はじめまして、ほのあです!
結構前にもこれと同じ小説を書いていたのですが、小説書きで書き直したいのでスレを立てました。何度も何度も申し訳ありません……!!
この小説のジャンルは一言では言えないのですが……普段はほのぼのとギャグ、たまにシリアス、恋愛といった感じです!
これ以外にもあると思いますので、たぶん色々なジャンルを詰め込みすぎた小説になっていると思います。
私は三日坊主なので、すぐ小説を書くことをやめてしまうかもしれませんが、できる限りがんばります!
描写・表現は自分なりに工夫して書いていますが、書くのは苦手なので変なところがありましたらすみません。
それでも楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いします!
Prologue
ここは、まったり村。
村名を聞いただけだとほのぼのしている村であると想像できるが、それとは裏腹に、普通ではない特殊な村なのだ。
なにが特殊なのかを説明すると……まず、小学5年生、つまり高学年からなら自由に独り暮らしができる村だからだ。
それだけではない。この村では事件や物騒などが1度も起こったことがないらしい。なので、周囲からは “ 楽園のまったり村 ” とも呼ばれている。
今日は、そんなまったり村に新村長が就任される日。
今まではある人が村長を勤めてきたが、村長の選挙でその人よりも村長にふさわしい人が存在することが判明したからだ。
かわりにその人は新村長をサポートする秘書を勤めることとなり、新村長を勤める人は今日まったり村に引っ越してくる予定となっている。
元々村に住んでいる住民たちは、その新村長がどんな人で、どんな村作りをしてくれるのか期待を膨らませていた。
____が、しかし……これだけは言っておこう。
その新村長も、このまったり村のように、少し特殊な人間である、と。
さて、そろそろ新村長もがったり村にやってくるころだろう。
今、この村で新たな物語が始まる____。
Episode 1 まったり村に引っ越してきました!
____ガタンゴトン、と電車ならではの音をたて、マイペースに運転されている1つの電車。その電車は、まったり村というところに向かっていた。
乗っている人はあまりいないが、誰も乗っていないというわけでもない。乗っている人はそこそこいる。
そんな乗っている人たちの間に紛れ込んでいる小学5年生くらいの少女は、今日からまったり村で村長を勤める新村長、 “ 悪咲 ほのあ ” だった。
「 今日からはまったり村の新村長になって独り暮らしするのか〜 不安でいっぱいだけど、なったからには頑張らないとね! 」
周りの人に聞こえるように、大きな声で独り言を言う新村長。新村長というよりも、ありのままの名前で呼んだ方がわかりやすいだろうか?
電車には付き物とも言える席には、そのほのあが口角をあげてどしんと座っていた。偶然座りたそうにしているお年寄りもいなかったのが理由なのか、席のド真ん中にどしんと。
幸い人がぎゅうぎゅうに詰め込まれた満員電車ではなかったので、ほのあは手足を存分に伸ばしながら電車に乗っていた。
ふと小腹が空いたのか、肩から斜めにかけられていたかわいい桃色のうさぎさんがこちらを見つめているポーチのチャックをグイグイと開き、ポーチと袋で守られていた “ ほのあんぱん ” というあんぱんを取り出した。
そのほのあんぱんを、女の子らしい薄い桃色のラブリーなたれ目でまじまじと見つめ、両手を使って持つ。
ほのあんぱん、というのはほのあの持ちネタでもあり、ほのあが作った自作のあんぱんでもある。
見た目は普通のあんぱんだが、それにほのあが少し手をくわえて作られたあんぱんであり、名前は作った本人の名前とあんぱんをミックスさせたらしい。
作った本人のほのあは、ほのあんぱんをパクリと一口。
口に入れた瞬間。ほのあの口の中はほのあんぱんの味で少しずつ支配されていく。パサパサしていないしっとりとした生地の部分と、絶妙な甘さでとろけてしまいそうなあんこ。
ほのあにとってこの2つはとても相性がよく、いつ食べても飽きない味だそうだ。
「 やっぱりほのあんぱんんはいつ食べてもおいしいな〜! ……でも、もうちょっと砂糖を入れた方がよかったかな? 」
ほのあんぱんを食べたほのあは、自然と笑顔になっていた。よほどおいしかったのだろうが、まだ完全においしいというわけではないという。
もっと工夫をこらして、最高のほのあんぱんを作ろう! と、この時ほのあは固く心に決めたのだった。
こんなのんきにほのあんぱんを食べていたが、この間にも時間は過ぎているということを知らせてきたように、電車内には40代くらいの男性の声でアナウンスが放送された。
「 まもなく〜まったり村〜まったり村〜 お出口は右側です〜 」
「 あ、もう着いたんだ! 早く降りないと…… 」
食べかけのほのあんぱんをガサガサと音をたてながらも袋にしまい、同時にポーチの中へと二重にしまい込む。
アナウンスが放送されてから少しすると、電車がゆっくりと止まっていく。シュー、というなにかが抜けたような音とともに電車が止まり、出口も開く。
ほのあは忘れ物がないかしっかりチェックし、電車から降車した。
電車から出ると、そこはもうまったり村の駅。
どうやらここには駅ナカなんていうところもあるらしく、結構大きな駅である。少し見て回ろうかな? なんて思いつつも、食いしん坊なほのあは色々な食べ物のお店を見て回った。
……が、今日は朝早くから起きて、母の手料理をたっぷりと食べてきたのだ。理由は当分食べれなくなるからだそう。さきほどはほのあんぱんも半分くらい食した。
なので、今はもうお腹いっぱいのほのあ。食べたいものは山ほどあったが、また今度食べにこようと涙をこらえ、 “ 楽園のまったり村 ” とも呼ばれた村に、足を踏み入れた____。
「 わぁ……! すごい……!! 」
まったり村に足を踏み入れると、そこには本当に楽園のような光景が、ほのあを待ち構えていた。
村というよりは町ともいえるような村で、駅の横にはまるでほのあを待っていたかのように、二輪のひまわりが美しく咲き乱れていた。すべて数えると四輪咲いている。
今はまだ冬の2月だが、そんなことはどうでもいい。と言い張るように、本来ならば夏に咲くひまわりは元気に育っている様子。
駅のすぐ前には、たくましく這えている立派な木。大きな木の下にはサラサラしていそうな土、その木の周辺を囲むように設置されている茶色いレンガ。
人々が歩いている地面も茶色をしたレンガで、それも今工事したばかりの地面だと思ってしまうほど清潔感のある綺麗なレンガ道。
レンガ道の周りには駅ナカにあったようなお店たちがここにも勢揃いしており、なんともにぎやかである。
北へ続く道の先を見てみると、なんとも美しく綺麗な川が太陽の光を浴びて輝いていた。釣竿を持っていれば釣りも楽しめそうだ。
「 ここが……まったり村____ 」
今日からここで新村長を勤めるといっても、発展がしすぎてなにをするのかがわからなくなりそうになる。
____悪咲 ほのあは、自分の目に映るまったり村を、じっと見つめていた。
「 ____すごい……本当にすごい! まったり村が、こんなにも綺麗な村だったなんて…… 」
今日からこの村の新村長を勤めながら独り暮らしができると思うと、まさにパラダイスだった。ほのあの口からは、もう “ すごい ” というしか言葉が出ない。
ほのあが一歩足を歩かせる。すると、同時に耳より高い位置で2つ結びしていたチョコレート色のツインテール ( ラビットスタイル ) も左右される。
他のものなんて目に入らないほどまったり村に見惚れていると、周りでなにかを話している声が聞こえ始めた。
最初に口を開いたのは、一見どこにでもいるように見える髪をしている黒髪ポニーテールの女の子だった。
「 うわーあの人じゃんあの人! 今日から村長を勤めるっていうあの____ 」
「 本当!? ……あら、新村長って思ったよりもマヌケな顔してるのね? 」
「 あの子はドSかな? ドMかな? どっちでもいいけど責られた〜い! 」
「 コラコラ、今日からほのあさんは新村長なんだから、そんな失礼なこと言わないの! 」
こんな子供たちの声が耳に入ってきた。声からして、この声の正体はほのあと同じ小学5年生くらいの子供たちであろう。
どうやらその4人はほのあのことを言っているらしく、4人中ふたりはマヌケな顔や責められたいなど、初対面の人に言ってはならない失礼なことを言っている。
マヌケな顔、というのはあっているが、少しは礼儀というものは知らないのだろうか?
駅前にいた住民たちは、ほのあのことを見て色々な噂をしている様子。
4人の発言でキャラをイメージすれば……。
最初に話した子はほのあとあまり変わらなそうな明るい女の子、2番目に話した子は話し方がお嬢様っぽい女の子。
そして3番目に話した奴はただのドMである男の子。最後に話した子は落ち着いて淡々とした男の子だとイメージできる。
そんな4人は、未だまったり村に目移りしているほのあの目の前へとやってきて、さっきの黒髪ポニーテールの子が一言述べると、みんな一斉にこう叫んだ。
「 それじゃあ、みんな準備はいい? いくよ〜! 新村長、まったり村へ…… 」
『 よ〜こそ〜〜!! 』
まだ全員が子供だったせいなのか、高い声がまったり村全体に響きわたった。今のは紛れもなく新村長のほのあに向けて言った言葉だ。
今までにぎやかだった駅前が、場所が変わったように一気に静まり返る。パチパチパチ、とかわりに住民たちが大雨のような拍手をする音が。
だが、そんなことはお構い無しに、ほのあは空気を読まない発言をした。
「 すごい! すごすぎる! この村で暮らせるとかもう最高すぎ! 生きててよかったって初めて思えたよ!! アッハッハッハッハッ!! 」
「 ____え? 」
予想外の出来事から、4人と住民たちは皆目を点のようにし、驚きのあまり声も出ないようだ。ほのあ以外は全員石になったかのように固まっている。
よほどこの村に感動したのか、ルビーのように瞳をきらきらと輝かせながらまったり村に目移りしているほのあ。これがアニメだったら、きらきらという効果音でもつきそうな雰囲気。
……だが、どうやらさきほど4人が言い放った言葉も、住民たちの声も、ほのあの耳には入ってこなかったと見られる。
「 ____いやいやいや! ちょっと待って! なんで私たちのこと無視すんの!? せっかくみんなで出迎えてあげたのに……! 」
今ので場の空気が一瞬で変化してしまったが、黒髪ポニーテールの子のおかげで全員気を取り戻した。
そんなポニーテールの子は、晴れた時しか見えない淡い空のように輝く水色をしたたれ目でほのあを見つめ、多少早口になりながらもツッコミ。
それに対し、ほのあもやっと気が付いたのか、ぽかんとしながら4人の方を向きこう話しかける。
「 ……あ、いたの? 」
『 いや普通気付くだろ!! 』
天然なのか、それともただの嫌がらせなのか。4人は同じ気持ちになったのか、偶然にも異口同音に大きく叫んだ。
それを見ていた住民たちは、今のやり取りが面白かったのか遠慮なしに爆笑する。予定とは少し違う形でほのあがまったり村にやってきてしまったが、きっとこれも1つの思い出になるだろう。
「 とりあえず……新村長! 待ってたわよ! 」
「 俺たちは毎回ここに引っ越してくる人がいたら、こうやってお出迎えするんだ! まあ……村の代表的な感じ? だから出迎えたの! 」
ふたりは無邪気な笑みを浮かべて話す。どうやら、この4人は毎回村に引っ越してくる人が来るたびに、こうして出迎えをしているという。
ちなみに今話したのは、雪のように美しい白色のセミロングをした大人っぽい女の子と、おもらず紅葉をイメージしてしまう橙色のショートヘアをしたドMの男の子。
白色の子は、少々髪がおばさんっぽい……いや、こんなことを言っては失礼なので、言わないでおこう。
「 へえ〜、そうなんだ! ……ところで、秘書さんは? 村長はやめて、秘書になったって聞いたんだけど____ 」
「 ああ! その秘書っていうのは僕だよ! 敬語使えないけれど、これでも秘書の緑葉 よもぎだから……改めてよろしくね、新村長っ! 」
自分が秘書だということを発表し、可愛らしくウィンクをする秘書。話を聞いたところでは、この緑葉 よもぎという人物が新村長をサポートする秘書らしい。
自然豊かな葉っぱを想像できる緑髪、黄色に輝くコムギのように鮮やかな黄色い丸目。
女の子ならまだしも、男の子がしないようなウィンクをしたのはちょっと引いたが、悪い人ではなさそうだ。ほのあはそう信じ、よろしくと表情を明るい笑顔にして返事を返すと、お互いに指先を絡ませて握手した。
「 あ、俺も自己紹介させてもらっていい? 俺は秋華 もみじ! 家は不動産屋さんやってるんだ! あとついででいいので責めてください……!! 」
「 あたしは夏芽 ももよ! 正直、このメンバーの中ではあたしが1番に輝いているから、仲良くしないと損するわよ! 」
握手が終わると、ふたりも軽い自己紹介をし始めた。やはり、最後の言葉を聞くと秋華 もみじという奴はただのドMだったようだ。だが不動屋さんをやっているらしいので、案外真面目なところもあるのだろう。
しかし、普通に自己紹介をしていた時は口元を緩めながら話していたのだが、責めてくださいと言ったとたん気持ちの悪い表情になっていた。なにかよからぬことを考えたのだろうか……。
そして話し方がお嬢様っぽい夏芽 ももは、大層自分に自信がある子らしい。ちょっと自意識過剰だが、自分に自信があるのはいいことだ。
「 みんなよろしくねー! んで____最後の君は? 」
さっきと変わらず明るい表情で4人を見るほのあだったが、もみじの “ 責めてください ” という言葉には完全スルーのようだ。
これで5人中3人は自己紹介が終わったので、まだ自己紹介をしていない黒髪ポニーテールの子の方を向いた。
ほのあ、!!!!!!!
久しぶり〜〜!!!覚えてるかな、?カナだよ!!小説も、ほのあも、変わったね!
またあえて嬉しいよ、!
きこちゃ、! ( カナ )
おおおおぉ!! カナだーー!!
お久しぶりです! もちろん覚えてるよ!
確かに、今見てみるとずいぶん小説の書き方が変わってるね……w
私も会えて嬉しいです! また一緒に話そうね! (≧▽≦)
ありがとうやわ、、()
空白( スペース )とか使っててびびったww
なんかめっちゃ変わってるなぁ〜って思った><
でもなんか話し方とか変わってないと思えたわ、
また話そね!!小説頑張れ!😌
きこちゃ、! ( カナ )
いえいえ〜
なんか、空白とか使った方が小説読みやすいかな〜って思って……!!
でも>>7の最後のところは、空白するの忘れちゃったよww
同じ人だから、あんまり話し方が変わってないとか……?
うん! また話そうね! あと、専スレの方も上げておくよ!
って、あれ!?
>>9の最後のところも空白使ってない……!!
また開けるの忘れちゃっててごめんね! 連レスも申し訳ありません……!! ><
ほのあ〜!久しぶりだね!覚えてる?
12: ほのあ ◆.2:2017/02/25(土) 15:19
キャンディ
おおおおぉぉ!! キャンディも久しぶり〜!!
ずっと来てなくてごめんね! でも、これからはちゃんと来ると思うので、よろしくお願いします……!!
>>12
久しぶりだね!ずっと会いたかったよ!
また会えて嬉しいな!これからもよろしくね!
キャンディ
私も嬉しいよ! また一緒に話せてよかった……。
こちらこそよろしくね!
>>14
うん!
「 ……あ、私? 私は橋本 すずか! 特徴をいえば運動神経抜群だけど頭はスッゲー悪いって感じかな、それでもいいならよろしくね〜? 」
「 う、うーん? よ、よろしくー…… 」
ほのあに自己紹介をしてと言われたような気持ちになったので、黒髪ポニーテールの子は少々めんどくさそうに自分の特徴 ( 長所と短所 ) を言って自己紹介する。
だが、最後の言い方がウザったらしかったので、ほのあは今までで1番適当に返事を返した。表情も笑顔ではなく、苦笑いで。
しかしこれも橋本 すずかという子の個性であると思い、ほのあはここにいる4人と仲良くすることとなった。
「 ふう、これでやっと全員自己紹介が終わったね! さてと、次は…… 」
「 え? ちょっと待ってよ秘書さん! まだ私自己紹介してないんだけど!? 」
4人の自己紹介が終わったので、最後はほのあが自己紹介をしようとしたが、秘書のよもぎに自己紹介は全員終わったと言われてしまった。
ほのあは自分の自己紹介をハブかれそうになったので、少し焦っている様子だが、よもぎは淡々としながら今日の予定メモを見つめている。
自己紹介をしなくてもいい理由を聞いてみると、どうやら4人は出迎える人のことをよーーく知ってないといけないらしく、もう4人はほのあの詳しいことを知っているらしい。なので、自己紹介をする必要はないのだ。
このことを聞くと、ほのあはなるほどと納得し、よもぎは次の予定を発表した。
「 えーっと、次は……家! 村長の家に行こう! 」
予定メモを見たあと、よもぎは秘書だと言うのに馴れ馴れしいタメ口を使って予定を申し上げた。
どうやら次は新村長、つまりほのあの家に行く予定になっているという。今日からほのあは独り暮らしをするのだ。確かに、独り暮らしをするには家が必要である。
「 あら? 家って、もう建ててあるの? 知らなかったわ……! 」
「 おう! 夜徹夜してまで、不動屋の俺がしっかりがっしり建てといたんだからな! 」
「 へ〜! もみじが建ててくれたんなら、是非見てみたいものだ! 」
そういえば、もみじはさっきの自己紹介で不動屋をやっていると言っていた。なので、ほのあの家も建ててくれたのだろう。
ちなみに、お金の方はほのあのお母さんが先払いしてくれているらしい。なので、ほのあのおこづかいが取られることはない。
なんだかんだで、もみじが建ててくれた家に行くことになった。本来ならば住むほのあと家を建ててくれた不動屋のもみじと秘書のよもぎが行くことになっているのだが、どうやらすずかともももほのあのことが気になるのか、一緒に着いてきてしまったので、5人で一緒に行くことに。
家は北へ続く道の先に建ててあるらしく、その家がある方へ歩いていく。歩いていると、いつの間にか茶色いレンガ道ではなく、桃色と黄色のタイル道に変わっていた。だが、ここならあの綺麗な川がよく見える。
近くで見てみると、この川の水は底が見えるほど綺麗な水だった。川の流れる音を聴いていると、とてもリラックスできそうだ。
タイル道の右側を見てみると、向こう岸に渡れるメルヘンチックな橋があった。
その橋を渡って向こう岸にたどり着くと、今度は土が道になっていた。その周りは芝生。元村長であるよもぎの優しさなのか、夜にも通れるように外灯がいくつか設置されている。芝生には、なにかを作れそうなスペースも。
その道をまっすぐ進んでいくと、もみじが一言こう言った。
「 そろそろ着くよ! こっちこっち〜! 」
「 あ、待ってよー! 」
もう少しで着くのか、もみじはできる限り足をすばやく動かし、まっすぐに走っていった。それに引き続き、ほのあももみじと同じように走っていく。子供は元気なものだ。
そうして道を辿っていくと、庭はベンチ、自動販売機などがある庭で、屋根の色はもみじの髪と似ている橙色。家の外観は普通だが、とても綺麗で広そうな家だった。
小説書くのお上手ですね(^^)
これからも頑張って下さい。
申し遅れましたが私は「牢屋の国」という小説をこの板で書いています。
お暇でしたら是非ご覧ください。
……トリップ一緒ですね(笑)
音霧 さん
ありがとうございます!! 小説を書くのは苦手でしたが、そう言ってもらえて嬉しいです!
音霧さんも小説を書いているんですね! 今から見に行ってみます!
あ! 確かにトリップが一緒ですね……ww
一緒なのが嫌でしたら変えますので、いつでも言ってください。
「 うわあ〜! この家!? こんな家に住めるなんて最っ高だよ! もみじ! 」
「 あ、ここは俺の家だから! 」
「 ……エ? ソーナノ? じゃあ、本当の家は一体____ 」
こんな素敵な村で、しかもこんないい家に住めるなんて最高だ、とほのあは意欲が生まれ、テンションが上がった。
しかし、その家はもみじの家だという。その家に住んでいる本人がいうのならば、間違いないだろう。よくよく見てみると、家の前にたっている薄茶色の看板には油性ペンで “ もみじの家 不動屋もやってるよ! ” と少し汚い文字だが、親しみやすい言葉でそう書かれていた。
じゃあ、ほのあの本当の家を聞いてみると、すぐ隣に建ててあるらしい。その家の方を見てみると、誰も想像がつかなかったものすごい家が立てられていた。
「 じゃっじゃーん! これでーす! 」
「 うわあ…… 」
「 ……す、すごいわねこの家 もちろん悪い意味で____ 」
「 これって秘書としてどうコメントすればいいんだろう…… 」
「 なっ……なんじゃゴヤーーッ!! 」
その家を見たほのあともみじ以外は、それをゴミを見るようなジト目で見ていた。
なんたって、その家はすべて藁でできており、今にもオオカミが出てきて吹き飛ばされそうな家だからである。
家の中はもっと酷く、ワンルームでしかもトイレもお風呂もない。例え無料でここに住めると言っても、絶対に住みたくない家だ。
もみじは自慢気な表情でこの家のことを自分で褒め称えている。
……が、しばらく口をぽかーんと開けたまま驚いた顔をしていたが、今度は目を化け物みたいに赤く光らせ、獣が鳴くような大声を上げた。
「 どーよどーよ? 俺が作った家! こんな最っ高で住み心地のよさそうな家は初めてだろー? ハッハッハッハッハッ! 」
「 おーまーえーとーいーうーやーつーはああああぁぁッ!!! 」
「 ちょっ!? 」
とうとう怒りが爆発したほのあは、全力でもみじを襲いかかる。
あんな藁の家で暮らせるか、ふざけるなという想いから、身体を叩いたり蹴ったりと、もみじには長時間の間たくさん残酷なことをした。
「 人が期待すれば期待を裏切りやがって! おらおらおらあぁーーっ!! 」
「 痛い痛い痛い! でもドMなんだ! これもドMなら喜ぶけど痛いいぃ〜〜っ!! 」
もみじの目からは、気がつけば涙がいくつか出てきていた。しかし、そんなことは気にも留めずに叩き続けるほのあ。
だが、これはもみじが悪いと言っていいだろう。なんせ、ふざけてあんなショボい家を建てた本人だからだ。____だからといって、こんなに叩くほのあもどうかとは思うが……。
すずかとももは、さっきと変わらずジト目でふたりのことを見ている。よもぎはなんて対処いたらいいのかわからない、とでも言いたそうに苦笑いをしているだけだった。
それから10分は立っただろうか。少しは落ち着いてきたのか、ほのあは叩くのをやめた。が、今更やめたって遅い。なぜなら、もみじはもうボロボロにされているからだ。
「 ううぅ…… 」
「 は〜スッキリした……いいかもみじこの野郎ッ! 今日はこれくらいで勘弁してやるけど、今日中にこれよりいい家を作らなかったら家の金返せよ! 」
「 えぇ!? そ、それはさすがに無理ゲーじゃ…… 」
「 いいんだよすずか! もみじにはこれくらいしないとわかんないからなあ 」
もみじの身体は、まるで巨人にやられたように傷だらけだった。まず服はボロボロ、頭にはたんこぶがアイスクリームのように出来上がっている。全身が絶望的な状態だ。
ほのあはそれを偉そうに見下ろし、4人全員はもみじを置いて去っていった。
「 は、はあぁ……こ、これもドMの楽しみどころと思えばいい……のか……ガクッ…… 作り直すか 」
そのまま気絶するとでも思いきや、作り直そうという強い意思を持ち、家を作り直そうとしたもみじ。
同じ不動屋をやっている人に泥を塗るわけにはいかない、とでも思ったのだろうか? なにはともあれ、これでほのあの家は作られることになった。
その頃、ほのあたちは橋を渡って南側へと戻ってきているところだった。
「 まったく! もみじってなんなの? ほんっとふざけてるよね! 」
「 まあ落ち着きなよ! もみじはああいう人だからさ〜…… 」
あまりほのあを怒らせないように、やわらかい笑顔で優しい態度を取るすずか。どうやらまだ完全に落ち着いたというわけではない様子。よもぎは今日の予定メモを見ていた。
「 あっ、村長村長! 予定メモを見たら、今の時間帯は自由に行動ができるみたいだよ! 気晴らしにまったり村で遊んできたら? 」
「 ほんと? じゃあ遊んでこよーっと! 」
ということで、ほのあは気晴らしに遊んでくることとなった。今日の予定はまだあるらしいが、少しはこうして遊ぶのもいいだろう。
ももは弟と一緒に遊ぶ約束、よもぎはなにかを準備する予定があるらしいので、ももとよもぎはそれぞれ目的地へと走って行った。
残ったすずかは、このあとなにかをするという予定もないらしい。なので、すずかはほのあと一緒に行動を取ることとなった。
桃色と黄色のタイル道の左側方面はまだ行っていなかったので、ふたりはそっちの方を見て回ることにした。
こちらは木で作られている橋があり、そこを歩いて渡っていく。木の橋なので、木橋とでもいうのだろうか。
向こう岸へ行くと、右側と同じように外灯があった。花壇などもあり、とても華やかなところだ。ちなみにタイル道なのは変わっていない。橋を渡ってすぐ左を見れば、そこには誰もが1度でいいから入ってみたくなるような、オシャレなカフェがあった。
「 ここらへんもずいぶん発展してるね〜 」
「 そうだね! ……あっ! そういえば……このカフェの近くには、私の友達の家があるんだよね〜 あっちの方に____ 」
というと、この道の更に奥の方を右手の人差し指で指差す。ほのあはその友達に会ってみたいとすずかに言い、その友達を紹介させてもらうことになった。
この道を少し進むと、その友達の家らしいところについた。屋根は清々しい水色。家の中はやや狭そうだが、綺麗で汚れひとつなさそうな美しい外観だった。水色と白色が目立っている。きっとこの家の主は、ひかえめな感じが好きなのだろう。
家のインターホンを押し、ほのあとすずかは家の主が出てくるのを待った。
……しかし、いつまで立っても何分立っても、その家の主は出てこない。いつもこの時間帯にはいるのに、と眉をしかめ一言。
____そんな風に困っていると、ほのあも玄関の扉を見つめ、唇を開きこうつぶやいた。
「 あれ? この扉、ちょっと開いてない? 」
すずかはその言葉を聞いた瞬間、えっ? と無意識に口走った。
今ほのあが言った扉、というのは玄関の扉のことだ。だが、よーーく目を皿にして見てみると、ちょっぴり扉が開いているのだ。つまり、今この家は侵入可能な状態になっているということ。
……勝手に不法侵入するようなので、こんなことをするのは気が引けるが……手に力を入れ扉を全開に開け、ふたりはどうして扉が開いていたのか理由を聞きがてら、すずかの友達と会うために玄関へ入った。
『 お、お邪魔しまーす…… 』
玄関に入ると、薄暗くてよく見えないが土足で上がったとしか思えない足跡が、廊下にはいくつもこびりついていた。
しかし意外なことに、それを除けばあとはピカピカと輝くほど素晴らしく綺麗な家。壁や天井を見る限り、毎日掃除しているのではないかと思ってしまうほどだ。
ほのあさん、こんにちは!いきなり入ってきてすみません。
小説、面白いです!特にほのあちゃんともみじくんが好きです!
このは さん
見てくれてありがとうございます!! ぜんぜん大丈夫ですよ!
好きなキャラも言ってくれて嬉しいです! これからもよろしくお願いしますね!
「 この足跡、なんだろう……? 」
「 あっ……! この足跡、もしやまた……!! 」
すずかは少し驚いた表情でその足跡を見る。しかし、まーたやらかしたか……とでも言いたそうな表情だ。だが、どうしてこんな足跡なんかがついているのか? それがほのあにはわからなかった。
……とそんな時、フローリングの床でまっすぐに続いていた廊下の曲がり角から、非常に派手派手しい赤髪をした女の子が騒がしく出てきた。
「 れーいっなちゃあぁーん! どこに隠れてるのだんご? あんこが遊びにきたのに隠れるなんて失礼だヨーグルト! 」
「 ほらやっぱり!! 」
「 うわっ! あの人土足で上がり込んでる! 」
足を見ると黄色い靴を履いたまんまなので、まさしくこの足跡の正体はこの子だ。語尾に様々なたべものがつき、通常よりも早口で話しているので、結構個性的な子である。
目元はパッチリ目で、色はあんこのように茶色い目。髪はやり方がちょっと難しそうなみつあみツインテールをしている。
ほのあとすずかがいるのに気が付いたのか、その子はみつあみツインテールを大きく揺らしながら、ダッダッダとうるさい足音をたて、風が吹いたようなすばやさでこちらへやってきた。
「 あ! あなたはだぁーレモン? まさかれいなちゃあぁん!? 変装したって無駄だヨーグルト!早く普段の姿に戻りなさ____ 」
「 あんこ! うるせえぞ!! 」
「 どっちも騒がしいのだが…… 」
すずかがこのみつあみツインテールの子に言っている名前はあんこなので、この子はきっとあんこという名前なのだろう。
どうやらあんこ子はほのあをれいなという子と勘違いし、危うくほのあの身体に飛びかかろうとするところだった。しかし、男口調になったすずかが大声で注意をしてくれたので、なんとかそれだけは回避できた。
「 改めましてはじめまシークワーサー! さっきはいきなりごめん猫まんま! あんこはあんこだヨーグルト! よろしくお願いしまスープ! 」
「 よ、よろしくね……それで、さっきっかられいなちゃんとかなんとか言ってたけど、その子って誰なの? 」
「あぁ〜!この家に住んでる子がれいなちゃんって言うんだいふく! とってもいい子だから1度会ってみるといいゼリー! それじゃあそろそろバイバイチゴ〜! 」
子供らしい高い声でそう言い残すと、一目散にれいなという子の家から飛び出していった。
……テンションが高すぎてついていけない。ほのあがあんこと話した時の第一印象はこれだった。が、一緒にいると楽しくなれそうなので、ほのあは友達になれそうなことはなれそうだ。
ただ、こうして土足で家に上がってこなければいいのだが……。
あとからすずかに聞いたのだが、あんこの名字は秋山というらしい。名前もつけると、 “ 秋山 あんこ ” である。
そのあんこはどこかへ去っていってしまったので、次はれいなという子と話してみることに。
たぶん家の中にいるが、きっとれいなはあんこの怖くて自分の部屋のベッドの中に隠れていたのだろう。
なぜあんこが怖いのかというと、れいなは大の綺麗好き。いや、潔癖性ともいうだろうか。それなのに、ああいう風に土足で上がり込んできたり、いつも汚いものを平気で触っているから、あんこを怖がっているのだ。
あんこ自身はそれに気付いていなく、れいなと友達になろうと毎日猛アタックしているらしいのだが……まあ、この話はどうでもいいだろう。
こんな風にあんこがれいなの家に土足で上がり込んでくるのは、もう日常茶飯事のようなもの。なのでこういう時はスルーが1番だ。
そのことをほのあに話すと、ふーんと興味のなさそうな顔をして聞いていた。そんなことは気にせず、すずかは廊下の左側にあった扉をキイィー……と少々不気味な音を立てて開けた。
すると、その部屋のベッドがガタガタと揺れているのだ。まるで、そこに人間がひとり入って震えているように。
一瞬幽霊かと思ってビクリとしたほのあだが、すずかは幽霊だなんて考えも浮かばないまま、バサっと音をたてて布団を捲り上げた。
するとそこには、爽やかな海の色をした綺麗な髪をした少女が声を殺して泣いていた。寒い寒い雪山にいるように、少女はブルブルと震えている。
「 れーいな!まーたあんこが怖かったのか? 」
「そうレイ……怖いレイ…… あの人土足で上がり込むレイよ……恐ろしいにもほどがあるレイ……」
「 この人がれいな? あんこと同じ、語尾がある…… 」
どうやらこの子がれいなというらしい。あんこと同じように、言葉の最後には語尾がついている子だ。れいなの語尾はたべものではなく、 “ レイ ” というらしい。
意味はよく知らないが、思い付く限りは2つの由来があると考えられる。1つ目は自分の名前の “ れい ” から。2つ目は綺麗の “ れい ” から。
そんなれいなは、こんな時にまで語尾を言いながら話すが、顔は真っ青。透き通るような白色をした丸目からは、涙が滝のように流れ続ける。ここまでれいなを怖がらせることができるなんて、あんこもすごいものだ。
なんとかれいなを落ち着かせるため、ほのあは色々リラックスできる方法を考え、れいなに深呼吸をさせたりお茶を淹れてきたり……。一方すずかはというと、あんこが土足で通ったところをすべて雑巾で拭き回っていた。
いつもならばめんどくさがり屋なすずかだが、こういう時だけは真面目にやるすずか。おかげで廊下全体は見違えるように綺麗に、美美しくなった。れいなの方も、少しは落ち着いてきた様子。
「 はあ……ふたりとも、迷惑かけちゃってごめんレイ…… ____って! すずかの隣にいるのは、この村に引っ越してきた新村長さんレイ!? 」
「 あ、うんそーだよ! 新村長の悪咲 ほのあ! れいな、よろしくネ! 」
相好を崩したあとには、唇にちょっぴり舌をペロリと出し、横ピースをするとバッチリウィンクを決めた。今のは狙ってやったとしか思えない行動であったが、これもほのあの悪ふざけであろう。
すずかは苦笑いをしているので引いているようだったが、れいなはぜんぜん気にしていない様子だった。
こうして、ほのあはまた2人友達が増えたのだった。めでたしめでたし……と言いたいところなのだが、すずかとれいなは小さな声でほのあの悪口を言っていた。
「 なかなかマヌケな顔してるよね! ほのあって…… 」
「 ……言われてみればそうかもレイ 」
「 そこのふたり! もちろんわかってるんだろうけど、そんな小さな声で言っても地獄耳の私には聞こえてるぞ? 」
「 なんかお腹空いちゃったねー…… 」
「 そうだねー…… って、私は空いてないんだった! 」
色々あったが、すずかの友達であるれいなとあんことも出会えたので、ふたりはなにかをすることもなく、フワフラとカフェの近くを散歩していた。
歩いていると、すずかはお腹が空いてしまったらしい。今日は朝早くからほのあを駅前で出迎える予定があったので、早く役場に行かないととつい急いでしまったらしい。
なので、朝ごはんは適当にイチゴジャムをつけた食パンと牛乳だけしか食べてないんだとか。
すずかはただお腹に右手を置き、なにか食べたいなあとつぶやき、足を止めてしまう。
そんな中、ほのあはふと思い出した。
「 ……ほのあんぱん? ____そうだ! ほのあんぱんがあるじゃないか! 」
「 ほのあんぱん? なにそれ! そんなあんぱん聞いたことないよ? 」
さっきのポーチのチャックをまた同じように開き、ほのあはビニール袋に入れていた食べかけのほのあんぱんを取り出す。さきほど電車の中でしまったばかりなのでポーチを開くとすぐそれが取り出せるようになっていた。
しかし、ほのあんぱんを聞いたことないのも当然だろう。なぜなら、ほのあが作った自作のあんぱんなのだから。
ほのあはほのあんぱんを取り出すと、それをすずかの口元へと無理矢理持っていく。
「 はい、これあげる! 」
「 いや要らないよ! しかも食いかけだし…… 」
お腹空いたお腹空いたとうるさいので、さっきのほのあんぱんを食べさせてやろうとでも思ったのだろうか。
いいよいいよ、とすずかは遠慮するが、ほのあは人の迷惑を考えず、食べて食べてと強引にすずかの口の中にほのあんぱんを入れた。
こうなったらもう食べるしかない。早くもそう悟ったすずかは、もぐもぐとほのあんぱんを容赦なく口の中で味わった。
そして、無理矢理食べさせた仕返しにまずいと一言言い放ってやろう。この時のすずかはそう決めていた。
____だが、そんな気持ちはほのあんぱんに負け、正直な感想を口にして言っていた。
「 うぐぐ、もぐもぐ…… 」
「 どう? おいしいでしょ? 」
「 まず……くない…… 」
ふわふわとしたパンと、とろとろとしたあんこ。それがすずかの口の中に広がっていく。あんこの甘さもちょうどよく申し分ない。すずかはこのほのあんぱんのことをすこぶるおいしいと感じた。
しかし、これは普通のあんぱんではない。様々な工夫がされており、より普通のあんぱんのおいしさを引き立てている味だった。
「 おいしい! これ、普通のあんぱんよりおいしい気がする……!! 」
「 そうでしょー? これはほのあんぱんっていってね、普通のあんぱんに少しだけ私が手をくわえて作ったあんぱんなんだ! 」
本当はまずいと言うはずだったが、口からはまずいなんて言葉が出せなかった。すずかはこんなおいしいあんぱんを作れるほのあに、ちょっとだけ心を惹かれる。
これだけでもすずかの空腹は満たされたようだ。どうやらほのあんぱんをとても気に入ったらしい。
すずかが喜んでいるのを見ていると、いつの間にか笑顔がほころんでいた。こんなに喜んでもらえるのなら、また作って食べさせてあげよう。ほのあは心の中でそうつぶやいた。
そのようにしていると、横から聞き覚えのある低い声が耳に入ってきた。
「 あのー……俺がいるの気付いてる? 」
いきなり話しかけられたので驚きつつも横を見てみると、そこには濃いエメラルド色をしたつり目でふたりを見るもみじが立っていた。
『 うわっもみじいつから!? 』
「 食べかけがどうとか言ってる頃からいたよ! それと、家建て直してきたからね! 藁の家破壊しちゃったけど……見に来る? 」
「 まあ、さっきみたいにふざけた家じゃないっていうのなら行くけど…… 」
どうやら新しい家を作ったことを報告しにきたらしい。もみじが作った家と聞くと、ほのあの中ではどうしても藁の家を連想させてしまう。
しかし、今度こそはまともな家であると強く信じ、3人はその家に向かった。場所はさきほどの藁の家を取り壊したところにもう1度建て直したそうなので、もみじとはご近所さんということになる。
何分か道を歩いていくと、もみじの隣には立派な家が建てられていた。屋根の色は可愛らしいピンク、冊は至ってシンプルな白色。さっきの藁の家とは比べ物にならないほどまともで、住み心地のよさそうな家だ。
内装を見せてもらうと、入ってすぐ右側はまったりできるリビング。左側にはごはんを作る、またはごはんを食べることができるキッチン&ダイニング。
左側は更に左へ続く廊下続きがあり、その先を行くと藁の家にはなかったトイレとお風呂。右側に廊下続きはないが、かわりに2階に行ける階段があり、階段を上っていけばほのあの部屋に入れる扉。扉を開放すると、大きなベッドや最新のパソコンたちが部屋の中に置かれており、生活に必要なものはすべて揃っていた。2階にはもう1つ空き部屋があるが、今は使わなそうだ。
玄関はちょっとせまいが、きちんと靴箱もあるので、靴の収納には困らない。内装をある程度見た感じだと、そこそこ広い家だ。
これ以上細かくいうと長くなってしまうので言わないでおくが、なにはともあれふざけた家ではなくてよかった、とほのあは胸を撫で下ろす。
しかし、あれだけの短い時間でここまで立派な家を作り上げるとは。いつの間にか、2人はもみじを敬していた。
「 も〜み〜じ〜! こんっないい家を作ってくれるなんて最ッ高だよ! これからはもみジジィと呼ばせてもらうね! 」
「いやそれ絶対悪気があって言ってるよね? ま、俺はドMだからいいけどさ! 」
片方の目をつむりサムズアップすると、すずかからはどこか裏のありそうな笑みでキモ〜いと言われてしまう。ところが、それにもみじは “ えぇ? ” としか返せなかった。
しかしながら、ほのあも変なあだ名をつけたものだ。悪気があって言っているのかは知らないが、もっといいあだ名はなかったのか!? とツッコミを入れたくなる。
そんな風に駄弁るのを終わらせたあとには、今日から独り暮らしをする新しいマイホームに入り、自分の部屋にある綺麗なベッドに身を任せ寝転んだ。
「 うーん、やっぱり新築の家はいいねえ〜! これをあんこなんかに汚されたら死ぬどころじゃないよアッハッハー! 」
「 そうやってフラグを建設しない方がいいよ? ベッドふかふか〜! 」
「 ってどさくさに紛れているし! 」
すずかはよっぽど暇人なのか、まだほのあと一緒にいる。しかも、ちゃっかりベッドに横たわっているのだ。
少しずうずうしいと思ったが、まあ汚したりしないのならいいかと思い、すずかを放置した。
2分間ほどベッドでゴロゴロしていると、ふと部屋のクローゼットが目に止まった。そういえば、ほのあのお気に入りの洋服などはまったり村でも着れるように、先に何着か送ってくれたということを思い出す。なので洋服はここに入っているのではないかと考え、クローゼットを勢いよく打ち開く。
中を見てみると、気に入っていた洋服たちが何着かハンガーにかけられていた。隣のタンスの中も拝見すると、クローゼットに入らなかったと思われる洋服、スカート&ズボン、下着やパンツや靴下など、様々なものが入れられてあった。
だが、この家を建てたのはもみじ。なのでこの洋服たちを入れたのももみじだと予想がつく。だからこの下着やパンツの匂いを嗅ぐなど、変な行為をしていないといいのだが……少し不安になるほのあ。
気分転換にパソコンの電源をつけ、インターネットに繋いで動画でも見ようと一歩足を動かしたその時。
ドンドンドン! と家の扉を叩く音が、家全体に響きわたる。その音にビックリして足を止めるが、それも一瞬だった。
「 なんだあ!? 人がせっかく動画を見ようとしたのに! 」
「 まったくだ! 俺は寝てるから行ってこい! 」
どうやら突然扉を叩かれてビックリするよりも、気分転換に動画を見ようとした時に扉を叩かれたことの方がムカついた様子。
なにかと命令口調なすずかだったが、その口調に怒りを覚える余裕もなく、目を吊り上げながら玄関に行き、扉をバンッ! と乱暴に開けた。
「 あっのっねぇ! あなた人の家の扉叩くとか非常識すぎるよ!? ……って、誰? 」
「 もおぉ、いらっしゃいともてなしてくれると思えばあ、文句とはなんですかあ? 失礼ですねえ! 」
「 ごめんなさいね、うちのゆずが…… 」
「 え? ゆず? だれ? 」
扉を開け説教をしようとすると、そこには柚のような金髪で、アホ毛が右側に飛び出している背の小さい子供と、ちょっと前に別れたももが困った顔をして立っていた。
ももを話を聞くと、どうやらこの子は1つ年下の弟である、夏芽 ゆずだそうだ。ゆずが新村長と会ってみたいと言っていたので、会わせてあげようと連れてきたらしい。
しかし、弟と聞いて驚愕した。なぜならもみじやよもぎのように、とても男の子とは思えないほどガーリーな子だったからである。
だがゆずは女の子っぽいと言われるのが嫌いなので、本人の前では言わないようにと注意をされた。
話を聞いている時も、ゆずは眉をしかめ、さっき言われたことをプンプン怒っていた。
「 なるへそ! そういうことか〜! 君がゆずね! はじめまして〜 」
「 人の名前を呼ぶ時はさん付けしたらどうですかあ? ほのあ 」
「 そういうお前だって呼び捨てじゃねーか!! 」
ついつい男口調になってしまった。なんだかこのゆずという人物といると、いつもより怒りっぽくなってしまう気がする。
人のことを好き勝手言える心の中では、性格がきつそう。うるさい。と失礼なことばかり思ってしまうが、決して口には出さない。もし口に出して言ってしまえば、絶対に殴られると確信しているからだ。
チラっとゆずの目を見てみると、薄い黒色に染められており、今にも吸い込まれそうなアーモンド目をしていた。思わず目を奪われそうなくらい綺麗な目だったが、あんまりジロジロ見ていると不審に思われるので、一応目を剃らしておくほのあ。
とにかくこれで用件は済んだようなので、ふたりは去っていった。
ももとゆずの相手も終わり、やっと心置きなく動画が見れる時間がやってきたので、ほのあも2階の部屋へと舞い戻っていった。部屋の扉は開けっぱなしだったので、いちいち扉を開けなくて済んだ。
ベッドの方を見てみると、大の字になって気持ちよさそうに寝ているすずかがいた。ぐーすか色気のないいびきをかき、口元にほんのちょっとよだれを垂らしながら。
扉を閉めてパソコンの電源をつけると、ほのあは独り言をつぶやく。
「 ふぅう、これである程度みんなとお話ができたね! さあて、なにを見ようかな…… 」
ひとつため息をついてからつぶやくと、寝ていたすずかの目がパッと開いたと思えば途端に起き上がり、いつもより低い声でこう言った。
「 ____え? まだひとりいるんだよ? ……ホラ、今アナタの後ロニ…… 」
「 あっ、そうなの? じゃあ後で会いにいこうよ! 」
ほのあを怖がらせようとして、いつもより低い声で言ったのだろうか。しかし、こんなもので怖がるほど怖がりではない。低い声などお構いなしに、後ろを振り向き笑顔で述べた。
ああ見えて、ほのあは怖いことに弱そうなので、怖がってくれると期待を抱いたが……あっさり期待を裏切られてしまい、勝手にガッカリするすずか。ほのあはそんなすずかに気付かないまま、パソコンをカタカタ打ち鳴らしている。
そのようにしていると、今度は家のインターホンの鳴る音がふたりの耳に入ってきた。ピン、ポ〜ン、と途中で間が空いており、スピードも通常よりのんびりしている。
「 あれ? お客さんかな? 」
「 こ、これってまさか……ここあ? ここあなのか!? 」
さっきとは違い、普通に来客を出迎えようとパソコンから離れるほのあ。ゆずとももが来た時は家の扉をドンドンと叩かれたので、それが嫌だったのだろうか?
すずかも来客のことが気になったのか、ほのあに引き続き玄関先までリズミカルに駆けていった。
「 こんにちは〜! あなたは扉をドンドン叩かなかったよね! マナーがなってるよ! よかったらお茶でも……って、あなたも誰? 」
「 はーじめまーしてっ! 住民の月影 ここあです! 今日はこの村に新村長さんが降臨するらしいから来たんだけど、忙しかったかな? ごめんなさいっ! 新村長さん、これからよろしく〜! 」
家の前には、ちょっぴりぶりっ子であざとそうな子が、あの眩しい太陽のように明るく微笑みながら内股で立っていた。
髪はキュートな桃色をしており、かわいい猫耳ヘアをしている子だった。目の色は桃色を少し濃くしたような赤色で、目を大きくするコンタクトを入れているんじゃないかと思えるほど、大きな目をしていた。
「 ここあ! やっぱりここあ来たのか! 」
「 こ、降臨って…… ( この人ぶりっ子そうだけど、大丈夫かな……? ) 」
ぶりっ子は別に苦手なタイプというわけではないが、ちょっと行きすぎたぶりっ子でめんどくさかったので、ここあという子には悪いが早めに帰ってもらった。
色々と個性的な子が一気に来てしまったので、もう疲れてしまったふたり。 なので今日はもう解散しようという話になったが____。
「 ん!? なんか気配が…… 」
「 上から来るぞ! 気を付けろ! 」
「 うわっ!? 」
真っ先に何者かの気配を上から感じられたすずかは、眉をしかめ一言独り言を言ったが、ほのあはなにも気付かなかった。
その者は家の屋根に待ち構えており、上から来ると予告した後、どしんっとほのあの身体に乗っかってきた。ほのあの身体には人ひとりの身体が乗せられたので、その重さに堪えられずつい地面に倒れ込んでしまう。
屋根の上からやってきたのは____ほのあの秘書である、緑葉 よもぎだった。
「 ちょっとよもぎ! なにするんだよ! 」
「 ごめんごめん! 今のは驚かせたかっただけだよ〜 」
軽々しく謝罪し、苦々しく笑う。相変わらずノーテンキな奴だ。
よもぎがほのあの身体から離れると、すぐさま起き上がり、よもぎのことを怒りつける。その拍子に、ほのあのツインテールが大きく揺らめく。唐突に上から乗っかってこられたので、我を失いながらもカッカしている様子。
一歩遅れて、勢いよく地面に当たった顔面やら足やら身体がじんじんと痛む。幸い血は出ていなかったが、今後こういう驚かせ方はやめてほしいと思った。
しかし、よもぎもただ単にふざけてドッキリだけをしたのではない。大事なことを知らせにきたのだ。
その大事なことというのは、今日はまったり村の広場でパーティーが開かれるということだ。これを読んでいる人はわかっているかとは思うが……今日は新村長であるほのあが就任された日。
なので、その記念として住民全員を集めてパーティーをするのだ。始まる時刻は3時30分。今は23分なので、あと7分は時間がある。
「 パーティか……そういえば、パーティなんてやった記憶ないなあ 」
「 というわけで、そろそろ始まるから広場に来てね! じゃ____ 」
そう伝えると、後ろ姿を見せながら広場の方へと走っていった。片手を犬のしっぽのようにブンブン振りながら、ふたりはよもぎを見送る。
しかし、パーティと聞いてもほのあは人生でパーティをした記憶がないらしい。きっと、したことがなかったのだろう。
ふたりも広場に向かおうとしたが、ほのあは広場の道がわからないらしい。それを聞いたすずかはズッこけたが、まあしょうがないと思い広場へ案内してあげた。
広場はもみじの家がある左側ではなく、右側の方にあるらしい。その為、ふたりは右側の道を通っていくこととなった。
道を歩いていくと、地面が砂の公園やらご新居予定地などがあった。ずっとまっすぐに道を進むと、今度は地面が普通の道路に変わる。今までは色々派手だったのに対し、今度は落ち着いた灰色だ。
そうしてその道を通り越したり北方面に曲がったりしている内に、ようやく広場に着いた。広場にはたくさんの人が集まっており、どこを見ても人だらけ。そんな広場は地面が芝生になっており、真ん中には大きな噴水が目立っている。
ちょうどふたりが来た時はピッタリ30分だったので、なんとか遅れずに来れた。噴水の前には、よもぎがマイクを持って立っていた。
「 みんな、やっほー! 元村長をやっていた秘書、緑葉 よもぎだよ! 」
「 今日は集まってくれてどうもありがとう! 今回はこの村に新村長が就任される記念に、パーティをしようということで集まってもらったんだ! 」
相変わらずタメ口しか使えないよもぎ。だが、数えきれないほどいる住民たちは、平気な顔で話を聞いている。もう慣れているのだろうか?
マイクを使っているからか、声が広場全体に響く。ほのあとすずかのふたりも話を聞いていると、近くにいたもみじに話しかけられた。
「 ちょっとほのあ! 次はほのあが話す番なのに、こんなところでなにやってるんだよ! 」
「 えっ!? そうなの!? し、知らなかった……! 」
小さな声だったが、耳元で言われたのですぐに感付いた。人前で話すのは緊張するが、これも村長としての役目だ。いつでも噴水の前で話せるように、近くでスタンバっていることにした。
その話が終わると、今度はほのあが話す番となった。ほのあが噴水の前に立つと、住民たちからは盛大な拍手を浴びせられる。
よもぎが持っていたマイクを片手に持ち、アドリブで話し始めた。
「 え、えーっと……み! 皆さん! 今日からこの村の新村長を勤めさせていただきます、悪咲 ほのあと申します! 」
「 色々と至らない点があると思いますが、よろしくお願いします! 」
なんだか自分の自己紹介のようになってしまった。今思うと、緊張で声が強ばっているようにも思える。
が、それでも住民たちはよろしくと返すように拍手をしてくれたので、この村の人たちはみんないい人なのだろう。安心で気が晴れたほのあ。
話が終わると、ようやくパーティが開催された。とはいえ、プログラムのようなものはない。これは、住民全員が自分の好きなように行動できるパーティなのだ。
時間は5時30分まで。途中で用事などがあれば、帰ることもできるようだ。
どうやらよもぎやほのあが話している間に準備されていたのか、気付けば豪華なテーブルやイスが広場に用意されていた。1つのテーブルの周りに、イスが4つあるという感じだ。
食べ物や飲み物は食べ放題のように、限られた食べ物だけが置いてあるスペースがある。嬉しいことに、そこにある食べ物はすべてタダで食べられるそうだ。
なので、そこから自分の食べたいものを取って食べるということができる。しかしパーティが終わるまでに食べきれなかったりすると罰金になるらしいので、注意が必要。
この他にも、遊べるところなどが盛りだくさんだ。
「 かんぱ〜い! ごくごく……ぷはー! オレンジジュースうめー! 」
「 私は牛乳ばっかり飲んでたから久々にオレンジジュースを飲んだよ! おいちい! 」
一緒にいたふたりは、側にあったイスに座りコップに入ったオレンジジュースをごくごくと飲み干す。テーブルには、ふたりが欲張って取ってきたハンバーグやらスイーツやらたくさん置かれていた。見ているだけでも食欲が湧いてくる。一体、全部食べきれるのだろうか……?
パーティ会場である広場にいた住民たちは、皆笑顔の花を咲かせていた。きっと、パーティが楽しいのだろう。
遠くの方ではパーティ会場に目移りしているここあ、左側でサイドポニーをしたれいな、いつも通りハイテンションすぎるあんこたちがいた。
「 いえ〜い! あっちには遊ぶところもあるね! ここあ、もうワクワクが止まらないよっ! 」
「 ここあ喜びすぎレイ! でも、ほんとにすごいレイね〜 」
「 れいなちゃああぁあん! 今日は一緒にパーティ楽しもうヨーグルトオオォオ! 」
「 うぎゃ〜〜!! あんこは来るなレイ〜〜〜!! 」
「 みんな楽しそうだね! ……あっ、ももいるよ! も〜も〜! 」
もうなにもかも忘れてパーティを楽しんでいると、イチゴ味のアイスを片手に持ったももがうろうろしていた。
それをほのあが見つけたが、一段と化粧が濃い。いつもは “ 小さい子でも化粧ができる! 子供専用の化粧道具セット ” という、最近発売されたものを使って化粧をしているようだが、これは酷すぎる。
全体的にどぎつい色を使っており、なんとも濃ゆい。
もちろん普段も化粧は濃いが、これなら普段の方がいいと言いたくなるくらいだ。ちなみに、どこか闇のありそうな紫色のつり目と、胸がホルスタインなのは変わっていない。
「 え、えっと……ももさん? なんだかさっきより化粧濃くなってませんか? 」
「 ええそうよ! なにか文句ある? 今日はいつもより化粧に気合いを入れてきたのよ! まあ、おめかしみたいな感じね 」
『 ( えっ、これってやっぱおめかし……? ) 』
驚いているのか、敬語を使って話すほのあ。本人が言うには、これはおめかしらしい。だとしても、これはちょっと気合いを入れすぎではないか? と、ふたりはももを見ながら思った。
3人の周りにいた人々たちも、口を挟んだりはしないがドン引きしてもものことを見つめている。どうやらももは悪い意味で目立っているようだ。本人は、いい意味で目立っていると思うだろうが……。
そんなことをしていると、左からこんな高音の声が聞こえてきた。
「 ちょっとお、僕がいるのに無視とはなんですかあ? 」
「 あら! ゆずいたの? あんた影が薄いから気付かないのよ……ごめんなさいね 」
「 まったくう、しっかりしてくださいよお! 」
左を見てみると、そこにはももと同じようにアイスを一握りしているゆずが少々怒り気味に立っている。アイスはミントチョコ味のアイスだった。
ゆずを見たふたりは、影が薄いよ…… と、目をジト目に変化させ反応をした。怒り気味だったのは、無視をされたからだろうか。今も、頭から湯気を立てて怒っている。
なんとかみんなでゆずを落ち着かせ、仲間に入れてあげた。
このあと、終了時間の5時30分までパーティを楽しんだ。ほのあは引っ越してきた1日目からハチャメチャになってしまった。
だが、ここで暮らすのも悪くなさそうだ。まったり村のみんなとも友達になれたし、パーティも楽しかったからである。そんな今日のことを日記に書き残し、安らかに睡眠を取った。
Episode 1 まったり村に引っ越してきました! End
Episode 2 春のまったり村! 花粉のまったり村!
ほのあが新村長に就いてから少し立ったある日のこと。村長の仕事は、昨日役場の村長室で秘書のよもぎから教えられた。
大まかに説明すると、村長ができる村づくりは公共事業と村の条例の2つ。
公共事業とは村になにかを作ったりすることで、作る人には工事費を支払うことになる。なのでこれは同じ村に住んでいる住民たちで、募金をしてもらうことになっているのだ。そのベンチを作るところは、ロープで囲んである。真ん中のところには募金箱が置いてあるので、そこにお金を入れて募金をする、という感じだ。
今は土が道になっているところにあった右側の芝生に、小さな木のベンチを作ろうと募金を始めたところ。公共事業は村の住民から作ってほしいとのリクエストがあった場合、それを作ることもできるそう。
村の条例というのは、このまったり村だけの法律のようなもの。例えば、道にゴミを捨ててはいけないなどの決まりごとである。しかしそんなすぐには思い付かないので、条例の方はまだ保留だ。
この他にも村の環境をよくするための会議、イベントなどの参加もするようだが……まあ、とりあえず村長の仕事は色々ある。
そして驚いたことに、すずかは副村長、ももともみじは公共事業を作る人だったらしい。わかっていると思うが、よもぎは秘書だ。
だから、引っ越してきた初日の時も、村の代表として駅前で出迎えてくれたのだろう。
そんな話は置いておくとして、本題に入るとしよう。今日は日曜日。村長のほのあも、副村長のすずかたちも休日の日だ。
なので、ほのあとすずかとももはもみじの家の先を行ったところへ行った。ここの道も土が道になっていて、周りが木と家に囲まれているところだ。そこに来て東に目を向けるとあんこの家、その隣にはほのあたちが通う学校、先隣は小さな空き地……といったようにになっている。
真ん中にはお花畑。今までは村の代表であるすずかたちが水やりをしていたが、新村長のほのあも来たことなので、ほのあも水やり当番をする人となった。
現在ほのあたちがいるところは、道をまっすぐ行くとあっという間に着いてしまう、石のベンチと街灯があるところだ。もうちょっと道の先を行くと、なぜか手荒い場がある。
今日は、その場所を舞台としてハチャメチャ日常が始まったようだ。
「 ぶえーっくしょん! 」
「 おえーっくしょん! 」
「 ちょっとふたりとも! 汚いからやめなさいよ! あたしの方に向けて! しかも、すずかは完全に嘘のくしゃみなんだからそういうことはしないの! 」
『 ごめんよ〜 』
最近は花粉の季節。つまりもう春が始まったといってもいい時期だろう。
花粉症のほのあは、春にはとても頭を悩まされている。春は好きだが、花粉症のせいでまともに春を楽しめないのだ。それを理由に、今も盛大なくしゃみがももめがけてぶちまけられた。
「 でも花粉症は大変よねえ……春はいいけど、花粉症が悩みどころよね 」
「 そういうももは花粉症じゃないからいーのっ! 」
「 あなただって花粉症じゃないじゃないのよ! 」
少し口喧嘩になりかけそうになったふたり。しかしそれを吹き飛ばすように、ほのあはくしゃみをした。
「 ハーックション!! 」
「 つ、唾が飛んだ…… 」
自分もやられて嫌なことを友達にしてしまったので、ごめんごめん、と目をかきながら素直に謝る。
すずかの顔には、ほのあの唾が汚く飛んでしまっている。
「 けれど、本当にどうしたらいいのかしらね? もうすぐ桜が満開になるのに…… 」
「 うえーっくしょん! 」
「 ちょっと! あたしが話してる時にくしゃみなんてするんじゃないわよ! 」
今度は手で抑えてやったので飛ばなかったが、手が汚れてしまった。なので、近くの手洗い場で手荒いをしてくることに。
道の先へ行き手荒い場に着くと、さっそく手を洗い始める。これはいつものことだが、バシャバシャとあちらこちらに飛ばしながら洗っている。水しぶきがすごい。これでは手洗いではなく、手荒いだ。
面白いです。これからも見続けます!
33: ほのあ ◆QI hoge :2017/03/09(木) 14:24
ディアン さん
返信遅くなってすみません!
ありがとうございます! これからも見てくれたら嬉しいです。
「 よし! こんなもんでいっかな〜? 」
ある程度手は洗えた。なのでもう戻ろうとすると、後ろにはもみじが立っている。
だが、いつものもみじではない。目は絵に描いたようにかっこよく、アニメキャラみたいに大きくなっている。髪も普段は上の方がぐしゃっとしているはずなのに、どことなく整っており様になっていた。いつもよりイケメン度が増している。
「 おう、もみジジィどうかしたのか? 」
「 やあほのあ、今日はよく会うね。初めて会った日から、君とは運命を感じているよ 」
「 ( ……コイツ頭ダイジョブなのか? イカれてないか? ) 」
いきなり意味不明なことを言い出す。それを不思議とは思わないが、頭おかしいだろとほのあは思った。しかも、今日もみじと会うのははじめてだ。
____とその時。
ドンッ! 木を手で叩く音が耳に入った。突然の壁ドン。
つまり、今のはもみじがほのあに壁ドンをした音なのだ。後ろにはぽつん、と1本寂しく木があったので、それを壁としてやったのだろう。もみじはなにが目的でこんなことをしているのだろうか?
「 それじゃあ、その運命に僕が答えてあげよう____ 」
「 ( うわっもみじの顔が近付いてくる! 嫌だ嫌だ、こんな奴とおでこタッチしたくないよ! ) 」
明らかにこれは壁ドンだが、ほのあは壁ドン自体知らない。なのでこれをおでこタッチだと勘違いしている。
もみじはつり目でほのあのことを見つめながら、どんどん顔を近づけていく。まるで凛々しい表情を見せつけてくるみたいだ。
「 ( 嫌だ嫌だ、こんな奴嫌だーーっ!! ) 」
「 ぎゃあぁあああぁぁあッ!! 」
ほのあは嫌だ嫌だと思いながら、ドバーン! ともみじのことを片方の足で突き飛ばした。
突き飛ばされたもみじの身体も、突然の衝撃に堪えきれなかったのか悲鳴を上げている。身体は痛がっているが、ドMのもみじにとってはこれも快感に感じられた。
そのままほのあから見る見るうちに遠ざかっていくと、あんこの家や小学校へと続く土の道に叩きつけられたもみじ。
「 いててててて〜……なにするんだよもう! 俺はドMだからいいけど、ドSの人は怒るからね!? 」
「 あっ正気に戻ったね、よかった〜もみジジィ! 」
「 もみジジィ言うな! しかも俺はまだ子供だぞ! キッズだぞ! 」
地面に叩きつけられてから少し立つと、ゆっくりと立ち上がる。そのもみじはさっきと違い、話し方も髪もいつものように戻っていた。ただ目だけは戻っていない。
怒ってはいないが、いきなり突き飛ばされたので反応にまごつきながらも注意を与えている様子。しかしほのあは普段のもみじに戻って、少しほっとしたようだ。
話を聞くと、どうやら目は子供、または小学生でもできるコンタクトをしたから大きくなっていたらしい。言葉使いは自分に酔ったように、わざとかっこつけてみたという。こんなこと ( 壁ドン ) をしたのは、あとでゆっくり話すということになった。
まあせっかく会ったことなので、もみじも連れてすずかたちのところへ戻ることに決定。
>>33-34
はい!勿論です。
また面白い小説を 流石です!
あと、つぶやき板にメッセージを
ディアン さん
ありがとうございます! これからもよろしくお願いします!!
わかりました! 後でつぶやき板見てみますね。
「 あっ! ほのあ戻ってきた! 」
ふたりでペラペラおしゃべりをしながらさきほどの道を歩いて戻ってくると、そこにはすずかがゲームをやりながら石のベンチに座って待っていた。
ほのあともみじが来ると、すずかはゲームを終了しふたりの方を見つめる。しかし、さっきいたはずのももがどこかに消えている。
「 うん、ちょうどもみじと会ったから一緒に来ることになってさ……ところで、ももはどこ行ったの? 」
「 ああ、ももはゆずが空き地でリサイタルをするからっていう理由で嫌々連れていかれてたよ 」
すずかがそう言うと、ももがいなくなったことも納得できる。まったり村の空き地というと、学校の隣にある空き地しか思い出せない。
だが、ゆずのリサイタルというのも面白いものだ。ああ見えてゆずも真面目そうなので、歌も上手いのではないか? と自分が歌を聞くわけでもないのに、無意識のうちに期待をしていた。
「 ゆずの歌か〜! 聞いてみたいな〜! 」
「 え、なに言ってんの!? ゆずはよっぽどな音痴なんだよ!? 一応歌手目指してるらしいけど、誰が聞いても地獄の歌声だよ! 」
「 ……なんか急に聞く気が失せたんだけど 」
真剣な表情でゆずの歌の怖さを語る。すずかの話によると、ゆずはものすごい音痴らしく、面白半分で聞いちゃいけないレベルだそうだ。
ゆずの歌は上手いんだろうなあ、などという淡い期待をしたが、それも束の間だったとほのあは少ししゅんとする。
そんな風にして時間を過ごしていると、もみじがすずかに話しかけた。
「 あっそうだ! すずか、ちょっと____ 」
まるで内緒話をするかのように、急に耳元で話を始める。なにをしゃべっているのか気になるところだが、ゴニョゴニョと蚊の鳴くような声で話しているせいでなにも聞こえない。
なんの話をしているのか聞こうと唇を開いた時には、もうその話は終わっていた。
「 ねえねえ! なんの話してたの? 」
「 それじゃあやるよ……それーっ! 」
ドンッ! さっきもみじが木を手で叩く時と同じ音がした。そう、今度はすずかが壁ドンをしてきたのだ。
またもやほのあの背後には木があったものだから、やはりそれを壁代わりとしてやったのだと考えられる。
「 ( なになに!? すずかもおでこタッチしたいのか!? ) 」
どんどんすずかの顔が近づいてくる。そして、なぜだか口を大きく開けている。またさっきと同じ出来事に直面したせいで戸惑っているほのあ。これは木ドン、とでも言うのだろうか……。
ほのあにはすずかがなにをしようとしているのかがまったくわからない。つまり先が読めない、ということだ。
「 ハ、ハ…… 」
「 一体なにをするつもりなのか…… 」
「 ハーーックショオオォン!! 」
「 ……えぇええぇぇえ!? 」
すずかってゲーム得意なんですね。僕もゲーム得意です!
あ!あとつぶやき板に注意が来たので、交流板で会いましょう!
ディアン さん
返信遅くなってごめんなさい! いつもコメントありがとうございます!
どうでもいいですが、ゲームはそこそこ得意で、アニメオタク……というのがすずかの特徴です。
交流板には行けたら行きますね!
お久しぶりです。ずっと更新してなくてごめんなさい! あと、ものすごくどうでもいいですが……。
>>31に書いてある “ 今は土が道になっているところにあった右側の芝生に、小さな木のベンチを作ろうと募金を始めたところ ” というのは、>>16の
“ 今度は土が道になっていた。その周りは芝生 ” という場面と繋がっています。意味わからなかったらすみません!
話は変わりますが、1日に1回は更新することを目標として、これからも頑張ります! 何卒よろしくお願いします。
なんと、なにをするかと思えばくしゃみをした。それも、耳をつんざくような不愉快なくしゃみ。ほのあの顔には、すずかの唾があちこちに飛んでしまっている。
……いや、顔だけではない。前髪や首の上らへんなど、顔周辺にまで飛んでいるのだ。さきほどのほのあのくしゃみより酷い。ストレートに言えば汚い。
これがれいななどの潔癖症であれば、発狂するだろう。
「 はい! もみじはさっき、ほのあに壁ドンをしてこれをやりたかったらしいよ! 」
「 本気ですると思った? ねえねえ、本気で壁ドンすると思った? 残念! ひっかかったな〜! 」
ウザったらしく、そしてからかうような言葉をほのあに投げかけるふたり。
しかしほのあも生きている。怒りとういう感情を持つ場合もあるのだ。それを頭に叩き込ませるように、ほのあはすずかたちを襲い始めた。
「 ばーーっかもおおおぉぉん!!! 」
「 イヤァアアアァァ!! 」
キレるのも当然だろう。ふたりがかりでウザッたらしいことを言われ、仕舞いには顔面にくしゃみまで吹きかけられたのだから。
ほのあはふたりに仕返しをするように、狂ったようにすずかたちの身体に傷を増やしていく。
「 人がなにも言わないと思うなよ! 私だって人間なんだぞーー!! 」
「 わかった! わかったよもうしません! もうしないからお許しくださ〜〜いっ!! 」
頭をボカボカ殴ったり、お腹をグーパンチされたりと、かなり残酷なことをしている。
しかし、実はここはまったり村ではあまり人気のない場所なのだ。そのせいか、誰かがこの光景を見てほのあを止める、という展開にはならなかった……。
それから数分後……ほのあの思うがままにたっぷりしごかれたふたりは、道に倒れ込んでしまっていた。
「 あへえ……いたたたた、もう! 謝るけどここまですることはないだろうが! 」
「 わかったよ、謝るならいいよ私もやり過ぎたし!」
「 そうだな。仲直り、だ! 」
どうやらほのあも少しやり過ぎてしまったと、少々罪悪感を感じたらしい。すずかはゆっくりと立ち上がる。そして、お互いに手を繋ぎ仲直りをした。
ほのあはあまり強めに握ってこなかったが、さきほど散々やられたのが悔しいのか、すずかは少し強めに手を握った。
その様子を、もみじはアニメなどでよくあるギャグ泣き? のように涙を流しながらふたりを見ていた。
「 美しき友情……! でも俺はドMだからもっと責められたかったよ…… 」
「 え? なにか? 」
「 いえいえ、なんでもありません! 」
もみじがふざけたことを抜かすと、ほのあはなんとも言えない無表情をし、もみじがいる方向に顔を向けた。
その表情にどこか威圧感を感じたもみじは、咄嗟にギャグ泣きを止めふざけるのを終わりにした。
ちなみにすずかはこの時 『 もみじ、相変わらずだなあ…… 』 と思っていたのであった。
「 はあ、すずかの唾で顔が汚れちゃったよ……ぶええぇーっくしょん! 花粉症も酷いよ〜 」
履いていたスカートのポケットに手を入れポケットティッシュを取りだし、顔に飛んだ唾を拭き取る。あれから結構時間が経過しているので乾いているが、これで少しは綺麗になるだろう。
さきほど手を洗うように顔を洗った方がいいと思うのだが……洗い場まで行くのがめんどくさいからと、テキトーにティッシュで済ませてしまった。
そうして拭き終わると、近くにあったゴミ箱に今使ったばかりの使用済みティッシュをポイと投げ捨てた。
普段のほのあならば地面に落としてしまうが、今回は偶然にもティッシュは地面に落ちることなく、そのままゴミ箱へと自ら入っていった。
「 ごめんごめん! ……って、元はといえばもみじが悪くない!? 私にこんなことをやらせておいて……! 」
「 それを実行するすずかもどうかとは思うけどね〜 」
一方、すずかともみじはこんな会話をしていた。すずかはもみじにあんなことをやらされたことを怒っているようだ。
だが冷静に考えると、あれだけふたりに残酷なことをするほのあもほのあ、自分の代わりにイタズラをさせるもみじももみじ、そのイタズラを実行するすずかもすずかだ。
これには全員に非があると言えるだろう。
そのようにして1日を過ごしていると、あんこの家や小学校へと続く道から、ここあが右手を挙げながらほのあたちの元に走ってきた。
「 お〜い! みんな〜っ! 」
「 あっ! ここあじゃん! どしたどした〜? 」
「 あのねあのねっ! ここあ今日お暇なのお〜……一緒に遊ばにゃあ〜い? 」
そうしてほのあたちがいるところまで来ると、足を一時停止させた。どうやらほのあたちと一緒に遊びたくてここに来たらしい。
ここあはほのあたちのことを赤く染まったたれ目のラブリーな目____いや、つぶらな瞳ともいえる。そんな目でおねだりをするように見つめた。
相変わらずあざといのとぶりっ子なのは変わりないが、たまにはここあと遊ぶのもいいだろう。ほのあとすずかはそう思い、少しここあに構ってやることにした。
だが、もみじだけはなにか嫌な予感がしていた。今ここあと遊んだら、確実に災難に遭う……と。
「 ( やべえ……なんか嫌な予感がする。よし、ここは騙しちゃおーっと! ) ごめん! 俺ちょっと急用が出来たから帰らせてもらうわ! 」
「 そっかあ〜、残念っ! じゃ、また今度遊ぼ〜ね〜っ! バアァ〜イ! ( チッ、気付かれたか……まあいい。残ったふたりには地獄の歌声を味わってもらおうか…… ) 」
____というわけで、もみじだけは急用が出来たなどと嘘を吐き、都合よく逃亡するようにマイホームへと帰っていった。
しかし、ここあはもみじが逃げたことに気付いていた。顔はニコニコ笑っているが、心の中ではなにか悪いことを企んでいる。
ほのあとすずかは、 ” もみじはぶりっ子のここあが嫌いだから、きっと断ったんだろう ” くらいちしか思わなかった。こうしてふたりはここあと一緒に遊ぶこととなってしまった。
が、ここあと一緒に行動している途中、すずかもなにか胸騒ぎがしてきたようだ。
「 ねえ……なんか、胸騒ぎがするんだけど…… 」
「 ええっ!? マジかよ……! じゃあ、行くのやめる? 」
「 今さら遅いよ……でも、これから地獄のような時間が待ち構えている気がする……!! 」
「 ( フフフッ、今さら気付いたって遅いから…… ) 」
耳元でごにょごにょと小さな声で話すふたり。ここあがそれを目にすると、バレたか。とでも言いたそうな表情をしながら、道を歩いていた……。
____そしてここあとともに歩いていくと、小学校の隣の小さな空き地に来ていた。
よく子供たちが遊んでいる、ただの空き地。地面は土と芝生になっていて、両サイドに木や花が少しあるだけ。
が、今日は違う。なぜなら、 “ ゆずのリサイタル ” と黄色の油性ペンで書かれた看板が、デカデカと空き地のド真ん中に挙げられているから。
いつもこの看板が空き地に挙げられている時は、これからゆずのリサイタルがあるという合図。ゆずは歌手を目指しており、1ヶ月に1度、こうして空き地でリサイタルを開くのだ。
つまり……ものすごい音痴で、面白半分で聴いちゃいけないレベルだとすずかが語っていたゆずの歌が、これから始まるということ。
空き地の右側の方を見てみると、さきほどゆずに嫌々連れられていったももが、青ざめた表情をしながら体育座りで座っていた。
「 うぅ……聴きたくないわ……ゆずの歌…… 」
「 ほれ見ろほれ見ろ! やっぱりただの胸騒ぎじゃなかった……! 」
「 すずかが言っていた、地獄の歌声……!? ゆずうぅううぅぅ!! 」
ゆずのリサイタルという看板を見たとたん、ほのあももものように顔色が真っ青に染まってしまった。すずかも目の色を変えて動揺している様子。
これを見た時、ここあは遊ぶつもりなど微塵もないのだと確信した。自分だけゆずの音痴な歌を聴くのはごめんなので、ほのあたちを道連れにするため遊びに誘ったのだろう。
「 えっへへ〜! 今日は待ちに待ったゆずのリサイタルだよお〜! 今ゆずが食べ物飲み物買ってくるから、天使の歌声を聴きながら、食べ物飲んで、飲み物飲んじゃって〜! 」
そう高音の高い声で言うと、いや誰も待ちに待ってないわよ! むしろ悪魔の歌声だ……。聴いたことはないけどそんなに酷いのか? などの声が上がった。
今ここあの言ったことを詳しく聞けばわかるが、ゆずがいないのは現在食べ物や飲み物を買ってきているからだそうだ。
余談だが、きっと買うところはまったり村で1番人気のデパートだろう。ももとゆずはいつもあのデパートで買い物をしているからだ。
ここあも内心ではゆずの歌を聴くのは嫌がっているが、もし嫌がっているのがゆずにバレたら大変なことになる。なので、こうしてわざと楽しい雰囲気を作り出しているのだろう。
その頃、そんな光景を見ている者がひとり存在した。それは、さきほどマイホームへと逃げるように帰っていったもみじである。
「 あ〜、さっき帰って正解だった……あんな歌を聴かされたらたまったものじゃないし…… 」
と、空き地の右側に這えていた木の裏にこっそり身を潜めながら、ほのあたちの様子を見ていた。
家に帰ったはいいが、さっきのことが気になるので、もう1度来てみることにしたのだ。
……そのようにしていると____。
「 なにがたまったものじゃないんですかあ? 」
「 ……え? 」
ほのあたちの様子を見ていると、背後からこんな声が聞こえた。独特な話し方と、性別が男のわりには少々高い声だったので、もみじはすぐに声の正体がわかった。
後ろを見ると、そこには食べ物や飲み物が詰め込まれたスーパーの袋を両手に持ったゆずが、ニッコリ笑って立っていた。
「 影からこっそり見ているのならあ、僕の歌が聴きたいい、ということですねえ? 今日は1時間スペシャルですからあ、どうぞ心行くまで聴いてくださいい! 」
「 イヤーーッ!! 」
ゆずに見つかってしまったもみじは、女性のような悲鳴を上げた。どうやらゆずは食べ物や飲み物を買ってきた帰りらしい。
だがそれでもめげずに逃げようとする。ゆずもももみじの服をグイグイ引っ張り、無理矢理空き地へと連れていく。
なんとか逆方面へと進もうとしたもみじだったが、ゆずが強く引っ張ると服が破けそうになり、さすがのもみじも諦めてしまった。
重たいスーパーの袋を両手に持っているというのに、ものすごい力である。ここはもう大人しくゆずの歌を聴いていくしかない。
「 あれ!? もみじ、急用が出来たんじゃなかったの? 」
ゆずがもみじを空き地まで連れていくと、ほのあたちはもみじに注目した。ほのあはもみじが来たことに驚いていたが、すずかたちはなにも驚いてはいなかった。
「 バカだなあ、騙したんでしょ? 私たちより先に、こうなることがわかったから…… 」
「 自分だけ逃げようとするからバチが当たったのよ! 」
「 ここあだってゆずの歌なんか聴きたくないよお〜…… 」
すずかとももからは少し悪く言われたが、これは逃げようとした自分が悪いと思ったので、なにも反撃したりはせず、ほのあたちと同じように体育座りをした。
ちなみに右側にはももとすずか、真ん中らへんにはここあとほのあ、左側にはもみじというように体育座りをしている。
この頃ゆずは、食べ物や飲み物をスーパーの袋から出したり、色々準備をしていた。ほのあたちはこれからゆずの歌を聴くので、とても憂鬱そうにしていた。
そんな時、これからゆずの歌を聴くひとりであるもみじがふと思い出した。こんな時もあろうかと、いつもポケットの中に耳栓を4個入れているのだ。それの耳栓をポケットから出し、ゆずに気付かれないように1人1個渡した。
しかし、ここでもハプニングが起こった。なんと、耳栓が1個足りなかったのだ。
「 やべえ……どうしよ、1つ足りねえ…… 」
「 ええっ!? ど、どうするの……? 」
「 いいや、俺は耳栓無しで……。これ使っていいよ! 」
口角を上げてそう言い、ほのあの左手に耳栓を渡した。これは所謂、レディーファーストというものだろうか。もみじはいつもふざけているが、こういう優しいところもあるのだ。
……が、こんな時でもボケ役なほのあは、満天の笑顔でこうお礼をした。
「 ありがとう、もみジジィ! 」
「 ____その呼び方やめて…… 」
普段通りほのあがお気楽なところがわかったところで、ついにゆずの歌のリサイタルが始まった。
歌う曲は最近ゆずが作詞した曲らしく、 “ 夢見る乙女のマジカルドレス ” という曲らしい。いかにも女の子が歌うような曲で、尚且つ女の子が作詞しそうな曲だが……まあ、それには触れないでおこう。
ほのあたちはゆずの歌で気絶しないようしっかり態勢を整えると、ゆずのリサイタルも幕を開けた。
「 ゆぅうぅぅめ見るううぅぅおおぉぉとめえええええのおおぉおぉ!! まああぁぁじかるうううぅぅどぉおぉぉぉれすうううぅぅうぅ!! 」
ゆずが歌い出したとたん、ほのあたちはその酷い歌声に、つい倒れそうになる。まるで、誰かがなんの理由もなしに悲鳴を上げているようだ。
食べ物や飲み物はビニール袋の上にたんまり置いてあるが、こんな歌を聴きながら食べる気にはならない。
ほのあやすずかは耳栓をしているからまだいいが、もみじは耳栓をしていないので、人一倍辛そうにしている様子。もみじだけは体育座りをやめ、人差し指を両耳の穴につっこんだりしている。
聴いているほのあたちは苦悶の表情を浮かべ歯を食いしばりながら、早く終わらないかなあ……などと心の底で思いながら、時間が立つのを待っていた。
____……時にはこんなやり取りをして、苦しみながらふざけたりもした。
「 うぐっ! ……聞いた通り胸に突き刺さるような歌声だ……。つまり最悪ってこと。ぐはあっ……! 」
「 耐えろ、耐え抜くんだほのあッ……! 約束したろ? 女と女の約束だって……!! 」
「 いやそんな約束してねえよ…… 」
と、さっきまではお気楽そうにしていたほのあが珍しくツッコミをする。
ゆずが歌っている途中、時々ほのあたちは 『 よくこんな歌を披露できるなぁ…… 』 などとベラベラ話していたが、その声は気持ちよく歌っているゆずには届かない。
「 もう無理ィ……ここあの命は0だよお…… 」
「 頑張るのよここあ! この曲が終わればいいのだから……! 」
「 ……!! みんな、気絶した方が身のためだよ? 」
今ももが言い放った言葉で、もみじはまた思い出した。その瞬間、全身に鳥肌が立つ。
なぜなら、さきほどゆずにこの空き地まで引っ張られた時、ゆずが “ 今日は1時間スペシャル ” と言っていたことを思い出したから……。
簡単に言えば、ゆずの歌う曲はこの夢見る乙女のマジカルドレスだけではない……この先も、ずーーっとゆずのリサイタルが続くのだ。
それを聞いたすずかたちはひどく衝撃を受けた。しかも、ほのあは今まであった目のハイライトが一瞬にして消えベタ目になり、立ち上がってスカートのポケットから小さなナイフを取り出すと、自分の胸に向けた。
「 あっははははは……こんな歌を1時間も聴くくらいなら死んだ方がマシだよ……。じゃあね……? 」
「 待てやめろ! 早まるな!! たったの1時間だぞ! 楽しいことを考えろ……!! 」
その行動を見たすずかはすぐさまほのあを止め、ナイフをすばやく取り上げた。すずかの言ったことが効いたのか、ほのあは目が覚めいつものハイライト付きの目に戻る。
取り乱してごめん! と一言謝ると、すずかたちはいいよいいよと笑って許してくれた。
……が、 『 一体なんのためにそんなものを持ち歩いているんだ!? 』 と、すずかたちは思っていた。