同じ時期だよ」
『俺お前が卒業するて言わな卒業できへんのか』
「嫌なのかい?」
『別に。他にやることないし。よろしゅーひばりん』
「それやめて」
『きょうやん』
「やっぱり噛み殺す!」

.

56:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 22:29 ID:T0I


 翌日、クラスに風紀委員になったからと伝えて応接室に向かう。昨日あのあと一戦してケータイの番組を交換させられた。そして今朝、応接室に来いと連絡があったので現在向かっている。



『うぇーい』



 応接室にて、扉をそんな掛け声と共にすぱーんと開けばトンファーが眼前に迫っていた。俺は焦る様子もなくトンファーを掴んで「よいしょー」と上に持ち上げ、誰だよとか思いながら顔を見れば雲雀君だった。おはようと声を掛ける暇もなく雲雀からの第二撃目。俺は古罪に教えてもらった太極拳か八極拳、八卦掌を用いてトンファーをシャツの裾を肘ほどまで捲った腕に絡めとり、掌詆で弾き飛ばし、桜華崩拳の様に雲雀に一発入れた。最後の攻撃をぎりぎり避けた雲雀はむうと膨れてキャスター付きの椅子にどっかり腰を下ろした。俺ははっはっはと笑ってずれた竹刀袋を背負い直し、中を見回した。あらまあ、学ラン着たリーゼンが大勢。みんながみんな目を見開いている。



「委員長、そちらは」
「草壁か。彼女は僕の任意で風紀委員に入れた伊達いおりだよ」
『どぉもー、こんな見た目しとるけど女な伊達いおりですわー』



 へらっと笑えば女と言うワードにざわめく室内。雲雀は気にしてないように俺に学ランとそのズボンを渡してきた。着ろって事かな。一旦廊下に出て、素早くブレザーを脱ぎ、学ランを腰に巻いたあと、ズボンは瞬時に脱ぎ代えた。これぞ伊達家に代々伝わる秘技、早着替え!

 10秒もたたずに『うぇーい』とか言いながら中に入ればそれはそれで早すぎると驚かれた。



.

57:ぜんざい◆A.:2016/11/11(金) 22:45 ID:T0I

とりあえず捲っているシャツの左の二の腕辺りに風紀と書かれた布を取り付け、改めてよろしくと言うことになった。



「副委員長は今まで通り草壁ね」
「わかりました」
「いおりは補佐」
『ひばりんマジで?』
「噛み殺す!」
『きょうやん』
「僕は一度やめろって言ったよ」



 俺が雲雀をひばりん、きょうやんと呼んだのに委員の人達が皆一斉に目を剥いた。目の前で委員長がトンファーで先程委員に入った奴に攻撃を仕掛けてそれを余裕の笑みでひょいひょい避ける新参者が信じられないんだろう。


「今日はもう解散」



 そう言った雲雀に風紀委員は散っていった。俺もそろそろ屋上に、って言ったら「君は僕と戦うの」と睨まれた。まあなんだかんだ言って雲雀は掠り傷も俺に負わせてないし、俺は避けるばかりで攻撃してないし悔しいんだろうな。



「さっき攻撃してこないの? つまらないんだけど」
『骨折れてもエエ言うんやったら』
「ムカつく!」
「ふはは」
「〜〜!」



 ひゅんひゅんと的確に顔ばかり狙ってくる雲雀。俺が避けるために一歩下がれば先程まで俺が居たところに正確にトンファーが走ってるから実力は悪くない。ただ、俺の動体視力が良すぎるのだ。



『そんなん掠りもせんなあ』
「……」



 余裕の笑みでそう言えば、トンファーからカチッと音がして長い方の後ろから鎖がじゃらりと姿を表した。俺はあ、これやべえとか思って『しゃーないなー』と髪を掻く。雲雀はにやりと笑った。雲雀の思い通りになるのは癪だが仕方ない。



『俺もゆるーく攻撃しますかね』
「ゆるくなんだ」
『怪我さしても困るねん』
「なめてんの?」



.

58:ぜんざい◆A.:2016/11/12(土) 17:04 ID:T0I



 あれから一年、わーい卒業だー。とか言ってたのに学校側から卒業はするなと取り消された。あのときの絶望した俺の顔を教師たちは忘れないだろう。それもこれも雲雀が卒業せずもう一回三年やれなんて言うからだ。



**



「プリントにあるように、これが二学期の委員会の部屋割りです」



 委員会会議にて。今年の部屋割りをを生徒会長が発表する。それに一人の女子生徒が「えーっ何これ!? 応接室使う委員会ある! ずるい! どこよ!」と声をあげた。隣の男子が「風紀委員だぞ!」と耳打ちする。



「なにか問題でもある?」



 そう聞いた雲雀に先程の女子生徒は「いえ! ありません! すっ、すいません雲雀さん!」と勢いよく頭を下げた。雲雀は「じゃー続けてよ」告げる雲雀にと俺は隣で苦笑いしながら『ほら、頭上げ』と女子生徒に告げて雲雀の足をぎゅり、と踏んだ。雲雀は無言で睨み付けてきたが俺はへらっと笑ってやった。そこで緑化委員会なるものが口を出す。



「でもおかしくね? 応接室を委員会で使うってのは」
「のっちもそー思う?」
「インボー感じちゃうよ」



 俺は苦笑いしながら雲雀を見やる。雲雀は「それはいおりに言って」と放り投げられた。それを聞いて緑化委員会が「!? 伊達さん!?」と驚きに目を見開いた。俺は笑顔のまま視線と顔を背け、雲雀は溜め息を吐いてこう続ける。



「君達は仲良し委員会? 代表は各委員会二人のはずだけど……」



 それから。中庭には先程の緑化委員会の三人がぼこぼこにされて倒れていた。傍らには学ランを着た風紀委員が二人ほど居る。



「ヒバリと伊達さんに楯突いたのが悪いんじゃない、二人の前で群れたからこうなったんだ」



 風紀委員の二人はそう言い残し、三人を放置して言ってしまった。それを三階の応接室の窓辺で眺めていた俺は特に何も言わず、雲雀は「ふあ〜ぁ」とあくびをした。どうせ見てるんだろ? と言う意味を込め、ここから見える歯科の大きな看板に目をやり、へらっと笑って手を振った。返ってくる様子は無かったが、雲雀から「なにしてんの」と可哀想なものを見る目でトンファーを投げてきた。それをひょいと避け、『まだまだやな』とトンファーを拾い、雲雀の定位置になっている席の机に置いた。



**



 昼休み、雲雀が持たれかかる黒革のソファに寝転がって顔に漫画を開いて乗せ、頭の後ろで足を組みながらぐうすか寝ていれば、がらりと言う扉の開かれる音で目が覚めた。雲雀の「君、誰?」と言う発言を聞いてツナ達が来たのかと観戦するべく寝たフリだ。生憎俺は呼吸しかしておらず、動いてないので気付いてないだろう。「なんだ、コイツ」と声が聞こえ、獄寺も参戦か。とか思いながら会話を聞く。



「風紀委員長の前では煙草消してくれる? ま、どちらにしろただでは返さないけど」
「んだとてめー!!」
「消せ」
「なんだコイツ」
「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると、咬み殺したくなる」
「へ〜、初めて入るよ応接室なんて」
「待てツナ!!」
「一匹」
「のやろぉ、ぶっ殺す!!」



 少々不穏になってきたのでむくりと起き上がり、『うるさいでー、寝れへんやんけー』と間延びした声を出して止めに入るけど聞く耳を持っていない彼らはやめてくれない。むむう。



「二匹」



 直ぐ様獄寺を沈める雲雀に半ば呆れながら、その後山本と乱戦、右手を庇ってるだの言い速攻沈めた。雲雀に武器なしって無理だろ。

59:ぜんざい◆A.:2016/11/14(月) 23:28 ID:Feg

ifはちょこちょこ出てきます。ここからは【とうらぶ×ネギま!】の続編です! 良いネタを思い付きました、そこそこに押さえるつもりですが「あ、これだめだわ」と読んでいくなかで思った方はストップしてください。最終的にはきっとハッピーエンド。捏造てんこ盛りです。
 それでも許せる方向けです!


**

 あれから五十年が経った。俺、伊達いおりはすでに92歳になりましたが、見た目17歳で頑張っています。かつての仲間も粗方居なくなってしまった様で、最近は向こうの世界じゃエヴァぐらいしか話し相手が居ないから少し寂しいと思っている。

 今日も今日とて実年齢がもうじき100になる俺は、少数精鋭ながら最強の本丸の名を好き勝手している。まあ性格は全然変わってなくて、いつも通りの俺だけど。
 あれから五十年経つ今でも、新しい刀剣が全く来ない、なにこれどういうこと。
 最近の俺達の本丸の仕事はブラック本丸の調査や壊滅といったものが多い。古参だから頼られているのか、それとも使い勝手の良い駒として見られているのか、ううむ。
 審神者と政府も今、俺に対して三つに派閥が割れていると言う。
 ひとつ目は『俺はよく頑張ったから審神者退職して俺の刀剣を別本丸に移そう!』と言う穏便に見えて過激派。俺の刀剣が強いから欲しいと言う欲が丸見えだ。アーティファクトの事もいつバレるか分からないので最近は使用禁止にしている。まあ鈍っちゃ困るから時々道場で使わせたりしてるけど。
 二つ目はひとつ目に対抗して『俺の意思を尊重しよう』と言う俺の味方といって良い身内派閥。俺の本丸担当の人もそこの派閥なので、もう味方の人達だ。この派閥は人数が多く、優しいけれど政府に付いて古参な方々が多い、政府のトップもこの派閥所属だ。時々会合として仲良くさせてもらっているいい人たちだ。
 三つ目が『どっちでも構わないですよ』派閥の方々。言わば中立、どちらにも味方はしない人々だ。理由は単に面倒と言う人が一番多いだろう。

 俺としては俺の刀剣たちと離れたくないし、出来ればずっと一緒にやっていきたい。隣の緋斬にそう言えば、「こっちはどんな状況でも主様と一緒に居ります」と凛とした視線を頂きながら言われてしまった。おい旦那どうした旦那。



「主ー! 嫌な驚きだ! またブラック本丸の退治らしいぜー!」



 庭の方から駆けてきたのは真っ白い人物、鶴丸国永だ。コイツマジ細い。鶴丸が言うに、今回は夜伽が酷い本丸らしい。……ちょっと殺しにいきますか。大事な刀剣になにさらしとんじゃ、って言うのが本音や。
 そこの本丸の詳細は、まあこれはブラック本丸になる確率高いわ、となる本丸でして。審神者は男、顕現する刀剣の付喪神は全員刀剣女士として現れるらしい。なるほど。亜種か、そこの審神者の霊力のせいか。
 どちらともつかないが、これを聞いてちんたらしていられない。最近は夜伽の無いブラック本丸ばかりで気が抜けていた。そう、減らないのだ、ブラック本丸が。俺があれほど厳重に監視してくれと頼んだのに。



「……これは行かなくちゃ、こんな本丸から救ってあげないと」
『さすが蛍丸、気持ちはみんな一緒や』



 大広間に俺の刀剣六振りを集め、事情を説明すれば怒りに瞳を染める蛍丸がそう呟いた。
 みんな元は同じ刀剣なのだ、苦しいに決まっているだろう。



『出発は五分後や! もう行けるんやったら行くで!』
「準備はそれほど要りませんわ、すぐ行きましょ主様」
「俺も行けるぜ! な、蛍丸!」
「国俊の言う通り、いつでも行けるよ」
「助けに来たと告げて、あっと驚かせてやろう!」
「この爺も同胞を救いに行こうか」
「みんな準備は要らないみたいだよ。行こうか、主」



 俺達は早速その本丸へ赴くために腰をあげた。



.

60:ぜんざい◆A.:2016/11/16(水) 23:33 ID:Feg


 簡易ゲートで扉を開き、自身の本丸から外に出ればそこは例の仕事の本丸へと繋がっていた。仕事の件なら繋げてくれるらしい、どこでもドアかよ。
 すれば目の前に広がるのは荒れ果てた土地! 埃を被った本丸! 池の水は渇れて木々も枯れてとにかく全て枯れている庭! 空気も悪い! 何と言うことだ!

 隣の光忠が、ぎゅうと聞こえるほどの力で握り拳をつくる。反対の隣を見れば三日月も唇を微かに噛んで顔を歪めていた。手は緋斬の手をキツく握っている、緋斬は何も言わなかった。光忠と三日月の二振りは自分のもといたところ以外のブラック本丸も、この中で一番多く見てきた。実際自分もされたことがあるからこそ、相手を想えば尚のこと心苦しいのだろう。それに、毎回あの時の、二振りが俺に着いていきたいと言う前の本丸を嫌と言う程に思い出しているに違いない。

 歪められた顔を見ていれば刹那、光忠の背中がばしん、続いて三日月の背からもばしんと大きな音がした。光忠が驚いて振り返れば彼の後ろにはふんっと自慢気にふんぞり返る小さい影が二つとその背後に頭が飛び出た影が一つ、国俊と蛍丸、鶴丸だ。三日月は涙目で緋斬を見つめている。恐らく叩いたのは彼らだろう。



「……お前に、そんな顔似合わへん。三日月はいっつもめぽけぽけした奴やろ」
「……あぁ。……さて、どうしようか主、我が君が格好いいんだ」
『知らん、幸せに悶えてろ』



 何このリア充、何この夫婦。なにしれっとしてんの緋斬。ごめんなさいそんなのどうでもいいわ……あかぎり超かっこいいいいいいいい!
 隣の光忠を見てみれば、ふにゃりと笑う。後ろの蛍丸と国俊を両腕で抱え込む鶴丸に同じようにされたのだろう、どこか安堵したように笑っていた。



『いざ出陣!』
「「「「「「おう!」」」」」」



 そんな掛け声と共に三手に別れて散る。俺は今回鶴丸と一緒だ。毎回俺がいる組とは別のもう二組はその本丸の刀剣の保護に向かう、もちろん俺ともう一人は審神者を捕らえるか、抵抗するなら殺すか。どちらにせよこの本丸の門の前ではブラック本丸取締部署の車が止まっているので逃げられはしない。



『鶴とパートナーになるんは久しぶりやな』
「ああ! 不謹慎だが、こういう緊張感も悪くねえな!」
『同意や、やけど気ぃ抜きなや』



 審神者のいる部屋の前で先程まで疾風ように駆け抜けてきた足を停止し、二人で顔を見合わせて不適で不敵な笑みを同時に浮かべて俺と鶴丸は襖を蹴り飛ばした。



.

61:ぜんざい◆A.:2016/11/17(木) 23:27 ID:Feg

光忠side

 同時刻、僕と緋斬ちゃんは縁側を駆け抜けていた。走る途中、襖を開けても開けても誰もいない。大広間に居るのだろうか、緋斬ちゃんに視線を送れば彼女も同じことを考えていたのかコクリとうなずく。
 そのまま大広間へと到着すれば、そこには横たわる子、壁に寄り掛かる子、膝を抱え込む子など様々だった。それも全て女の子で、少々服が乱れている子が圧倒的に多い。練度はそこそこ、まあ顕現されたばかりと言う子がたくさんな。
 そして、一人が僕ら二人に気づき、よろめく体を壁で支えながら刀をつきつけてきた。左腕に龍の刺青、右の髪が一部赤くグラデーションになっている、そう、大倶利伽羅、伽羅ちゃんだ。男性の時より数トーン高い声が僕と緋斬に向けられる。



「……光忠、なぜお前がここに居る」
「僕は君達を助けに来たんだよ、多分僕らの主がもう君たちの審神者を捕らえるか殺すかしてると思う」
「……そうか。……っ」
「伽羅ちゃん!」



 ふらついて前のめりに転けそうになる相棒を慌てて支えれば「……俺たちは、救われるのか」と震えた声で呟いた。懸命にこくこくと頷けばふっと彼女の体が重くなる。意識を飛ばしたのだろう、重傷のまま手入れもされなかったと見える。いおりちゃんから渡された簡易手入れ札を伽羅ちゃんに向ければ、傷は塞がった。
 周りを見渡せば既に他の刀剣女士は緋斬ちゃんに話を聞かされ、簡易で手入れをしてもらっている。それを待っている彼女たちは「はぁぁ……やっと地獄が終わるよー」「僕たち、救われたんだよね、一兄」と言う呟きや嗚咽も聞こえてきて唇をぐっと噛んだ。
 すると、ばっと顔をあげたボロボロの不動君が焦ったように僕に告げる。彼女も普段は甘酒で顔を赤くさせているのに、酒も飲めていないのか酔いが回っていなかった。



「燭台切! 刀剣女士はここに居るが、この本丸には二人だけ刀剣男士が居る!」
「……彼らはどこに!? それは誰だい!?」
「太鼓鐘貞宗と浦島虎徹だ! 浦島はアイツの近侍、太鼓鐘は……」
「貞ちゃんは……?」
「……手入れ部屋で、杭を打ち付けられて天井に張りつけにされてる」
「なっ……」



 どうやら手入れ部屋では微弱に手入れされる術が施してあるらしく、折れないと言う。折れれもしない杭が取れもしない、まさに地獄じゃないか!



「緋斬ちゃん! 今すぐ、早く! て、手入れ部屋に!」
「落ち着けやアホ」



 泣きそうな顔で振り返れば緋斬ちゃんに拳骨をもらった。ハテナマークを頭上に飛ばしながら涙目で緋斬ちゃんを見つめれば彼女はこう言う。



「こっちらはこの子らの手入れをせなあかん。どうせ太鼓鐘は三日月達が見つけとる、今は我慢や」



 ぎりりと歯を食い縛る緋斬ちゃんも今すぐに飛び出したいのだろう。でも、彼女の信条は常にクールにクレバーに。冷静でなきゃ的確な判断は下せない。確かに、その通りだ。



「……手入れをしようか」
「当たり前やろ、こっちらは救うためにここに来たんや」



.

62:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 14:30 ID:Feg

ifの方です。


 そしたらなんかツナが額から炎を出して雲雀に一撃入れたあと、どこからか出てきたトイレのスリッパで彼の頭をパカンと叩いた。それに耐えきれずぶっと少し吹き出したあと、爆笑してやる。



『っはははははは! 雲雀! 頭! ふはははっあかんっ腹死ぬ! 腹吊る! うはははは! 大丈夫か恭弥! はははっ!』



 ツナはこちらを気にせず雲雀を見ていたが、多分雲雀はそうはいかない。



「ねぇ……殺していい?」



 ぁ、キレた。まあそのあと色々あって乱入してきたリボーンが部屋で爆弾を爆発させて見事に逃げられてしまったわけだが。
 ソファに膝を抱えながら座って「あの赤ん坊また会いたいな」と言っている隙に部屋から逃げ出そうとそろりそろりと扉へ近付く。が、そううまく行くわけもなく。



「どこ行く気?」



 ゴっと言う鈍い音と共に、トンファーが後頭部に直撃しました。



『待て待て話したら分かる、絶対分かる。分かるから! 笑われて怒っとるんやろ!? いやすまんかったって、っちゅーても綺麗に決まっとったな、パカンて……ぶっふぉ!』
「咬み殺す」
『結局鬼ごっこになるんかー』



.

63:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 15:47 ID:Feg

if。

 あれから数日、久々に休みを貰った俺は放課後の道を一人で歩いていた。背中の緋斬ががちゃがちゃなるけどそんなん知らん。それにしても、最近手応えのない奴ばかり絞めてるから腕が鈍りそうだ。

 すると前方にて「学校終わった終わったー、家帰ったらなにしよっかなー」と呟く沢田綱吉を発見。『うぇーい、沢田ー』と声を掛ければふっと彼は振り向いた。



「……あれ?」



 だがそこには誰もいない。気のせいか、と再び歩み出す沢田にもう一度『こっちや沢田ー』と声を張り上げた。「もう、誰だよ!?」と辺りをきょろきょろ見渡す沢田に『上や上ー』と言えば沢田は俺の方を向き叫ぶ。



「な、なんで屋根の上ーーー!?」



 そう、今俺は民家の屋根の上にて胡座を掻いていたのだ。沢田が俺に気が付いたので屋根から飛び降りてスタッと彼のとなりに立つ。



「あ、あなたは応接室の……」
『お、覚えとったん? 俺一応風紀委員所属で委員長補佐の伊達いおり、よろしゅうな』
「あ、はい」
『俺別に人畜無害やから。雲雀みたいになんでもかんでも殴り掛からへんで、安心し』
「よ、よかった……」
『はっはっは。……あそこ君の家やんな、黒服着た人めっちゃおんで』



 指を指した先は彼の家。ああ、あれか。原作で言えばキャバッローネの跳ね馬ディーノの話か。隣の沢田は果敢に黒服に「あの、すいません。通っても良いですか?」と聞いている。即答でダメだと返ってきてましたけど。



「今は沢田家の人間しか通れないんだ」
「俺……沢田綱吉……です」
『俺は護衛』



 すると俺共々家に通してくれた。「な、なんで伊達さんまでーーー!!」と家に入ってから怒鳴られたが『ちょっと興味あってん、君の家』と案内されたリビングのソファに座った。沢田は「絶対! 絶対ここから動かないでくださいね!」と俺にキツく念を押してから二階へ上がっていった。「リボーン!! お前の仕業だな!?」と言う怒鳴りは聞かないことにした。しばらくして、家の外から、いや、空から爆発音が聞こえてくる。ん、あれじゃね? ランボが間違って投げたんじゃね? まあこれも気にしてたらキリ無いし。そうして俺は瞼を閉じて、人様の家ながら寝入ってしまった。


**


 眠りについていたら、どこからか俺を呼ぶ声が聞こえた。



「伊達さん……? 伊達さん」



 その声がやけに、聞きなれていた気がして、薄目を開ければそこには。



『……ネ、ギく』



 そこまで言って飛び上がる。よく見ればちゃんと沢田だ。



『すまん、暇すぎて寝とった』
「……あ、すいません! 伊達さんもよかったら晩飯食ってきます?」
『よし食う』



 俺がそう言えば沢田は母に向かって「伊達さんも食べるって」と告げていた。『世話なりますー』とだけ言ってソファから立ち上がろうとすれば、何か踏んで前に転けた。



『いでっ』



 俺が机に顔をぶつけ、ゴっという音が響く。『なんや踏んだ』とか言いながら足元を見れば、そこに転がる竹刀袋。流石に悲鳴をあげた。



『あっ、あかぎりいいいいいいい!』
「あかぎりって何!? 大丈夫ですか伊達さん!」
『あかぎりいいいいい! 折れてへんやろな!? 折れとったら俺の首が飛ぶうううう! 物理的に飛んでまううううう! 』



 なんだなんだと二階から降りてくる金髪イケメンとボルサリーノ被った赤ん坊が降りてきて見られるとかそんなの考えてる暇はない!
 竹刀袋の紐をほどき、バッと袋から刀を抜き出し、さらに鞘も抜き去り刃を見ればまあ傷ひとつついていませんでしたよ。チンッと刀を鞘に直して素早く再び竹刀袋の中に手を突っ込んでアーティファクトを探ればこちらも無傷。ほっと一息ついてハッとすれば、刀をバッチリ見られていた。



「……こ、これ本物!?」
「みてぇだな」
「あの少年のみてぇだけど、なんでこんなもんもってんだ?」



 三人がじっとこちらを見るもので、流石に隠し通せないだろうと観念し、覚悟を決めた。



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64:ぜんざい◆A.:2016/11/19(土) 20:16 ID:Feg

if(今更ながらこのifはUQホルダーの時間軸に突入させています)


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 俺は一息ついて「ここはあかんわ」と沢田母に目を向ける。他の三人は気まずそうにこくりと頷き、沢田の部屋に上がろうと促してきたので部屋にて。彼のベッドに腰を掛けて溜め息をついた。



『まあ、最初にあれや。俺の身の上を教えとかな話進まんな』
「おう。改めてだな、俺はイタリアンマフィア、キャバッローネファミリーのボス、ディーノ」
「俺はツナの家庭教師リボーン、ヒットマンだ」
「ちょっと! リボーン! ディーノさん!」



 慌ててリボーンたちを止めに入る沢田だが、それを片手で制して俺は口を開いた。



『俺の名前は伊達いおり。信じなくて結構だが、単刀直入に言えば俺はこの世界の人間とちゃうねん』
「……どー言う意味だ?」
『俺はお前らにとっちゃ異世界……パラレルワールド的な所から敵に飛ばされてきた』
「敵? 飛ばされてきた? どういうことですか?」
『まあ待てや、俺の世界には『魔法』なるものが存在する。その世界は地球人と火星人が存在していて、見るからに人間じゃないのもいる。現在日本は一部が発展しすぎていて、今や半分は田舎やスラムになってもた。
 俺はその世界の居合い斬りの名門、伊達家の当主。俺が在籍していた女子中の一年の時に、まあ同じクラスに登校地獄の呪いをかけられた600億の賞金首の不老不死吸血鬼の真祖が居って……その子の我流の魔法を文字通り命懸けで覚えて、俺自身吸血鬼の不老不死になった、実年齢は87歳のババアや。もとの世界の不老不死が集まるヤクザ的なところで支部長補佐しとったわ。活動内容は、様々やな。月行ったり……まあ火星に行ったりな。
 我らUQホルダー、人の世に弾き出されたものたちの味方。不死身の化け物の集団や。
 俺一回実年齢17の時に世界救ったわ。ちなみに首飛ばされても死なへん。一応世界最強』



 ぐっとサムズアップしたら「は?」って言われた。うん、傷付いたぞー。



「不老不死!? マジで!?」
「火星って……」




 沢田とディーノが困惑するなか、リボーンはにやっと笑って俺に拳銃を突きつけてきた。



「わりーな。本当にお前がそうだって言う証拠を見せてもらうぜ、伊達」
『エエけど、こめかみのがよぉない? 自殺とかそんなんで、銃口こめかみに当てて撃ったら火傷もするし貫通もする』
「そうさせてもらう」



 ひょい、と俺の肩に乗って拳銃を向けてくるリボーンにヘラっと笑えばばぁんと響く銃声。目の前の二人が目を見開いた。



『終わったか?』
「……事実だな、信じてやる」
『はーよかった』



 だがしかし、疑り深い二人はまだ俺を疑っているよう。貫通はしなかったのでリボーンが空砲を撃ったとでも思っているんだろう、苦笑いして俺は刀を手に取った。



『決定的証拠はこれやな』



 ずぱっと自分の刀で首を飛ばした。ぶしゃあ、と血を撒き散らしながら転がる首にツナは悲鳴をあげている。が、俺はもう新しい頭が出来ているので自分の首を見ながら二人に言う。



『信じてくれんか?』
「これは決定的だな」
「信じます! 信じますからこれ以上部屋を汚さないで!」



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