颯は数学はギリギリ合格したが、理科のテストが補習らしい。
関係ない生徒は教室から追い出されるので、廊下で本を読みながら待った。
所詮塾の本棚、と甘く見たら大間違いだ。
洋書、訳書、日本文学、図鑑などは勿論、なぜかラノベと絵本まである。
私が本棚から手にとったのは、『The Catcher in the Rye』だった。
主人公が成績不振で退学になって飛び出るお話。
10分程待っただろうか。
もう本では主人公が学園を飛び出ていった所まで読み終えた。
それと同時に、颯とその他の男子女子の笑い声が聞こえてきた。
なんか――……
虚しい――……
「帰ろ」
ぶっきらぼうに本をパタンと閉じ、棚に戻した。
何、やってんだろ
どうせ待っていたって、見向きもされないんだから。
すれ違うだけで、彼は正面を向いているのだから。
私と彼の視線は、交わらない⊥(垂直)みたいなもので。
絶対に彼の棒が横になって、並行になることはない。
絶対に彼の棒が横にずれて、垂直になることはない。
もう、やめちゃえばいいんじゃない――?
上の>>12私です
匿名になってました><