キセキの世代×ナミ【黒バス&ワンピース】

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1:桜◆kk:2017/10/02(月) 01:44 ID:dN.

私の大好きなナミちゃんを取り巻く、キセキの世代や他のみんなのお話。

とりま帝光から書きます

ナミ
二年前の姿(Fカップやな)
帰宅部だが、キセキの世代と仲良し
桃井ちゃんと色違いの白のパーカーを良く着る(高校では色違いの青)

57:桜◆kk:2017/10/12(木) 16:53 ID:dN.

「朱崎さん」

「えっと…あなたは確か…」

「桐皇バスケ部監督の原澤克徳です。」

大ちゃんたちのチームの監督さんが、私に話しかけて来た。

「そうそう、原澤監督!」

「いえ、原澤で結構です。」

「じゃあ、原澤さん…?」

いったい、私みたいな凡人に何の用だろう…リコさんやさつきならまだ分かるけど…

「…で、何の御用ですか?原澤さん」

「…あなたは…何者なんです?」

「へ?」

いきなり何者なんです?って言われても…私は私だし、宇宙人とかじゃなくて普通の人間だし

「桃井さんのように優れたマネジャーの能力がある訳ではない…相田さんのように監督の技量が高い訳でもない…」

原澤さんは、私のことを無視して話していく。…いや、確かにそうなんだけど、はっきり言われたら傷付くわよ!!

「何故、うちの青峰くんや海常高校の黄瀬くん、誠凛高校の黒子くんなどのキセキの世代は、君に一目置いているのでしょう」

何故って聞かれても…みんな中学からの友達だから、みたいな感じじゃないの?

「キセキの世代だけじゃありません。無冠の五将と呼ばれていた木吉くん、誠凛高校や海常高校、うちの桐皇高校のみんなも、君に一目置いている…」

だから、友達だからじゃないの?鉄平さんも、日向くんや俊くんや火神ちゃんも、笠松先輩や由孝も、今吉さんや桜井も、全員友達だから私を気にかけてくれるんじゃないの?

「…原澤さん、私にも分かんないわ、そんなこと」

「?」

「まず、鉄平さんが無冠の何とかって呼ばれてたことも知らないし、みんな友達なだけだし。キセキのみんなも中学からの友達ってだけなんです。」

「…実に興味深いですね…」

そう言うと原澤さんは、私に近づいて来た。何されるかは分からないから、ぼーっと見ていると、頬に唇が…

当たらなかった。

「何してんだよ、あんた…」

「…青峰くんですか…」

大ちゃんの大きくて、黒い手が原澤さんの唇を抑えていた。…つーか、練習サボってるわね?

「こいつは俺らの友達ってだけだ」

「……」

「強いて言うなら…勝利の女神ってやつだな」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ナミが応援に来た日は嬉しくて楽に勝てるよ、ありがとう」

「なんか、元気が出てくるっス!!」

「はい。勝たなければ、となりますよね」

「べ、別に嬉しい訳ではないのだよ!!」

「緑間ツンデレお疲れ。ま、ナミが来てる日はヤル気がちげーんだよな〜…」

「…ナミちんは俺らの勝利の女神様だねー」

『は!?』

「だって、俺たちを勝たせてくれるし、みんな大好きだしさ〜ピッタリじゃない?」

「…勝利の女神か…納得っス!」

「女神にしちゃぁ、暴力的だけどな」

「僕も納得です」

「納得しない訳ではないのだよ」

「帝光バスケ部の勝利の女神ー」

「これからも俺たちの応援をよろしく。ナミ」

「…何バカなこと言ってんのよ!」

呆れたように、嬉しそうに笑うナミ。そして、キセキの世代。それを優しい目で見守る虹村。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「わ、私は…ーーー」

何も言えなくなって、原澤さんと大ちゃんを置いて走り出してしまった。

(私は勝利の女神なんかじゃないわ…!)

女神、なんて私には似合わない。

「おいナ「朱崎さん!!」

女神はみんなをバラバラにしたりなんかしない

58:桜◆kk:2017/10/12(木) 21:26 ID:dN.

「朱崎さん!!」

「は、原澤さん!!?イヤーーー!!!来ないでーー!!!」

走ってると、原澤さんが追いかけて来た。スピードを上げるけど、すぐに追い付かれた。

「何なんですか!?話は終わったはずよ!!」

「…先ほどは失礼しました。あなたの気持ちも考えずに、頬にキスなど…」

いや、されてないけど。…にしても、この人って紳士的ねぇ…さつきが言ってた独身って情報、本当かしら?

「あなたは魅力的だ。」

「…は!?」

突然そんなことを言われて、驚かない女はいないだろう。確かに私は魅力的かもしれないけど

「私はあなたに対して、ものすごく魅力を感じました。」

「ど、どうも…」

手の甲に口づけをされ、つい顔が火照ってしまう。

「…たくさんのライバルがいるみたいですが…私はあなたを譲る気はないです。」

「…っ、」

お、大人の余裕がかっこいい…!原澤さんは、私の額にキスをして去って行った。その後に走ってきた大ちゃんが私を抱き締める

「ナミ!お前あの人に何もされてねぇか!?」

「なっ…何もされてない、わ…」

「あの人はこえーからな…もう誰にも取られたくねぇんだよ…」

「へ?何を?」

「ッ、うるせぇ!さっさと戻るぞ!!」

「わっ」

大ちゃんに頭を軽く揺らされる。髪の毛がボサボサになったので、後ろから飛び付いてやる。

「ちょ、テメ、苦しい…」

何だってゆーのよ、本当…でも、心臓がずっとバクバクしてる。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ナミ」

「は、原澤さん…その、名前…」

「ああ、これからは私もあなたとの仲を深めようと思いまして…よろしくお願いしますね、ナミ」

「あ、う…」

「あんた犯罪だろ!!やめろ!ナミに近づくんじゃねーよっ!」

「男の嫉妬は見苦しいですよ、青峰くん」

「くそっ…!」

(余裕あるとこが余計ムカつくんだよ…!ナミももっと危機感持て!!)

59:桜◆kk:2017/10/13(金) 18:35 ID:dN.

長かった合宿も今日で終わり。色々あったけど、なかなか良かった合宿だと思う

「ナミ、いつでも連絡してくださいね」

「は、はい…」

「桐皇の監督!!俺のナミっちを誘惑しないでくださいっス!早くバス乗ってくださいよ!」

「おい早くしろ!黄瀬、ナミを死守しろよ!」

と、桐皇の監督とも仲良くなれたし…りょ、涼太くんと大ちゃんのコンビ(?)もなんかできたし…俊くんを落とすことはできなかったんだけど…

「ナミ、また会おうな。手料理も楽しみにしてるぞ。」

「しゅ、俊くん…!」

でも、俊くんに手料理を食べさせてあげる口実もできたし、リコさんやさつきとももっと仲良くなれたと思う。

「次会う時はお互い敵同士ですね。ウチが勝ちますけど。」

「ちょっと、誠凛が優勝をもらうんだからね!勝手に決めないで」

「あら、ウチの男共のことナメないでよ?本気出したらスゴイんだから!」

お互い自分のチームに誇りを持ってる。だから私たちは相性がいいのかもしれない。…秀徳が俺らも女子マネ欲しー、と言ってたのは無視しよう

「行くぞ、ナミ」

「はーい!じゃあね、リコさん、さつき!」

「ええ。また今度、ゆっくり話しましょ」

「ナミちゃん、誠凛にはいつでも来てね」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

笠松先輩に呼ばれて、バスに乗る。隣の涼太くんはブスッとしている。癖で頬袋を潰すと、こっちを向いた。

「ナミっち」

「な、何…?」

「マネージャー、本当に今日で終わるんスか」

「…そうよ?そうゆう約束だったじゃない」

「…何でっスかー!!さっき、誠凛の監督と桃っちと張り合ってたじゃないスか!!」

「それはそれ、これはこれよ!とにかく、合宿中だけの約束だからもうおしまい!!」

ギャーギャー喚く駄犬を笠松先輩が蹴る。もっと蹴ればいいのに

「ナミが元から決めてたことだろ!うるせーんだよお前は!!」

「だって〜!!笠松先輩も寂しいでしょ?ナミっちは他の学校も応援するんスよ!?」

「知るか!!ナミの勝手だろ!!」

すると、笠松先輩の隣に座っていた由孝も一緒に言ってきた。

「笠松の言う通りだぞ。ナミの勝手だ。まぁ、俺はナミの為に勝つよ」

「笠松先輩…!由孝…!成長したじゃない」

「でも俺はやっぱり寂しいっス!!」

「あ、じゃあこうしよう。俺たちが優勝したら、ナミに言うことを1人一個聞いてもらえる」

由孝の案に、涼太くんは目を輝かせた。

「俺、今から考えとくっスね!」

「考えんでいいわ!!」

…これで涼太くんが納得してくれるなら、みんなのヤル気が出るなら、いっか!

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「もちろん俺はナミと付き合ってもらうよ?」

「あ、そうゆう系のお願いはムリです」

60:桜◆kk:2017/10/13(金) 23:00 ID:dN.

「ねえ君!海常の子でしょ? 良かったら連絡先教えてよ」

またコイツらか。 朝の満員電車に揺られながら私は心の中で悪態をついた。 この電車に乗っている人はサラリーマンよりも学生が多い。

恋にお多感な世代が沢山乗り合わせている車内では、遠慮なく興味津々の眼差しが注がれる。
本当、一度きっぱり断ってんだから諦めなさいよ。

精一杯に迷惑な表情を浮かべて席を立つ。 そしてそのまま人の流れに乗って電車から降りる。
後ろからは、えー、シカトー?と大声で叫ぶ声が聞こえる。

周りの乗客から何事かとチラチラ様子を伺う視線が飛び交う。

「…ったく、ほんとに朝から気分悪っ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「おい朱崎ぃ。お前何で今日はいつもより不機嫌なんだよ。」

放課後、帰り仕度をしていると、友達が恐る恐る話しかけてきた。 手には何やら美味しそうなお菓子が握られている。

「別に不機嫌なんかじゃないわよ。ただ気分が悪くなることがあっただけ。」

「それを不機嫌って言うんじゃないのか?」

苦笑しながらあたしの前の席に座りながら話を聞く体勢を作る友達。

あんなナンパ野郎のことを相談するつもりはないが、鬱憤晴らしに愚痴をこぼす。

「ここ最近しつこい奴等がいてムカつくのよ」

「しつこい奴?ああっ!!」

引っ手繰るように友達の手からお菓子を奪うと、食べながらここ最近朝の電車の中で毎朝しつこくナンパしてくる奴等のことを愚痴った。

「別にナンパなんて私みたいに可愛いければしょっちゅうあるけど、あいつ等ほんっとしつこいんだもん!おまけに朝の電車の中で!! もうちょっとマシなとこでナンパしろっつーの。」

「美人なのも大変だなー。黄瀬にでも頼んで絞めてもらったらどうだ?」

「それも考えたけど、それはそれで面倒臭いし。 ま、このままずっと相手にしなければ向こうも諦めるでしょ。むしろ諦めずに手でも出してきたらその時こそこっちのもんよ!」

「そうですか…まあ、気をつけろよ。」

肩肘を突きながら溜息をもらす友達。なかなか美味しいわねこのお菓子、と友達とお菓子の評論をしていると掃除当番を終えた涼太くんがやってきた。

「お待たせっス、ナミっち」

今日は学校全体で部活がないから、2人でカラオケに行く約束をしていた。 だから朝から気分が悪かった分今日は思い切り遊ぼうと思っていた

「ううん、大丈夫よ。お菓子ありがとう、美味しかったわ。 また明日ね」

友達に礼を言ってから、2人で廊下を歩く。そこへ、黄瀬くーん!!と声高に呼ぶ声。

もしやと思って振り向けば、廊下の奥から駆けてくるのは最近付きまとってくるファンの女の子だ。

「黄瀬くん、一緒にボーリング行かなぁい?」

「あぁ、悪いっスけど今日は…」

涼太くんが断ろうとすると、すかさず後ろからガバリと抱きつくその子。

「行こうよ?ボーリング」

頬を赤らめギュッと涼太くんに抱きつくその子の体からは魅惑的な香水の香りが漂ってくる。

「ごめん、今日は私が涼太くんと約束してるから…また違う日にしてくれない?」

せっかくの気分転換の楽しみを潰されては堪らないと私は咄嗟に涼太くんの腕を掴む。

「あーもー!!うるさいこのブス!!」

パシンと廊下に響く音。 一瞬何が起きたか分からなくて、

「ナミっち!!!」

と言う涼太くんの声に遅れてじんわり掴んでいた腕に痛みが広がる。

咄嗟のことになかなか声が出ないでいると、横からあまり声を荒げない涼太くんが珍しく声を荒げた。

「おい!ナミっちを叩くなんてやり過ぎだ!!謝れよ!!!」

「ふん、あなた黄瀬くんを私に渡したくなくて必死にすがり付いてるんでしょう?しつこく毎日まとわりついて、見苦しくて敵わないわ」

不気味な程不敵に微笑む。 抱きつかれたままの涼太くんが体を捩っる。

「おい!ナミっちは…」

「帰る。」

もう聞いているのも沢山だ。きっと今日は最低の一日なんだ。

朝から気分の悪いことをされたと思ってたら、逆に自分も涼太くんにしつこく付きまとっていると言われる…腹ただしさにカッと体中が熱くなる。

「ナミっち!!」

後ろから涼太くん呼ぶ声を無視して私は走り出した。

61:桜◆kk:2017/10/13(金) 23:11 ID:dN.

『ふん、あなた黄瀬くんを私に渡したくなくて必死にすがり付いているんでしょう?』

電車で揺られる中、頭の中では何度もさっきの言葉が頭を回る。

何なのよ…ファンだからと思っていて、ろくに気にも留めていなかった“女”に本気で心の内を踏み込まれ見下された。

涼太くんに必死にすがり付いている…そんなことは一切思っていない。

そう思うと同時に涼太くんが離れていくことも許せない自分が居る。 腹立だしさや困惑や色んな気持ちがない交ぜになって胸の辺りがモヤモヤする。

「…もう、何だって言うのよ。」

思わず愚痴が口を突いて出た所で聞き覚えのある声に話しかけられた。

「あれー?もしかして君、朝の子だよね?」

パッと顔を上げれば、まさに最悪のタイミングとはこのことだ。 毎朝しつこく電車の中でナンパをしてくる他の学校の生徒が居た。 おまけになんともガラの悪い友達三人も一緒だ。

「ヒュー!こりゃーマジで美人だなぁ」

「だろ?だから嘘じゃないんだって」

「あんまりにも聞いた感じが出来すぎてるからお前の見栄っ張りだと思ってたけど… 本当にこんな別嬪さんが居るとはな…ね、君今帰り?俺たちと遊ぼうよ。」

「おい、抜け駆けすんなよ!大体俺が最初に目をつけてたんだぞ!」

勝手にギャーギャーと盛り上がって、気付けば完全に取り囲まれていた。 他の乗客も遠目に見ている。 どうしてこうも悪いことは重なるわけ?

せめてもの救いか、電車は丁度駅に止まった。 まだ目的の駅まで2個手前だけど、こいつ等に絡まれるくらいなら降りて巻いてしまおう。

無理矢理男たちの間をこじ開け、ドアが閉まる前にと急いで出ようとする。

「ちょっと待ってよ。ねえ、君ほんと冷たいよね…今日の朝もシカトだし。ちょっとはかまってくれたっていいんじゃん?」

「離して。」

「いや〜、怒った顔もやっぱ可愛いー!俺こう言う子はすッげー泣かしたくなるタイプ!!」

「ちょっと!!」

何キモいこと言ってんのよ! 体中の血が一気に沸騰したように熱くなる。

思いっきり腕をひねり上げようとした所で後ろからもう一方の腕も他の男に掴まれてしまった

その間に電車のドアも閉まり、ガタンと大きく揺れて走り出す。 踏みとどまろうと思いながらも咄嗟の揺れに思わず腕を掴まれている男の方へ倒れ掛かった。

すると意味も分からずヒューヒューとはやし立てられ、 その瞬間泣きたくもないのに涙が出そうになった。

何で…何でこんな思いしなくちゃいけないのよッ!!

「ちょっとすみませんっス」

「おわっっ!!!」

「え…」

いきなり横に立っていた男が尻餅を着いたかと思うと、掴まれていた腕が引き剥がされる。

何?と思う間もなく今度は私が勢いよく引き寄せられてぶつかった。

「……涼太くん」

「俺の女に手ェ出してんなよ、お前ら」

シンとなる車内。 横に立っていた男が手を出そうとするのをもう一人の男が止めつつ、そっと耳元でモデルの…と囁いている。 それを聞くや素早く私たちから離れて行く。

涼太くんは逃げていく男たちを一睨みをすると、肩を引き寄せ手で私の顔を涼太くんの胸に押し付ける様な体勢で歩きだす。

私もされるがままの体勢でよっかかるようにして隣の車両へと向かった。

62:桜◆kk:2017/10/13(金) 23:40 ID:dN.

ドアにもたれて立つ私の前に、他の乗客から私を隠すように立つ涼太くん。肩はまだ引き寄せたまま、大きな手の平も私の頭の上に乗ったままだ。

駅に着いてゆっくりと降りる私たち。ホームの端にあるベンチに腰掛ける。

「もう泣いてもいいんじゃないっスか?」

「ッ泣いてなんか…ないわよバカぁぁ!!」

ボロボロと零れてくる涙。涼太くんは頭を掻きながら泣いてんじゃないスか、とこぼす。

「本当にナミっちは他人の前では泣こうとしないっスよね」

「うっさい!大体…あんたが…!」

あの子にと、続きを言おうとして喉がしゃっくりを上げて言葉が続かない。

『ふん、あなた黄瀬くんを私に渡したくなくて必死にすがり付いているんでしょう?』

また頭の中に響く声。違う!必死にすがり付いてなんかいない!

いつだって、困った時に必ず涼太くんから助けに現れてくれるのだ。

嘘なんかじゃない。そんなことも知らないくせに…知らないくせに涼太くんを、我が物顔で独り占めしないでッ!!!

あの場で叫び倒してやりたかった気持ちと、本人の前で言えるわけがない気持ちと、鈍感にせよ涼太くんの前であんなことを言われた気持ちが今更こみ上げる。

完全に混乱しながら更に目の前にいる涼太くん当たり出すと言う最も子供な態度にで出た。

「…あんな奴等っ…しかも何よ!!あの俺の女ってセリフは!!」

「うっ…!」

「何が…」

『俺の女に手ェ出してんなよ、お前ら。』

言おうと思ったところで言葉が続かなかった。こいつ…何であんなセリフをずけずけと言えた訳…?

八つ当たりをしておきながら完全に自分が当たる方向を間違えたと気付く

泣いたせいもあるが、いきなりそれとは別の意味で体が火照ってきた。更に少し落ち着くとこうして泣いていることも、意味なく涼太くんに当たったことも急に恥ずかしくなって、今更ながら顔を見られまいと俯く

それでも涙はボロボロと目から零れ落ち、ぼたぼた垂れて手に落ちる。さっき叩かれた場所は薄っすらと赤くなっていて、そこに涙が当たるとヒリヒリした

「ナミっちー、まだ怒ってんスか?」

困り果てた顔で覗いてくる来た涼太くんと目が合う。 なんとなく気まずくて私は涼太くんから目を反らす。

「手は?」

「え?」

「さっき叩かれた手は痛くないっスか?」

そう聞きながらそっと手を取って見始める涼太くん。手から伝わってくる温もりと、大きくてごつごつした涼太くんの手。

別に痛くないわよ、と手を引っ込める。なら良かった、と笑って使いなよ、とタオルを差し出す涼太くん。

「…あんたの女になった覚えはないからね。」

「えーー!!ダメっスか?さっきのアレじゃぁ…」

スパコン!と効果音がしそうな程強く、間髪いれず涼太くんの頭を叩く。

「そんな適当にするんじゃないの!あんたからの告白待ってる子はたくさんいるんだから!」

「あだァッ!!! …俺が告白するのはナミっちがだけっスよ」

「はいはい。」

また適当なことを…と思いタオルを丸めて投げつける。投げたタオルは見事に涼太くんの顔に命中した。

「ブッ!…へへっ!」

「何がおかしいのよ」

「いや、いつものナミっちに戻ったっスね!」

「え?」

「やっぱりナミっちはそうでなくちゃ。少しは落ち着いたっスか?さっきあの子にヒドイこと言われたから…大丈夫かなと思って。ナミっちのこと何も知らないくせにあんな言い方してさ!それにナミっち、あんな変な奴等に絡まれてんなら、すぐに俺でもバスケ部の人でもいいから呼ぶんスよ!!」

今度は涼太くんが子供のように頬を膨らませて愚痴を漏らす。そんな涼太を見ていたら自然と笑顔になった。

駅構内に電車が来るアナウンスが流れ始める。
パッと立ち上がると、それと同時に電車が来る

電車によって巻き起こる風、ふわりと膨らむ制服のスカート。風でポニーテールが激しく揺れる。髪を押さえながら、そっと私は呟く。

「……………」

「ん?ナミっち、なんて言ったんスか?」

「さぁーね。」

乗車を促すアナウンス。発車前の電車に駆け込む。 怪訝な顔をした涼太くんも、急いで着いて来る。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

いつだって颯爽と助けに来てくれるスーパーヒーロー。

『かっこよかったわよ、あんた』

63:桜◆kk:2017/10/14(土) 23:47 ID:dN.

今日はいつもより気合が違う。

いつもよりエッチでレース多めの下着、ムダ毛の処理、適量の香水、髪の毛はいつもより念入りにといて来た。

全てはそう、この日の為に!!

今日はテツや火神ちゃんをはじめとする誠凛のみんながうちに私の手料理を食べに来るのだ。

もちろん、みんなの中には私の好きな人である俊くんも入っている。だから気合を入れてるのだ。

『ナミ…手料理は美味しかったけど…お前はどうなんだ?味見、させてくれないか』

『しゅ、俊くんになら…私、いいわよ…?』

なーんて感じでR18指定のオイシイ展開があるかもしれないじゃない!!?だから、全てにおいて完璧にしとくの〜!!!

「ナミっち、現実に戻ってっス。」

「うっさい駄犬!!」

妄想に浸ってると、呆れた目で見て来る駄犬。なんでこいつこんなに不機嫌な訳?

「ナミっちの料理の味は、俺だけが知ってればいいのに!!」

「イヤよ。私あんたの妹でも姉でも彼女でも、ましてや奥さんでもないのよ?本来ならお金取るわよ」

まったく…別に初めて手料理を食べさせる相手って訳でもないのに…中学の頃から飽きる程食べてたでしょーが

チャイムが鳴り、帰る時間となる。私はカバンを掴んで走って家へ帰った。そして、家にカバンを置いてスーパーへ向かう。誠凛のみんなが来たのは、夜7時をまわった頃だった。

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「お久しぶりです、ナミさん」

「テツ!それにみんなもいらっしゃい!」

みんなを家に入れて、狭いけど座って待っててもらう。適当にテレビを見てもらってる最中に、私はシチューを作った。

『いただきまーす!!!』

「おかわりあるから、どんどん食べてちょーだい!」

火神ちゃんがいるから、いつもより多めに作った。でも、火神ちゃんは人の家だからか、少し食べる量を減らしてるみたいだ。

みんなが食べてる間に、サラダを作る。火神ちゃんは本気を出して、どんどんおかわりしてくる。うん、嬉しい。

「リコさん、どう?おいしいですか?」

「おいしいわ!料理上手ね、ナミちゃんって」

そりゃそうよ!!母が他界してからは私が家で料理してるし、中学の時はキセキのみんなにお弁当作ってたし、今でも涼太くんの家に行って作って一緒に食べてるんだから!!!

「俊くん、おいしい?」

「ああ、うまいぞ。はっ!!五穀米、五個食うまい!!」

「伊月黙れ!」

ああ、俊くんに褒めてもらえて幸せ〜♡

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みんなでワイワイしてると、時間はあっという間に過ぎてしまった。もう帰る時間だ。

「ナミさん、ありがとうございました。」

「ううん。みんな遠いのにわざわざ来てくれてありがとう。また、来てね?」

「はい。必ずまた来ます。次は誠凛のみんなと、帝光のみんなで。」

「テツ…。ありがとう。」

みんなが帰るのを見送る。すると、俊くんが走って戻って来た。

「どうしたの?俊くん」

「……ナミ」

「へ?」

俊くんに抱き締められる。俊くんは私の耳元で小さくささやいた。

「ナミ…W.Cが終わるまで待っててくれ…」

「しゅ、俊くん…?」

「お前の気持ちが…W.Cが終わっても変わってないのなら…」

「伊月ー!!何やってんだ!!新幹線乗り遅れんだろダァホ!!」

「悪い!!すぐ行く!!…じゃあな、ナミ」

「っ、俊くん!!」

俊くんは振り返らずに、手を振るだけだった。

俊くん、あなたは最後、何を言おうとしたの?

期待して、いいの?

でも、胸が熱くて焦げそうなのはなんでだろう

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「ナミっち、何かぼーっとしてるっスよ?」

「涼太くん、どうしよう…!」

「ちょ、泣かないで!!」

(何でこんなに胸が熱くて、痛いのかな…?何で涙が止まらないのかな…?何で…)

64:桜◆kk:2017/10/15(日) 18:43 ID:dN.

原澤さん:今日、一緒に夕食でもいかがですか?

ケータイを見ると、原澤さんからLINEが来ていた。今日は何の予定もないので、快くOKする。

原澤さん:海常高校に待ち合わせでいいですか?
迎えに行きます。
駅前に新しくできたレストラン
なんてどうかな?

駅前に新しくできたレストランって…有名シェフの超高級レストランじゃない!!神奈川のレストランなのに、東京の人が知ってるって…相当有名なのね、あそこ…

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「ナミ、お待たせしました」

「い、いえ!全然!!」

高級レストランということで、一応ちゃんとした服を着て来た。

真ん中に黒いリボンがある、丈の短い白いドレス。髪もいつものポニーテールではなく、ちゃんとキレイにして来た。

「久しぶりに会いますね。連絡が来ないので忘れられたのかと思いましたよ」

「す、すみません…」

め、滅相もございません!!何度か連絡しようとは思ったけど、相手は教師でしかも桐皇の監督だから迷惑だと思われたらどうしよう、的な感じだったんです!!

「だから、すごく楽しみだったんです」

「は、原澤さん…」

「今日のそのドレスも、すごくお似合いですよ。キレイです。」

ドキッ

あ、今胸がドキッとした。…って違う違う!!私には俊くんという心から想う人がいるじゃない!!あー、危なかった…大人の魅力にやられそうだった…

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「ん!おいしい!」

「お口に合って良かったです」

ステーキを口の中に入れると、舌の上でほろほろと溶ける。うん、うまい。

「原澤さんは、お酒苦手なんですか?」

「好きですが、車を運転しなければならないので…」

「あ、なんかすいません…」

「いえ。あなたと食事ができるんです。そのくらい軽いですよ。」

ニコッと微笑む原澤さんはいつもよりかっこよかった。…いやだから、私には俊くんが…!

「そ、そういえば、大ちゃん元気ですか?あとさつきも!」

「2人とも元気ですよ。まあ、青峰くんのサボリ癖に桃井さんが手を焼いてますけどね」

「あんッのガングロアホ峰…!今度会ったら、ちゃんと部活に行くように言っときますね」

「ははっ、よろしくお願いしますね」

おほほ、と笑うと面白そうに笑う原澤さん。この人も、こうやって笑うんだ…何か意外…

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「もう帰る時間ですか…」

「明日もお仕事なのにすみません…」

レストランのあとは適当に近くの公園に寄った。ベンチに座って話したりして、あっという間に時間が過ぎた。

「送りますよ」

原澤さんに甘えることにして、家まで送ってもらった。

「それじゃあ、また…」

「ナミ」

チュウ

車を降りようとしたら、腕を掴まれて頬にキスをされた。一瞬、理解ができなかった。

「W.Cが終わった時、私の気持ちを聞いてくれませんか?」

「原澤さん…」

「それでは…」

原澤さんに俊くん…私の恋ってどうなるの?

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「ナミっちー!!あのおっさんに何もされなかったっスか!?」

「………何もされてない、デス」

「何スか今の間は!!」

「何もないってば!しつこい!この駄犬が!」

「ギャインッ!!」

65:匿名さん:2017/10/16(月) 01:13 ID:dN.

「ナミっちー!今日一緒に帰ろうっス!」

「いいわよ」

いつも通り涼太くんに誘われて、体育館で待つ。もうちょっとでW.Cだから、練習はいつもよりキツイそうだ。

「ナミっち!お待たせっス!!」

「別にそんなに待ってないわよ。練習おつかれ様!」

もう寒い時期だから、私はブレザーの下にセーターを着て、靴下もいつもは短いけど、今日は黒のタイツだ。

それに比べて涼太くんは、セーターは着ずにブレザーだけだ。こいつはナメてんのか、この寒さを、今年の冬を

「あんた、寒くないの?」

「寒いっス」

「じゃあもっと防寒しなさいよ」

「えー、でも俺って、あんまり重ね着しない方がかっこよくないっスか?」

「重ね着をかっこよく着こなせてやっと、真のかっこよさに辿りつけるのよ。」

適当なこと言うと、なぜか納得するモデル。誰よこんな適当なやつ業界に入れたのは

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「もうちょっとでW.Cねー…練習、キツイ?」

「キツイっスけど…勝ったらナミっちにワガママ聞いてもらえるんで、がんばれるっス!!」

「……もう決まってるの?その聞いてもらうワガママって」

「んー、内緒っスね!!W.Cが終わったら言うっス!!」

「…ねえ、涼太くん」

私は笑いながら歩く涼太くんの裾を掴んだ。こんなことを言うのは初めてだから、涼太くんの顔を見れない…

「っ私が、その、W.Cであ、あんたががんばったなって思ったら……」

「思ったら?」

がんばって顔を上げた。顔に熱が集中してるのが分かる。

「……ゆ、優勝しなくても…聞いてあげないこともないわよ、ワガママ…」

やっぱり口にすると恥ずかしくなって慌てて、優勝した時より制限はかかるけどね!!と付け足す。でも、涼太くんからの反応はない。反応が気になって、涼太くんの顔を見てみる。

「ーーーっ、」

涼太くんは、顔を片手で覆っていた。わずかな隙間から見える涼太くんの顔は真っ赤で、つられてこっちも赤くなる。

「ーー…ナミっち!!」

「ひゃいっ!!」

いきなり肩をガシッと掴まれて、変な声で返事をしてしまう。相変わらずお互いの顔は赤い。

「それ、絶対に他のみんなには言っちゃダメっスよ!!」

「なっ…なんでよ!あんただけとか不公平じゃない!」

「ダメなものはダメっス!!」

「じゃあ、優勝しなかったらもう聞かないわよ!」

「うぐっ…!でも、今のナミっちすっごくかわいかったから、惚れちゃうかもしれないっス!みんな惚れたらどうすんスか!!」

「なんの心配してんのよあんたはッ!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「じゃあ、あんたからみんなに伝えるってことで。」

「それならいいっスよ。伝えとくっス」

そのあともずっと、しばらく言い合いを続けてやっとこの意見になった。

「ナミっち、今日家来ないっスか?姉ちゃんいないし」

「ええ。行かせてもらうわ。」

涼太くんの家につくと、人がドアの前に座り込んでいた。金髪の女性だ。

「誰?あの人。あんたのファン?」

「な、なんであの人が…!」

涼太くんを見るととても驚いたような顔をしていた。はっ!もしかして、年上の元カノ!?ヤバイ!面倒なことにならない内に逃げなきゃ!

「やっぱり用事思い出したし帰るね、私…」

「ま、待ってナミっち!!」

ちょっと!!声が大きいわよ!!!女の人は涼太くんの声に反応して、こっちを見た。すると、嬉しそうに駆け寄って抱き付く。

「涼太ーーッ!!!」

「ちょ、ばか!抱き付くな!!」

あれ?この人の顔、どっかで見たことあるわ…どこだっけ?すごく身近な存在な気が…

「やめろ涼香!!」

「あんた実の姉に向かってなんて口の利き方すんのよ!!」

「実の…姉…?…っはーーーーー!!!??」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「確かにちょっとシャララってる…!」

「 シャララってる?面白いこと言うっスね、あなた!」

「…弟がチワワなら、姉はパピヨンってとこね…」

66:匿名さん:2017/10/16(月) 01:16 ID:dN.

オリキャラ

黄瀬涼香(きせ りょうか)
黄瀬家の次女
合コンが趣味のチャラい女
でも本命には一途
黄瀬涼太がチワワなら、こいつはパピヨン

67:桜◆kk:2017/10/16(月) 21:26 ID:dN.

「何で家にいるんスか!!聞いてないっス!」

「自分の家にいちゃダメっスか?あぁん?」

「今日お前合コンって言ってたっスよ!!」

「…涼太ぁ〜!!」

家に入ると、さっそく喧嘩を始める黄瀬姉弟。喧嘩を眺めていたら、いきなり泣き始めて涼太くんにお姉さんが抱き付く。

「今日は合コンの予定だったのに…男全員が来れないってさっき連絡が〜!!!」

「はぁ!?ってか、抱き付くな!!!」

なるほど、だから家の前に座り込んでいたのか。うん、もう帰っていいかな?涼太くん

「そういえば、誰っスか?この可愛い女の子」

「ナミっち。今日はお前がいないと思ったから連れて来たんスよ」

どうも、と頭を下げるとお姉さんにものすごい力で、二の腕を掴まれた。

「無理矢理連れて来られたっスね!!」

「「……は!?」」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「いやー、ごめんごめん。中学の時、涼太はヤンチャしてたから…てへっ」

「てへっ、じゃねーっス!!まず、中学ん時も無理矢理女の子連れて来たことねーし!!!」

「……へえー…」

「ナミっち!!?」

別に涼太くんが女の子と遊んでたとか知ってたし。初対面の人にキスしようとした人だし。

「じゃあ、この娘はあんたの友達っスね。」

「まあ…一応そうですね!」

笑顔で答えると、涼太くんが一応ってなに!?と泣き付いて来た。邪魔、うっとうしい

「なるほど。私は黄瀬涼香っス!近所の大学に通ってるから、こいつの家に住んでるっス」

「私はナミです!涼太くんと同じ海常高校に通ってます!」

お姉さんは私をジッと見ると、強く抱き締めて来た。少しビックリする。

「ナミちゃん可愛いっス!!私と付き合わないっスか?」

「お、お姉さん!私、あなたと同性です!」

「お姉さん、なんてダメっス!涼香って呼んでっス」

「何言ってんだクソアネキ!!!」

涼太くんのおかげで、お姉さん…涼香さんから解放された私。

「恋に性別なんて関係ないっス!どう?ナミちゃん」

お姉さんが私の顎をクイッと上げると、涼太くんが私の手を掴んで顔を真っ赤にして言い放った。

「ダメっス!!この人は、ナミっちは、俺がW.Cで優勝したらお付き合いする人なんスから!!」

……へ?

何?ちょっと、分かんない

68:桜◆kk:2017/10/17(火) 22:48 ID:dN.

俺が掴んでいたナミっちの手は、彼女によって振り払われた。

「はっ!!ご、ごめんナミっち!!これW.Cが終わった後に聞いてもらおうとしてたワガママだったんスけど…ナミっち?」

ナミっちから拳が来ると思い慌てて謝るが、中々来ない。彼女を見ると、顔を真っ赤にして目を回していた。涼香も驚いたように見る。

「あっ…あんたとはただの友達だし…これからもそのつもりだし…その、えっと…」

そうだ、ナミっちには好きな人がいるじゃないか。いきなり言われても、困ってるだろう。

「な、なんて冗談っス!!ナミっちは好きな人がいるから涼香、お前は諦めろっス!ざまぁみろ!」

「……そうっスね、可愛いナミちゃんの好きな人っスもん!私が敵うわけないっス!!」

俺が明るく言うと、涼香も明るく返して来た。少しホッとしてると、ナミっちが背中に頭を預けて来た。涼香は謎の空気を読んで、自分の部屋に戻る。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「涼太くんは…」

「……」

「涼太くんは私のヒーローで、いつも感謝してる。」

「……ッ!」

ナミっちの言葉に、嬉しさが込み上げてくる。嬉しさに浸っていると、ナミっちは俺の方に回り込んで、俺の目を真っ直ぐ見つめる。

「だから、ちゃんと告白して。」

「え?」

「さっきの告白って、本気だったんでしょ?あんたの嘘付く時の癖ぐらい、知ってるわよ。」

自分の髪の毛いじり過ぎなのよ、というナミっちの言葉にハッとする。そして、俺を真っ直ぐ見つめる瞳に、俺も真っ直ぐ見つめ返した。

ゆっくりと口を開く。

「ナミっち、俺は君が好きっス。付き合って欲しいっス。」

「…うん、ありがとう。ごめんなさい。」

「ぐはっ!!や、やっぱり直接言われたら心に来るっス…」

涙目になりながら、ナミっちを見ると少し笑っていた。でも、耳は赤い。可愛い、なんて思ってしまう。

「でも、真剣に考えさせて?」

「ナミっち…?で、でも伊月さんは?」

「俊くんの気持ちも、W.Cが終わってから聞く予定なのよ。あと原澤さんも。」

「そ、そんな!俺すっげーかっこ悪いっス!俺もW.C終わってからにすれば良かったー!!」

ナミっちに泣き付くと、すぐに引き剥がされる。ってゆーか、伊月さん告白したら俺勝ち目ねーし!

「そんなことないわよ。気持ちを伝えるのに勇気が必要って私、知ってるのよ?だから私はかっこ悪いとは思わない!!」

ニカッと笑うナミっちは太陽のようにキレイだった。

彼女を狙うのは俺だけではない。

伊月さんや桐皇の監督をはじめ、俺や青峰っち、赤司っちなどのキセキの世代。

そして、もう1人の大きなライバル。

俺は、決めた。

「ナミっち、また告白するっス!!」

「……?」

ナミっちは意味が分かってないようだけど、いいんだ。

次に告白する時は、もっとナミっちは悩む。

それでも君を諦めない。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「久しぶりだな、日本…」

まさか、こんなにはやくに帰って来るなんて

「ナミ…」

もう1人の、大きなライバルが

69:桜◆kk:2017/10/18(水) 00:54 ID:dN.

涼太くんと涼香さんとごはんを食べていると、私のケータイが鳴った。

『もしもし?』

『俺だ…』

『あ、あんた…!』

電話の相手は、私の義理の兄であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ナミ!ノジコ!新しい家族だよ!」

「…ローだ」

「ロシナンテだ。よろしくな」

母さんに言われて紹介されたのは、黒髪でクマのひどい男の子と、金髪の男の人だった。

「ナミよ」

「私はノジコ」

最初はなかなか打ち解けられなかったけど、新しいお父さんのドジ振りや、それにツッコミを入れる兄と、仲良くなることができた

ーーーーーーーーーーーーーーーー

『ナミ、お前の学校での就職が決まった。明日の夜には、神奈川につく』

『え、そうなの!?家とか大丈夫?』

『お前の家に住む』

『何言ってんのよ!!』

『文句あんのか?』

『………分かったわよ』

電話を切ると、涼太くんに誰だったか聞かれたので兄だと答えると、嫌そうな顔をした。

「あの人、ナミっちのことには厳しかったっスよね〜…他は不良教師の癖に」

「アメリカでの留学が終わったから、こっちに戻って来るらしいの」

兄は医療に関しては勉強熱心で、私たちの卒業と一緒にアメリカへ留学に行った。他はなんッにも興味のない、ただの不良の保健室の先生だった。

「じゃあ、帰るわね。部屋の片付けしなきゃ」

「また来てっス!ナミちゃん!!」

「送るっスよ、ナミっち」

涼太くんの自転車に乗って、家へ向かう。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

告白する時、こいつは何を考えていたんだろう

私は俊くんが好きだけど、なんか最近違うのよね。いや、好きなんだけども

「送ってくれてありがとう。」

「じゃ、また明日っス!」

涼太くんの広い背中を見ていると、1人脳裏に浮かぶ黒い奴がいる。

成長したなぁ…涼太くん

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「へぶしっ!」

「ちょっと大ちゃん!風邪?」

「誰かが俺の噂してんだろ」

70:桜◆kk:2017/10/19(木) 22:08 ID:dN.

「今日からテメェらのことを診る、朱崎ローだ。ロー先生とでもトラ男とでもなんとでも呼べ」

ほ、本当に先生になるのね…周りの女子はかっこいい、と盛り上がる。だけど私は彼をかっこいいとは思わない。

なぜなら、彼はとんでもない過保護だからだ。

血の繋がっていない私の兄は、どういう訳か私に甘い。がんばれば自家用ヨットを買ってもらえるんじゃないか?と思えるほど甘い

「朱崎ローって…おい朱崎」

「私の…兄、デス…」

友達は面白そうに笑う。しかし、対照的に涼太くんはぶすっとしていた。

「あの人、普段は優しいけどナミっちのことになると、別人になるから独り占めできないっス!あと怖いし、厳しい!!」

涼太くんに目を向ける。確かに、運動部の人はウチの兄にはお世話になっているだろう。

キセキの世代のみんなも、修兄も崎ピョンもお世話になっていた。いや、ウチの兄が迷惑をかけた回数の方が多かったかもしれない…

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「トラ男センセー」

「…黄瀬屋か。なんだ、部活でケガでもしたか」

トラ男先生は、俺のことを覚えているみたいだ。まあ、そうだろう。自分の可愛い妹が神奈川に行ったのは、俺のせいなのだから

「ちょっと擦りむいたんスよ。消毒してっス」

先生のデスクの隣にあるイスに座る。デスクにはたくさんの医薬品がある。

「特にひどくもなんともねぇ…練習に戻れ」

「ひでーのは相変わらずっスね」

先生は俺に目を向けた後、すぐにデスクの上にあるパソコンに目を向けた。相変わらずのその人に、苦笑する。

「消毒だけでもしてくださいっスよ〜」

「……チッ」

舌打ちをされて、消毒をしてもらう。

この先生は、態度は悪いが学校医としての腕は確かだ。それと、なんだかんだでちゃんと診てくれる。

「テメェらのことは…許してねぇからな」

彼が言っているのは、中学の時のことだろう。確かに俺たちは、勝手にバラバラになって、ナミっちを悲しませた。

それでも彼女は、俺たちを、黒子っちを、黄瀬涼太を信じてくれている。

みんなが笑顔でバスケができる日を信じて。

「トラ男先生、俺はナミっちをもう泣かせないっスよ。」

「……」

「告白もしたっス。…ま、フラれたっスけど。でも、W.Cで優勝したらまたするっスよ、告白」

「あァ?」

トラ男先生の鋭い、クマの濃い目が俺をとらえる。

「俺はナミっちが好きっス。今、彼女は俺の方を向いてないけど、いつかは俺に向いてもらうっス。」

俺も負けじとトラ男先生を見た。

「先生、妹さんは俺が守るっス。」

「……消毒は終わりだ。練習に戻れ」

もっと言いたいことはあったが、俺はおとなしく保健室を出た。先生から、殺気が出ていたからだ。このままだと、殺気で殺されそう

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「黄瀬屋、俺はナミのことは恋愛対象として見てないぞ…」

「知ってるっスよ!!……って、え!!?」

「可愛い妹なだけだ。ただ、泣かせる奴はころすす」

71:桜◆kk:2017/10/20(金) 16:05 ID:dN.

今日はW.C予選の前日だ。神奈川から出る高校を決めるのだ。海常高校は、ホテルへ向かう。

「ナミっち、ついたっスよ」

「んぁ?あー…」

黄瀬が隣で寝ているナミを起こす。すると、携帯が鳴った。開いて見ると、かつての自分の主将である赤司征十郎からLINEが来ていた。

赤司っち:涼太、W.C当日にキセキの世代で集まろう

後から来たLINEには、集合場所が書かれている。黄瀬は頭を悩ませた。

(ナミっちが知ったら行きたがりそうだな〜…いいのかな?ナミっちも連れてって)

「あー…ナミっち、キセキの世代がW.C当日に集合するんスけど…」

「キセキの世代ってことは、テツたちはもちろん、征十郎とむっくんにも会えるのよね?私も行く!」

やっぱり…と思いながら、一応赤司に聞いてみると、快くOKしてくれた。

「おい、2人とももう降りろ!!」

「笠松先輩!ちょっと待ってよ!!!」

今日のナミは、マネージャーではない。

ただの一般人として、試合を見る。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「予選は明日だ。近くの体育館を借りて、練習する。1時間後、またロビーに集まれ」

監督の声で、各自が自分たちの部屋へ荷物を運ぶ。ナミは、何度も黄瀬の家に泊まっているということで、黄瀬と同室になった。

「涼太くん、この荷物どこに置くの?」

「ああ、それは…」

黄瀬が振り返ると、ナミと顔の距離が近かった。黄瀬は顔を真っ赤にして、慌てて少し体を引いた。

心臓の音が、ナミに聞こえてないか心配だった。

「ちょっと涼太くん?」

「そ、それは机の上でいいっスよ!!あ、喉乾いたんで下の購買で買って来てっス!」

「お金は出さない「これ俺の財布っス!」

無理矢理、財布を押し付けられてナミは渋々購買へ行った。

(こ、告白してから更に意識しちゃって…ど、ドキドキするっス…!)

ナミが戻ってくるまでに、終わらせようと荷物を運ぶ。

(W.Cが終わったら…)

自分の気持ちをもう一度伝える、それを胸に黄瀬は練習へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「な、ナミっち…俺の財布の中が空っぽなんスけど…」

「ああ、みんなのドリンク買ってたら無くなっちゃったのよね」

「そ、そんなー!!」

72:桜◆kk:2017/10/20(金) 22:39 ID:dN.

予選をなんとか勝ち抜き、今日はW.Cの開会式。ナミは黄瀬と共に、キセキの世代の元へ向かった。

2人は集合場所である会場前の階段のところに、カラフルな髪の色を見つけた。即座にナミが走り出す。

「むっくん!!」

「うわっ!ナミちん!?」

階段に突っ立っていた紫頭の男にナミは飛び付く。慌てて黄瀬も追いかけた。

「つーかなんでナミちんがいんの〜?」

「涼太くんに連れて来てもらったのよ!みんなに会いたくて!」

ニコリと笑ったナミを見て、紫原も微笑んでナミの頭を撫でた。

「まだむっくんと私たちしか来てないの?」

「そうみた〜い。ナミちんチョコ食べる?」

「食べる!」

紫原は自分が手に持っていたチョコレートをナミにあーんと食べさせてあげた。黄瀬が羨ましい、と涙を流す。

おいしい!とナミが言ったとき、ナミと黄瀬と紫原の背後から声がした。

「あ?まだ紫原しか来てねぇのか?」

その声にナミと黄瀬と紫原は同時に振り返った。2人の目には黒くて体格のいい男が映る。

「やっほ〜峰ちん」

「久しぶり、大ちゃん!」

「久しぶりっスね!青峰っち!!」

青峰は紫原の隣にいた人物に目を見開く。

「は?お前っ、ナミ!?」

ナミはピョンピョンと階段を上って青峰の真ん前に立つ。

「久しぶりね。合同合宿以来かぁ…」

「おー…お前も来てたのか」

「俺達に会いたかったんだって〜」

紫原がそう説明すると青峰がニヤニヤしながらへーナミちゃんは寂しかったのかァ、と言ったので、ムカついたナミは青峰の腹に一発拳をお見舞いしてやった。

「大丈夫〜?峰ちん」

「くそ…ナミのやつ思いっきり殴りやがって」

「だってなんかムカついたし」

「青峰っちに心の底から同情するっス…」

いつも殴られる黄瀬が、青峰の身を案じているとナミに殴られた。

「ちょっと!!なんで殴るんスか!!!」

「ノリよ」

「ノリっスか」

73:桜◆kk:2017/10/20(金) 22:58 ID:dN.

「つーか他の奴ら遅くねぇ?赤司はどうしたんだよ」


「さあ…きっと部員に指示出してから来るんじゃない?たぶん他の人はちゃんと先輩に説明してから来るわ」

「「………」」

ナミの言葉に紫原と青峰は無言になる。たぶん2人は先輩に無断でここに来たのだろう。今頃先輩達が必死で探しているはずだ。

「なんだ赤司はまだ来てないのか」

「緑間」

「あ、ミドチン」

「真太郎!!!!」

ナミは青峰と黄瀬を押し退けて緑間の元へ駆け寄る。

「ナミ?なぜここにいるのだよ」

「俺達に会いにきたらしいぜ」

「大ちゃん以外だけど」

「なんでだよ!!」

緑間はラッキーアイテムのハサミを持ちながら眼鏡をクイッとあげる。

「そ、そうか」

「ミドチン照れてる〜」

「照れてないのだよ!!」

「相ッ変わらず可愛いわね、あんた」

ナミと紫原が緑間をからかうと、緑間は拗ねてしまった。

「そうだナミっちー」

「空が青いわね〜」

「あれ?ナミっち!」

「本当だー綺麗な空だね」

「ちょっと、あれ?ナミっち聞こえてるっスよね!?」

「あー…眠くなりそうだぜ」

「え?みんなも?みんなも無視っスか!?」

「お前ら、さすがに黄瀬が可哀想なのだよ」

先程からずっと黄瀬を無視するナミと紫原と青峰の三人。黄瀬は涙目になっていた。ナミは鬱陶しそうに返事をした。

「何?涼太くん」

「やっと返事したっスね!!」

「早く話せや」

青峰の蹴りが黄瀬に入る。黄瀬はよろめきながら、ナミに後ろから抱きついた。

「笠松先輩たちに言ってくるの忘れたっス」

「……何を?」

「キセキのみんなで集まるのグハッ」

黄瀬が言い終わる前に、ナミの肘が黄瀬の溝うちに入った。そして、黄瀬の腕の中からするりと抜け出し、胸ぐらを掴んでブンブンと揺さぶる。

「あんた何してんのよッ!!!笠松先輩たちに迷惑かけてんじゃないわよ!バカッ!殴るわよ!!」

「もう殴ってるのだよ」

目を吊り上げながら怒鳴るナミに、静かにツッコミを入れる緑間。

紫原と青峰は、相変わらずのナミに冷や汗をかいた。アレが自分だと思うと、ゾッとする。

「あとはテツと赤司か」

「遅いね〜」

「あっ、来た!!」

ボコボコの黄瀬を足元に、ナミは手を振った。

74:桜◆kk:2017/10/20(金) 23:19 ID:dN.

「なんだァ、テツ…お守り付きかよ」

「峰ちんと黄瀬ちんにも、さっちんとナミちんがいるじゃん。お守り」

「さつきはカンケーねぇだろがコラ」

「そうよ!私はみんなのお守りよ!!」

「つーか緑間っち、なんでハサミとか持ってんスか?」

「ラッキーアイテムに決まっているだろう。バカめ」

「いや、とりあえず危ないから、むき出しで持ち歩くのやめてほしいっス」

「お待たせしました」

ナミたちのところへやって来たのは、キセキの世代幻の6人目 黒子テツヤ。しかし、彼の後ろには同じチームと思われる部員がついて来ていた

「テツ…久しぶり。」

「ナミさん…どうしてここに?」

「みんなに会いに来たの。そっちの人は誠凛の人よね?」

ナミが黒子のところまで階段を下りて、黒子の隣にいる男子の顔をジッと見つめる。

「彼は降旗くんといいます。チームメイトです」

「よろしくね、降旗くん!」

「ど、どうも」

ナミが降旗を見つめていると、急に降旗の頬が赤く染まった。その様子にナミは首を傾げた。

「つーかナミ!!」

青峰から呼ばれてナミは振り返った。

「何よ」

「赤司遅ぇ」

「知らないわよ。むっくんそれ貸して」

青峰にそう告げてから、ナミはお菓子の袋を開けようとして中々開けれない紫原に声を掛けた。紫原は素直にお菓子を渡す。ナミが開けると、中のお菓子が飛んだ。

「「……」」

「拾って食うな!!!」

「「さ、3秒までなら…」」

「なんなのだよ、そのルールは!!」

ナミと紫原がヒョイヒョイお菓子を拾うと、ツッコミをしていた緑間が、疲れたように壁にもたれた。

お菓子を全て食べ終わったとき

「すまない。待たせたね」

やっと彼、赤司征十郎がやって来た。

「…赤司君」

黒子がそう呟く隣で降旗は赤司を見て怯えているようだった。

「大輝。涼太。真太郎。敦。そして…テツヤとナミ…また会えて嬉しいよ。こうやって全員揃うことができたのは実に感慨深いね」

その場の空気が重々しくなる。

ナミはヤバイと感じて、降旗にそっと逃げたほうがいいと告げた。しかし、彼は足がすくんで動けない。

「…ただ、場違いな人が混じってるね。悪いが君は帰ってもらっていいかな?」

赤司が降旗にそう言うが、彼は赤司にヒビって中々動けない。

「なんだよつれねーな。仲間外れにすんなよ」

そんな緊迫した空気を破るかのように1人の男が現れた。

「火神!!」

「火神ちゃん!!」

「話はアトだ。とりあえず、あんたが赤司か。会えて嬉しいぜ」

「………」

(うっわ…最悪な状況…どうするのよこれ〜…!)

赤司はゆっくりと階段を下りて、緑間にハサミを借りた。

「火神くん、だよね?」

「征、十郎…?」

赤司がこれからすることが分からないナミは、ただ2人を見つめるだけだった。

するといきなり、ビュッと赤司が火神にハサミを突き付け、ギリギリのところで火神はそれを避けた。

「火神君!」

「火神ちゃん!!!」

黒子と降旗、ナミが火神に駆け寄る。その光景を残りのキセキ達はボーッと眺めていた。

75:桜◆kk:2017/10/20(金) 23:39 ID:dN.

「僕が帰れと言ったら帰れ」

赤司がそう言ったとき、紫原が大きな手でナミの耳を塞いだ。

「この世は勝利がすべてだ。勝者はすべてが肯定され、敗者はすべてが否定される。僕は今まであらゆることで負けたことがないしこの先もない。すべてに勝つ僕はすべて正しい。




僕に逆らう奴は親でもころす」

赤司がハサミで自分の前髪を切りながらそう言った。しかし、ナミは耳を塞がれているので赤司がなんと言ったか分からなかった。

紫原はホッと一息ついてナミの耳から手を離す。

「じゃあ僕はそろそろ行くよ。今日のところは挨拶だけだ」

「はぁ!?ふざけんな赤司。それだけのためにわざわざ呼んだのか?」

「いや、本当は確認するつもりだったけど、みんなの顔を見て必要ないと分かった。全員あの時の誓いは忘れていないようだからな」

ナミは話についていけなくて困惑する。キョロキョロとみんなの顔を見渡すが、訳が分からない。

「次は戦う時に会おう。」

「待って征十郎!!」

「ちょ!ナミっち!?」

「ごめん涼太くん!私、戻るの遅れるって先輩たちに言っといて!!」

ナミが赤司を追いかけようとする。しかし、その前に火神に近づいた。そして、そっと火神の切れた頬に手を添える。

「火神ちゃん、大丈夫?征十郎がごめんね!」

「い、いや大丈夫」

「良かった…W.Cがんばってね!応援してるから!!」

火神が少し顔を赤くした。しかし、ナミはそれに気付かず、赤司を追いかけた。

「…惚れましたか?」

「ほれっ…!?ばっ、おま、!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ナミは赤司に追いつくと、手を掴んだ。やっと赤司は振り向いた。

「征十郎、久しぶり。」

「久しぶりだね、ナミ。」

「あんた、何してんのよ。人にハサミを向けるななんて…火神ちゃんが避けてなかったら、どうなってたか…」

赤司はナミに目を向けると。また歩き出した。

今度は、ナミは追いかけなかった。

「怖かった…」

ナミの出した声は、掠れていて、赤司に聞こえるかどうか分からないぐらいの、ボリュームだった。

「火神ちゃんがケガするのも…みんなが険しい顔をしてるのも…」

ナミの目から、ツーッと涙が伝う。

「あんたが…犯罪者になるかもしれないって…思ったのも…」

ピタリと赤司の足が止まった。ナミの声は、聞こえていた。ゆっくりと赤司が近付いて来る。

「ナミ…」

そして、彼は先程とは違う優しい笑みを浮かべて、ナミを抱き締めた。

ナミは背中に手を回して、更に泣き出す。

「だいたい何よ、誓いって…ッ聞いて、ないわよ…!みんな分かってるのに、私だけ1人みたいじゃないのよ…!ばかぁ!」

「すまない。…ナミ、待っていてくれ。」

声が少し、穏やかになった。ナミはハッとして、上を向く。

「彼らが…“キセキの世代”がオレを倒すまで。」

「征ちゃん…」

それは、勝利に執着する赤司征十郎の顔ではなかった。ナミはそれに、すぐ気が付いた。

「そしたらまた…そうだね、バスケでもできたらいいな」

ーナミも桃井も、みんなが笑っているバスケを

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「じゃあな、ナミ」

「ええ。さよなら、征十郎。」

ナミは何にさよならと言ったのだろうか。

ただの別れの挨拶か、それとも…

未来を読んだのだろうか。

76:桜◆kk:2017/10/21(土) 01:08 ID:dN.

番外編【青峰とナミ、あと誠凛】

せっかくの休日だから、東京に帰ってゴロゴロしながら、テレビでも観ようと思いソファに寝転んだところで、玄関のチャイムを連打する音がした。

居留守をしようと思ったがあまりにもインターホンを連打されたので煩くてそれは出来なかった。

「誰よ!迷惑ねっ!」

ノジコが居たらぶっ飛ばされてるわよ、と思いながらガチャっと玄関を開ける。

目の前に居たのは見知ったガングロ。

静かに玄関のドアを閉めようとしたら、ガシッとドアを掴まれてしまった。

「おい、閉めんじゃねぇよ」

「何よ、休日にまであんたの顔なんか見たくないんだけど」

そう言って力に任せてドアを閉めようとしたが大ちゃんも踏ん張る。

「おい、話ぐらい聞けよ……さつきが!」

さつき!?

ガンッッ

さつき、という名前を聞いた瞬間勢いよく玄関を開けたので、大ちゃんの顔面に玄関のドアがぶつかった。

「いってぇな…いきなり開けんなよ」

そんなことはどうでもいいのよ、と言えばよくねぇよ、と言い返された。

「さつきがどうしたの!?」

「いや、あのー…喧嘩して、さつきのやつどっかいっちまったんだよ。見つかんねぇから、一緒に捜してくんねぇか?」

「バカアホ峰!!!!」

と叫んでアホ峰の顎にアッパーを決め込んだ。

グハッと言って激痛に悶え苦しんでいたけど無視した。

幸いなことに服はちゃんと私服を着ていたので、家の中から携帯と鍵を取って、玄関の鍵を締めたことを確認してから未だに悶えているバカを放置して走り出した。

後ろからアホ峰の私を呼ぶ声が聞こえたが、聞こえていない振りをして、さつきを捜しに行く。

さつきはきっと、あそこにいる…!!

77:桜◆kk:2017/10/21(土) 01:18 ID:dN.

番外編2【青峰とナミ、あと誠凛】

さつきがいるであろう場所に向かって走っていると、急に雨が降り出してきた。透けない服着てきて良かった。

誠凛高校と書いてある校門の中を突っ切る。

そして体育館に向かう。

バンっと勢いよく体育館の扉を開けると、体育館の中にいた人達の注目を一気に集めたのが分かった。

「さつき!!」

「ナミさん!?」

「ナミさん?」

「ナミ!!」

「ナミちゃん?なんで!?」


私は髪から水滴が滴り落ちるのも気にしないでさつきたちの方へ向かう。

「ナミちゃん、このタオル使って」

リコさんと日向くんから差し出されたタオルをお礼を言って受け取った。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

誠凛のみんなに、一応挨拶とお礼を言う。

そして、イスに座っているさつきに近付いて

パシンッ

思い切り頬を叩いた。

「ッ、?」

「ナミさん…」

「ナミ…?」

そして、さつきに抱き付く。

「心配させないでよ…バカッ…!」

「っ、ごめん、なさい…!ごめんなさい…!」

さつきがいなくなったら、どうしようと思った。あのガングロのそばにいてあげられるのは、さつきだけだから。

私の、大切な友達だから。

さつきと私の目からポロポロと涙が溢れる。

しばらく2人で静かに泣いていると、不器用に火神ちゃんが私の頭を撫でてくれた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「それで、2人共どうしたんですか?」

なんだ、まだ大ちゃんと喧嘩したことテツたちに言ってなかったのね…

「私…っ青峰くんに嫌われちゃったかもしれない」

せっかく、目が乾いたのにまた、涙を瞳に溜めながらさつきがテッちゃんに泣き付く。

そして、さつきが大ちゃんとの喧嘩の理由を話し出した。

私にはよくわからない話だったので、ボーッとしててちゃんと聞いてなかったけど。

78:桜◆kk:2017/10/21(土) 01:43 ID:dN.

番外編3【青峰とナミ、あと誠凛】

「大丈夫ですよ桃井さん」

そう言って話し終わったさつきの頭を、テツが撫でる。

いいなーさつき、テツに頭撫でてもらえるとか貴重なことよ、なんて思ってると心を読まれたのか火神ちゃんにまた、頭を撫でてもらった。

「青峰くんもちょっとカッとなって言い過ぎただけです」

「そうよ!だからあいつ、私にさつき捜すの手伝ってって頼んできたんだから!」

「そうなんだ…」

「うん。それと、さつき泣かせた分まで私が大ちゃん殴ってきたから大丈夫よ!」

そう言って拳を突き出す。

(((何が大丈夫なの⁉)))

すると、ちょうど拳をおろした時に携帯が鳴った。

「あ、ごめん。ちょっと失礼するわ」

ちょっとだけみんなのとこから離れて通話ボタンを押す。

『もしもし?大ちゃん?」

『おう、さつき居たか?』

『うん、誠凛高校にいたわ』

『テツのとこか。門の前で待っとけって伝えてくれ』

『分かった。ちゃんと謝りなさいよ』

『あぁ、それとさつき家まで送ったら飯食いに行こうぜ』

『もちろんあんたの奢りでね。じゃあ、それまで私誠凛高校にいるわ。さつき送ったら連絡して』

『分かった』

ピッ

「さつき!大ちゃんが迎えに来てくれるって!校門の前で待っとけって」

「分かった。ナミさん、ありがとう」

「いえいえ。礼には及ばないわ。ちゃんと仲直りしてきなさい』

さつきは誠凛の皆さんにお辞儀をして、私とテツに手を振ってから、体育館をあとにした。

「あら?ナミちゃんは一緒に帰らなくていいの?」

「うん!大ちゃんがさつきを家まで送ったらご飯食べに行こうって。それまでここにお邪魔してていいですか?リコさん、みんな」

そうみんなにに言うと大歓迎だと言われた。

「なんだナミって青峰の彼女だったのか?」

火神ちゃんが変なことを聞いてきたので、足を思い切り蹴ってやった。

「んなわけないでしょーが!!!」

「火神くん、変なこと言わないで下さい」

「な、なんだよ」

「私には俊くんがいるもん!ねー、俊くん♡」

「伊右衛門がいるもん!やべキタ!」

「伊月黙れ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「そう言えば黒子。I.Hに青峰が出なかった理由は分かったが、残りの2人はどうしてだ?」

「それなら僕より、ナミさんの方が詳しいと思います」

いきなり話を振られて、何のことか分からず困惑した。

「紫原くんと赤司くんがこの前の試合に出なかった理由です」

あーハイハイ

そう言えば試合のことについていろいろ聞いた気がする…


「むっくん…紫原は、征…赤司と戦うのが嫌だし、赤司に出るなって言われたらしいわ」

「紫原君は赤司君とだけは戦うことを拒むんです」

「赤司って奴は…?」

「青峰が出られないって聞いて、それじゃ簡単に勝ってつまらないから出なかったって言ってた」

「なんだ?それ!」

「まぁ結局は化物ぞろいってことだろ、キセキの世代」

そんなにすごいの?あいつら…火神ちゃんは目をギラギラさせていて、少しドキッとした。…何に!?

「それにしてもナミって、バスケ部じゃないのにキセキの世代と仲良いんだな」

鉄平さんが私にそう問い掛けた。

「うん!」

元気よく頷いて笑った

(((かわいいなー)))

「バスケやってる人たちからは、よく妬まれたりしてるけど、本当はすっごくいい人達なのよ?」

と言うとそうか、と言って鉄平さんが久しぶりに頭を撫でてくれた。

79:桜◆kk:2017/10/21(土) 01:55 ID:dN.

番外編4【青峰とナミ、あと誠凛】

私の携帯が鳴った。あっ、大ちゃんからかも!

『もしもしー』

『あー…俺だ』

『今どこ?』

『誠凛に向かってる』

『じゃあ駅前のとこで待ち合わせしましょ。私も今から向かうわ』

『おう、危ねぇから誰かに送ってもらえよ』

『分かった。ありがとう』

ピッ

あ、もう外暗くなってる。いつの間にか雨もやんでるし、服もだいぶ乾いてきたわね…

「じゃあリコさん、みんな、お世話になりました」

「え、もう帰んのか?」

「大ちゃんと駅前で待ち合わせしてんのよ」

誠凛の皆さんは私が帰るときいて少しガッカリしていた。なんていい人たちなんだろう。最後に、俊くんに抱き付く。

「途中まで送って行こうか?」

火神ちゃんにそう言われ、お願いしようとしたらテツが、僕が送りますと言ったのでテツにお願いした。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

テツと並んで歩いているとあることを思い出した。

「そうだわ、このタオル今度洗って返すってリコさんに言っといて」

「はい。その時また一緒にご飯でも食べましょう」

「うん!また家に来て!ごちそうするから!」

嬉しくてニヤニヤしていたら、テツに頭を撫でられた。そんなことされたら、もっとニヤニヤしてしまう。

「あ、そう言えば今日紫原くんに会いました」

「うそ!!」

今テツは、私にとって聞き捨てならないことを言った。

「ストバスの大会で会ったんです。まあ、雨で中止になってしまったんですけど」

「いいなぁ…ってなんでテツとは会って私とは会ってくれないのよ!」

「今日会ったのは偶然ですけどね」

よし、今日の夜電話してやろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

テツと話してたら、いつの間にか待ち合わせ付近に来ていた。

信号を渡ったところに大ちゃんらしき人が見えた。

「ここまででいいわ。ありがとう。」

「気をつけて下さい」

「テツ」

「なんですか?」

「またいつか、バスケしてよね。みんなで!」

「……」

「そしてその時は。私も誘ってよね?あんたたちが全員で笑ってるとこ見たいから。」

少し驚いたように目を開けたテツだったが、すぐにいつもの顔に戻った。

「…はい。約束します」

拳を突き出されたのでコツン、と拳を合わせた

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「だーいちゃん!」

「お、来たか」

「あんた…暗いとこにいたら背景と一体化して分かんないんだけど。肌が黒いから」

「ぶん殴るぞてめぇ!!」

80:桜◆kk:2017/10/21(土) 16:58 ID:dN.

番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】

今、帝光中学の文化祭にみんな夢中で、部活の合間を縫ってクラスの子に呼び出される人もいる。

もちろん私も、二度目の文化祭に張り切っていた。

「さつき、一緒にまわんない?」

「もちろんいいですよ!」

今年はさつきとまわることにした。さつきのクラスはクレープ屋さんをするらしく、さつきは裏方らしい。たぶん当日に追い出されるか、ウェイトレスになるわね、うん

ーーーーーーーーーーーーーーーー

さつき:クラスのみんなに追い出されたので、今からナミさんのクラスに行きますね…

ほらね。さつきには悪いけど、すっごく予想できてた。

「ナミさーん」

「あ、さつきだ。征ちゃん、出てもいいかしら?」

「ああ。俺も後から出る。」

征ちゃんに一言かけてから、教室を出てさつきと歩き出す。

「んじゃ、どこ行く?」

「バスケ部のみんなのところ行きます?」

「確かみんなは…「桃井さん、ナミさん」

地図を見ると、前から声をかけられた。見てみると、燕尾服姿のテツだった。横にいるさつきが蒸発しかける。

「テツ!あんた、なんで燕尾服なの?」

「おかしいですか?」

「お、おかしくなんかないよ!似合ってる!」

さつき、がんばった!がんばったじゃない!!さつきの勇姿に感動した。

「テツのクラスはエレガントde curryね。そのセンスはどうかと思うけど…行きましょ」

「て、ててて、テツくんの燕尾服…」

やはり蒸発しそうなさつきの手を引っ張って、テツにエスコートしてもらう。

カレーはなかなかおいしかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

歩いていると、占星術研究会の占い相談コーナーと書いている看板を見つけた。

「あ、確かここって、ミドリンがいるところですよ」

「へ、真太郎が?」

「はい。たぶん、おは朝占いを生活の基準に置いてる人だから、占星術研に目を付けられたんだと思いますよ」

…さすが真太郎。類は友を呼ぶ、ってこーゆーことなのね。

「面白そうだし、行ってみましょう!ナミさん」

入ると真太郎に会ってしまった。こいつが正しく占える訳がないのに…

「私、会長に見てもらって来ます!」

「ちょ、さつき!」

嬉しそうに走り出して行くさつきに、少しだけ嫉妬した。あぁ…私もできることなら会長に占ってもらいたいわよ!!

「見てやるのだよ、ナミ」

しょーがないから、真太郎の前に座る。水晶やタロットで見てもらえるのかな、と思っていると机の上にはホラ貝とガラス製ランプが置いてある。

「こんなんで占える訳あるかーーッ!!!」

怒りでホラ貝とガラス製ランプを拳で壊してしまった。真太郎が叫ぶ。

「あああああ!!何をするのだよ、ナミ!!これでおは朝グッズがもらえたのだよ!!!」

「知るか!詐欺よ詐欺!!ったく…行くわよさつき!」

さつきを引っ張って教室を出る。ここら辺は、征ちゃんの好きな将棋部やチェス部の出し物をしていた。いるかもー、なんて思って覗いてみると、赤いよく知っている頭がいた。

赤司様だ。

赤司様は、将棋部の部長に圧勝した。

(あ、赤司無双を私はこの目で見た…)

少しびっくりしながら歩いていると、何かにぶつかった。

81:桜◆kk:2017/10/22(日) 00:42 ID:dN.

番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】

ぶつかったのは、変な格好をした涼太くんだった。周りの女子がキャーキャー言いながら、列を作っている。

「あ、ナミっち、桃っち、おはようっス」

「きーちゃん!」

「涼太くん!…何?その変な格好」

ガーンッと効果音付きで膝をつく、フランス王朝の青年将校姿の涼太くん。でもすぐ復活した

「うち、縁日やってんスよ。だからこれはその衣装…」

看板には、艶仁知〜艶やかなる新しき愛と知性をあなたに〜と書いてあった。

「…もうどっから突っ込んでいいのか、分からないんだけど」

そう言うと、涼太くんも苦笑した。

「ナミっちの気持ちも分かるっス。俺も教室の飾り付けしてて、あれ?と思ったし」

いやもっと前から気付くでしょ、と思う。これには、経緯を見てると気付かなかったらしい。

涼太くんの話によると、初めはアフタヌーンティーの喫茶室を希望してたらしいけど、調理室の関係で飲食店のクラスは数が限られてて涼太くんのクラスは抽選に外れた。

だけど、一部の女子はアフタヌーンティーの準備を既に準備をしていた。せっかく用意したものを無駄にはできない、と用意した衣装で縁日をやろうということになった、らしい。

「でも人がいっぱい入って良かったじゃない」

「まあ、そうっスね。なんか物珍しさで人が集まってるらしくて」

「物珍しさ、ねぇ…」

涼太くんと話し始めてから、やたらと背中に視線を感じる…たぶん間違いなく、涼太くん目当てに並んでる女子たち…

それはさつきも感じ取っていたらしく、2人で顔を見合わせて、あはは…と笑う。

「あ、そうだ2人とも!紫原っちのも見た方がいいっスよ絶対!待ってて!呼んでくるから!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、ナミちんにさっちんだー」

「むっく…ん!?」

むっくんは、お姫様の格好をしていた。デカイ分、迫力もある。

「驚くっしょ?」

涼太くんの言葉に、こくこくと頷く私とさつき。すると、涼太くんはむっくんに声をかけた

「紫原っち、アレやってよ」

「えーうん。まあいいよ」

「アレって?」

「まあ、見てて」

黙って見てると、ゴホンッとむっくんは咳払いをすると腰に手を当てて、人差し指を突き出す

「ごはんがないなら、お菓子を食べればいいじゃなぁい!!」

「「…え?」」

私とさつきが驚いていると、周りの女子がキャーキャー言い始めた。

「似合うー!すてきー!」

「もっとやってー!」

な、なんてむっくんにぴったりなセリフ…

そのまま私たちは、縁日を後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、もうちょっとでスタンプラリーね」

「スタンプラリー?」

「そう。その大会に男女ペアで出場して優勝すると、そのペアは幸せなカップルになるんだって」

さつきの目の色が変わり、肩を掴まれる

「まさかナミさん…!」

「そのまさかよ…!」

ガシッと私とさつきは手を組んだ。そして、勢い良く走り出す。

「がんばりなさいよ、さつき!テツにはこのこと言ってあるから!!」

「ありがとうナミさん!私、がんばります!」

そう。テツとさつきにペアを組ませるのだ。

82:桜◆kk:2017/10/22(日) 01:38 ID:dN.

受付会場に向かうと、たくさんの人が集まっていた。

(この中からテツを見つけるとか、砂浜に落ちたコンタクトレンズを拾うのに等しいじゃない…!)

ショックで2人でうなだれていると、大声で声をかけられた。

「ナミー!さつきー!」

「ナミさん、桃井さん」

ハッとして声をかけられた方を見ると、テツと大ちゃんがいた。私とさつきはテツに駆け寄る

「テツ!!」

「テツくん!!」

「おい、俺は無視かよ」

大ちゃんにデコピンされる。

「だってテツしか目に入らなかったもん」

「そうだよ!無視じゃないもん!」

「それを無視っつーんだよ!!」

大ちゃんを無視して、テツにはさつきと組むように言う。テツはそれに分かりました、と頷く

「おい、なんの話してんだよ」

「このスタンプラリーの話よ。あんたもこれに参加すんの?」

「しねぇよ。俺はテツに付いて来ただけだ」

「呆れた…このスタンプラリーの優勝景品は、レブロンモデルだから、ついあんたもかと…」

「マジかよそれ!!俺も欲しかったんだよそのバッシュ!!!」

すると、大ちゃんはガシッと私の肩を掴んだ。やだ、イヤな予感…!

「ナミ!俺と参加しろ!!」

あぁ…イヤな予感、的中…

「イヤよ!私はさつきの味方なの!!」

「なんでそこでさつきが出てくんだよ!」

「いいからイヤなの!!出たいなら他の女を誘いなさいよ!それか男!!」

「めんどくせぇ!!参加しろ!」

「2人とも、受付終了しますよ?」

ギャーギャー言い争ってると、いつの間にか人が私たちを避けていた。

「…しかたない…あとで焼きそば奢ってよ!」

「分かったよ」

受付を済ませて、会場へ進む。まずは二人三脚で第2ゲームへ進む、というものだった。

「勝つぞ、ナミ!」

「はいはい。ってゆーか、あんまりくっ付かないでくれるかしら?セクハラよ」

「どういうことだよ!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

スタートの音と共に、大ちゃんに引っ張られて私は走り出す。

「はやッ!速すぎ!!止まれなーーいッ!!」

「止まる訳ねーだろ!!…ッ!曲がるぞ」

「え?」

すると、勢い良く大ちゃんはカーブした。ゴールから少し離れる。

「ちょっと!なんで曲がるのよ!?」

「なんつーか、イヤな感じがしたんだよ」

「はあ!?」

「いいからっ!もう一回曲がってコースに戻るぞ!!」

コースに戻って走ってると、後ろからバゴォッと音がした。振り返ると、地面には大きな穴があいている。

「後ろの、ゴールを一直線に目指してた集団が消えてる!?なにあの穴!!」

確かあの場所は、大ちゃんがちょうど曲がったところ…すると、アナウンスが流れた。

《えー、クイズ研からのお知らせです。落とし穴に落ちた人は、その場で“失格”となるのでご注意ください》

「落とし穴って…あとだしもいいとこよ…」

てか良く見たら、ところどころ掘り返したあとのような…どことなく土の色が違う気が…!

「グラウンドに落とし穴って…本格的すぎ…」

「いいじゃねぇか。これぐらいスリルがある方がおもしれぇよ。」

うわ、楽しげな笑み…因縁のライバルと出会ったかのような…

すると大ちゃんは、私の肩に回している手に力を込めた。

「ナミ、突っ走るぞ!」

「えっ!?いや、少し慎重に行かないと私たちも穴に落ちるわよ!?」

「俺の勘を信じろ!!」

自信満々な大ちゃんを見る。

「…本当に信じて大丈夫なんでしょうね?」

「大丈夫じゃねー時は…なんとかしろ!」

「んな滅茶苦茶な!!」

「グダグタ言うな!行くぞ!!」

もう一度、私と大ちゃんは走り出した。

83:桜◆kk:2017/10/22(日) 01:38 ID:dN.

↑番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】

84:桜◆kk:2017/10/23(月) 17:09 ID:7ZY

小話まとめ1(会話文のみ)

帝光中学3年生時代のナミのセーター事情(黄瀬×ナミ)#なんか2人でやらかして廊下に立たされてます

「ね、ナミっちのそのセーターって男もんっスよね?つーか帝光のやつじゃないっスよね?」

「兄ちゃんの友達の花宮真から奪っ…もらったのよ」

「え、今奪ったって言おうとした?……姉ちゃんのお古あるからあげようか?」

「……ううん、いい!これマコの匂いして好きなの!」

「………あ、そっすか…」

「ちょっとー、何泣いてんのよ?」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ナミの交友関係が広かった件について(キセキ×ナミ)

「えー、ナミちんって木吉鉄平と友達だったのー?聞いてねーし」

「コンビニでよく会うようになって…」

「そのセーターも花宮真のっしょ?なんなんスか!!」

「いや兄ちゃんの友達…」

「虹村さんと知り合いだったということも、聞いてないぞ」

「昔からの知り合いだったし?言わなくていいかな〜、みたいな?」

「灰崎をどうやって下僕にしたのだよ」

「崎ピョン友達だし…」

「トラ男と兄妹って聞いてねーんだけど?」

「朱崎ローだし、むしろ気付くでしょ…」

「桃井さんともいつの間に仲良くなったんですか?」

「さつきとは大ちゃん絡みで…ってゆーかなんなのよみんな!ちょっとうざいんだけど!!」

「待てナミ!話はまだ終わってないぞ」

「いーーーーやーーーーー!!!!!!」

85:桜◆kk:2017/10/23(月) 18:32 ID:7ZY

一応の設定。
ほんと、ちゃんとしたやつ。後付けとかじゃなくて、I.Hのこと忘れてたから書けなかっただけだから。合同合宿とか正直なところW.C後の話だから。いつかI.Hの話も書くから。合同合宿の話は今だけ忘れて。またするかもだけどさ。

花宮真はローの友達
ノジコとローは帝光中学じゃない
ノジコとナミは二歳差、ローとナミは六歳差
花宮とローはローが六年生、花宮が二年生の時に出会った。
結構、朱崎宅にお邪魔していてナミたちの過去を唯一知っている。
セーターをナミに奪われ…あげた

86:桜◆kk:2017/10/23(月) 18:44 ID:7ZY

なんかねー、色々ごちゃごちゃだから新しくスレ作り直します。
変えたい設定もあるし…少ないとは思いますが(つーかいないと思うけど)読んでくださった皆様、ありがとうございました。違うスレで作り直しした際は、もう一度足を運んでください。


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